確定申告の基礎知識

個人事業主が家賃を経費計上するときの注意点は?使用割合の考え方や記帳方法も解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

個人事業主が家賃を経費計上するときの注意点は?使用割合の考え方や記帳方法も解説

個人事業主が事業で用いている物件に対して支払う家賃は、経費計上ができます。ただし、自宅兼事務所の場合は事業の使用割合に応じて家事按分しなければなりません。

経費計上にあたっては、住宅に関連する費用でも内容ごとに仕訳する勘定科目が異なります。家賃を経費計上する際は家事按分の方法や勘定科目などに注意し、適切に処理しましょう。

本記事では、個人事業主が支払う家賃や、住宅関係の費用を経費計上するときの注意点を解説します。

目次

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個人事業主は事務所や自宅兼事務所の家賃を経費計上できる

個人事業主であっても、事業に関連するものであれば、家賃も経費として計上できます。毎月発生する固定費の中でも家賃は大きな支出であり、経費計上することで節税対策ができるなどのメリットが得られます。

家賃を経費計上するにあたっては、事業で用いる物件が自宅兼事務所なのか、事業専用の物件であるかによって計上方法が異なります。以下でそれぞれ解説します。

【関連記事】
家賃の勘定科目は? 個人事業主の経費計上の可否や仕訳方法、注意点も解説

自宅兼事務所の費用は家事按分し事業分のみ計上

自宅兼事務所の家賃は、全額を経費計上できるわけではなく、事業用として使用している部分のみを家事按分して計上します。このとき、勘定科目は「地代家賃」を使用します。プライベート用の部分は「事業主貸」に仕訳し、経費に計上できません。

家事按分とは、事業とプライベートの費用が混在する支出に対し、一定の割合で事業用に使った分を算出する方法です。

家事按分について詳しく知りたい方は「家事按分とは?個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法についてわかりやすく解説」をご覧ください。

持ち家の家事按分方法

自宅兼事務所が賃貸ではなく持ち家の場合は、持ち家の取得が事業を始める以前か、始めた後かで処理が異なります。

開業後に取得した自宅兼事務所はまず、取得時に固定資産へ計上しましょう。

減価償却のタイミングで、事業用の部分は「減価償却費」、プライベート用の部分は「事業主貸」で計上します。減価償却費は経費ですが、家事按分が必要です。あわせて、ローンの利息(元本は計上不可)や保険料なども、家事按分して経費に計上します。

取得済みの持ち家を自宅兼事務所とする場合、事務所にする以前の期間分を減価償却して差し引いた残りが固定資産に該当します。開業後に取得した場合と同じく、固定資産分のみ、減価償却の際に家事按分して減価償却費を経費計上しましょう。


出典:国税庁「No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」

自宅とは別に借りている事務所の家賃は全額経費計上できる

プライベートではまったく利用していない、自宅とは完全に別の場所にある事務所なら、家賃を全額経費にできます。「地代家賃」の勘定科目に仕訳し、毎月経費計上しましょう。

事務所に限らず、月極駐車場や倉庫なども事業用で借りているなら、それらの賃料も経費計上できます。「地代家賃」や「賃借料」などの勘定科目に仕訳しましょう。

【関連記事】
駐車場代に使う勘定科目は? 仕訳例や消費税、個人事業主の経費計上方法も解説

個人事業主が家賃を家事按分するときの考え方

自宅兼事務所の家賃や住宅にかかる費用を家事按分するためには、まず事業用とプライベート用の使用割合を定めましょう。使用割合は、面積で決める方法と時間で決める方法があります。

家事按分について詳しく知りたい方は「家事按分とは?個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法についてわかりやすく解説」をご覧ください。

面積で使用割合を決める方法

仕事で使う部屋の面積とプライベート利用の部屋の面積に分けて、使用割合を求める方法です。自宅の中で、仕事でしか使わない・立ち入らない場所があるなら、面積で決める方がわかりやすいでしょう。

たとえば、自宅兼事務所のうち、事業専用の部屋が18㎡、残り54㎡はプライベート用の場合、使用割合は以下のとおりです。

自宅兼事務所全体の面積:事業用18㎡+プライベート用54㎡=72㎡
使用割合:18㎡÷72㎡=0.25(25%)

家賃が10万円ならば、使用割合25%をかけた2万5,000円を経費に計上できます。

しかし、単身者の個人事業主で、自宅兼事務所がワンルーム物件の場合、仕事用とプライベート用の部屋を分けられません。面積で使用割合を決める方法は使いにくいため、次に紹介する時間で使用割合を決める方法を使いましょう。

時間で使用割合を決める方法

住宅の床面積ではなく、1日のうちに何時間仕事をしているかで使用割合を決める方法です。仕事用とプライベート用の部屋が分かれていない自宅兼事務所は、時間で使用割合を決める方が適しています。

