確定申告の基礎知識

確定申告の還付金はいつ振り込まれる?個人事業主が受け取れる主なケースも紹介

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

確定申告の還付金はいつ振り込まれる?個人事業主が受け取れる主なケースも紹介

その年の納税額が、確定申告で確定した所得税額を超えているなどのケースでは、確定申告後に還付金が受け取れます。還付金が振り込まれるまでには、記載内容や添付書類の審査のためにある程度の期間がかかります。書面で確定申告書を提出した場合は、1~1ヶ月半程度かかるのが一般的です。

本記事では、確定申告の還付金はいつ振り込まれるのか、確定申告の還付金の受け取り方法などを解説。また、どのような場合に確定申告の還付金対象になるのか、個人事業主のケースをまとめました。

目次

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確定申告の還付金とは

確定申告の還付金とは、その年にすでに納税していた額と、確定申告によって確定した納税額に差が生じたときに返還される差分のお金のことです。

確定申告の還付金が受け取れるのは、以下のようなケースです。

確定申告の還付対象となる主なケース

  • 確定した所得税より予定納税や源泉徴収税を多く支払っていたとき
  • 損失の繰り戻しによる還付請求を行っていたとき など

個人事業主が還付金の対象となるケースについては、後述の「個人事業主が還付金を受け取れる主なケース」をご覧ください。

確定申告してから還付金はいつ受け取れる?

確定申告から還付金を受け取るまでの期間は、確定申告の方法によって異なります。

税務署窓口や郵送によって確定申告したなら、還付金の受け取りまでに1ヶ月~1ヶ月半程度の期間がかかります。e-Taxによる電子申告であれば、3週間程度で還付金が受け取れます。

還付金の返還にあたっては、申告書の記載内容や添付書類の審査など、支払手続きを適正に行うための所要の処理を正確に行う必要があるため、ある程度の日数が必要です。 還付金の振り込みが行われると、税務署から振込通知書がハガキで届きます。

e-Taxによる還付申告で「電子通知」を希望した場合はハガキによる通知はありません。還付金の振込みについての電子通知の内容は、e-Taxにログイン後、「通知書等」メニューを選択し、「通知書等一覧」画面の「国税還付金振込通知書」から確認できます。

出典:国税庁「【税金の還付】」
出典:e-Tax 国税電子申告・納税システム「還付金の振込に係る電子通知について」

還付金の金額の計算方法

還付金の金額は、以下の計算で算出できます。

(還付金の金額)=(所得税+復興特別所得税の額)-(源泉徴収税額)-(予定納税額)
※外国の法令により所得税に相当する租税を支払っている人は、外国所得税も所得税+復興特別所得税から差し引ける

出典:国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」

具体的には、確定した「47(所得税及び復興特別所得税の額)」から「50(源泉徴収税額)」を差し引き、「51(申告納税額)」を計算します。

そこから「52(予定納税額)」を差し引いてマイナスになる金額分が「54(還付される税金)」です。

たとえば、「45 基準所得税額」が20万円、「50 源泉徴収税額」が5万円、「52 予定納税額」が20万円であれば、下図のとおり還付金額は4万5,800円となります。

還付金額


出典:国税庁「令和6年分の所得税等の確定申告書」
出典:国税庁「所得税の確定申告」
出典:国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」

個人事業主が還付金を受け取れる主なケース

個人事業主が確定申告で還付金を受け取れるケースは、主に以下の2つが挙げられます。

個人事業主が還付金を受け取れる主なケース

  • 確定した所得税より予定納税や源泉徴収税額を多く支払っていたとき
  • 損失の繰り戻しによる還付請求を行うとき

それぞれのケースについて解説します。

確定した所得税より予定納税や源泉徴収税を多く支払っていたとき

その年の確定申告で算出された所得税より予定納税や源泉徴収税を多く支払っていた場合、確定申告後に還付が受けられます。

予定納税は、確定申告より前に一定額をあらかじめ納税する制度です。通常、前年分の所得税額が予定納税基準額とされ、その1/3ずつを7月(第1期分)と11月(第2期分)に納付します。予定納税基準額が15万円以上の人が予定納税の対象です。

