確定申告をすることで、最大で15種類の所得控除を受けることができます。
所得控除の中でも、誰でも利用できる基礎控除、家族のいる方が対象の配偶者控除、扶養控除などをよく耳にすると思います。個人事業主の方にはおなじみの社会保険料控除は、会社を辞めてから一定期間国民健康保険に加入している方も対象の控除です。
災害や盗難などに遭ったときに受けられる雑損控除や、障害者控除、寡婦控除、勤労学生控除などは、あまり馴染みがない方も多いと思いますが、控除の対象となる方は適切に申告することで節税に繋がります。
本記事では、一般的な所得控除から申告する機会が少ない所得控除まで幅広く解説していきます。
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目次
- 所得控除とは
- 所得控除15種類一覧
- 誰でも一律48万円の控除が受けられる「基礎控除」
- 医療費が通院費を含めて10万円以上なら「医療費控除」を受ける
- 災害や盗難などにあったら「雑損控除」を受ける
- 寄付したら「寄附金控除」を受ける
- 年末調整で「生命保険料控除」を受け忘れたら還付申告する
- 年末調整で地震保険料の控除を受け忘れたら「地震保険料控除」の申告
- その年に増えた家族分の「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」
- 「社会保険料控除」と「小規模企業共済等掛金控除」を受ける
- 「障害者控除」「ひとり親控除」「寡婦控除」「勤労学生控除」を受ける
- 税額控除の種類
- 2022年の税制改正で住宅ローン控除の適用期限・控除率が見直された
- まとめ
- 確定申告を簡単に終わらせる方法
所得控除とは
所得控除とは、所得税を算出する際に、一定の要件に当てはまる場合に、所得から差し引かれるものです。
所得控除には、大きく分けて「物的控除」と「人的控除」があります。物的控除とは、社会政策的な配慮から設けられる控除で医療費控除や寄附金控除などが該当します。
一方の人的控除とは、「ひとり親である」「配偶者がいる」など納税者の個人的な経済事情が反映される控除で配偶者控除やひとり親控除が該当します。
物的控除 | 人的控除 |
・雑損控除
・医療費控除 ・社会保険料控除 ・小規模企業共済等掛金控除 ・生命保険料控除 ・地震保険料控除 ・寄附金控除 |
・障害者控除
・寡婦控除 ・ひとり親控除 ・勤労学生控除 ・配偶者控除 ・配偶者特別控除 ・扶養控除 ・基礎控除 |
さらに、控除には大きく分けて「所得控除」と「税額控除」があり、所得控除が課税対象となる所得額を減らすのに対して、税額控除は所得税額から一定金額を控除するもの、つまり税金そのものを減らすことができる制度です。
<所得税額の算出フロー>
所得控除15種類一覧
所得控除には15種類の控除があります。それぞれを簡単にまとめました。
所得控除一覧
控除の種類 | 概要 | 控除額 |
雑損控除 | 災害や盗難、横領によって損害を受けた時に適用される | 以下のいずれか多い方 ・(差引損失額)-(総所得金額等)×10% ・(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円 |
医療費控除 | 一定額以上の医療費を支払った場合に適用される ※生計を同じくする配偶者やその他の親族も含まれる | (支払った医療費-保険金などで補填される金額)-10万円 ※その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等×5% |
社会保険料控除 | 健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料を支払った場合に適用される ※生計を同じくする配偶者やその他の親族も含まれる | 支払った保険料の合計 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済の掛金を支払った場合に適用される | 支払った掛金の合計額 |
生命保険料控除 | 生命保険や介護医療保険、 個人年金保険で、支払った保険料がある場合に適用される | 一定の方法で計算した金額 (最大12万円) |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った場合に適用される | 一定の方法で計算した金額 (最大5万円) |
寄附金控除 | ふるさと納税や認定NPO法人等に対して寄附をした場合に適用される | 「寄附金支出合計額」と 「総所得金額等 ×40%」 のいずれか少ない方-2,000円 |
障害者控除 | 納税者や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合に適用される | 一人につき、 ・障害者27万円 ・特別障害者40万円 ・同居特別障害者75万円 |
