法人とは、日本の法律で組織や団体が、法的な存在として認められた形式です。
法人には、大きく「営利目的の私法人」「非営利目的の私法人」「公法人」の3つに分かれます。法人化(法人成り)を検討する際には、まず法人の定義を把握し、メリットやデメリットを理解するのが重要です。
本記事では、法人の定義から種類、法人化するメリットとデメリットについて解説します。
目次
法人とは?
法人とは、法人とは「法律によって人と同じ権利や義務を認められた組織」のことを指します。
人が個人として社会での取引・売買や契約などの義務を負っているのと同様に、法人は団体・組織として同じ法的な義務を負うことを認められた存在です。
法人は大きく分けて3つのカテゴリーに分類できます。一般的には、株式会社やNPO法人などの法人形態ですが、特殊法人や合資会社などの法人形態も存在しています。
会社や企業との違い
法人は、会社や企業と同意に捉えられますが、実際の意味はそれぞれ異なります。
会社は、株式会社や合同会社のように会社法の上で法人登録を行い、営利目的で活動している法人のことを指します。
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一方で企業は、経済活動を行っている個人・団体の全てを指します。法人かどうかは問われていないため、法人も個人事業主も同じ企業であることに変わりありません。
個人事業主との違い
法人化した企業は、もとは個人事業主から法人化した場合がほとんどです。法人と個人事業主では、主に以下の5つが異なります。
個人事業主と法人の違い
- 開業や法人化に伴う手続き
- 手続きや事業にかかる費用
- 税金の種類
- 経費にできる範囲
- 社会的信用度
それぞれの具体的な違いに関する内容や、個人事業主のメリットなどについては以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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法人化(法人成り)するメリット・デメリット
法人化(法人成り)すると、個人事業主では得られないメリットが得られます。しかし一方では、法人ならではのデメリットも存在します。
法人化(法人成り)するメリット
法人化(法人成り)をするメリットには、主に以下のようなものがあります。法人化のメリットを正しく理解し、自分たちの組織が法人化するべきかどうか判断しましょう。
法人化するメリット
- 社会的な信用度が高まる
- 金融機関からの融資など資金調達がしやすい
- 人材確保がしやすくなる
- 経費として扱える範囲が広いなど節税ができる
- 決算日を自由に設定できる
社会的な信用度が高まる
法人化すると、個人事業主やフリーランスに比べて社会的な信用度が向上します。特に大手企業の場合は、個人事業主とは取引ではなく、法人との取引を行うケースが少なくありません。
法人化により、所在地・商号・資本金などの情報が公開されるため、企業としての実態が明確化されます。そのため、サービスを利用する顧客や取引を検討している企業や顧客に対しても安心を与えることが可能です。
金融機関からの融資など資金調達がしやすい
社会的信用度が高まることにより、法人は銀行などの金融機関から融資を受けやすくなります。また、株式会社であれば株式を発行が可能となるため、資金調達もスムーズになるでしょう。
個人事業主でも金融機関からの融資は受けられますが、法人としての信用度が向上することで、融資を受けられる金融機関の数や金額などが向上します。
優秀な人材確保と安定雇用が実現できる
労働者は、安定した正規雇用を求める傾向があり、求職者も法人からの雇用を希望する方が多いでしょう。そのため、法人化することで人材の集まりやすさが大きく変わってきます。
また、福利厚生や社会保険制度を整えることで、より優秀な人材の確保が実現できます。
節税や経費の広域な扱いが可能になる
法人での節税は、法人化することで役員報酬を経費として扱えることが、メリットです。また、法人カードの年会費・福利厚生費・法人名義での車の購入なども経費として計上できるため、節税に大きく貢献します。
決算日を柔軟に設定できる
法人には、柔軟な決算日の設定ができるメリットがあります。個人事業主の場合は、事業年度が1月1日〜12月31日までと決まっていますが、法人ではそのような決まりがありません。
そのため、繁忙期と決算期をずらすことで、業務の平準化が可能になります。たとえば、6月が閑散期の法人であれば、事業年度を7月1日〜6月30日までとすることで、6月を決算期に設定できます。
法人化(法人成り)するデメリット
