国民健康保険に加入し、保険料を支払っている方は、確定申告で控除を受けることができます。
本記事では、確定申告で国民健康保険料の控除手続きが必要かどうかを調べる方法や、国民健康保険料を控除することで受けられる還付金の金額を計算する方法などについてご解説します。
2024年提出(令和5年分)の確定申告アップデート情報
所得税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年3月15日(金)
消費税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年4月1日(月)
※ 贈与税の申告・納税期間:2024年3月15日(金)まで
<2024年(令和5年分)の確定申告のポイント>
- 「源泉徴収票・国民年金基金掛金・iDeCo・小規模企業共済掛金」が追加されるなど、マイナポータル連携をすることで自動入力できる対象が増えます。
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、消費税の申告書を作成できるようになる予定です。今回、インボイス登録によって課税事業者になり、消費税の納付が必要になった方はチェックしましょう!
詳しくは国税庁ホームページ「令和5年分 確定申告特集」をご参照ください。
目次
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国民健康保険とは
日本は、すべての国民が何らかの公的保険に加入することが義務付けられています。
<おもな健康保険>
- 健康保険(社会保険)…企業で加入している健康保険で、社員が対象
- 共済組合…公務員、私学の教職員が対象
- 船員保険…船員が対象
- 後期高齢者医療制度…75歳以上及び65~74歳で一定の障害のある人が対象
- 国民健康保険…上記以外の人
自分がどの健康保険に加入しているかは、保険証を確認すれば一目でわかります。例えば、保険証の左上が「健康保険」と書かれていて、その下に会社名や、会社名+健康保険組合が書かれていれば、その会社が健康保険に加入していることになります。
国民健康保険の場合は、下の見本のように左上に「国民健康保険被保険者証」と書かれ、下の方に保険者名(発行所)が自治体となっています。
引用元:大田区ホームページ「保険証」
国民健康保険に加入している人
国民健康保険に加入している人は主に次のような人です。
- 自営業を営む個人事業主
- 企業を退職して社会保険を継続していない無職の人
- 老齢年金の給付を受けている65歳未満の人
- 個人事業主が営む事業所で働いている場合などで、社会保険の強制加入事業所に該当せず、事業所が任意加入していない場合
- パートを掛け持ちしているなど2ヵ所以上で働いていて、勤務先の社会保険の加入要件を満たさない場合
確定申告をしなくても控除が受けられる場合
勤務先の年末調整で社会保険料が控除されている場合は、確定申告の必要はありません。一般的には、年末まで勤務している給与所得者で、給与から源泉徴収されている場合は、年末調整が行われますので確定申告が不要です。
退職により失業し、国民健康保険に加入している場合でも、年内に再就職先を見つけて、前の勤務先職の源泉徴収票や自分で支払った国民健康保険料の金額などの必要書類を提出すれば、年末調整で国民健康保険の控除を受けることができます。この場合、自分で確定申告をする必要はありません。
控除を受けるために確定申告が必要な場合
国民健康保険料の控除を受けるために確定申告をする必要があるのは、年末調整を受けていない場合です。退職後、12月分の給与の支払を受ける前に新たな仕事に就いていない場合や、年末調整は受けたものの、国民健康保険料の提出をしなかったために控除が受けられなかった場合などがあります。
年末調整や確定申告では、国民健康保険料の払込みを証明する書類は必要ありませんが、勤務先で金額を証明する書類の提示を求められることがあります。国民健康保険料の領収書を紛失した場合は、住んでいる市区町村の役所に申請して納付済額確認書をもらうことができます。
また、社内の年末調整書類の提出期限を逃してしまい、国民健康保険料の控除を受けられなかった場合でも、確定申告をすることで国民健康保険料の控除を受けることができます。
控除を受けられるかどうかの確認方法
確定申告で国民健康保険料の控除が受けられるのは、次のような人です。
- 年末調整を受けていない人
- 年末調整を受けていても国民健康保険料の控除を受けていない人
年収が103万円(基礎控除38万円と給与所得控除65万円の合計)以下であれば、国民健康保険料の控除を受けていなくても所得税はかかりません。
ただし、複数の会社に雇用されている場合は、主な勤務先の給与以外の収入とその他の所得が20万円を超えると、確定申告が必要になります。
この規定には除外規定があり、給与から基礎控除、または給与・退職所得以外の収入が20万円以下であれば、確定申告の義務はありません。
除外規定にするためには、給与所得の源泉徴収税額表の主たる勤務先では給料から甲欄で源泉徴収がされていて、主たる勤務先以外からは乙欄で源泉徴収されている必要があります。
※甲欄、乙欄とは、国税庁が作成している「給与所得の源泉徴収税額表」の税額欄のことです。主たる勤務先は甲欄を見て税額を算出し、主たる勤務先以外は乙欄を見て税額を算出します。
給与所得の源泉徴収税額表(月額表)(令和2年分)