たとえば、1日あたり8時間、1週間のうち5日を仕事の時間に充てている場合、使用割合は以下のとおりです。

1週間の稼働時間数:8時間×5日=40時間
1週間の総時間数:24時間×7日=168時間
使用割合:40時間÷168時間=0.23…(約23%)

家賃が6万5,000円ならば、使用割合の23%をかけた1万4,950円を経費に計上できます。

繁閑の差があり時期によって稼働時間の変動が大きい仕事をしている場合も、時間で使用割合を決めると事実に即した按分ができます。

仕事で使用する時間は事業ごとにさまざまですが、不自然にならない範囲で決めましょう。繁閑の差が大きい事業の場合は、一年中、繁忙期の稼働時間数から考えた使用割合で家事按分するのは不適切です。月ごとに時間数に応じた割合を適用したり、年間の稼働時間数を平均化したり、根拠を主張できる方法で使用割合を決めましょう。

青色申告と白色申告で家事按分のルールが異なる

家事按分にあたって、青色申告は事業用の使用割合を問われませんが、白色申告は状況次第で経費に認められないケースがあります。

青色申告は使用割合が60%でも20%でも、事業用の根拠があれば家事按分が可能です。一方、白色申告は50%超の使用割合、または使用割合の区別が明確でないと、経費に認められない可能性があります。

ほかにも、青色申告と白色申告では確定申告時の提出書類や保存すべき帳簿などに違いがあります。青色申告ならば特別控除も受けられるため、必要に応じて切り替えを検討しましょう。

青色申告と白色申告の違いについて詳しく知りたい方は、「青色申告と白色申告の違いは?7項目で比較するメリット・デメリットを徹底解説」をご覧ください。

家事按分して経費計上できるその他の費用

家賃や住宅費のほかにも、以下の費用も使用割合を決めて家事按分すれば経費計上できます。

家事按分して経費計上できる費用の例

  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 自動車関連費
  • 社宅の費用(福利厚生費)
  • 住宅ローンの利息(支払利息)
  • 固定資産税(租税公課)
  • 保険料

個人事業主が家賃を家事按分する際の記帳方法

家賃を家事按分する際の記帳方法は、1ヶ月ごとの家賃支払いのたびに按分するか、1年分まとめて按分するかの2通りです。毎月の稼働状態や記帳の手間を考え、適した方法を選びましょう。

このとき、会計ソフトを使えば家事按分の処理も簡単に行えるほか、日々の帳簿付けや確定申告の手続きも省力化できます。

1ヶ月単位で経費を家事按分する

毎月、家賃を支払うたびに家事按分し記帳する方法です。稼働日数や時間が月ごとに大きく変動する場合は、1ヶ月ごとの使用割合で按分する方が正確に記録できます。

1年分の経費をまとめて家事按分する

毎月の支払い時は按分せずに全額計上し、1年分をまとめて按分する方法です。1月1日から12月31日までに支払った経費を、確定申告時に家事按分します。

月ごとの稼働時間があまり変わらないなら、1年分まとめて家事按分する方が適しているでしょう。確定申告時にまとめて家事按分の処理ができる会計ソフトを活用することで、家事按分も経費計上もスムーズに行えます。

家賃の内容により仕訳する勘定科目が異なる

「家賃」といっても、物件のタイプによって仕訳する勘定科目は異なります。

物件タイプ勘定科目
自宅とは別に借りている事務所や店舗全額「地代家賃」
自宅兼事務所(自宅兼店舗)家事按分したうえで事業利用分を「地代家賃」
バーチャルオフィス「支払い手数料」

自宅とは別にある事務所や店舗、事業用の倉庫などの家賃は「地代家賃」に仕訳し、全額経費に計上可能です。自宅兼事務所の場合も、家事按分したうえで「地代家賃」で経費計上します。

しかし、バーチャルオフィスの利用では、物件を借りているわけではないため「地代家賃」の勘定科目は使いません。バーチャルオフィスの利用料は「支払手数料」で経費計上します。

家賃に関する勘定科目の詳細は「家賃の勘定科目は? 個人事業主の経費計上の可否や仕訳方法、注意点も解説」で解説しています。

また、社宅の家賃は、条件を満たせば「福利厚生費」で経費に計上できます。社宅の経費計上について詳しく知りたい方は「借り上げ社宅とは?メリットやデメリット、社有社宅や住宅手当との違いなど徹底解説」をご覧ください。

個人事業主が家賃や住宅にかかる費用を経費計上する際の注意点

個人事業主が家賃や住宅にかかる費用を経費計上する際は、いくつかの注意点が存在します。誤ったやり方で経費計上していると、正確な確定申告ができません。もし、確定申告内容に誤りがあったら、確定申告を修正する手間が発生してしまいます。