法人化にはメリットがある一方で、一部以下のようなデメリットも考えられます。メリットとデメリットの両側面をしっかりと検討することが、法人化のプロセスにおいて重要です。
法人化のデメリット
- 法人化する際に費用が発生する
- 社会保険への加入義務が発生する
- 赤字でも税金を支払わなければいけない
法人化する際に費用が発生する
個人事業主が開業する際は、費用は一切発生せず、無料で手続きができます。しかし法人化は、無料で行うことはできません。法人化に伴い発生する費用は、主に以下のとおりです。
法人化で発生する費用
- 定款用収入印紙代
- 定款認証手数料
- 謄本手数料
- 登録免許税
- 資本金
費用額は法人の形態によって異なりますが、最低でも10〜25万円ほどは必要になります。
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社会保険への加入義務が発生する
法人化(法人成り)すると、たとえ社長1人の場合だとしても、以下のような社会保険への加入が義務化されます。
社会保険の加入義務
- 労働者災害補償保険
- 雇用保険
- 厚生年金保険
- 健康保険
- 介護保険
従業員を雇用した場合は保険料の負担額はさらに増加するため、費用面でのデメリットは大きい場合があります。
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赤字でも税金を支払わなければいけない
個人事業主の場合、事業が赤字であれば支払う税金は発生しません。しかし法人では、赤字であっても法人住民税の均等割が発生します。
均等割とは、法人の所在地に対して固定で発生する税金で、毎年赤字か黒字に関わらず支払いの義務が生じます。均等割の金額は各自治体によって異なるため、法人化の前に管轄となる自治体の情報を確認しましょう。
法人の主な種類は全3種類
法人の主な種類は、以下の3種類に分類されます。
- 私法人(営利団体)
- 私法人(非営利団体)
- 公法人
上記が主な法人の形態ですが、さらに細かく12種類に分かれます。各法人の特性や違いを確認しましょう。
私法人(営利団体)
私法人とは、国家や公共団体の権力の影響を受けない法人のこと。その中でも営利団体の私法人は、経済的な利益の獲得を目的としています。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社・合名会社
- 士業に関する法人
株式会社
株式会社は、株式の発行により資金を集めて作られる会社で、法人の代表的な形態の一つです。株式会社の特徴は、出資者と経営者が異なるという点です。
また株式会社における、株主とは出資者のことを指します。株主は株主総会を開き、選ばれた人物が株式会社の経営者となり事業を運営します。これが株式会社特有の「所有と経営の分離」です。
また、株式会社の責任の範囲は有限責任で、出資者は出資した範囲のみ責任を負います。そのため、出資が受けやすいというメリットも株式会社の大きな特徴です。
freeeもfreee株式会社によって運営されているサービスで、世の中の多くの企業は株式会社として法人化をしています。
その他の設立費用やメリットなどに関しては、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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株式会社とは?株式会社のしくみと設立するメリット・デメリットをわかりやすく解説
合同会社
合同会社とは、株式会社とは異なり出資者と経営者が同一の会社形態です。設立費用が比較的低く抑えられるので、ランニングコストも株式会社に比べて軽減されます。そのため合同会社は、小規模な事業やBtoCの事業を行う会社に適しています。
また合同会社の設立には、公証人の認証が不要で、最短で4〜5日程度で法人化(法人成り)が可能です。このような迅速に法人化できるのが、合同会社のメリットと言えるでしょう。
また合同会社の主な例には、Apple Japan合同会社やGoogle合同会社があります。
合同会社の詳しいメリットやデメリット、設立費用などに関しては以下の記事で詳しく確認してみてください。
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合資会社・合名会社
合資会社と合名会社は基本的に同じような会社形態ですが、唯一の違いは責任の範囲です。合資会社は、事業を行う無限責任社員と出資する有限責任社員からなる一方で、合名会社は出資者全員が無限責任を負います。
合同会社は、倒産した場合のリスクが非常に高いため、最近ではあまり設立されていません。主な例としては、合資会社八丁味噌や合名会社安田保善社などがあります。
