監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所
個人事業主が記帳や確定申告書の作成を税理士に依頼すれば、経理作業の負担が減るものの記帳代行手数料や顧問料などの費用がかかります。税理士に依頼するかどうかは、メリットとデメリットを比較したうえで検討する必要があり、迷う人もいるはずです。
税理士に頼むのか、逆に税理士への依頼はいらないと考えて自分でやるのか、判断するための一律の基準があるわけではありません。記帳を自分でやる場合の手間や税理士に任せたときの費用などを踏まえて決める必要があります。
本記事では、個人事業主が税理士に依頼するメリット・デメリットや依頼できる業務の種類、費用相場を紹介します。
目次
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個人事業主に税理士はいらないと言われる理由
一昔前であれば、記帳や決算書の作成、確定申告書の作成・提出を自分でやろうとすると手間も時間もかかり負担がかかるため、個人事業主が税理士に依頼するケースが多く見られました。
しかし近年は、税理士に頼まず日頃の記帳や確定申告を自分でやる個人事業主も少なくありません。「個人事業主に税理士はいらない」「経理処理や税金の申告は税理士に依頼せず個人事業主が自分でやればいい」と言われることがあります。
その理由は主に以下の3つです。
個人事業主に税理士はいらないと言われる理由
- 会計ソフトが充実していて確定申告は自分でできる
- 税務処理でわからないことはネットで調べられる
- 税理士に依頼するとやり取りの手間が発生する
パソコンやネットが普及する前の時代は、帳簿や申告書を手書きで作成しなければならず手間がかかり、わからないことがあっても書籍など調べる手段が限られていたため、税理士への相談や依頼が必要でした。
しかし、会計ソフトが充実している現在では記帳や申告書の作成が比較的簡単にできるうえ、e-Taxを使えば自宅で確定申告書の提出まで終えられます。また、税金や会計の知識があまりない人でも、税理士に相談せずネット検索で調べて解決できるケースが多くなりました。
わざわざ税理士とやり取りする手間をかけなくても個人事業主自身で対応できることが増えたため、「税理士はいらない」という意見を耳にすることが多くなったと考えられます。
個人事業主が税理士に依頼するメリット
経理処理を自分でやると仕事に充てる時間が減り、会計知識があまりない人が自分でやるとミスをすることがありますが、税理士に任せればこれらの問題を解決できる点がメリットです。
本業に集中でる
日々の記帳や会計書類の作成を自分でやると時間も手間もかかります。経理作業を自分でやらずに税理士に任せれば、記帳や決算書の作成に時間を取られなくなり、本業に充てる時間を増やせる点がメリットです。
本業に集中できるようになり、営業や商品の生産などのために使える時間が増えれば、収入を増やせる可能性があります。
ミスなく正確に会計処理や申告ができる
日々の記帳や会計書類を作成するためには会計の知識が必要であり、税額を計算して申告するためには税金の知識が必要です。
正しい会計処理のために十分な知識を得るには、通常、ある程度の時間がかかります。個人事業主が日々の仕事をこなしながら、会計や税金について勉強して知識を身に付けるのは簡単ではありません。
会計・税務の専門家である税理士に任せれば、正確に会計処理や税額計算、申告手続きができ、安心して任せることができます。
個人事業主が税理士に依頼するデメリット
経理処理を個人事業主が自分でやれば費用がかからないのに対して、税理士に依頼する場合は、報酬の支払いが必要になって事業収支の点ではマイナスの影響が出ることや、税理士とのやり取りに手間がかかる点がデメリットです。
費用がかかる
記帳代行や申告書の作成など、個別に業務を依頼すればその都度料金がかかり、顧問契約を結ぶ場合は顧問料の支払いが必要です。また、顧問契約を結んでいても、申告書の作成や提出手続きの代行など、依頼する業務内容によっては別途料金がかかることがあります。
