現在設立できる会社の種類は、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類です。2006年の会社法改正の以前は有限会社も設立可能でしたが、現在では設立できません。会社の種類によって設立費用や責任の範囲などが異なるため、事業の目的や規模感などにあわせて選ぶことが重要です。
本記事では、4種類の会社形態の特徴について、15項目で比較して紹介します。また、会社と法人の違いについても詳しく解説するので、法人設立の際の参考にしてください。
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目次
設立できる会社の種類と特徴
設立できる会社には、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類があります。これらの大きな違いは、責任の範囲が有限責任であるか無限責任であるかということです。細かく言えば、会社の出資者が有限責任社員で構成されているか、無限責任社員で構成されているかの違いです。
有限責任とは、会社の倒産等によって負債が生じた際、出資者が負う責任は出資額を限度とした範囲になることを指します。一方で無限責任とは、会社に生じた負債等の支払いは、出資額に関係なくすべて出資者が責任を負うということです。
なお、ここで言う出資者は会社法にて「社員」とされており、一般的な従業員とは異なります。それぞれの会社の主な違いや特徴については、以下の表にまとめました。
株式会社 | 合同会社 | 合資会社 | 合名会社 | |
---|---|---|---|---|
会社の種類 | 株式 | 持分 | 持分 | 持分 |
資本金 | 資本金1円以上〜 | 資本金1円以上〜 | 規定なし | 規定なし |
出資者 (呼称) | 1名以上 (株主) | 1名以上 (社員) | 2名以上 (社員) | 2名以上 (社員) |
出資者と経営者 | 分離 | 同一 | 同一 (有限責任社員と無限責任社員で分離する) | 同一 |
責任の範囲 | 有限責任 | 有限責任 | 有限責任 | 無限責任 |
設立費用 | 25万円〜 | 10万円〜 | 6万円〜 | 6万円〜 |
最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員の過半数 | 社員の過半数 | 社員の過半数 |
議決権 | 一株一議決権 | 一人一議決権 | 一人一議決権 | 一人一議決権 |
決算公告義務 | 有 | 無 | 無 | 無 |
登記書類 | 定款 | 定款 | 定款 | 定款 |
定款の認証 | 必要 | 不要 | 不要 | 不要 |
上場 | できる | できない | できない | できない |
役員の任期 | 規定あり | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
利益の配分 | 出資比率による | 自由 | 自由 | 自由 |
設立件数 | 高い (92,371件) | 普通 (37,127件) | 低い (30件) | 低い (20件) |
※設立件数は2022年次のもの(出典:e-Stat「登記統計 商業・法人商業・法人登記」)
このように、各項目で共通点もありますが、それぞれ違いも多くあります。以下で会社の種類別に特徴を解説していくので、メリット・デメリットも含め確認してみてください。
株式会社
株式会社は、株式を発行して資金を集めて作られる「会社」の代表的な形態です。
株式会社の1番の特徴は、出資者と経営者が異なることです。出資者は株主と呼ばれ、会社を所有するオーナーに位置付けられます。その株主たちで「株主総会」を開き、選ばれた人が経営者として実際に事業を運営する仕組みです。これを「所有と経営の分離」といいます。
出資者の責任範囲は有限責任で、出資した範囲のみでビジネスに対して責任を負うため、外部から投資されやすくなります。
また、株式会社では毎年の決算公告を行うことが必要です。これは、株主や債権者に対し、会社の経営状況や財務状況を明らかにして、不測の事態の回避や取引の安全を確保することを目的としています。
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければなりません。
出典:G-GOV法令検索「会社法 第440条第1項」
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株式会社のメリット
株式会社には主に3つのメリットがあります。
一つ目は、社会的信用度が高いことです。会社形態には4種類あると紹介しましたが、そのうちの7割以上は株式会社であるように、認知度が世間一般的に浸透しています。また、株式会社は合同会社などの持分会社に比べ、遵守するべき法律や規制が多いことも、信用度が高い理由の一つです。