士業に関連する法人
士業に関連する法人とは、弁護士や税理士などが経済利益を目的にして活動するための法人です。弁護士法人や税理士法人も営利団体の私法人として、士業に関連する法人の一つにあたります。
私法人(非営利団体)
私法人(非営利団体)は、経済的な利益獲得を目的としていない私法人です。非営利団体の私法人には、以下の4種類があります。
私法人(非営利団体)の種類
- 一般社団法人
- NPO法人
- 一般財団法人
- 社会福祉法人
一般社団法人
一般社団法人は、利益ではない共通の目的を持った人が集まった団体です。基本的には非営利ではありますが、利益を出すことに対して制限をかけられてはいないため、利益事業や公営事業を行うことも許可されています。
同窓会や自治体なども一般社団法人の一つではありますが、大きな組織の例には一般社団法人日本損害保険協会や、日本音楽著作権協会(JASRAC)などがあります。
NPO法人
NPO法人とは「特定非営利活動法人」のことで、Non-Profit Organizationの頭文字を取り名付けられた法人です。ボランティアを始めとした教育や福祉活動などを行い、公益につながる活動に取り組んでいます。
大きな特徴は、設立するにあたって登録免許税や資本金が必要ないという点で、少額での法人化が可能です。公益財団法人日本ユニセフ協会や国境なき医師団日本などが、NPO法人の主な例として挙げられます。
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一般財団法人
一般財団法人は、財産の運用や維持を目的とした非営利団体の法人です。設立するには条件があり、保有財産が300万円以上で、理事3名・評議員3名・監事1名が必要になります。
一般財団法人と株式会社などの営利団体とでは、利益の分配の可否において大きな違いがあり、株式会社が株主に対して配当金を支払えることに対し、一般財団法人はこのような分配ができません。
そんな一般財団法人の主な例には、日本財団や笹川平和財団など、奨学金や国際活動に貢献する法人が挙げられます。
社会福祉法人
社会福祉法人は社会福祉事業を行うことを目的とする法人で、社会福祉法の規定に基づいて、所轄庁の認可を受けることで設立されます。非営利団体で公益性が高いことが特徴で、保育所・更生施設・特別養護老人ホームの運営などの事業を行っています。
社会法人信和会や社会福祉法人聖隷福祉事業団など、〜会や〜団などの名称がつけられることが一般的です。
公法人(公共団体)
公法人は私法人とは異なり、国家の下に国家目的を遂行するため設立される法人です。別の言い方では公共団体とも呼ばれ、以下の4種類に分かれます。
公法人の種類
- 地方公共団体
- 特殊法人
- 独立行政法人
- 公庫
地方公共団体
地方公共団体は、地方自治法により認められた公法人の一つで、地域の統制活動を行います。別名では「地方政府」と呼ばれるケースもあり、各都道府県や市町村の身近な役割を担う団体です。
特殊法人
特殊法人は、国が担うべき事業を企業経営として運営していくことが、国によって定められた公法人です。
特殊法人の活動は、国の監督の下で行われますが基本的には経営の自主性が認められています。
主な例には、日本放送協会(NHK)・日本中央競馬会(JRA)・日本年金機構などが挙げられます。
独立行政法人
独立行政法人は、政府が一部の事業を担当するために設立され、独立した法人格を持つ公法人です。
独立行政法人も国の監督の下で事業を運営し、定期的に組織や業務の見直しを行う必要があります。
国民生活センターや国立研究開発法人などが、独立行政法人の代表的な例として挙げられます。
公庫
公庫とは、国の経済政策や社会政策を実現するために融資を行う政府の金融機関です。ただし、現在は沖縄振興開発金融公庫のみが、公庫として残っており、他の公庫は民営化が進められました。
また、日本公庫という法人が存在しますが、株の100%を国が保有しているという特殊な株式会社です。
まとめ
法人は「営利目的の私法人」「非営利目的の私法人」「公法人」と、大きく3種類に分かれています。その中でも、各法人から主に4種類ずつの法人形態を持ち、現在は12種類の法人が存在しています。
一般的に知られる株式会社は、実は12種類ある法人の一つでしかありません。また、有名なNHKやJRFが実は公法人であるということも驚くべきところでしょう。法人化(法人成り)する際は、事業内容や目的に応じて適切な法人形態を検討するようにしてください。
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