家賃や住宅にかかる費用を正確に経費計上するために、以下の点に注意して適切に処理しましょう。

個人事業主が家賃や住宅にかかる費用を経費計上する際の注意点

  • 敷金は支払時点で経費計上できない
  • 住宅ローンの元本は経費にならない
  • 自宅兼事務所は住宅ローン控除を受けられない場合がある
  • 同一生計の家族・親族に支払う家賃は経費計上できない
  • 経費と証明できる根拠資料を保存する

敷金は支払時点で経費計上できない

敷金は、賃貸物件の契約時に支払う、住宅にかかる費用のひとつです。

しかし、退去時に返却されるため、支払った時点では経費に計上できません。退去時に修繕費用などが差し引かれ、全額返還されない場合、差し引かれた分を経費に計上します。

敷金の仕訳を詳しく知りたい方は、別記事「敷金の勘定科目とは? 経費にできるケースや仕訳の具体例を紹介」をご覧ください。

住宅ローンの元本は経費にならない

借入や返済は利益に影響しないため、住宅ローンの元本は経費計上できません。利息部分のみ経費に計上しましょう。

経費計上できない住宅ローンの元本は、未払金の勘定科目で負債に計上します。

個人事業主の住宅ローン返済にあたっての仕訳については、別記事「個人事業主がローン返済をした際の勘定科目は? 経費計上に関してや仕訳例を解説」をご覧ください。

自宅兼事務所は住宅ローン控除を受けられない場合がある

自宅兼事務所で住宅ローン控除を適用するには、床面積の2分の1以上が住居用(プライベート用)でなければなりません。店舗や倉庫など、事業用として利用する割合の方が大きい自宅兼事務所では、住宅ローン控除は適用できないため注意しましょう。

また、住宅ローン控除には、住居の床面積や控除を受ける年の合計所得などの要件も設けられています。

住宅ローン控除の詳細は「住宅ローン控除を受けるための確定申告手順や必要書類を解説」をご覧ください。


出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」

同一生計の家族・親族に支払う家賃は経費計上できない

事務所の家賃を同一生計の家族・親族に払っている場合は経費計上できません。同一生計内でお金を動かしているだけであり、経費を支払ったとみなされないためです。たとえば、同居の親が所有する物件を事務所や自宅兼事務所として使い、家賃を渡している場合などが該当します。

しかし、個人事業主の同一生計者名義で他人に支払っている家賃であれば、経費計上が可能です。これはたとえば、夫名義で支払い、夫婦で住む物件の一部を事業用として妻が利用しているケースなどが該当します。このとき、夫名義で物件のオーナー(他人)に支払いをしているので、妻は物件の事業使用分を家事按分して経費計上できます。

しかし、同一生計でなければ、家族・親族に支払っている家賃も経費に計上可能です。別居し、別生計の親や兄弟、親族の所有物件を借りて家賃を支払っている場合などが該当します。

経費と証明できる根拠資料を保存する

家賃や住宅にかかる費用で経費計上できる金額は、根拠資料に基づき、事業に必要と認められる分に限られます。

物件を借りる際の賃貸契約書や家賃を支払っている事実がわかる資料(通帳、預金明細など)を保存しておきましょう。社宅の場合は、従業員と事業者名義で契約を取り交わした賃貸契約書も根拠資料に該当します。

税務署に指摘された際、根拠資料がないと経費計上の正当性を主張できません。不利益を被らないためにも、適切な経費計上と資料保存は大切です。


出典:国税庁「No.2210 必要経費の知識」

まとめ

個人事業主は、事業で使用している物件の家賃を経費に計上できます。自宅兼事務所であれば、使用割合に応じた家事按分をしたうえで経費計上を行わなければなりません。使用面積または使用時間から割合を決めて、適切に家事按分しましょう。

ほかにも、家賃を経費計上するためには、さまざまなルールが存在します。会計ソフトを使うと、家事按分の手間が省けるほか、記帳や確定申告の手続きもスムーズに行えます。必要に応じて会計ソフトの活用を検討しましょう。

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よくある質問

個人事業主は家賃を経費にできる?

事業に関連する家賃は経費にできますが、自宅兼事務所の場合は家事按分が必要です。

詳しくは記事内「個人事業主は事務所や自宅兼事務所の家賃を経費計上できる」をご覧ください。

個人事業主が家賃を経費計上する場合の注意点は?

個人事業主が家賃を経費計上する場合、内容に合わせた勘定科目の選択や家事按分などの注意点が存在します。

詳しくは記事内「個人事業主が家賃や住宅にかかる費用を経費計上する際の注意点」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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