監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所
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政府が公開する統計データによると、2023年の1年間に約14万件の会社設立登記が行われ、そのうち株式会社が約10万件、合同会社が約4万件でした。一方で、合名会社と合資会社の設立登記はいずれも100件以下とわずかです。
会社の形態として多いのは株式会社ですが、合同会社が選択されるケースもあります。会社の設立から設立後の事業運営までスムーズに進めるには適切な会社形態を選ぶことが重要です。
本記事では、設立費用や税金など株式会社と合同会社の違いや、それぞれの会社形態のメリット・デメリットについて解説します。
目次
設立できる会社の種類
会社法で規定されている会社形態は「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」の4種類であり、会社を設立する場合はこの4つの中から選択します。
政府が「e-Stat」で公開している統計データによると、2023年の設立登記件数は、株式会社が約10万件、合同会社が約4万件に対して、合名会社と合資会社はいずれも100件以下とわずかでした。このように、合名会社と合資会社が選択されるケースは少なく、株式会社または合同会社のいずれかの形態で会社を設立することがほとんどです。
会社の設立にあたっては、株式会社と合同会社に関する基本的な事項や違いを押さえたうえで会社形態を検討しましょう。
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出典:e-Gov法令検索「会社法|第二条一号」
株式会社とは
株式会社とは、株式を発行して集めたお金で運営する形態の会社です。株式とは出資した人に対して発行する証券のことで、出資をして株式を保有している人が株主にあたります。
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株式会社は出資者と経営者が異なる点が特徴で、出資者である株主が株主総会で経営者(取締役)を選出します。原則として一株につき一議決権が与えられ、株主は持ち株数に応じて議決権を株主総会で行使でき、会社の経営に間接的に参加します。
国税庁が公表した「2024年度分会社標本調査」の結果によれば、日本の法人の9割以上が株式会社であり、4種類ある会社形態の中で最多です。
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出典:国税庁「2024年度分会社標本調査」
合同会社とは
合同会社とは、出資者と経営者が同一である会社形態をいいます。
このような会社形態を持分会社と呼び、合名会社・合資会社も持分会社のひとつです。
持分会社は、出資者が社員として経営を行います。株式会社のように株式を発行して出資者を募ることはせず、所有と経営が一致している点が特徴です。合同会社、合名会社、合資会社には、以下のような違いがあります。
合同会社・合名会社・合資会社の違い
- 合同会社:社員全員が有限責任社員である
- 合名会社:社員全員が無限責任社員である
- 合資会社:無限責任社員と有限責任社員の両方がいる
有限責任社員と無限責任社員で異なるのは、会社が倒産した場合に会社の負債を返済する義務の範囲です。有限責任社員は自分の出資額を超えた責任は負いませんが、無限責任社員は、会社や会社債権者に対して自分の出資額を超えた責任を負います。
有限責任社員は無限責任社員に比べるとリスクが低いため、持分会社で会社設立をする際は、社員が有限責任である合同会社が選ばれることが多くなっています。
なお、株式会社と持分会社では「社員」の意味が異なるため、混同しないように注意が必要です。株式会社の社員は「従業員」を指しますが、持分会社での社員は「出資者」を指します。
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株式会社と合同会社の違い
株式会社と合同会社では次のような違いがあります。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員の過半数または総社員の同意 |
出資者 | 株主 | 社員 |
経営者 | 取締役 | 業務執行社員(業務執行社員を選任しない場合は社員全員) |
出資者と経営者 | 分離 | 同一 |
責任の範囲 | 有限責任 | 有限責任 |
設立費用の目安 | 25万円~ | 10万円~ |
議決権 | 原則として一株一議決権 | 一人一議決権 |
決算公告義務 | 有 | 無 |
定款の作成 | 必要 | 必要 |
定款の認証 | 必要 | 不要 |
役員の任期 | 通常2年、最長10年 | 制限なし |
利益の配分 | 出資比率による | 自由 |
以下では、2つの会社形態の違いのうち、主なものについて解説します。
会社設立費用
会社設立時にかかる費用は、一般的に株式会社よりも合同会社のほうが安く済みます。会社を設立する際の費用のうち、株式会社と合同会社で差が出る主なものは「登録免許税」と「定款認証手数料」の2つです。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
設立登記時の登録免許税 | 資本金額の1,000分の7 (15万円に満たないときは1件につき15万円) | 1件につき6万円 |
定款の認証手数料 | 資本金額に応じて3万円~5万円 | 認証不要 |
株式会社では少なくとも15万円の登録免許税がかかるのに対して、合同会社では申請1件につき6万円です。
また、合同会社では定款の認証が不要なので認証手数料はかかりませんが、株式会社では定款作成後に公証人による認証を受ける必要があり、3万〜5万円の手数料がかかります。
