会社設立の基礎知識

役員とはどのような仕事?会社役員の種類と役割についてわかりやすく解説

会社役員とはどこまで?種類や役割、執行役員との違いをわかりやすく解説

会社役員とは、経営方針の決定、業務や会計の監査などを担う立場の人を指します。会社法で定義されている会社役員は、取締役・会計参与・監査役の3役ですが、常務や専務、執行役員なども任意で設置できます。

本記事では、役員と社員および執行役員の違いや役員の種類、社外取締役の必要性などについて詳しく解説します。また会社役員の選び方や報酬の決定方法、役員を変更する場合の手続き、社会保険の加入についてもあわせて解説します。

目次

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会社役員とは

会社役員とは、取締役・会計参与・監査役などの役職を指します。一方、会社を設立する際に、常務や専務、執行役員などを設けることも可能です。まずは会社における役員の責務や、役員と社員、執行役員の違いについて解説します。

役員とは取締役・会計参与・監査役の総称

役員とは、会社の中核を担う役割で事業の方針を決定し、組織全体を管理・監督する役職の人間を指します。会社法第329条で定義されている役員は、取締役・会計参与・監査役の3役ですが、任意で常務や専務、執行役員の設置も可能です。

監査役を含む3名以上の取締役で構成される取締役会は、会社の業務を執行する意思決定機関です。取締役のうちの最少1名が代表取締役となり、取締役会で決定した会社の業務を代表取締役や取締役が実行します。

取締役会を設置しない場合は、監査役を選任する必要はありません。2006年に会社法が改正され、株式会社であっても必ず取締役会を設置する義務はなくなりました。

そのため、現在は取締役会のない株式会社も増えています。取締役会がない会社では、株主総会で重要事項を決定し取締役が業務を執行します。

役員と社員の違い

取締役・会計参与・監査役の3役と社員の違いは、役員は経営を担う人であり、社員は労働力を提供する人という点です。

役員の仕事は、経営者とともに決定した業務を行い経営を進めていくことです。そのため、労働基準法上の労働者にはあたりません。社員は会社に所属し、上司の監督のもと労働力を提供する労働者です。

社員は会社と雇用契約を結んで業務を行いますが、役員の場合は委任契約である任用契約を結んで仕事をします。

なお役員は、雇用関係には当たらないため労災保険や雇用保険が適用されません。ただし、役員であっても社員と同じように勤務している実態がある場合は例外です。この場合、社員の役割で行っている業務範囲には、労災保険や雇用保険が適用されます。役員と社員の違いは、会社との位置づけの違いです。

役員と執行役員の違い

取締役・会計参与・監査役の役員は会社法で定められている役職です。一方で、執行役員は会社が任意で設置できる役職であり、会社法等で定められているものではありません。

執行役員の役割は、役員が決定した業務計画や事業方針を実行に移すことで、経営上層部と現場の社員とのパイプ役を担います。また役員が、実務まで兼務し仕事のパフォーマンスが落ちることを避けるために、執行役員を設ける意図もあります。また一般的に執行役員は、役職のある社員の中から選任されます。

執行役員は役員の肩書きが付きますが、ポジションは通常の社員と同様です。そのため、労働基準法が適用されます。

執行役員と似た役職に執行役がありますが、執行役は指名委員会等設置会社だけに設置が義務付けられた役職です。執行役も執行役員と同じく業務を執行する立場ですが、執行役は法律上の機関であるのに対して、執行役員はその立場を担う人を指します。

会社役員の種類

会社法に規定されている役員の種類は、以下のとおりです。また、会社法に規定されてはいませんが、一般的な企業には社長や専務などの役員も存在しています。ここでは、それぞれの役員の役割について解説いたします。

会社役員の種類

  • 取締役
  • 代表取締役
  • 会計参与
  • 監査役
  • 会社法に規定されていない役職
    ・会長、社長
    ・専務、常務

取締役

取締役は会社法で定められている役職のひとつで、ひとつの会社に1人以上置くことが義務付けられています。また取締役は、業務を執行するための意思決定を行う役割があります。

2006年に会社法が改正される以前は、株式会社では取締役会の設置が必ず必要だったので、3人以上の取締役と1人の監査役を選任しなければいけませんでした。しかし、改正後の会社法では取締役1名でも会社を設立できるようになりました。

株式会社では、株主が会社の所有権を持ちます。会社を保有するのが株主で、経営するのが取締役と明確に分かれています。

年に1度の株主総会で前年度の経営状況を報告し、次年度の経営方針を決定しますが、日常的な経営の意思決定は取締役会が行います。

代表取締役

代表取締役は、l会社法で定められた取締役会の中の代表者の役職をいいます。取締役と似ていますが、両者は異なります。取締役会で複数の取締役が選任されて、その中から代表者として選ばれるのが代表取締役です。