二つ目は、資金調達がしやすいことです。株式会社は、株式を発行することで投資家から幅広く出資を募ることができます。出資者は間接有限責任であるため、出資金額を超えて損失を負うことがなく、投資がしやすいことも出資を得やすい要因のひとつとなっています。また、先述したように信用度が高いことから、金融機関や投資家からの出資を受けやすくなります。
三つ目は、株主有限責任が適用されることです。株式会社は有限責任であり、万が一会社が倒産した場合でも、出資金以上の責任を負う必要はありません。そのため、株式会社では自分が被る責任を出資金によってコントロールできます。
株式会社のデメリット
メリットがある一方で、株式会社にはいくつかのデメリットもあります。
まずは、他の会社形態に比べて設立費用が高くなることが挙げられます。株式会社では定款の認証が必要であり登録免許税も高くなるため、少なくとも20万円ほどの設立費用が必要です。
また、決算公告の義務があることについても、株式会社のデメリットです。官報・日刊新聞紙・ホームビデオへの掲載は、手間と費用がかかります。
その他にも、役員変更の際に変更登記が必要になるのはもちろんですが、役員が重任する場合でも重任登記が必要です。そのため、登記申請による費用や手続きが発生するデメリットがあります。
合同会社
合同会社は、2006年の新会社法により、新しく設けられた会社形態です。
出資者=経営者となり、出資した全ての社員に会社の決定権があります。定款による組織の設計や利益配分なども自由に規定でき、株主総会なども行わなくて良いため、意思決定のスピード感や経営の自由度が高いのが特徴的です。
また、設立にかかる初期費用が低く、設立までのハードルがさほど高くありません。さらに、合同会社は決算公告義務がなく、役員の任期も無制限に設定できます。決算公告や役員の変更登記・重任登記には費用がかかるものなので、これらが不要である合同会社はランニングコストも抑えられます。
なお、出資者の責任範囲は株式会社と同様の有限責任です。
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合同会社のメリット
合同会社は、株式会社に比べて設立費用が安く抑えられることがメリットとして挙げられます。定款の認証が必要ないことや登録免許税が6万円で済むなど、約10万円の費用で設立可能です。
また、合同会社は有限責任となるため、出資者が出資した金額以上に責任を負わなくて済というメリットもあります。その他には、出資者と経営者が同一であることから、意思決定のスピードが早く経営の自由度が高いことも、合同会社の大きなメリットです。
合同会社のデメリット
合同会社は、最近では設立件数が増えてきましたが、株式会社に比べ社会的知名度が低く、信用度も劣ります。クライアントを株式会社に限定している企業もあるため、場合によっては取引に制限がかかるかもしれません。
また、合同会社は株式発行による資金調達ができないため、出資を募りづらいことがあります。株式市場への上場もできません。ただし、2ヶ月ほどの期間は必要ですが、合同会社設立後に株式会社への組織変更をすることは可能です。
合資会社
合資会社は、事業を行う無限責任社員と出資する有限責任社員からなる会社です。事業を行う経営者と資金提供するスポンサーに分かれている会社形態です。基本的に有限責任社員は経営に参加しません。
このような特徴を有することから、合資会社は会社設立に際して、最低無限責任社員と有限責任社員の2名以上の出資者が必要となります。
しかし、会社が倒産したときなどは無限責任社員の負担が大きくなる可能性があるため、最近では設立されることは少ないようです。
合資会社のメリット
合資会社は、合同会社と同様に設立費用やランニングコストが低く、手続きも比較的簡単です。資本金は不要であるため、設立にかかる費用は他の会社形態に比べて安く抑えられます。また、決算公告義務もなく、定款も自由に規定できることは大きなメリットです。
合資会社のデメリット
合資会社は無限責任社員と有限責任社員で構成されているため、無限責任社員の相続等が発生した際は高額の納税が求められる場合があり、会社の問題の責任は無限責任社員個人に影響が及ぶ可能性があります。
また、合資会社の設立には、最低1名ずつの無限責任社員と有限責任社員が必要です。
合名会社
合名会社とは、出資者全員が無限責任社員となり構成される会社形態です。複数の個人事業主によって形成される会社といえます。
合名会社は社員の個性が重視された会社の種類であり、社員一人ひとりに「業務執行権」「代表権」を有しております。社員の個性が重視されることから定款変更や社員持分の譲渡なども社員全員の同意が必要となります。
合名会社のメリット
合名会社のメリットとして、会社設立のハードルが低いことが挙げられます。合名会社も他の持分会社と同様に、定款の認証費用がかからず、登録免許税も6万円と安く抑えられます。また、利益の分配を自由に決められたり、決算公告の義務がないことも合名会社のメリットです。
