取締役会とは、経営方針の決定や代表取締役の選任など、会社における重要事項を決定するための機関で、一部の会社を除き設置は任意です。
取締役会は株主総会で選任された3名以上の取締役が法的ルールのもとに集まり、経営方針を決定したり、代表取締役を解雇・選任したりする役割を担います。
本記事では、取締役会の役割や決議事項、設置義務のある会社、設置するメリットとデメリットについて詳しく解説します。
目次
取締役会とは
取締役会とは、経営方針の決定や代表取締役の選任など、重要事項を決定するために株式会社に設置される機関です。
設置自体は一部の会社を除き任意ですが、取締役会を設置するには3名以上の取締役を立てる必要があります。取締役会の設置義務がある会社については後述します。
また、取締役会の設置義務や職務などの細かな規定については会社法で定められているため、正しく理解する必要があります。
取締役について詳しく知りたい場合は、別記事「取締役とは何?主な役割や類似役員との違いなどをわかりやすく解説」をご確認ください。
取締役会と株主総会の違い
会社の重要事項を決定する機関として、取締役会のほかに株主総会が挙げられます。
取締役会を構成するのは3名以上の役員のみであり、株主総会のように株主の参加がないほか、決議事項や要件など以下のような違いがあります。
取締役会 | 株主総会 | |
---|---|---|
招集権者 | 取締役全員 | 代表取締役 |
招集手続き | 開催日1週間前までに実行 | 開催日2週間前までに実行 |
決議事項 | ・多額な借財 ・重要財産の処分、譲受け ・支店などの重要組織の設置 ・社債の募集などの重要事項 ・代表取締役の選定、解任 | ・会社の経営事項 ・取締役や監査役の選任、解任 ・役員報酬に関する事項 ・定款変更 |
決議要件 | 以下の要件を満たす必要あり ・定足数の要件:過半数の取締役の出席 ・賛成数の要件:出席した取締役の過半数の賛成 | ・普通決議 ・特別決議 ・特殊決議 |
議事録の 保管期限 | 10年 | 10年 |
取締役会を設置すると決議事項において、「経営に関する事項は株主総会、それ以外の事項は取締役会で行う」というように役割が分担されます。これを所有と経営の分離といいます。
取締役会の設置義務がある会社
取締役会の設置は基本的に任意ですが、会社法327条の定めに該当する以下の会社は取締役会を必ず設置しなければなりません。
取締役会の設置義務がある会社
- 公開会社
- 監査役会設置会社
- 監査等委員会設置会社
- 指名委員会等設置会社
上記の会社は、取締役3名以上と監査役1名以上を株主総会で選任します。
公開会社
公開会社とは、株式の譲渡による取得に対して承認を必要としない会社のことです。定款に譲渡制限がない旨を定めていれば、公開会社に該当します。
なお、公開会社と上場会社が同様の意味合いで捉えられることがありますが、会社法上の概念では意味が異なる点に注意しましょう。公開会社は必ずしも上場している必要はなく、株式の譲渡制限がない株式会社を指します。
監査役会設置会社
監査役会設置会社とは、監査役会を設置している会社のことを指し、日本における多くの上場会社が採用している組織形態です。
監査役会は3名以上の監査役で構成する必要があり、会計監査や取締役の業務監査といった権限を保有しています。そのため、取締役会とは異なる立場にあることに注意しましょう。
また、公開会社かつ大企業(資本金5億円以上もしくは負債額200億円以上)では監査役会の設置が義務付けられており、それ以外の会社の場合は設置が任意と定められています。
監査等委員会設置会社
監査等委員会設置会社とは、3名以上の取締役で構成される監査等委員会が設置されている会社です。
取締役を監査する役割があるため、構成メンバーの過半数は社外取締役でなければなりません。そのため、監査役会設置会社と比べると、より監査機能が強化されている組織形態といえます。
指名委員会等設置会社
指名委員会設置会社とは、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会が設置されている会社を指します。それぞれ3名以上の取締役で構成する必要があり、その過半数以上は社外取締役でなければなりません。
指名委員会等設置会社は、業務執行と監督が分離しており機動的な経営が見込めるとされていますが、広く浸透していないのが現状です。
取締役会の役割
取締役会の担う役割は、主に以下の3つです。
取締役会の役割
- 業務執行に関わる重要事項の決議
- 取締役が職務を執行しているかの監督
- 代表取締役の選定、解雇
業務執行に関わる重要事項の決議
業務執行とは、経営に関わる業務や事務処理のことです。業務執行の決定のような経営に関わる重要事項については、取締役会の権限がないと実行できません。
会社法では、以下の項目を取締役個人に委任できない業務と定めており、取締役会で承認を得る必要があります。
- 重要な財産の処分及び譲受け
- 多額の借財
- 支配人やその他重要な使用人の選任と解任
- 支店その他重要な組織の設置や変更、廃止
- 募集社債に関する事項として法務省令が定める事項の決定
- 「取締役の職務執行が法令や定款に適合することを確保するための体制」と「会社の業務適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」の整備
- 役員が任務や職務を怠って発生した損害賠償責任の免除
取締役が職務を執行しているかの監督