代表取締役は、必ず取締役会の決議において選任されなければいけません。代表取締役は会社を代表する取締役で、業務執行や会社の代表として契約締結を行うなど事業全般における権限を持つ最高責任者です。

代表取締役の役職の形態は、会社によってさまざまなものがあります。社長と兼任する場合や、1人ではなく複数代表取締役を設置する会社も存在します。

会計参与

会計参与も会社法で設置が義務付けられている取締役会の役員の一種で、取締役と共同で会計書類を作成する会計の専門家です。役員のため、取締役会への出席や株主総会での意見・発言などの権限を持ちます。

会計参与の「参与」とは待遇の役割を表現するもので、課長や部長などの職名とは異なります。主な役割は経営幹部の下で会社の業務を管理することです。

会計参与の仕事は、専門的な知識を持つスキルの高い人が求められる傾向にあります。そのため、会計参与は公認会計士や税理士などの会計・財務の国家資格を持っている人だけが就任できます。

監査役

監査役は、取締役会の中で取締役と会計参与の業務執行を監査する役割を持つ役職です。取締役会を設置する会社では、監査役の選任が義務付けられています。

監査役は取締役や会計参与へ職務の報告を要求でき、法令・定款を遵守して業務を行っているか、不正がないかの調査を行います。不正な会社経営をしていた場合には、取締役会や株主総会で報告します。

監査役は設置することで会社の経営の健全性を高め、コーポレートガバナンス体制を確立することが期待される役職です。また、取締役会を行わない会社や株式を公開していない会社では、監査役の設置義務はありません。

会社法に規定されていない役職

取締役・会計参与・監査役は、会社法で選定が定められている役員です。一方で、会長や社長・常務・専務など会社法に規定されない役職もあります。これらの役職は、法律上の定義に触れずに自由に役職を決められるため、会社の業態や社内ルールに則った役職を設けているところも少なくありません。

会社法で定められていない役職を設定する場合、法的な義務はないので株主総会での選任は必要ありません。

会長

会長とは、日本では一般的に会社において社長よりも上の役職をいいます。会長は、社長の役職を退いた前社長が就任するポジションとして会社で設置されるケースが多い役職です。社長を退いたポジションには、会長の他に相談役や顧問などがあります。

会長は会社法で定められた役員ではありませんが、 税法上の役員であり、役員と同等の扱いを受けている会長であれば 実質的な役員とみなされて給与ではなく役員報酬が支払われます。

会社では社員への賞与は経費となりますが、役員賞与を経費で支払う場合は事前の手続きが必要です。

社長

社長は会社を代表するポジションで、業務の指揮を取る存在です。代表取締役と似た役職と判断されやすいですが、社長と代表取締役は同じとは限りません。

代表取締役は、会社法で定められている取締役の中から選ばれる役職ですが、社長は商慣習上の最高経営責任者です。会社によっては、代表取締役と社長を兼任する代表取締役社長の役職を設けているところもあります。

代表取締役は法律で定められた対外的な呼称で、社長は商慣習上会社のトップを表す会社内部の役職です。代表取締役は複数いる場合がありますが、社長は一つの会社に1人が一般的です。

専務・常務

専務は専務取締役や専務執行役ともいい、社長をサポートする役職です。業務管理や監督を行い、経営に関する重要な権限を持ちます。会社法の規定がない役職なので、役職名や業務内容も会社によって異なります。

常務も会社法が定めていない役職です。専務と名称が似ていますが、専務が経営方針に携わりながら企業全体を統括する業務を担うのに対し、常務は社員の日常的な業務を重点的に監督する役割です。

一般的に専務の方が常務より上の役職としているところが多いようですが、専務の代わりに副社長という役職を設定している会社もあります。

会社役員の決め方とは?

会社役員の決め方は、取締役会を設置する場合としない場合で異なります。取締役会を設ける会社の場合、取締役は3人必要です。役員として選任しなければならない監査役は、取締役が兼務したり社員を選任したりできないので、他に1人選ばなければいけません。

しかし取締役会を置かない中小企業では、1人以上の取締役を決めるだけで監査役を置く必要はありません。たとえば、1人で会社を設立するなら自ら代表取締役になるだけで済みます。

また、2人以上の人数で会社を設立する場合でも創立メンバー全員が代表権を持つ取締役になる方法や誰か1人を取締役にして他の創設者を社員とする方法があります。

【関連記事】
取締役・役員はどう決める?中小企業の取締役を決めるパターンは2つ

社外取締役の必要性

社外取締役とは社内の社員が昇格した役員ではなく、資本や取引関係がない外部の人材を取締役に設置することです。

社外取締役は、会社法で監査委員会、指名委員会、報酬委員会の3つの委員会委員会を設置する会社と一部の上場企業において設置が義務付けられています。また、上場会社の場合は、証券取引所の上場規則の中にも社外取締役の設置義務が記されています。

企業と利害関係がない第三者を取締役に据えることで、経営者への監視を高めることが目的です。

また、社内の人材には少ない専門性やスキルがある人材を迎えれば、役員全体のスキルバランスが取れて、経営戦略や事業計画にも役立つことが期待できます。さらに、対外的にも経営に透明性があり健全であることの証明にもなります。。

会社役員の変更方法(手続き)は?

