監修 司法書士法人TOTAL
起業して会社を作ったら、法人の銀行口座を作ることをおすすめします。会社を作ったにもかかわらず、取引用に個人用の口座を使っていれば、「どうして法人口座を使わないのだろう?」と、取引先に余計な疑念を抱かせてしまい、会社経営に悪影響を及ぼしかねません。ここでは法人口座を持つメリットと、作り方についてご紹介していきます。
・【法人口座】会社設立したら法人口座の開設はするべき?
会社設立の方法や事業開始前に必要な手続きについて知りたい方は以下の記事をご覧ください。
・【会社設立の流れ】準備から事業開始までに必要な手続きとは?
・【会社設立後の手続き】法人登記で終わりじゃない!事業開始までにやるべきこととは?
目次
法人口座とは何か?代表者個人名義の口座との違い
法人口座とは、金融機関の口座名義が会社名になっているものを指します。会社を作ったら必ず開設が必要という類いのもの(義務)ではないので、会社代表の個人名義の口座で取引きを行っても問題はありません。
ちなみに、法人と個人の権利や義務などの関係を区分けすることによって、取引先への信頼性を高めるのが法人制度のひとつの目的です。このとき、会社の財産と個人資産が混ざらないように取引口座を分けておかないと、取引先や税務署にいらぬ心配や詮索をされるおそれがあります。
また、融資の申込みや大口取引をするときに、個人事業主のままでは門前払いを受けたり、不利な契約条件を飲まざるをえない場面も出てきます。ただ会社を設立したのでなく、その会社名義の法人口座を持っていることで社会的信頼が高まり、さまざまな取引きがしやすくなりますので、なるべく早期に法人口座を開設したほうがいいことは確かでしょう。
法人口座を作るために準備すべきもの
以下は会社の法人口座を開設するために必要なものや書類の一例です。(金融機関によって必要書類が異なります。詳しくは各金融機関HPなどからご確認ください。)
- 会社の商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 会社の定款
- 代表者印(又は法人銀行印)
- 代表者印(又は法人銀行印)の印鑑証明書
- 代表者の身分証明書
- そのほか、会社の運営実態がわかる資料
ただし、これらの資料がそろっているだけで、必ず審査に通るとは限りません。
近年、法人口座の社会的信用性を逆手にとり、振り込め詐欺や投資勧誘詐欺などの犯罪に使われることが増えてきました。そのため、金融機関側も警戒を強めています。特に、新しく設立した法人の場合、運営の実態がない会社(ペーパーカンパニー)ではないかと疑われてしまうと、口座開設を断られてしまう可能性があるのです。
法人口座の開設を妨げる要素とは
具体的にどのような基準で口座開設の可否を判断しているかは、各金融機関の内規に関わることですから公開情報にはなっていません。しかし、次のような要件に該当する会社は、一般的に審査に通らないリスクが高くなります。
- 資本金の額が小さすぎる
- 固定電話がない
- 登録の住所がレンタルオフィス(バーチャルオフィス)などに間借りする形式となっている
- 公式サイトがない
- 顧客や取引先と交わされた契約書や領収書がない
- 事業の目的が曖昧
当然、審査基準は金融機関ごとに異なりますので、法人口座の開設が認められるために何が必要なのかは、ケースバイケースです。
また、メガバンクや都市銀行よりも、地方銀行や信用金庫、ネット銀行のほうが、法人口座を開設しやすい傾向があります。
例えば、IT系のベンチャー企業の場合、ネット銀行の法人口座でも取引先から違和感を持たれにくいといえるでしょう。逆に公的機関や大手企業が取引先にある場合は、都市銀行や地方銀行に口座を持っているほうがいいといえます。法人口座を開設する金融機関の選定は、ご自身の会社の業務内容や取引相手のことを考慮することも大切です。
法人口座の開設時に重要な登記事項証明書と印鑑証明書
法人口座の開設に必要な書類の中でも特に重要なのが、「登記事項証明書」と代表者印(又は法人銀行印)の「印鑑証明書」です。これらの取得方法をまとめました。
登記事項証明書
登記事項証明書はオンラインで取得することができます(以下の手順に従えば、比較的容易に取り寄せることが可能です)。なお、法務局に直接出向いて窓口で取得することもできますが、法務局は時期やタイミングによって混み合いますので、時間の節約を考えるとオンラインのほうが効率的です。
- まず、「ご利用環境の事前準備」を参照して、インターネット等の利用環境を整えます。
- その後、「請求書の作成・送信(かんたん証明書請求)」のページで説明されているように、登記事項証明書の請求書を作って送信します。
- 最後に、インターネットバンクやATMから手数料を納付します。納付方法は「手数料の納付」のページをご参照ください。
- 手数料の納付が確認されると、証明書が交付されます(送付してもらう方法と、法務局の窓口で受け取る方法を選べます)。
ちなみに、登記事項証明書は税務署にも提出する書類でもあり、複数の法人口座を作ることもあるでしょうから、何枚かまとめて取得しておくと効率的です。但し、証明書の提出先によっては,一定の期間内に発行された証明書を求められることがありますので、注意が必要です。
参考:登記ねっと「登記・供託オンライン申請システム」
印鑑証明書
電子定款や登記事項証明書を取り寄せるために、ICカードリーダライタなどの環境を整えた人は、印鑑証明書をオンライン申請で入手することができます。
申請の方法は「法務省:オンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について(商業・法人関係)」のページを参考にしてください。
オンライン申請をしない場合は、初めに「印鑑カード」を入手する必要があります。「法務省:印鑑カード交付申請書」のページから、印鑑カード交付申請書を手に入れ、法務局に郵送してください。その後、法務局に出向き、窓口で所定の料金を支払うと印鑑証明書が入手できます。登記事項証明書の交付と同様、こちらもオンラインで申請したほうが早いので、ICカードリーダライタなどの環境を整えておくといいでしょう。
法人口座の選び方
法人口座をどのように選ぶべきかについては、さまざまなポイントがあります。各金融機関の利用時間や月額料金などを以下の記事にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
会社設立をするなら法人口座の開設をおすすめします。法人口座を開設するメリットや審査落ちしないためのポイント、必要なものをわかりやすく解説します。...
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まとめ
設立した法人が、法人口座を持っていることは取引先から信用を得やすいという対外的なメリットに加え、収支を個人と切り分ける意味でも重要です。しかし、口座開設の際に金融機関が求める条件は厳しく、入念な準備をしておく必要があります。
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