取締役会は、すべての取締役の職務を監督する役割も担います。取締役個人を常に監督するのは困難であるため、取締役は自らの執行状況について取締役会で報告しなければなりません。
具体的には、取締役会で決議した内容に沿って適正に業務を遂行できているか、日々の意思決定にミスがないかなどを判断します。
代表取締役の選定、解雇
代表取締役の選定や解雇も、取締役会が担う大きな役割です。
会社のトップである代表取締役が経営や業務に及ぼす影響は大きいため、取締役会は会社が正しく機能するように代表取締役を管理しなければなりません。
取締役会では代表取締役の解雇に加え、新たな代表取締役の選任も行います。その際には、出席した取締役の過半数以上の同意が必要です。
直接的な代表取締役の監督義務はありませんが、選定と解雇という2つの権限を持って、実質的に代表取締役を牽制・監督しているのが特徴です。
取締役会の開催頻度・開催方法
取締役会は、最低3ヶ月に1回以上の頻度で開催しなければなりません。さらに、開催する際には予定日の1週間前までに招集の通知を行わなければならず、公式的な場を設ける必要があります。
なお、取締役会の開催場所に制限はなく、オンラインでの開催でも問題ありません。
取締役会は開催の手間がかかる点で設置を敬遠されることもありますが、近年は以前よりもフレキシブルに対応できるようになってきています。オンラインで行う場合は、必ず会議に使用するツールやミーティングURLを招集通知に記載しましょう。
また、取締役会で決議した内容は、必ず議事録にまとめる必要があります。議事録には、出席した取締役・監査役の署名や押印を集め、以後10年間にわたって本店で保存することが義務付けられています。
取締役会について、何らかの事項を定款に記載している場合は、定款に従って開催する必要があるので事前に確認しておきましょう。
【関連記事】
会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項について詳しく解説
取締役会は書面決議でも可能
書面決議とは、実際に集まって取締役会を開催せず、書面上で決議事項を可決することです。これを会社法上では「取締役会の決議の省略」といい、みなし決議や決議省略と呼ばれることもあります。
書面決議は、急いで決議したい内容がある際に、迅速に可決できる点がメリットです。ただし、書面決議を行うにはあらかじめ定款に定めておく必要があり、可決するには監査役から異議が述べられないことが条件となります。
取締役会を設置するメリット
取締役会を設置する主なメリットとして、以下の2つが挙げられます。
取締役会を設置するメリット
- 会社の重要事項について迅速な意思決定ができる
- 取引先や金融機関などから信用を得やすくなる
会社の重要事項について迅速な意思決定ができる
取締役会を設置していない会社では、重要事項を決議できるのは年に1回の株主総会が一般的です。
しかし、取締役会を設置していれば最低でも3ヶ月に1回のペースで取締役会を開催するため、重要事項の決議が頻繁にできるようになります。そのため、株主総会を待つよりも早く意思決定ができ、企業経営はスムーズになるでしょう。
取引先や金融機関などから信用を得やすくなる
取締役会は、すべての取締役の職務を監督する立場にあります。独断行為を防ぎ、責務を適切に果たせるよう牽制するため、会社の対外的な信用を得やすくなるのが特徴です。
社会的信用を得ると、取引先だけでなく金融機関からの信用も高まり、融資が受けやすくなります。
取締役会を設置するデメリット
上述したように取締役会を設置するとメリットが大きいですが、デメリットについても理解しておきましょう。
取締役会を設置するデメリット
- 最低4名の役員を置かなければならない
- 年4回の開催が必要で手間がかかる
最低4名の役員を置かなければならない
取締役会を設置するには、取締役3名以上、監査役1名以上をおかなければなりません。
その分役員報酬を確保する必要性が生じるため、起業後間もない場合には、資金繰りを圧迫してしまう可能性があります。安定的な経営と利益の確保ができそうにない場合は、慎重に検討した方がよいでしょう。
また、取締役会は重要事項を扱う組織であるため、信頼できるメンバーを選出しなければなりません。経験が豊富であり、経営を任せられるほどの優秀な人材を確保できない場合には、実現は難しくなります。
年4回の開催が必要で手間がかかる
取締役会は、最低でも3ヶ月に1回の頻度の開催義務があり、その度に準備や議事録の作成、さらには10年間に及ぶ議事録の保管もしなければなりません。
業務負担がかかるだけでなく、その都度コストも発生するため、全体的な手間を見越した上で取締役会の設置を判断することが大切です。
上記のほかにも取締役会を設置することで、1人社長の会社よりも経営の自由度が下がるデメリットもあります。何を決議するにも出席者の過半数以上の賛成が必要になるため、取締役間で何度も話し合いを行わなければなりません。
まとめ
取締役会は、経営方針の決定や代表取締役・監査役の選任といった重要事項を決定する機関です。公開会社や監査役会設置会社など、会社法により設置が義務付けられている会社以外は設置は任意となっています。
取締役会を設置することで、対外的な信用の向上や迅速な意思決定など大きなメリットがあります。ただし、取締役会の開催における準備や役員の選任など手間がかかる点や、役員報酬の確保が必要になるので、設置するかは慎重に判断しましょう。
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