取締役や監査役の任期が満了する場合や解任・辞任、または役員が死亡した場合などで新たに取締役や監査役を選ぶ際は、変更があった日から2週間以内に役員変更を行わなければいけません。

役員が変更になると経営方針が変わるため、業績や株価にも影響が出る可能性がありますので、速やかに新たな役員を選び登記の変更を行いましょう。役員変更の具体的な手順は以下のとおりです。

役員変更の手順

  • 株主総会で新しく選任した取締役や監査役を決議
  • 役員変更に関する可決が得られた後、株主総会議事録・取締役会議事録・株主のリスト・就任承諾書・印鑑証明書・本人確認証明書・定款の謄本などの必要な書類を揃えて登記申請書を作成
  • 登録免許税を印紙で支払い
  • 企業の所在地を管轄している法務局に申請

役員変更の登記は、社内で必要な書類を作成して申請もできますが司法書士へ依頼することも可能です。

役員変更があったにもかかわらず登記の手続きが2週間の期限を過ぎてしまった場合、登記懈怠となり代表者個人に対して100万円以下の罰金が課される可能性がありますので注意が必要です。

会社役員の役員報酬の決め方

役員報酬の決め方は、事前に定款で定めておくか株主総会で決議します。

定款は組織運営のために必要な事項を記載したもので、あらかじめ定款に役職と報酬を記す必要があります。株主総会で決める場合は、それぞれの役員の職務内容と報酬が妥当であるか判断して決定します。

定款についての詳細は以下の記事で解説していますので、こちらをご覧ください。

【関連記事】
会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項について詳しく解説

役員報酬を決める際の、判断材料は次のようなものがあります。

役員報酬の判断要素

  • 会社の損益
  • 社員の給与と役員報酬のバランス
  • 会社及び役員が負担する税金、保険料とのバランス
  • 同業他社の役員報酬の相場との比較

役員報酬は社員の給与とは、税務上の区分が異なります。給与は全額損金として計上できますが、役員報酬を損金に算入する場合は条件を満たさなければいけません。

また役員報酬は、会社を設立した日から3か月以内に決める必要があります。3か月を過ぎてしまうと役員報酬の損金への計上ができなくなります。

【関連記事】
役員報酬とは? 会社設立前に知っておくべきルールや金額の決め方を解説

会社役員の保険の扱い

会社役員は、労働時間や賃金の取扱いが社員とは異なるため、雇用保険や社会保険に適用する条件かどうかを判断する必要があります。

雇用保険への適用

原則として、会社の取締役や役員は雇用保険の適用にはなりません。 しかし、支店長や工場長などの場合、勤務携帯や賃金などから労働者性が強く雇用関係があると認められれば雇用保険に加入できます。

社会保険への適用

代表取締役のような法人の代表者や常任役員で役員報酬が支給されている場合は、社会保険に加入する義務があります。ただし、報酬が支払われていない場合は適用されません。

また、非常勤の役員の場合は役員報酬が毎月支払われていても社会保険の強制加入の必要はありません。

まとめ

役員とは、会社法で定められている取締役・会計参与・監査役をいいます。これら3役は、取締役会を設置する会社では選任が義務付けられています。

しかし、社長や常務・専務・執行役員などそれぞれの会社が任意で設定できる役員もあるため、会社によっては多くの役員が存在するケースが存在します。

また役員になると加入できる保険が限られるため、報酬を損金として参入するためには条件をクリアしなければいけないので慎重に選出する必要があります。そして役員の変更がある場合は、2週間以内に登記の手続きを行いましょう。

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よくある質問

会社役員と執行役員の違いは?

会社役員は法律上定められた役員です。しかし、執行役員は役員と名はついていますが会社法上の役員ではありません。

詳しくは記事内「役員と執行役員の違い」をご覧ください。

会社役員の種類は?

会社法上の役員は、取締役・会計参与・監査役の3役ですが、一般企業には会社法に規定されていない、社長や専務といった役職も存在します。

詳しくは記事内「会社役員の種類」をご覧ください。

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