監修 粟生 将之(あお まさゆき)
ビジネスプランとは、市場や競合などの外部要因や自社体制などの内部要因を考慮して、複合的な観点でまとめた事業計画のことです。社内外の関係者に対して事業に関する説明を行う際にも用いられます。
ビジネスプランの内容によって、株主や金融機関、取引先などの利害関係者による評価・判断が変わることも十分にあり得ます。特に事業を始めたばかりで実績のない企業にとっては、評価を受ける際の重要な要素だと考えるべきです。
本記事ではビジネスプランの定義や立て方、作成方法などを解説します。
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目次
ビジネスプランとは
ビジネスプランとは、ビジネス目標を達成するための計画を、ビジネスを取り巻く環境、商品サービスなどの多様な視点から網羅的にまとめたものです。
J-Net21では、ビジネスプランの役割を以下の3つに整理しています。
ビジネスプランの役割
- 対外的な説明資料
- 社内向け・自分向けの管理資料
- 事業を始める際の「始めの一歩」
出典:J-Net21「ビジネスプランに必要なことは何か」
ビジネスプランは自社の利害関係者への説明に用いられます。そのため今後の事業目標や課題をどう達成していくか(未来の事柄)だけでなく、事業に信憑性を持たせるためにこれまでの実績や取り組み(過去・現在の事柄)についても言及する必要があります。
商品やサービスの紹介はもちろん、目標とする収益の水準や収益を上げる方法についても説明しなければなりません。まとめられたビジネスプランを活用することで、取引先の開拓などが見込めます。
ビジネスプランが必要な理由
ビジネスプランが必要となる理由は「事業の課題を洗い出し、考えをまとめるため」です。プランに盛り込むべき項目はおおむね決まっています。項目に沿って検討していけば、個別戦略の検討段階では見えてなかった課題が見えてくるため、その対策を織り込むことができます。
たとえば、いかに素晴らしい商品・サービスだったとしても、ターゲットが曖昧で顧客にどうリーチするのかが検討されていなければ売上を達成できる見込みが想定できません。また顧客のニーズや競合状況を正しく把握できていなければ、その商品・サービスを適切にマーケティングすることも難しいでしょう。
戦略は個別に最適化しても十分機能しません。全体的な整合性をビジネスプランでチェックし、より成功に向けたプランにブラッシュアップしていきましょう。
ビジネスプランを活用する場面
ビジネスプランは、以下のような書類・資料にも活用できます。
ビジネスプランを活用できる資料
- 事業計画書
- 株主総会資料
- 金融機関や投資家などへの説明資料
- 社員との意思統一のための資料(会社メッセージ、社長メッセージなど)
事業の最初の一歩としてアイデアを明確にするだけでなく、自社について理解してもらうため、相手に応じて内容や分量を変えて活用するとよいでしょう。
ビジネスプランと事業計画書の違いとは
ビジネスプランと事業計画書の違いは、主に「数字の入れ込み度合い」です。
ビジネスプランは、社内外の関係者に事業内容を説明することを目的とした資料です。必要がなければ資金計画や収支計画などの具体的な数値は記載していなくても問題ありません。
一方で事業計画書は事業を実現させるための具体的な計画であり、事業内容や目標に加えて必要な資金や売上、収益見込みなどを詳細な金額にして記載します。
つまり、ビジネスプランに財務面の情報をプラスして具体的な数字まで記載したものが事業計画書だといえるのです。
ビジネスプラン | 事業計画書 | |
---|---|---|
内容 | 事業内容 課題 解決方法 商品・サービスの詳細 顧客情報 競合分析 など | ビジネスプラン + 財務計画 |
【関連記事】
事業計画書の書き方を項目別に徹底解説!事業目的や作成のタイミングについてもまとめました
ビジネスプランの立て方
ビジネスプランを作るにあたっては、まず市場・競合・自社の環境分析や、ターゲット・販売方法に関する想定が必要です。
順序立てて作成していくことで、抜け漏れなく項目を確認できるだけでなく、利害関係者に分かりやすく説明できるようになります。
環境(市場・競合・自社)分析を行う
ビジネスプランを立てる際に、まずビジネスを取り巻く環境の分析を行います。環境は大きく「市場」「競合」「自社」の3つに分けられます。
市場分析
マーケティング用語でいう「市場」は自社の商品やサービスを提供する場(マーケット)や顧客のことです。市場分析は、その業界や周辺情報を調査分析することをいいます。