予定納税について詳しく知りたい方は、別記事「予定納税は所得税を前払いする仕組み!確定申告で払いすぎは還付される」をご覧ください。

源泉徴収税は、給与や報酬を受け取るときに所得税を一定額差し引いて納税する制度で、個人事業主も報酬の種類によっては源泉徴収の対象となります。

源泉徴収の対象となる報酬は、以下が挙げられます。

源泉徴収の対象となる報酬

  • 原稿料、講演料、デザイン料など
  • 弁護士、公認会計士、司法書士等へ払う報酬
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  • プロ野球選手、プロサッカー選手、モデル等に支払う報酬
  • 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払われる報酬
  • 宴会等で接待を行うコンパニオンへ支払われる報酬
  • 契約金など役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  • 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

出典:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」

損失の繰り戻しによる還付請求を行うとき

青色申告では、前年への損失の繰り戻しと翌年以降3年間にわたっての損失の繰り越しが認められています。

赤字を繰り戻して前年の黒字と相殺すると前年の所得が減るため、前年で支払うべき所得税額も減少します。すると、前年の「納めるべき所得税」<「納めた所得税」となり、その差額が返還されます。

出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」

確定申告の還付金の受け取り方法

確定申告の還付金の受け取り方法としては、以下が挙げられます。

確定申告の還付金の受け取り方法

  • 預貯金口座で受け取る
  • 公金受取口座で受け取る
  • ゆうちょ銀行窓口や郵便局窓口で受け取る

それぞれの方法での受け取り方を、以下で解説します。

「預貯金口座」で還付金を受け取る方法

全国の金融機関(ゆうちょ銀行を含む)で口座振込による還付金の受け取りができます。

ただしインターネット専用銀行は、特定の銀行を除き還付金の振り込みが受けられません。還付金の受け取りができるかどうか、事前に使用を希望するインターネット専用銀行に確認をしましょう。

預貯金口座への振り込みを希望する人は、e-Taxの場合は受け取り方法の選択画面で、「ゆうちょ銀行以外の銀行等への振込み」または「ゆうちょ銀行への振込み」を選択して必要事項を入力します。

確定申告書を書面で税務署に提出する場合は、確定申告書の「還付される税金の受け取り場所」の欄に必要事項を記入します。記入内容は振込先ごとに以下のとおりです。


振込先の種類確定申告書への記入事項
銀行・信用金庫銀行名・支店名、預金口座の種類(普通、当座など)、口座番号をそれぞれ記入
※「郵便局名等」の欄は記入不要
ゆうちょ銀行(郵便局)貯金口座の口座番号と記号番号を通帳などで確認し、それぞれ記入
※そのほかの欄は記入不要
出典:デジタル庁「所得税の確定申告で公金受取口座の登録申請を行う方法」
出典:国税庁「国税還付金の受取りは、口座振込をご利用ください。」
出典:国税庁「税金の還付」
出典:国税庁「4. データ作成(帳票選択・帳票編集・電子署名・添付書類)」

「公金受取口座」で還付金を受け取る方法

2023年1月4日以降、公金受取口座への還付金の振り込みも指定できるようになりました。

e-Taxで確定申告する場合は、受け取り方法の選択画面で「公金受取口座への振込み」を選択します。書面で確定申告するのであれば、確定申告書の「公金受取口座の利用」の欄に〇を記入します。

なお、公金受取口座での受け取りにあたっては、事前に口座登録が必要です。以下の2通りの方法で登録申請ができます。

口座登録の方法

  • マイナポータルでの登録
  • 所得税の確定申告(還付申告)時の登録

出典:デジタル庁「公金受取口座登録制度」

マイナポータルでは、ログイン後に「公金受取口座」>「口座情報を登録する」の順に選択し、画面にしたがって入力すると、登録手続きができます。

確定申告(還付申告)時に口座登録する場合は、e-Taxでは受け取り方法の選択画面で預貯金口座での受け取り方法を選択し、口座の情報を入力後に「公金受取口座の登録」にチェックを入れます。

