会社で代表取締役や取締役といった役員を選任(選定)する際には、就任承諾書を作成します。また就任承諾書は、会社設立時や役員の変更時などに法務局へ提出する書類のひとつです。
しかし、就任承諾書は必ずしも作成が求められる書類ではありません。
本記事では、就任承諾書の概要と法務局への提出が必要もしくは不要となる状況について解説します。就任承諾書の作成方法や作成する際の注意点も載せているので、合わせてご確認ください。
目次
就任承諾書とは
就任承諾書は、会社役員が選任(代表取締役なら選定)された際に、役員本人がそれを承諾したと公に証明する書類のことです。
役員が新たに就任するときは、会社側がそのまま就任させるわけではなく、本人の承諾をもらったうえで就任が決まったと示さなくてはなりません。そのため、就任承諾書を作成してから役員に就任する決まりになっているのです。
また、会社手続きの際に法務局への提出書類として就任承諾書が求められるケースもあります。
就任承諾書が必要なタイミング
法務局での手続きで就任承諾書が必要になると先述しましたが、具体的にどのタイミングで提出が求められるのか確認しておきましょう。
会社設立時
就任承諾書は会社を設立するときに作成します。
会社の設立時には、「設立登記申請書」を法務局へ提出しなくてはなりません。登記には商号や住所、法人番号のほか役員の情報も載せるため、役員の就任承諾書をその確認書類として一緒に提出します。
役員の変更・就任時
会社を設立してから、役員が変わったり、新たに就任したりした際にも就任承諾書を作成しなくてはなりません。
役員が変更するタイミングとしては、既存の役員が任期を満了して別の役員が選任・選定されたときのほか、任期満了後に再度同じ役職に就く場合(重任)であっても当てはまります。
なお、役員の変更時には就任承諾書のほか、既存の役員が辞任した事実を証明する辞任届(死亡であれば死亡届や法定相続情報一覧図のコピー)といった書類も提出の対象です。
出典:法務局「株式会社役員変更登記申請書(辞任等により新たな役員(取締役)が就任した場合)」
就任承諾書を省略することができるタイミング
就任承諾書は提出が不要となるケースもあります。具体的には、役員候補者が就任を承諾した旨を株主総会の議事録へ記載したときです。
法律上、株主総会では総会の内容や決定事項を必ず議事録に残す決まりがあります。そのため、きちんと役員の就任について記録を残しておけば、役員本人が承諾したと判断でき、別途就任承諾書を用意しなくてもよくなるのです。
なお、承諾の記載をする際には、選任された役員の住所も記載します。また、議事録内には「就任承諾書は、株主総会議事録の記載を援用する。」の記載も忘れずに行いましょう。
出典:法務局「株式会社役員変更登記申請書(辞任等により新たな役員(取締役)が就任した場合)」
就任承諾書の書き方
就任承諾書を作成するうえで使用すべき所定のフォーマットは、特にありません。
ただし、以下5つの項目を必ず記載する決まりです。
また、承諾した旨を示す「私は、◯年◯月◯日開催の株主総会にて、貴社の取締役に選任されましたので、その就任を承諾いたします。」といった文言も合わせて入れます。
出典:法務局「株式会社役員変更登記申請書(辞任等により新たな役員(取締役)が就任した場合)」
(1)取締役に選任された日付
記載する日付は、役員(取締役)に選任された日です。
ただし、定款での選任については、選任の認証日ではなく、定款自体の作成日を記入します。また、設立時取締役選任決議書での選任についても、選任日ではなく決議書の日付を記載しましょう。
(2)選任された取締役の住所
役員(取締役)個人の住所を記入します。このときの住所は、本社の所在地ではなく、あくまでも取締役本人の住所です。
また、記載する際には印鑑証明書に登録されている通りの表記で、漏れなく記載しましょう。
よくある例として、番地や建物の号室を省略して「◯県◯市◯町1-2-3」と記載してしまうケースがありますが、これでは認められません。きちんと「◯県◯市◯町1丁目2番3号」と略さずに記載してください。
(3)選任された取締役の氏名
氏名の項目には、選任された役員の氏名を記載します。氏名も住所と同様に、印鑑証明書の登録通りに記載しましょう。
例として「齋藤」であれば、日頃社内や日常生活で「斎藤」と画数の少ない漢字に置き換えて使っている人は間違えて記載して(されて)しまう可能性もあるため、要注意です。
(4)定款に記載された会社名
就任承諾書は選任された役員の情報のほかに、会社名も記載します。
社名は定款に載っている通りの文言以外を記載すると、承認されません。具体的には、株式会社を(株)と省略したり、有限会社を(有)としたりする例が挙げられます。省略語を使わず、正確に記載しましょう。
(5)選任された取締役の押印
就任承諾書は法務局へ提出される手続き書類です。そのため、正式な情報を記載するほか、役員本人が押印して承認の事実があったと証明します。
押印は、役員(取締役)本人が印鑑登録をしている実印が求められるため、注意しましょう。また、書面に誤りがあった場合に備えて、書面上部に捨印も押しておくと安心です。
印鑑は実印が必要な場合と認印が認められる場合がある
就任承諾書の作成では、選任された役員本人の実印が必要だと解説しましたが、実印ではなく認印の押印で認められるケースもあります。
選任された役員の役職や状況次第では、以下のように実印の省略が可能です。
取締役の場合に使用する印鑑
実印の押印を省略できるのは、取締役会が設置された会社で取締役が新規に選任された場合と、任期満了した役員が再度同じ役職で就任する場合(重任するとき)です。
認印の対象となる取締役の新規選任(取締役会あり)では、認印で済ませられる代わりに取締役本人の確認書類を添付します。本人確認書類は、住民票(記載事項証明書)を市区町村で発行し、添付してください。
一方、取締役会が設置されていない会社で、新規に取締役を設置すると実印が求められる点に加えて、市区町村長の発行した印鑑証明書も一緒に提出しなくてはなりません。
重任に関しては、取締役会の設置は問わず、設置してもしていなくとも認印だけで認められます。印鑑証明書の添付もいりません。
代表取締役の場合に使用する印鑑
代表取締役が選任された際は、取締役会を設置していない会社で新規に選定された代表取締役と、重任で就任する代表取締役に限り実印の押印が不要です。
上記であれば、認印で就任承諾書を作成でき、本人確認書類や印鑑証明書の提出もいりません。ただし、いずれも取締役として事前に承認されている状態が望まれます。
一方で、取締役会の設置がある会社で新規に代表取締役が選定された際は、認印の使用は認められず、実印を押印しなくてはなりません。合わせて、市区町村長発行の印鑑証明書も添付して提出してください。
まとめ
就任承諾書は、会社内で役員が新規に選任されたり、変更されたりした際に作成する書類です。選任候補となっている人自身が就任を承認するために作成し、会社手続きの際に添付書類のひとつとして法務局へ提出します。
就任承諾書の書式は、決められた事項を記載すればフォーマットは特に問われないものの、押印は役職や状況によって実印・認印に分かれるため、注意しましょう。また、就任承諾書の作成がそもそも不要となるケースもあります。
就任承諾書の作成は、自社と選任候補者の状況を確認しながらミスのないよう進めましょう。
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