地域型店舗であれば、店舗を構える地域の周辺住民の人数や属性、家族構成などを地方自治体が公開しているデータから確認できます。インターネットを利用した事業であっても、市場の大きさは業界に関する各種統計からある程度は把握できるでしょう。
一定の市場規模が見込まれるなら、想定した売上を達成できる可能性が高まり、ビジネスを成立させられると判断できます。
競合分析
必ずしも同じ商品・サービスを提供していなくとも、自社が満たそうとしている顧客ニーズに対応しているものがあれば競合となり得ます。
競合分析では、それら競合企業が市場に対してどのようにアプローチしているのか、その結果どれほど売上が上がっているのかを分析します。
成功している企業のホームページを訪れたり、実際に商品・サービスを利用して差別化を図ったりするなど、少しでも多く情報を集めて自社に活かしましょう。
自社分析
自社分析では、自社の商品・サービスが提供する価値、特徴、強みなどを分析します。
すでに顧客から支持を得られている「自社商品・サービスの強みや良さ」などがあれば、それも整理して参考にしていきましょう。
環境分析に有効な手法「SWOT分析」
分析した市場・競合・自社環境を整理して、戦略を構築するには、「SWOT分析」と呼ばれる手法が効果的です。SWOT分析をすることで自社の立ち位置を確認でき、事業の改善点や将来的なリスクなどの発見にも役立ちます。
「SWOT」とは、以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。
SWOT分析の4つの要素
- Strength(強み):自社や商品、サービスの長所や魅力
- Weakness(弱み):自社や商品、サービスの短所や苦手なこと
- Opportunity(機会):自社や商品、サービスにとってプラスに働く外部環境
- Threat(脅威):自社や商品、サービスにとってマイナスに働く外部環境
自社の内部環境をS(強み)とW(弱み)に分け、市場・競合の外部環境をO(機会)とT(脅威)に分類します。戦略を構築していくためには、特に「いかにして、S(強み)をO(機会)に適合させていくか」を検討することが重要です。
ターゲットと販売方法を決める
環境分析の後、ターゲットと販売方法を決めます。商品やサービスのターゲットについて、以下のようにカテゴリー別に属性を決めます。
ターゲット属性の例
- 年齢
- 性別
- 職業
- 年収
- 地域
想定したターゲットに合わせて、広告戦略や販売方法を設定します。
属性の分析によってターゲットの行動パターンに合わせた広告戦略を取ることができれば、想定した売上を実現できる可能性が高まります。
広告戦略には、さまざまな選択肢があります。飛び込み営業やチラシ配りなどのオフラインの取り組みや、Web広告やSNS運用などといったオンラインの取り組みの中から、事業やターゲットごとに適した方法を選ぶことが重要です。
ビジネスプランを作成する際に盛り込むべき内容
ビジネスプランは利害関係者に自社の事業を伝えるためのものです。今後の取引などに関わることも考えられるため、分かりやすく魅力的に伝えることが求められます。ビジネスプランに主に盛り込むべき内容について解説します。
事業要約(サマリー)
事業要約(サマリー)は、ビジネスプランの冒頭に盛り込むべき項目です。事業概要を簡潔にまとめて、読み手がビジネスプランの概要を端的に把握できるようにします。
多忙な投資家の場合、事業要約を読んだ段階で全体を読むべきか、投資に値するかなどを判断することもあります。事業要約で興味を持たなければ、以降のページが読まれない場合もあるでしょう。
そのため事業要約は非常に重要であり、シンプルにまとめつつも読み手の印象に残す工夫が求められます。
商品・サービス内容とターゲット
商品やサービスの内容、ターゲットとする市場や顧客ニーズについても、ビジネスプランでは明確に示すべきです。どのような商品・サービスを誰に提供し、対価を得るのかを示すことで、ビジネスとして成立するかどうかの判断材料となります。
競合状況と自社の強み
環境分析で明らかにした競合状況を記載していきます。
競合と比較して、自社の商品・サービスにどういった強みがあるのかも明確に記載しましょう。商品作りの技術力やこれまで提供してきたサービスの実績なども強みとなり得ます。
体制・役割
ビジネスプラン自体を実施するために、必要な体制が構築できることを記載します。
また、スタッフの経歴やバックグラウンドなどに対外的な価値が高い要素があれば、あわせて記載しましょう。
ステークホルダー
