所得税は申告納税方式が採られていますが、サラリーマンは年末調整で税金の計算が終了するため、確定申告の義務はありません。そんな方でも「還付申告」をすることで払い過ぎた税金が戻ってくるかもしれないことをご存知ですか?医療費控除の適用を受けたい方や、ふるさと納税をした方なども要チェックです。
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■そもそも「還付申告」ってどんな制度?
大半のサラリーマンは、会社の年末調整で税金の精算をしてもらえます。そのため、確定申告をする必要はありませんし、税金の計算方法などは考えたこともないという方も多いでしょう。年末調整では正確に税金を計算しますので、通常であれば税金の払い過ぎはありません。しかし、もし払い過ぎがあった場合、税務署に申告をすることで払い過ぎた分を返してもらうことができます。そのための申告を還付申告といいます。
還付申告は義務ではありません。さまざまな控除の中には年末調整では処理できないものもあります。それらのことを知っているかどうかが、還付を受けられるかどうかの分かれ道なのです。
還付申告によって、税金の還付を受けることができる主なケースは次の通りです。
- ・医療費控除や寄付金控除、雑損控除など年末調整で処理できない所得控除がある
- ・住宅ローンを組んでマイホームを購入した1年目
- ・年末調整で扱える所得控除の適用漏れがあった
年末調整で処理できない所得控除がある場合
所得税には、所得から一定の金額を差し引ける「所得控除」という制度があります。配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除などほとんどの所得控除は年末調整で処理できますが、医療費控除と寄付金控除、雑損控除の3つは年末調整で処理することはできません。これらの控除の適用を受けるには、還付申告をする必要があります。
医療費控除の適用を受けるには?
病気やケガで多額の医療費がかかってしまったという場合、医療費控除の適用を受けることができます。医療費控除の額は実際に掛かった医療費から10万円を引いた金額で、最高200万円までです。年間の医療費が10万円以上の場合に使えるということを覚えておくといいでしょう。
ただし、総所得金額が200万円未満の方は、総所得金額に5%を掛けた金額が控除額になります。
医療費控除の対象となる医療費は、医療機関に支払った金額だけではありません。薬局で受け取った薬や市販の風邪薬など、介護用のおむつ(ただし一定の条件あり)、医療機関の往復の際の交通費なども対象となります。マイカーを使って医療機関に行った場合の駐車料やガソリン代などは対象になりません。
高額医療費で戻ってきた場合や、生命保険の給付金を受け取った場合はその金額は差し引かなくてはなりません。出産費用も医療費控除の対象となりますが、健康保険の出産育児一時金などの金額は差し引く必要があります。
医療費控除の適用を受けるには、医療機関などから受け取った領収書の提出が必要になりますので、1年分の領収書をきちんと保存しておくようにしましょう。
自分が治療を受けた医療費だけでなく、配偶者や生計を一にする親族の治療費を払ってあげた場合も対象となります。例えば夫だけでなく、妻も働いていて収入があるという場合は一家でまとめて、収入の多い方が医療費控除の適用を受けた方が還付される額は多くなります。
ふるさと納税も寄附金控除の対象となる
自分が応援したいと思う都道府県や市町村に納税をすることができるのがふるさと納税です。「納税」という言葉を使っていますが、実はふるさと納税は特定の地方自治体に寄付をするという行為で、寄附金控除の対象になります。寄附金控除も年末調整では処理できないので、還付申告をする必要があります。
申告をすることで所得税の還付を受けることができ、さらに翌年の住民税から減額される仕組みです。寄附金控除の額は、寄付をした金額から2千円を引いた金額です。平成27年4月以降は、寄付をした自治体が5ヶ所までであれば確定申告をしなくてもいい「ふるさと納税ワンストップ特例」がスタートしています。
災害や盗難は雑損控除の対象に
災害や盗難、横領で資産に損害を受けた場合は、雑損控除の適用を受けることができます。控除できる金額は、次の2つのうちいずれか多い方の金額です。
・損失額‐総所得金額×10%
・損失額のうち災害関連支出の額‐5万円
損害保険の給付金を受け取った場合などは、その金額は損失額から差し引かなくてはいけません。また、災害関連支出の額とは、災害で被害を受けた住宅などを取り壊したり除去するために支出した金額などです。
被害を受けた金額が大きすぎてその年の総所得金額から引いてもマイナスが残ってしまう場合、翌年以降3年間は繰り越すことができますが、その際も、還付申告が必要です。
住宅ローン控除の適用の1年目は申告が必要
住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、住宅ローン控除の適用を受けることができます。住宅ローン控除は所得控除ではなく税額控除なので、年末の住宅ローン残高の1%が支払った所得税からダイレクトに戻ってくる非常に節税効果が高い控除です。購入者の要件や購入した住宅の要件などがあり、マイホームならどんな家でもいいというわけではありませんが、要件に合った住宅なら、住宅ローン控除の適用を受けない手はありません。
新築住宅だけでなく中古の住宅も対象になりますし、要件を満たした増改築、省エネ改修工事、バリアフリー改修工事なども対象になります。
控除できる住宅ローンの額は、一般の住宅の場合4,000万円が限度で、10年間にわたって年末の住宅ローン残高の1%の税額控除を受けることができます。
このように非常に節税効果が高い住宅ローン控除ですが、適用を受ける最初の年だけは税務に申告する必要があります。
年末調整で処理できる控除の申告漏れはないか?
生命保険料控除や社会保険料控除、配偶者控除などは年末調整で処理できる控除ですが、適用漏れがあった場合は、還付申告をすることで還付を受けることができます。
生命保険料控除、地震保険料控除の場合
年末調整で生命保険料駆除や地震保険料控除の適用を受ける場合、会社に保険会社から送られてくる「控除証明書」を提出する必要があります。提出するのを忘れてしまったり、年末調整が終わってから控除証明書が出てきたような場合は、還付申告をしましょう。
社会保険料控除の場合
休職中や転職期間中に社会保険料を自分で払っていた場合など、年末調整でその分の金額が含まれていなければ還付申告をしましょう。社会保険料は自分の分だけでなく、配偶者や生計を一にする親族の社会保険料を払ってあげた場合も、社会保険料控除の適用を受けることができます。
配偶者控除
その年に結婚した妻が専業主婦になったような場合、扶養控除等(異動)申告書に記載していなければ、配偶者控除が適用されていないかもしれません。この場合も、還付申告をすれば配偶者控除の適用を受けることができます。
還付申告には5年間の時効がある
還付申告はその年だけでなく、本来適用を受けるはずだった年の翌年以降5年間であれば、いつでも提出が可能です。失くしたと思っていた医療費の領収書が出てきたというようなことがあったら、時効になる前に還付申告をしましょう。
その際は、還付申告用の用紙があるわけではありません。確定申告用の用紙を使って申告をすることになります。サラリーマンであれば、通常は、簡易に申告できる確定申告書A様式を使います。還付申告を行う場合は、還付申告を行おうとする年の給与所得の源泉徴収票の原票が必要となります。
確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等|申告書A【平成27年分以降用】|国税庁
まとめ
払い過ぎた税金の還付を受けることができる還付申告は、必ずしなければならないものではありません。でも、もし対象となるのであれば、申告した方が絶対得ですよね。自分にも対象となる控除があるかしっかりチェックしてみてください。
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