引用元:国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)(令和2年分)」
例えば、2つの勤務先で60万円と50万円の収入を得ている場合、そのうちの1つは主たる勤務先以外となり、給料が少なくても源泉徴収の対象となります。確定申告の必要はありませんが、乙欄の「主たる勤務先以外」で徴収された税額が多すぎる場合は、還付申告をすることができます。
還付申告について詳しく知りたい方は、「還付申告とは?確定申告の締切後に還付を申請する」をご覧ください。
国民健康保険料控除のための確定申告手順
国民健康保険料を所得から控除してもらうために確定申告をする場合、以下のように手続きをします。
1.確定申告用紙を用意します
税務署へ取りに行く、郵送で依頼する、国税庁のホームページからダウンロードするという、3つの方法があります。
2.源泉徴収票を用意します
勤めていた会社やフリーランスで仕事をした会社から送付されます。
3.国民健康保険の納付済証明書を用意します
自治体により名称が違いますが、支払った金額がわかる書類です。送付がない自治体もあり、その場合は領収書、口座振替ならば通帳から計算します。
4.厚生年金など、他の社会保険の控除証明書を用意します
5.確定申告書に保険料の金額を記入し、税額を計算します
6.源泉徴収されている場合は通常、還付金の形で税金が戻ってきます
国民健康保険料の控除額の計算方法
国民健康保険料の控除のために確定申告をすることで、どの程度の減税効果があるのか見てみましょう。具体的なケースを設定して、「国民健康保険の控除がない場合」と「国民健康保険を控除した場合」の計算例を比較しています。
<31歳・独身のケース>
- 勤めていた会社を9月末日に退職
- 給与は月額給与40万円、ボーナスはなし、9カ月分の年収360万円
- 退職金の支給はなし
- 源泉徴収額は9ヵ月合計で14万8,590円
- 会社員時代の社会保険料(健康保険、厚生年金)総額は51万9,219円
- 退職後の3ヵ月間で支払った国民健康保険料は3期分で97,000円
国民健康保険料の控除がない場合の確定申告書の計算例
給与(カ)
360万円
給与所得(6)
給与360万円-給与所得控除額(下の速算表を元に計算)126万円=234万円
課税される所得金額(26)
給与所得234万円-社会保険料控除51万9,219円-すべての人に適用される基礎控除38万円=144万円(千円未満切り捨て)
所得税額(27)
課税所得144万円×所得税率5%=72,000円
復興特別所得税(41)
所得税額72,000円×2.1%=1,512円
所得税及び復興特別所得税額(42)
所得税額72,000円+復興特別所得税1,512円=73,512円
還付される税金(48)
源泉徴収14万8,590円-所得税及び復興特別所得税額73,512円=75,078円
※計算内の括弧で囲んだカタカナや数字は、上の申告書の欄に対応しています。
<給与所得控除の速算表>
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
※令和2年分以降
参考・引用元:国税庁「給与所得控除」
<所得税の税率>
[令和2年4月1日現在法令等]
所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5%から45%の7段階に区分されています。課税される所得金額(千円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。)に対する所得税の金額は、次の速算表を使用すると簡単に求められます。
<所得税の速算表(平成27年分以降)>
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円までで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
参考・引用元:国税庁「所得税の税率」
国民健康保険料を控除した場合の確定申告書の計算例
国民健康保険料を3期分で97,000円納めた場合、会社員として支払った社会保険料の519,219円と合わせて、「社会保険料控除(10)」は616,219円となります。
上記の計算式を適用すると、所得税と復興特別所得税の合計が68,560円なので、還付額は80,030円となります。国民健康保険料の控除により、還付金が4,952円増加しています。
今回はわかりやすさを優先させたため入れていませんが、国民年金の3ヶ月分48,620円も合わせて申告すると、このケースではさらに2,481円の還付金が増えます。
確定申告を簡単に終わらせる方法
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
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まとめ
確定申告で国民健康保険料の控除を受けると還付される税金は、収入やほかの所得控除額によって変わります。しかし、書類を書いて郵送、もしくは税務署に持っていくだけですので、年末調整で控除されていない人は確定申告で手続きをすることをおすすめします。
また、フリーランスや個人事業主の方で確定申告をする場合は、国民健康保険も所得から忘れずに控除しましょう。その際、経理や会計の知識がなくても確定申告書類を作成できる会計freeeがおすすめです。ステップに沿って簡単な質問に答えるだけで、国民健康保険料の控除も反映された状態の確定申告書類を作成することができます。