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
出典:日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」
出典:e-Gov法令検索「会社法|第三十条」
決算公告義務
株式会社では決算公告が義務付けられていますが、合同会社には決算公告の義務はありません。株式会社の場合、定時株主総会の終結後遅滞なく貸借対照表(大会社は貸借対照表および損益計算書)を公告することが会社法で義務付けられています。
株式会社では毎年決算公告を行う手間がかかり、官報に掲載する方法で決算公告を行うと費用もかかります。官報に掲載する場合は掲載枠単位で購入する必要があり、費用は2枠なら約7万円、3枠なら約11万円です。合同会社は決算公告義務がないので手間や費用はかかりません。
出典:e-Gov法令検索「会社法|第四百四十条」
税金
株式会社も合同会社も課税される税金の種類は同じです。法人税や事業税、消費税などが課され、税率についても違いはありません。
ただし、前述のとおり、会社設立時にかかる登録免許税の税額が異なります。
合同会社では役員の任期がないため役員変更の登記を行わないことも考えられますが、株式会社では役員に任期があるため、役員変更の登記の際に登録免許税がかかります。申請1件につき、資本金額が1億円を超える場合は3万円、1億円以下の場合は1万円です。
利益分配と経営の自由度
株式会社が株主に配当金を支払う場合、株主は出資比率に応じた金額を受け取れますが、合同会社では、出資比率とは異なる割合で利益を配分することも可能です。
また、基本的に株式会社では、事業経営に関する事項などの意思決定は株主が行います。重要事項に関しては株主総会での議決を経る必要があり、経営者が自由に決められるわけではありません。そのため、経営の自由度は合同会社より低くなります。
一方で、合同会社の場合は出資者と経営者が同じであるため、株式会社のように経営者以外の出資者の賛同や承認を得る必要はありません。所有と経営が分離されていない分、経営の自由度は株式会社より高くなります。
信用度
株式会社は、決算公告が会社法で義務付けられていて情報開示が行われるなど、法律上守られなければいけないルールが多い分、社会的な信用度は合同会社よりも高くなります。
社会的な信用度が高いほうが、金融機関からの借入れや取引先との交渉、人材募集など、事業運営にあたって有利に働く可能性があります。
株式会社と合同会社のメリット・デメリット
前述の株式会社と合同会社の違いを踏まえ、両者のメリット・デメリットとして以下のような点が挙げられます。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
デメリット | ・合同会社よりも設立に費用や手間がかかる ・決算公告の手間がかかる | ・株式会社よりも信用度や知名度が低く資金調達がしづらい ・出資者同士で意見対立があると意思決定が困難になる場合がある |
メリット | ・合同会社よりも信用度や知名度が高く資金調達がしやすい ・上場による資金調達が可能 | ・株式会社よりも設立費用を抑えられる ・所有と経営が一致しているため迅速な意思決定が可能 ・決算公告の義務がない |
株式会社は信用度の高さや資金調達のしやすさなどがメリットではあるものの、会社設立費用の高さや決算公告の手間がデメリットです。
合同会社は、出資者が事業経営を行うので意思決定を迅速に行えます。しかし、株式会社と違って合同会社では出資割合に関係なく出資者一人につき一議決権を持つため、出資者の意見が対立すると意思決定が困難になる場合がある点に注意が必要です。
出資者の数が偶数の合同会社では、賛成と反対が同数になってしまい、会社としての意思決定ができなくなるケースもあります。
株式会社と合同会社はどちらがおすすめ?会社設立時の決め方
以上の点をまとめると、株式会社と合同会社それぞれがおすすめの人は以下のとおりです。
株式会社が適しているケース
- 資金調達が必要で社会的な信用度を重視する
- 将来事業拡大による資金調達の可能性や上場の可能性がある
合同会社が適しているケース
- 設立費用を抑えたい
- 会社名を出さなくても取引が成立する
- 小規模のビジネスで資金調達を必要としない
出資者が出資した額の資金で事業を運営でき、資金調達の必要がない小規模なビジネスであれば、合同会社であっても問題なく事業を継続できるでしょう。
一方で、将来的に事業を拡大する可能性があり、増資や金融機関からの借入れなど資金調達をする可能性があるなら、社会的な信用度が高い株式会社がおすすめです。
最初は合同会社で設立して、途中で合同会社から株式会社に変更する方法もありますが、会社形態を変更する際に手続きの手間や費用がかかります。
合同会社から株式会社に変更する方法について詳しく知りたい方は、別記事「自分一人で合同会社を設立するには?用意する書類から必要手続きまで解説」をご覧ください。
まとめ
会社を設立する際には、事業の内容や規模などを踏まえて会社形態を選ぶことが重要です。日本で最も多い会社形態は株式会社ですが、合同会社で設立するケースも見られます。
株式会社と合同会社では、設立費用や決算公告義務の有無、経営の自由度、社会的な信用度などで違いがあり、いずれもメリットとデメリットがあります。両者の違いを理解したうえで会社形態を選択しましょう。適切な会社形態を選ぶことで、会社設立後のスムーズな事業運営を実現でき、事業の安定や拡大の可能性を高めることにつながります。
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監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
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