書面で確定申告書を提出するのであれば、預貯金口座での受け取りを記入して「公金受取口座登録の同意」欄に〇を記入することで登録ができます。

出典:デジタル庁「所得税の確定申告で公金受取口座の登録申請を行う方法」

「ゆうちょ銀行窓口」「郵便局窓口」で還付金を受け取る方法

ゆうちょ銀行や郵便局の窓口でも、還付金を受け取ることも可能です。

e-Taxによる確定申告では、受け取り方法の選択画面で「ゆうちょ銀行の各店舗又は郵便局窓口での受取り」を選択します。

書面で確定申告するのであれば、確定申告書の「還付される税金の受け取り場所」に受取りを希望する郵便局名などを記入してください。

確定申告後に、「国庫金送金通知書」が届きます。通知書が届いたら、指定したゆうちょ銀行の各店舗や郵便局窓口に以下の書類を持参し、還付金を受け取ります。

窓口で受け取る際に必要な書類

  • 国庫金送金通知書
  • 身分証明書(運転免許証、国民健康保険被保険者証など)
    ※代理人が受け取るときは代理人の身分証明書が必要窓口

還付金の振り込みが確認できないときの対処法

還付金の振り込みが確認できないときの対処法を、e-Taxで確定申告をした場合、税務署に持ち込み・郵送をして確定申告した場合のそれぞれについて解説します。

e-Taxで確定申告をした場合

e-Taxの利用者識別番号(e-Taxを使用するために必要な16桁の番号)があれば、e-Taxから還付金の処理状況を確認できます。

還付金の処理状況が確認できるようになるのは、e-Taxで確定申告をしてから約2週間後です。

手順としては、「e-Taxソフト(WEB版)」にログイン後、「マイページ」の「還付・納税関係」メニューから「還付金処理状況を確認する」ボタンを選択すると、還付金の処理状況が確認できます。

出典:国税庁「利用者識別番号とはなんですか?」
出典:国税庁「還付金処理状況確認について」

税務署に持ち込み・郵送をして確定申告した場合

書面で確定申告した場合は、確定申告書類を提出した管轄の税務署に電話で問い合わせして確認してみましょう。

e-Taxの利用者識別番号があれば、e-Taxにログインして確認も可能です。書面で確定申告をした場合は、e-Taxで申告状況が確認できるようになるまでに1ヶ月程度かかります。

出典:国税庁「還付金処理状況確認について」

まとめ

確定申告の還付金は、書面での確定申告なら1ヶ月~1ヶ月半程度、e-Taxからの電子申告なら3週間程度で受け取りが可能です。個人事業主は、予定納税や源泉徴収ですでに多く払っていたときや、損失の繰り戻しによる還付請求を行うときなどに還付が受けられます。

受け取り方法は、預貯金口座への振り込み、公金受取口座への振り込み、ゆうちょ銀行窓口・郵便局窓口での受け取りの3種類です。

確定申告の還付金が受け取りできるケースや流れを知っておくと、申告から受け取りまで滞りなく手続きできます。確定申告の還付金の受け取り方法を理解して、還付金の受け取りまで確実に進めましょう。

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よくある質問

確定申告してから還付金はいつ振り込まれる?

税務署窓口や郵送で2月・3月に確定申告した場合、還付金の受け取りまでに1~1ヶ月半程度かかります。e-Taxで確定申告した場合、3週間程度で処理されます。

還付金の受け取り時期を詳しく知りたい方は「確定申告してから還付金はいつ受け取れる?」をご覧ください。

確定申告の還付金の受け取り方法は?

確定申告の還付金の受け取り方法は、預貯金口座への振り込み、公金受取口座への振り込み、ゆうちょ銀行窓口・郵便局窓口での受け取りの3種類です。

確定申告の還付金の受け取り方法を詳しく知りたい方は「確定申告の還付金の受け取り方法」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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