確定申告の基礎知識

予定納税は所得税を前払いする仕組み!確定申告で払いすぎは還付される

予定納税は所得税を前払いする仕組み!確定申告で払い過ぎは還付される

予定納税とは、所得税の金額が一定額以上になる見込みの人が税金の先払いをするシステムのことです。

予定納税を行う必要があるのは、前年分の所得に対する納税額が15万円以上だった人であり、前年分の納税額の3分の2が予定納税額になります。

予定納税を行う時期は7月と11月と定められており、この2回で納税額を分割して納付します。予定納税を忘れると高利率の延滞税が請求されることがあるので注意しなければなりません。

この記事では、予定納税の対象者や納付方法、予定納税の支払いが難しい場合の対処法などについて詳しく解説します。

▶︎ 確定申告について、まずはこちらの記事!

確定申告とは? 分からない人でもわかりやすく徹底解説!

目次

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予定納税とは

予定納税とは、所得税の金額が一定額以上になると見込まれる人が所得税を前払いする制度です。これは、確定申告時に一度に支払わなければならない所得税を分割で支払うことで納税者の支払い負担を軽減させることが目的です。


出典:国税庁「No.2040 予定納税」
出典:国税庁「所得税法」

予定納税の対象者

予定納税の対象となるかどうかは、前年分の確定申告で申告した納税額が15万円を超えるかどうかによって判断されます。

予定納税の対象となった場合には、税務署よりその年の6月中旬に通知が届きます。

予定納税の納税額

予定納税額は、通常前年分の所得税額が予定納税基準額とされ、その2/3が予定納税額となります。ただし、所得の種類や災害減免法の適用を受けているかどうかなどでこの予定納税基準額が異なります。

下記の要件にすべて該当する場合、前年度の所得納税額がそのまま予定納税基準額とされます。

前年度の所得納税額が予定納税基準額になる場合

  • 前年の所得に、山林所得や退職所得などの分離課税所得、一時所得などが含まれないこと
  • 前年の所得において外国税額控除の適用を受けていないこと
  • 前年の所得税において災害減免法の適用を受けていないこと
出典:国税庁「No.2040 予定納税」

上記の要件に該当しない場合、以下の合計額が予定納税基準額となります。


  • 前年の課税所得額および分離課税にかかる所得税額から源泉徴収された金額を差し引いた金額
  • 上記金額にかかる復興特別所得税額

ただし、災害減免法の適用を受けている場合、適用される前の金額から計算します。

予定納税を行うタイミング

予定納税を行うタイミングは、第1期で7月1日〜7月31日、第2期で11月1日〜11月30日です。

第1期、第2期の予定納税の金額はあくまでも前年の申告納税額をもとに計算した概算額です。そのため、予定納税を行った年の所得額が大きく減額した場合、翌年に行う確定申告で還付手続きを行うことで、納めすぎた所得税が還付されます。


出典:国税庁「所得税及び復興特別所得税の予定納税(第1期分)の納税をお忘れなく」

予定納税をする方法

予定納税をする方法は、振替納税(口座引き落とし)と自身で納付する2つの方法に分けられます。

振替納税を利用している場合、納付期間の最終日(7月31日・11月30日)に自身で指定した銀行口座から引き落とされます。振替納税を利用する場合は、必ず引き落としの前日までに口座に十分な残高があるかを確認しましょう。

なお、振替納税の場合は納税時に領収書が発行されないため留意してください。

自身で納付手続きを行う場合は、以下の方法から選択します。

ダイレクト納付

手続きe-Taxを利用し銀行口座からの振替操作を行い納付
注意点以下の手続きが必要
・e-Taxの開始届出書
・ダイレクト納付利用届出書

電子納付

手続きe-Taxを利用しインターネットバンキングなどを利用して納付
注意点以下の手続きおよび準備が必要
・e-Taxの開始届出書
・インターネットバンキングまたはモバイルバンキングの契約

クレジットカード納付

手続き国税クレジットカードお支払サイト」より手続きを行い納付

利用可能カード会社
・Visa
・Mastercard
・JCB
・American Express
・Diners Club
・TS CUBIC CARD
注意点決済手数料が掛かる

スマホアプリ納付

手続き国税スマートフォン決済専用サイト」より手続きを行い納付

利用可能アプリ
・PayPay
・d払い
・auPAY
・LINEPay
・メルカリPay
・amazonpay
注意点納付金額が30万円を超える場合は利用不可

コンビニ納付(バーコード、QRコード)

手続きバーコードの場合
・コンビニ納付用の納付書で納付

QRコードの場合
・国税庁のホームページからQRコードを出力
・出力したバーコードをコンビニに持ちより納付
注意点・納付金額が30万円を超える場合は利用不可
・QRコードを利用する場合、自身で出力が必要