ビジネスは自社のみでは完結しません。自社や顧客だけではなく、商品仕入れ先、外部委託先などビジネスに関係する先(ステークホルダー)を挙げます。
ビジネス遂行のために必要な自社以外の体制があり、問題なく稼働できることを示すための情報です。
事業展開の計画
ビジネスプランの内容には、事業展開の計画も欠かせません。商品・サービスの広告戦略や販売場所、生産体制、必要な人員などの戦略面について、実現可能なものをまとめます。また、受注見込みや実績があれば記載するのが望ましいでしょう。
ビジネスプランや事業計画書の作成方法については、freeeの「eBook(事業計画書の作り方)」をぜひご利用ください。事業計画書をまとめるポイントや財務計画の項目、資金調達方法などを無料でご確認いただけます。詳しくは、こちらからダウンロードが可能です。
ビジネスプラン作成後は効果検証が必要
ビジネスプランは、作成して終了するものではありません。実際に効果的な事業展開ができているのか、確認する必要があります。商品やサービスの利用者の意見をヒアリングし、課題について検証します。
また、競合分析や市場調査も定期的に行い、差別化ポイントの強化や広告戦略の改善などを行っていくべきです。
ビジネスプランで大切な要素
ビジネスプランを作成するうえでは「事業の魅力」「経営者の魅力」「商品やサービスの魅力」という3つの要素が明確だと効果的です。
プランを見る人に事業の素晴らしさを伝えて興味を持ってもらうためには、これらの要素が欠かせません。また、それぞれの魅力をまとめることは、自分たちがビジネスプランを考えるにあたって貴重な材料となるでしょう。
事業の魅力
ビジネスプランの要素として最も重要なのは、事業の魅力について語ることです。事業の魅力では、以下の3つの側面を解説します。
事業の魅力として説明するべき3つの側面
- 市場性:どんな商品やサービスを誰に提供するのか、事業の規模
- 収益性:必要な資金、どのくらい収益が見込めるか
- 発展性:地域や国内外での成長性
それぞれを分かりやすくまとめて、魅力のある事業だと伝えましょう。
経営者の魅力
ビジネスプランでは、経営者の魅力についても示すべきです。経営陣の経験や知識、能力、人員、適性などを伝えて、事業を発展させる見込みがあることを示します。
また、ビジョンやミッションについても盛り込み、成し遂げたいことや想いについてもあわせて伝えるとよりイメージを共有できるでしょう。
商品やサービスの魅力
商品の性能やサービスの付加価値など、競合他社と差別化を図れたり、競争力を発揮できたりするポイントを明確に示すべきです。
また、参入障壁の高低についても明確にできるとよいでしょう。
まとめ
ビジネスプランとは、ビジネス目標を達成するための計画を、取り巻く環境、商品サービスなどさまざまな観点からまとめたものです。事業の内容や展望について、社内外の関係者に説明することにも用いられます。
事業を始めるにあたって、ビジネスプランの出来によって融資や投資の可否が決まることも十分に考えられます。freeeではビジネスプラン・事業計画書の作成支援のため「eBook(事業計画書の作り方)」を無料で提供しています。よりよいビジネスプラン作成のためにぜひご活用ください。
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よくある質問
ビジネスプランとは何ですか?
ビジネスプランとは、ビジネス目標を達成するための計画を、さまざまな外部要因・内部要因に鑑みて複合的な観点でまとめたものです。事業計画書の作成や株主総会の資料、金融機関や投資家への説明資料など、多様な局面での活用が想定されます。
詳しくは、記事内「ビジネスプランとは」をご覧ください。
ビジネスプランの書き方は?
ビジネスプランには、事業要約や商品・サービス内容とターゲット、競合状況と自社の強みを盛り込みましょう。また、そのプランを遂行できる体制・役割、ステークホルダーとの関係性、そして事業展開の計画についても示すことが基本です。
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詳しくは、記事内「ビジネスプランを作成する際に盛り込むべき内容」をご覧ください。
監修 粟生 将之
中小企業診断士・2級ファイナンシャルプランニング技能士。平日昼間は民間企業に勤務。事業企画や人事を経験した後、現在はバックオフィス改革の一環でグループ企業内のシェアードサービスセンターの構築に従事。平日夜間、休日に中小企業診断士としてコンサルティング、執筆活動を行っている。