個人事業では、事業がまだ軌道に乗っておらず収支が赤字の場合や、黒字を達成していても資金面での余力があまりない場合も少なくありません。個人事業主の中には、費用をできる限りおさえて収支を改善したいと考えている人もいるはずです。
そのようなケースでは、顧問料として毎月1万円の費用が追加でかかるだけでも、事業収支への影響が小さくありません。税理士に依頼して会計業務の作業負担は減っても、逆に費用負担がデメリットとなる場合があります。
税理士とのコミュニケーションに時間がかかる
税理士に記帳をしてもらうためには、記帳に必要な資料としてレシートや請求書、銀行の入出金明細などの資料を税理士に送らなければいけません。
資料を郵送する手間がかかるうえ、郵送した資料の内容について税理士から電話やメールで質問や確認が行われることがあり、回答する手間や時間がかかります。
たとえば、レシートや領収証に書かれた購入品の名称を税理士が確認した際、事務所で使う備品の購入なのか製品製造で使う物品の購入なのか判別できないケースです。記帳時に消耗品費と原材料費のどちらに分類すべきか、資料で判別できなければ税理士から確認が行われます。
どのように仕訳すべきか、郵送された資料を見ただけでは税理士が判断できないケースは少なくありません。資料の内容について照会があるたびに回答していると、税理士とのやり取りに時間を取られることになります。
税理士に依頼できる業務の種類
一般的に税理士に依頼する業務は主に以下の4つです。
- 記帳代行
- 税務書類作成
- 税務代理
- 税務に関する相談
このうち「税務書類作成」「税務代理」「税務に関する相談」の3つは税理士の独占業務です。税理士以外は業務として行うことはできないので、専門家に依頼するときは税理士に依頼しなければいけません。
出典:国税庁「2 税理士の業務」
記帳代行
記帳代行とは、帳簿作成業務を代行するサービスです。レシートや請求書、預金口座の入出金明細書など、記帳に必要な資料を税理士に渡すことで記帳から帳簿の作成まで任せられます。
記帳代行は記帳代行業者など税理士以外でも依頼できます。しかし、税理士の独占業務である申告書の作成まで頼むなら、記帳代行も含めて税理士にまとめて依頼するほうが効率的です。
クラウド型の会計ソフトを使って税理士に仕訳の入力をしてもらうケースでは、個人事業主も自分のパソコンからログインすれば入力状況や帳簿を確認できます。
出典:国税庁「2 税理士の業務」
税務書類作成
税務書類作成とは、税務署などの役所に提出する税務関係の書類を作成する業務です。税金に関する書類の作成を行う権限が税理士にはあるので、個人事業主であれば確定申告書の作成などを依頼できます。
税務書類にはさまざまな書類が含まれ、法人・個人の決算書や源泉徴収票、法定調書などの作成の代行が税理士には可能です。個人事業主が自分でこれらの書類を作成すると手間も時間もかかりますが、税理士に任せれば手間がかからずに済みます。
出典:国税庁「2 税理士の業務」
税務代理
税務代理とは、税金の申告や納付、税務調査への対応を代理で行う業務です。税理士は、企業や個人に代わって税金の申告を行うことができ、税務調査が入ったときの対応や不服申立なども代理で行えます。
税務調査への対応をはじめとして、税金に関する業務や手続きの中には一般の人では対応が難しいものも少なくありません。個人事業主自身では対応できない場合でも、専門家である税理士であれば安心して任せることができます。
出典:国税庁「2 税理士の業務」
税務に関する相談
税務に関する相談とは、申告や税金の計算方法、節税に関する相談などです。これらの相談に乗ることは税理士の独占業務なので、税金に関して相談したい場合は税理士に相談します。
税理士と顧問契約を結び、税金に関する相談をいつでもできるようにしておけば、確定申告や節税、法改正対応などについて随時相談できます。法改正に関する情報を把握しやすくなれば、対応漏れが起きたり改正直前に慌てたりすることがなくなるので安心です。
出典:国税庁「2 税理士の業務」
個人事業主が税理士に依頼すべきタイミングは?