寡婦控除 | その年の12月31日時点で「ひとり親」に該当しない寡婦に適用される ※寡夫控除は、2020年度分より、ひとり親控除に変更 | 27万円 |
ひとり親控除 | 納税者がひとり親であるときに適用される ※ひとり親控除は2020年分の所得税から適用 | 35万円 |
勤労学生控除 | 学校に行きながら働いている場合に適用される ※ただし、合計所得金額が75万円以下 | 27万円 |
配偶者控除 | 配偶者の合計所得金額が48万円以下の場合に適用される (給与のみの場合は給与収入が103万円以下) | ・一般控除対象配偶者は最大38万円 ・老人控除対象配偶者は最大48万円 (控除対象配偶者のうち年齢が70歳以上) |
配偶者特別控除 | 納税者の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円超133万円以下である場合に適用される | 配偶者の所得金額によって 最大48万円 ※令和2019年分以前は38万円 |
扶養控除 | 16歳以上の子どもや両親などを扶養している場合に適用される | ・一般控除対象扶養親族は38万円 ・特定扶養親族は63万円 (扶養親族が19歳以上23歳未満) ・老人扶養親族は最大58万円 |
基礎控除 | 全ての人に適用される | 所得金額によって最大48万円 |
出典:国税庁『No.1100 所得控除のあらまし』
会社員など給与所得者の場合、多くの所得控除は年末調整で控除できますが、「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」に関しては、個人で確定申告をしなければ適用されませんので注意しましょう。
ここからは、各種控除ごとに詳しく解説します。
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誰でも一律48万円の控除が受けられる「基礎控除」
基礎控除とは、適用を受ける要件がなく誰でも利用できる所得控除です。控除できる金額は一律48万円です。
その年の所得が48万円以下の場合は、基礎控除を引くことで所得がゼロになるので、税金を払う必要がなく、確定申告も不要です。
なお、2020年分(令和2年分)以降の確定申告では、基礎控除が38万円から48万円に引き上げられました。また、源泉所得税も変更されていますので、2021年(令和3年)以降の確定申告の際には注意が必要です。
医療費が通院費を含めて10万円以上なら「医療費控除」を受ける
医療費控除は、病気やケガで医療費が発生した場合に適用できます。控除できる金額は、支払った医療費から受け取った保険金や給付金を引いた額から10万円を差し引いた金額となります。
つまり、原則として1年間に10万円以上の医療費を支払った場合は、医療費控除の適用を受けることができます。
医療費控除の対象となるのは治療費だけでなく、電車やバスでの通院交通費(付き添い人も含む)、処方箋で発行された薬、さらには一般の薬局で購入した薬であっても「セルフメディケーション制度」の対象となる薬であれば、医療費控除を受けることができます。
控除額は以下のように算出します。
医療費の控除額
- (実際に支払った医療費の合計額 - 受領した保険金や給付金額)- 10万円
- 所得が200万円以下の人は、総所得金額等 × 5%
所得が200万円以下の場合は適用要件が緩和されます。
共通の家計費から医療費を支払っていれば家族全員分の医療費控除をまとめて申告できます。確定申告の際には領収書が必要になりますので、捨てずに保管するようにしましょう。夫婦共働きでそれぞれの所得に差がある場合は、所得の多いほうが、申告した方が還付額が多くなります。
上述したように、医療費控除は年末調整の対象外となるため、個人で確定申告をしなければなりません。
【関連記事】
医療費控除のしくみとは?控除の対象や申請方法について
セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制は、2017年(平成29年)から始まった新しい医療費控除制度(特例)で、所得金額に応じて一定の金額を医療費控除として控除できる制度です。
2017年1月1日から2021年12月31日までの間に、自分または配偶者など生計を同じくする親族のために特定一般用医薬品等購入費を支払った場合、一定の金額の所得控除(医療費控除の特例)を受けることができます。
特定一般用医薬品等購入費とは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から、ドラッグストアで購入できるOTC医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)の購入費を指します。
出典:国税庁「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】」
