監修 米澤 潤平
経営者とは、会社の組織運営と事業の成長・発展について責任を負う人物のことです。
経営者は主に経営に関する戦略や計画の策定・意思決定の役割を担います。会社規模や事業フェーズによっては、人事採用や資金繰りなども経営者自ら行うケースがあるでしょう。
経営者を目指すのであれば、求められる知識や資格、資質について理解しておかなければなりません。
本記事では、経営者の役割や仕事内容、経営者に求められるもの、経営者になるための手段などを解説します。
目次
経営者の役割・仕事内容とは
経営者とは、簡単にいうと企業を経営する人のことです。経営者には、一般的に代表取締役社長や代表取締役CEO(最高経営責任者)などの呼称があります。
経営者の役割は、企業の経営方針や経営計画を立案し、要所で意思決定を行って最終的な責任を持つことです。また、自社のビジネスを通じて社会に価値を提供すること、その売上によって従業員の雇用を守ることも経営者の重要な役割といえます。
経営者の仕事内容は会社規模や事業フェーズによって異なりますが、主に以下のような業務が挙げられます。
経営者として行う業務内容例
- 経営方針の決定
- 事業の推進
- 資金調達
- M&A
- 従業員の雇用や評価、育成
- 従業員が働く環境作り
- 営業活動 など
経営者になるには
経営者になるために必要な知識
経営者に必要な知識は、明確に定義されているわけではありません。一般的には、以下の4大経営資源についての知識を持ち合わせていることが望ましいとされています。
- ヒト(組織・人事・リーダーシップ)
- モノ(オペレーション)
- カネ(アカウンティング・ファイナンス)
- 情報
ヒト
「ヒト」に関する知識とは、組織や人事、リーダーシップなど人的資源に関する知識のことを指します。
「ヒト」は組織が保有する資源の中で最も重要であり、経営者には人材のマネジメントや育成についての知識が必要です。また経営者自身においても、会社の最高責任者として従業員に対して敬意を払い、育て導くためのリーダーシップも求められます。
モノ
「モノ」に関する知識とは、製造業であれば製品自体や製造設備など、企業が所有する物的資源すべてに関する知識のことです。
また、限られた物的資源を有効活用することが企業の利益最大化には欠かせないことから、製品やサービスに関するオペレーションの知識も重要といえます。
カネ
「カネ」に関する知識とは、企業が持つ資金や収益、投資などの財務的要素に関する知識のことです。
また、これには企業の経営状態や財政状態の把握、資金調達、資金管理、投資判断などを行うための知識も含まれます。企業が扱える資金には限りがあるため、効果的に活用する知識を身につけることが必要です。
情報
「情報」とは、企業が保有する無形財産全般に関する知識のことです。近年はテクノロジーの飛躍的な進歩によって、情報の活用の重要性がますます高まっています。
情報の具体例には、企業が持つ顧客リストや業務に関するノウハウ、市場の動向などのデータが挙げられます。
経営者が情報の収集や分析、活用を行う適切な方法を身につけておくことで、意思決定の精度やスピードの向上につながります。情報を扱ううえでは著作権や特許権、セキュリティなどに関する知識も蔑ろにできません。
経営者を目指すうえで役立つ資格
経営者となるために、必ず取得しなければならない資格はありません。MBA(経営学修士)を取らなくとも経営者になれます。
ただし、経営に役立つ知識や資格を持っておいて損はないでしょう。経営との関連性が高く、実務に役立つ資格としては、以下が挙げられます。
経営の実務に役立つ資格例
- 日商簿記検定
- 中小企業診断士
- ビジネスマネジャー検定
- 経営士
- マーケティング・ビジネス実務検定
- 企業経営アドバイザー
- メンタルヘルス・マネジメント検定
- ビジネス実務法務検定
上記のうち上から4つは、経営者を目指す方に特に取得をおすすめします。以下で、その理由を解説します。
日商簿記検定
日商簿記検定に取り組むことで、帳簿の管理や財務諸表の作成に役立つ知識を身につけられます。会社の経営状態を把握するときはもちろん、経理業務を自分自身でこなす場合にも役立てることが可能です。
簿記2級まで取得することで、一般的な企業経営に必要な商業簿記と工業簿記に関する知識を習得できます。
中小企業診断士
中小企業診断士は国家資格であり、中小企業が直面する経営課題に対応するための診断や助言を行う専門家です。
資格を取得する過程で経営コンサルタントとしての基礎的な能力や知識を身につけられるため、企業経営にも十分に活かせる資格といえます。
ビジネスマネジャー検定
ビジネスマネジャー検定は、企業の管理職が身につけておくべき基礎知識を問う検定試験です。
検定に挑戦することで、人材育成や事務管理など、管理職に求められる幅広い能力を学べます。
経営士
経営士とは、日本で最初に誕生した経営コンサルタント資格です。
経営士は、経営管理の実務経験5年以上を取得要件としています。そのため事業会社の経営管理部門やコンサルティングファームなどでキャリアを築いてきた人が、経営者を目指すにあたって知識の研鑽を望む場合におすすめの資格といえます。
経営者に求められる資質
では、経営者はどんな資質を持っている人が向いているのか、成功する経営者とはどのような人なのか、現役の経営者達の見解を見ていきましょう。
一般社団法人日本能率協会が、役員・経営幹部向け研修プログラムの受講者を対象に実施した意識調査によると、これからの経営者に求められる資質として以下の3つが挙げられました。
経営者に求められる資質
- 本質を見抜く力
- 変化への柔軟性
- イノベーションの気概
本質を見抜く力