税理士への依頼はいらないと当初考えていた場合でも、事業を行う中で状況が変わって、税理士へ依頼したほうがよい場合があります。個人事業主が税理士に依頼すべきタイミングは主に次の2つです。
- 売上が増加したとき
- 開業するとき
売上が増加したとき
売上が増加すると、一般的に取引の量が増えるため記帳が大変になります。また、取引の量が増えれば取引の種類も増えるので、さまざまな種類の取引を適切に仕訳できるだけの会計知識が必要です。
仕訳量が増えて自分では対応し切れなくなってきたら、税理士への依頼を検討しましょう。売上が増加すると税務調査に入られる確率が相対的に上がり、より正確な会計処理が求められるので、税理士に任せるほうが安心です。
また、売上が1,000万円を超えると翌々年から消費税の課税対象になり(インボイス登録している場合は異なります)、消費税に関する知識も求められます。所得税や消費税など、いくつもの種類の税金の知識を個人事業主が身に付けることは簡単ではないので、専門家である税理士へ相談・依頼することを検討してください。
開業するとき
開業時には、開業届や青色申告承認申請書、給与支払事務所開設届など、ケースに応じてさまざまな書類の作成や手続きが必要です。書類の作成や手続きを税理士に任せることができれば、何かと忙しい開業時の負担を軽減できます。
また、開業時に提出する書類の中には、青色申告承認申請書など提出期限が定められているものがあります。青色申告承認申請書を期限までに提出しないと青色申告ができなくなるなど、書類の提出期限を過ぎると税務上不利になる場合があるので注意が必要です。
税理士に書類の作成や提出を依頼しておけば、開業時の忙しさの中で提出し忘れる心配がなくなり、開業後の記帳や申告、納税についても相談や依頼をすることができます。
税理士に依頼するときの費用相場
税理士に支払う報酬額は、どのような業務を依頼するかによって変わり、税理士事務所によっても金額が異なります。税理士に依頼する主な業務内容と費用相場は以下の通りです。
【個人事業主の税理士報酬平均相場】
年商 | 顧問相場(月額) | 申告代行(年額) | 記帳代行(月額) |
---|---|---|---|
~1,000万円 | ¥13,000 | ¥76,000 | ¥6,000 |
1,000~3,000万円 | ¥17,000 | ¥96,000 | ¥7,000 |
3,000~5,000万円 | ¥21,000 | ¥116,000 | ¥10,000 |
5,000万円~1億円 | ¥28,000 | ¥145,000 | ¥13,000 |
1億~ | 要相談 | 要相談 | 要相談 |
※フリー税理士認定アドバイザーをもとに調査したアンケート結果をもとに、紹介しています。詳しい内容を知りたい方は税理士COMPASSの「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」をご覧ください。
税理士の報酬体系でよく見られるのは、顧問契約を結んだうえで、確定申告や記帳代行を依頼する際は顧問料にプラスして料金がかかるタイプです。
顧問料は、顧問契約に含む業務範囲や依頼する個人事業主の売上の規模などによって変わります。月額1万円以下の顧問料で依頼できるケースもありますが、売上規模が大きいと顧問料は上がる傾向にあります。この傾向は、確定申告の作成・提出代行や記帳代行でも同じです。
確定申告書の作成や提出の代行の費用相場は5~10万円で、売上規模が大きければ10万円以上かかることもあります。また、白色申告か青色申告かによって料金が変わる場合があります。
まとめ
近年は会計ソフトが充実したことで、記帳や決算書の作成を個人事業主が自分でできるようになり、わからないことがあってもネット検索で簡単に調べられるようになりました。あえて税理士に相談する必要性を感じず、「税理士はいらない」と考える人もいるかもしれません。
しかし、個人事業主が税理士に依頼すべきかどうかは、依頼するメリットやデメリット、事業の状況などを踏まえて検討すべきです。税理士への依頼はいらないと当初判断した場合でも、事業が拡大して経理作業の負担が増せば、税理士への依頼を検討すべきケースもあります。
取引量や仕訳量が増えてきたときや開業するときは税理士への依頼を検討してみましょう。
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よくある質問
個人事業主に税理士はいらないと言われる理由は?
個人事業主に税理士はいらないと言われる理由としては、会計ソフトが充実して帳簿の作成や確定申告を自分でできるようになったことなどが挙げられます。
詳しくは「個人事業主に税理士はいらないと言われる理由」をご覧ください。
個人事業主が税理士に依頼するメリットは?
(h3)
個人事業主が税理士に依頼する主なメリットは、本業に集中できることとミスなく正確に会計処理や申告ができることです。
詳しくは「個人事業主が税理士に依頼するメリット」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。