会社設立の基礎知識

定期同額給与とは?改定方法や損金算入できる役員報酬の条件も解説

監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ

定期同額給与とは?改定方法や損金算入できる役員報酬の条件も解説

定期同額給与とは、1ヶ月以下の一定期間ごとに定額を支払う役員報酬のことです。金額は株主総会等で決定する必要があり、一般社員に支払われる給与とは税制上の扱いが異なります。

本記事では、定期同額給与の概要や、金額の改定方法などについて解説します。

目次

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定期同額給与とは

定期同額給与とは、法人の役員に対して1ヶ月以下の頻度で定額を報酬として支払う制度(およびその給与額)のことです。

月1回程度のペースで報酬を支払うという点では一般社員に支給する月給と似ていますが、定期同額給与は株主総会等であらかじめ金額を決定しておかなければなりません。

定期同額給与は損金算入が認められている役員報酬です。役員報酬の金額を変更すること自体は可能ですが、全額損金算入として認められるのは基本的に年単位での変更が条件です。

定額同額給与のほか、「事前確定届出給与」と「利益連動給与」も損金算入が認められています。それぞれの支給要件は下表のとおりです。


種類概要
定期同額給与支給時期が1ヶ月以下の一定の期間であり、事業年度内に支給する金額が毎回同額である給与
事前確定届出給与決められた時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給し、一定の条件を満たしている給与
利益連動給与同族会社ではない法人が、業務執行役員に対して支給する給与であり、利益に関する指標を基礎として算定されているもの

なお、利益連動給与は上場企業のみを対象とした制度です。中小企業や未上場の企業で損金算入が認められているのは、定期同額給与と事前確定届出給与に限定されています。


出典:国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」

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定期同額給与の金額を変更(改定)するには

あらかじめ設定した定期同額給与であっても、随時変更(改定)することは可能です。

ただし、前述のとおり定期同額給与は「一定期間ごとに同額を支払う」という性質があるため、月ごとに変更すると損金算入が認められません。基本的に年単位での変更になることを理解したうえで、金額を決定する必要があります。

定期同額給与の金額を変更(改定)しても損金算入できるのは、下表のような定期同額給与としての条件を満たすケースです。


改定方法変更(改定)の事由
通常改定通常改定事業年度開始から3ヶ月を経過する前に改定された場合
臨時改定役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更などがあった場合
業績悪化改定経営状況が著しく悪化したことにより減額がやむを得なくなった場合

業績悪化改定は、減額での変更(改定)のみが対象です。主な取引先との突発的な取引停止など特別な事情がある場合にのみ適用される項目であり、単なる業績悪化などには適用されません。また、一時的な資金繰り目的での改定や、恣意的な改定も対象外となります。

定期同額給与を変更(改定)する方法は下記のとおりです。ここでは株式会社での例を紹介します。

株式会社が定期同額給与を変更する方法

  1. 社内で定期同額給与の変更案を作成
  2. 株主総会開催の準備・招集
  3. 株主総会での決議
  4. 株主総会議事録の作成
  5. 定期同額給与の変更
  6. 年金事務所への申請

定期同額給与を変更(改定)する際は、株主総会での決議が必要です。役員ごとの具体的な金額案を決定し、株主総会の招集通知を作成して2週間前までに発行します。ただし、株主全員の同意があれば招集の手続きは省略可能です。

株主総会で決議が下りたら、決議が行われた事実を文書として記録するために議事録の作成・保管に進みます。万が一税務調査が入って、増額分が損金算入できなくなるなどの事態を防ぐためにも、確実に作成しておきましょう。

なお、標準報酬月額に2等級以上の差がついた場合には、年金事務所へ月額変更届の提出が必要です。


出典:国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」

定期同額給与の損金算入ができないケース

定期同額給与は原則として損金算入が認められていますが、上記「定期同額給与としての条件」から外れてしまうと一部算入できなくなります。主な事例を解説します。

事業年度の途中から定期同額給与を支給した場合

事業年度の途中から定期同額給与の支給を開始した場合、損金算入できません。たとえば、会社設立から半年間は十分な収入を確保できないなどの理由から定期同額給与を支給せず、設立から半年後に支給を開始した場合などが当てはまります。

収入が得られるタイミングから支給し損金算入をしたい場合、直前に事業年度を変更すれば損金算入できます。

事業年度開始から3ヶ月経過後に金額の増減があった場合

事業年度開始から3ヶ月経過後に定期同額給与を増減した場合も、損金算入できません。3ヶ月以内であれば通常改定で損金算入できるので、時期ごとの差に注意しましょう。

たとえば3月決算の企業の場合、下記のようになります。

<増額の場合>

3月決算企業で定期同額給付を増額した際の損益不算入になる期間

増額した場合、増額部分は損金に算入できません。

<減額の場合>

3月決算企業で定期同額給付を減額した際の損益不算入になる期間


減額した場合、減額後の定期同額給与の額を超える部分は損金に算入できません。

特定の月だけ金額の増加があった場合

事前の届出なしに特定の月だけ金額の増加があった場合、定期同額給与の額を超える部分は損金算入できません。

たとえば下図のように、事前の届出を行わずに7月と1月だけ定期同額給与に上乗せした金額を支給した場合、特定月だけ金額が増えることになります。このような場合、定額同額給与で定められた金額を超える部分は損金算入できないので注意しましょう。

特定月だけ定期同額給付に増額した際の損益不算入になる期間

まとめ

定期同額給与は損金算入できる役員報酬の支給方法であり、株主総会等であらかじめ金額を決定しておく必要があります。金額を変更(改定)することもできますが、原則として年1度の変更(改定)であり、それ以外では損金算入を認められない部分が出ることがあるので、変更(改定)のタイミングには注意しましょう。

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よくある質問

定期同額給与とは?

定期同額給与とは、法人の役員に対して1ヶ月以内の単位で一定期間ごとに同額で支払われる給与のことです。

定期同額給与について詳しく知りたい方は、記事内「定期同額給与とは」をご覧ください。

定期同額給与の金額は変更できる?

定期同額給与の金額は変更(改定)可能ですが、基本的に月ごとの変更はできません。

定期同額給与の変更について詳しく知りたい方は、記事内「定期同額給与の金額を変更(改定)するには」をご覧ください。

監修 税理士・CFP® 宮川真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは25年以上に及ぶ。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表としてコンサルティング、税務対応を担当。また、事業会社の財務経理を担当し、複数企業の取締役・監査役にも従事。

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