玉石混交の情報が多く飛び交う現代においては、物事を表層だけで判断せず、本質を見抜く力が求められます。特に会社のトップである経営者が判断を見誤ると、ビジネスの衰退を招くだけでなく、従業員の雇用にも影響を及ぼすリスクがあります。
そのため経営者には、常に論理的思考や洞察力によって物事を多面的かつ客観的に捉え、解決策を導き出す能力がますます必要とされていると考えられます。
変化への柔軟性
先行きが不透明で予測不能な時代にビジネスを展開していくには、変化への柔軟性も欠かせません。コロナ禍における生活様式の変化が記憶に新しいように、安定的な基盤を築いているビジネスでも、時代の変化に適合できなければ急に立ち行かなくなってしまうこともあり得ます。
そうした場面では思い切って既存のビジネスを変化させたり、別のアイデアを取り入れたりする柔軟性が求められるといえるでしょう。
イノベーションの気概
少子高齢化による人口減少やGDP(国内総生産)の停滞が続く日本経済にとって、圧倒的な成長を促すイノベーションへの取り組みは非常に重要な課題のひとつです。
しかし、イノベーションは既存の枠組みから自然発生的に生まれるものではありません。企業がイノベーションを起こすには、イノベーションを起こす気概を持って行動を継続できるリーダーの存在が不可欠です。
経営者になるための手段
経営者になるための手段としては、主に以下の4つが考えられます。いずれも経営者になるルートが全く異なり、経営者としてのあり方も一様ではありません。自身の状況・理想と照らし合わせて選ぶ必要があります。
経営者になるための手段
- 起業
- フランチャイズ契約による独立
- 組織での昇格
- 事業承継
起業する
自分で新たな事業を立ち上げ、会社を設立することで経営者になれます。起業するには、以下の準備や手続きが必要です。
- 事業計画の策定
- 定款の作成
- 資金調達
- 設立登記申請
- 社会保険・労働保険の手続き など
起業の方法や手続きに関しては、別記事「起業するにはどうしたらいい?会社を起業する方法や手続きについてわかりやすく解説」で詳しく説明しているため、あわせてご覧ください。
フランチャイズ契約で独立する
フランチャイズ契約とは、本部事業者(フランチャイザー)が特定の商標や商号を使用する権利・物品販売・サービス提供や経営に対するノウハウなどを加盟者(フランチャイジー)に提供し、加盟者はその対価として一定の金銭を支払う仕組みです。
自分でイチから事業を立ち上げなくても、本部から経営ノウハウや商標の使用権などを提供してもらえるため、少ないリスクで事業を始められます。本部と加盟者は独立した事業者であり、フランチャイズ契約であっても独立した経営者として活躍可能です。
出典:中小企業庁「フランチャイズ事業を始めるにあたって」
組織で昇格する
現在の勤務先で評価を受けて昇格し、経営者を目指す方法もあります。大企業では非常に難しい方法ですが、中小企業であれば頑張り次第で経営者になれる可能性はあります。
国内企業の9割以上を占める中小企業では、会社の経営者とオーナーが同じですが、なかには経営者とオーナーが別のケースもあります。
たとえば、勤務先の株式等を保有していない従業員が昇格して経営者となった場合は、オーナーに雇われる「雇われ経営者」となります。
オーナーとは、その企業を所有する人のことであり、株式会社であれば株式の大半を保有している人のことを指します。
一方の雇われ経営者とは、オーナーに雇われて経営の役割を担う経営者のことです。経営者としての責務は担いますが、一般的にはオーナーの意向に背かない形で経営を行います。
雇われ社長は、会社の業績を伸ばす責務がありますが、大株主(所有者)ではないことから、業績悪化や倒産によって背負うリスクはオーナーよりも少ないといえます。また、企業の立ち上げや出資などを行う必要がない点も特徴です。
ただし、雇われ社長の経営者としての評価は会社の業績等により左右され、その結果が報酬に影響する点には留意しましょう。
事業承継する
事業承継とは、既存企業の後継者として、経営権や自社株などの財産権を引き継ぐことを指します。
少子高齢化の影響で、近年では後継者不足に悩まされる中小企業が少なくありません。以下に示した中小企業庁の統計からも明らかなように、全体の5~6割を占める中小企業が後継者不足に悩まされています。
出典:中小企業庁「中小企業白書 小規模企業白書 2023年度版」
一方で上記のデータからは、直近の2021年・2022年では後継者不在率が改善傾向にあるとの見方も可能です。
実際に独立行政法人中小企業基盤整備機構のニュースリリースによると、2022年度の事業承継・引継ぎ支援センターへの相談者数は22,361人と過去最高を記録しています。
また、第三者承継(M&A)の成約件数についても1,681件と過去最高を記録しており、第三者承継を含め、事業承継が進んでいると考えられます。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「令和4年度事業承継・引継ぎ支援事業の実績について」
まとめ
経営者とは、企業の経営をする人のことです。経営計画の立案や決定、資金繰り、従業員の採用・教育・人事など、経営者が担う役割は多岐にわたります。
経営者になる前に「ヒト・モノ・カネ・情報」に関する知識を身につけ、必要に応じて資格を取得することが望ましいといえます。経営者になるには起業以外にも複数の方法があり、近年では事業承継も増えています。
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監修 米澤 潤平
26歳のときに中小企業診断士、29歳のときに社会保険労務士、39歳のときに税理士資格を取得。コンサルティング会社に勤務する傍らで、税理士事務所を開業し、主に法人・個人からの税務相談や経営相談、決算・申告などのセミナー講師、会計や税務に関する執筆活動を中心に活動している。