合名会社のデメリット
合名会社の大きなデメリットは、社員全員が無限責任であるという点です。そのため、会社が背負った債務は資本金に関わらず全て無限責任社員が負うこととなります。また、株の発行や株式上場ができない点も、合名会社のデメリットです。
株式会社と合同会社の違い
会社が設立される形態として最も多いのは株式会社ですが、次いで多いのが合同会社です。2022年には、株式会社が92,371件、合同会社が37,127件それぞれ設立されました。
出典:e-Stat「登記統計 商業・法人商業・法人登記(年次表)種類別 会社の登記の件数」
それぞれの主な違いや共通点については、以下の表にまとめました。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
会社の種類 | 株式 | 持分 |
資本金 | 1円以上〜 | 1円以上〜 |
意思決定 | 株主総会 | 総社員の過半数の同意 |
議決権 | 一株一議決権 | 一人一議決権 |
所有と経営 | 原則完全分離 | 原則同一 |
出資者責任 | 間接有限責任 | 間接有限責任 |
役員の任期 | 最長10年 | 任期なし |
代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
決算公告 | 必要 | 不要 |
定款 | 認証必要 | 認証不要 |
上場 | できる | できない |
利益配分 | 出資比率に応じる | 定款で自由に規定 |
設立費用 | 約200,000円〜 | 約100,000円〜 |
株主会社は、多くの出資を募り大規模に事業を展開していきたい場合に向いている会社形態で、事業を多角的に展開していきたい場合にもおすすめです。ただし、設立費用やランニングコストも多く発生し、必要な手続きも合同会社に比べ増えます。
一方で合同会社は、なるべく費用やリスクを抑え、法人として事業を展開していきたい場合におすすめです。ただし、株式会社に比べて資金調達がしにくく、優秀な人材も集まりにくいとされています。
どちらの会社形態で設立した場合でも、所定の手続きを行えば組織変更を行うことが可能です。そのため、まずはリスクを抑えて合同会社として設立し、後に事業拡大のために株式会社に成るようなことができます。
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会社と法人の違い
「会社」と「法人」はよく混同されがちですが、実際はそれぞれ異なります。
法人とは「法律によって人と同じ権利や義務を認められた組織」のことをいい、国家や公共団体の権力の影響を受けない私法人(民間法人)と、公の業務を行うことを目的とした公的法人に分類されます。
具体的に、公的法人は以下の法人のことです。
公的法人の種類
- 地方公共団体
- 独立行政法人:国民生活センター・造幣局など
- 特殊法人:日本年金機構・NHK・JTなど
私法人はさらに営利法人と非営利法人に分けられます。
「会社」とはこの営利法人のことであり、ビジネスで得た利益を特定の構成員(社員や株主など)に分配することが主な目的です。
そして非営利法人は、NPOをはじめとする「定款などで非営利性(構成員への利益分配を目的としていないこと)が徹底されている法人」あるいは「共益的活動を目的としている法人」を指します。非営利法人であっても 、収益をあげること自体を禁止されているわけではない点に注意しましょう。
なお、2008年の公益法人制度の改正で設けられた一般社団法人は、株式会社や合同会社についで3番目に設立数が多く、新たに法人を設立する際の選択肢として有力な法人形態といえるでしょう。2022年には、5,957件の一般社団法人が設立されました。
出典:e-Stat「登記統計 商業・法人商業・法人登記(年次表)法務局及び地方法務局管内別・種類別 一般社団法人の登記の件数」
一般社団法人の特徴や設立要件、その他の法人形態との違いは以下の記事でわかりやすく解説しています。法人設立を検討中の方はあわせてご確認ください。
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法人とは?法人の種類や例、個人事業主との違いを簡単に解説
まとめ
会社の種類は、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4つです。設立数を見ると株式会社が全体の7割以上を占めており圧倒的ですが、設立の際は事業目的や規模によって適切な会社形態を選ぶことが重要です。
ただし、合資会社は合名会社は無限責任が及ぶ可能性があり、リスクが大きいことからおすすめできません。そのため、これから会社設立を行う場合は、社会的信用度やリスクの少なさという側面からも株式会社や合同会社を選ぶことがおすすめです。
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