金融機関または税務署窓口での納付

手続き金融機関の場合、事前に用意した納付書(一般用)に必要事項に記載して窓口にて納付
注意点納付書の記載方法は「納付書の記載例」を参考

納税証明が必要である場合は、納付した際の領収書を所轄の税務署に持参
出典:国税庁「所得税及び復興特別所得税の予定納税(第1期分)の納税をお忘れなく」

消費税の中間申告にも注意

消費税の中間申告とは、前年または前事業年度の確定消費税額(地方消費税額を除く)の納税額が48万円を超えた個人事業者および法人が行わなくてはならない手続きです。

この手続きは申告だけでなく納付も含みます。また、消費税の中間申告は所得税の予定納税とは異なるため注意が必要です。

直前の課税期間の確定消費税額48万円以下48万円超から
400万円以下
400万円超から
4,800万円以下
4,800万円超
回数原則、中間申告不要
任意の中間申告制度あり
年1回年3回年11回
申請・納付期限中間申告の対象となる課税期間の末日の次の日から2ヶ月以内1~3月分:5月末日
4月~11月:対象期間の末日の次の日から2ヶ月以内
1回の納付税額直前の課税期間の確定消費税額の6/12直前の課税期間の確定消費税額の3/12直前の課税期間の確定消費税額の1/12
1年の合計申告回数確定申告1回確定申告1回
中間申告1回
確定申告1回
中間申告3回
確定申告1回
中間申告11回
出典:国税庁「No.6609 中間申告の方法」

予定納税で所得税を払いすぎた場合

予定納税で払った所得税額が本年の所得税額より多かった場合、確定申告を行うことで、払いすぎた所得税の還付が受けられます。

予定納税と実際の所得税額の計算例

2022年の所得税が30万円、2023年の所得税額が15万円であった場合


  • 2023年の予定納税基準額:30万円
  • 2023年1期の予定納税:10万円(30万円×3分の1)
  • 2023年2期の予定納税:10万円(30万円×3分の1)
  • 2023年の実際の所得税額:15万円

予定納税では、2023年分の確定申告で納税額が計算される前に20万円を先に納付します。

しかし、2023年の業績が大きく悪化するなどの理由で所得税の金額が15万円だった場合、予定納税で納税する20万円の方が実際の納税額(15万円)よりも5万円多くなっています。

予定納税の金額が実際の納税額より多くなった場合、2023年分の確定申告では所得税の納付は不要で、5万円分の還付を受けることになります。

予定納税の支払いが難しい場合

廃業または休業等の理由により本年の所得税の見積もり額が大幅に減少するなど、条件によっては予定納税を減額できる場合があります。

減額申請できるのは、「その時の6月30日および10月31日時点での所得税および復興特別所得税の見積額が予定納税基準額より低くなる人」です。

この条件に該当する場合、以下の日程で所轄の税務署長に予定納税額の減額申請書を提出して承認されると、予定納税が減額されます。


  • 第1期および第2期分:7月15日まで(見積もりは6月30日時点のもの)
  • 第2期分のみの場合:11月15日まで(見積もりは10月31日時点のもの)

予定納税額の減額申請書の提出が遅れると減額申請ができないため、期限までに忘れずに提出しましょう。

手続きの対象となるのは、以下の要件に該当する人です。

予定納税額の減額申請の対象者の例

  • 廃業・休業・失業をしたとき
  • 業況不振により、本年分の所得が前年分の所得よりも大幅に減少すると見込まれるとき
  • 災害・盗難・横領により事業用資産または山林に損害があったとき
  • 災害や各種控除額の増加などで、所得控除額や税額控除額が前年分より増加するとき

出典:国税庁「[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」

予定納税の支払いが遅れた場合

上述したように、前年の所得税が15万円を超える場合には予定納税の義務が発生します。

これは、納税者の負担軽減を目的とした制度ではありますが、予定納税の対象になった場合、納税は義務となります。予定納税の義務を怠って納付を行わなかった場合、原則、延滞税として予定納税額に年率7.3%(延滞が2ヶ月未満の場合)または14.6%(延滞が2ヶ月以上の場合)の利率がかかってきます。

予定納税の納め忘れてしまうと、納税額が大幅に増額され負担が大きくなってしまうため、予定納税の納期漏れがないように注意しましょう。


出典:国税庁「No.9205 延滞税について」

まとめ

予定納税は、前年度の納税額によって自動的に定められるものですが、所得額が大幅に減少するなど、所得税額が前年分より大幅に減少する場合には、減額の申請も可能です。

減額申請には期限があり、また納税そのものを忘れてしまった場合、延滞税の負担も大きくなってしまいます。そのため、予定納税の対象となった場合には、納税期限はもちろん減額申請をする場合の手続きの期限についても事前によく確認し、期限前にすべての手続きを確実に進めるようにしましょう。

よくある質問

予定納税の対象者は?

予定納税の対象者は、前年の所得税額が15万円を超えた人です。予定納税の対象者は、前年分の確定申告で申告した納税額が15万円を超えている人です。

詳しくは予定納税の対象者をご覧ください。

予定納税しないとどうなる?

予定納税の義務があるのに期限までに予定納税を行わなかった場合、支払うべき予定納税額に加えて年率7.3%(延滞が2ヶ月未満の場合)または14.6%(延滞が2ヶ月以上の場合)の延滞税が加算されます。

詳しくは予定納税の支払いが遅れた場合をご覧ください。

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