セルフメディケーション税制について詳しく知りたい方は、別記事「セルフメディケーション税制とは」をあわせてご確認ください。
災害や盗難などにあったら「雑損控除」を受ける
雑損控除とは、災害や盗難、横領などで資産に損害を受けた場合に利用できる控除です。火事や泥棒・空き巣被害などさまざまな場面で利用できます。
雑損控除は、医療費控除と同様に年末調整の手続きができないため、確定申告をして申請する必要があります。また、損害額が大きく、その年の所得から控除することができない場合には、繰り越して翌年以降3年間の所得から控除できます。
雑損控除で控除できる金額は、次の2つのうちいずれか多い方の金額です。
雑損控除額
- 差引損失額‐総所得金額等×10%
- 差引損失額のうち災害関連支出の額‐5万円
差引損失額とは、損害保険金などで補償された金額を差し引いた金額のことです。災害により損失を被った場合は、災害減免法を適用できます。雑損控除と災害減免法を同時に適用することはできないので、節税効果の高いほうを選択します。
出典:国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
【関連記事】
災害や盗難の被害を受けた場合は確定申告で所得税の軽減を
寄附したら「寄附金控除」を受ける
寄附金控除とは、寄附をした際に受けることができる控除制度です。一般的に知られている「ふるさと納税」もこれに該当します。
控除の対象となるのは、以下の組織や団体への寄附です。
寄附金控除の対象になる組織や団体
- 国
- 都道府県、市区町村
- 政党、政治資金団体
- 住所地にある日本赤十字社の支部
- 公益財団法人、公益社団法人、学校法人など
- 認定NPO法人
- 震災関連の寄附金
出典:国税庁「一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」
寄附金控除の特徴としては、寄附金の金額を所得から差し引くことができるので、課税所得が減り、節税に役立つという点が挙げられます。ふるさと納税は所得税軽減だけでなく、寄附先から地元の特産品などが送られてくる人気の節税対策です。
寄附金控除を受ける場合は、寄附金額を証明する書類を提出する必要があります。寄附先から寄附金受領証明書が送られてくるので、破棄しないように注意してください。
なお、認定NPO法人・公共社団法人・政治活動への寄附金を行った場合は、所得控除である「寄附金控除」と、税額控除である「寄附金特別控除」のどちらかを選ぶことができます。一般的には、節税効果の高い税額控除を適用したほうが有利ですが、所得や寄附金の金額によって節税効果は異なります。
寄付金控除の詳細は関連記事を参照ください。
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あなたの寄付は控除の対象?確定申告と寄付金控除
年末調整で「生命保険料控除」を受け忘れたら還付申告する
会社であれば、年末調整で生命保険料控除の申請できます。そのためには、10月下旬に保険会社から送られてくる「控除証明書」を会社に提出する必要があります。提出を忘れてしまうと、年末調整では処理されません。
年末調整が間に合わなかった場合は、還付申告をすることで生命保険料控除の適用を受けられます。生命保険に加入していることを会社に知られたくない場合は、還付申告をすると良いでしょう。
平成24年からは、従来の一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除に加えて、介護医療保険料控除が新設されました。平成24年以降に介護保険や医療保険に加入した人は、一般の生命保険料控除とは別に介護医療保険料控除を適用することができます。
出典:国税庁「生命保険料控除」
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確定申告と生命保険の関係とは?生命保険料控除の基礎知識
年末調整で地震保険料の控除を受け忘れたら「地震保険料控除」の申告
地震保険料控除も生命保険料控除と同様に年末調整の手続きで適用できますが、申請を忘れてしまった場合は還付申告で対応できます。
地震保険料控除で控除できる金額は、支払った保険料の全額ですが、所得税の控除額は5万円までとなっています。住民税については、支払った保険料の半額を控除することができ、上限は28,000円となっています。
平成18年までは損害保険料控除がありましたが、現在は利用できません。しかし、経過措置として、平成18年12月31日までに契約した長期損害保険に加入している人は、損害保険料控除の適用を受けることができます。控除できる金額の上限は15,000円、地震保険料と合わせると50,000円となります。
区分 | 年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
(1) 地震保険料 | 50,000円以下 | 支払金額の全額 |
50,000円超 | 一律50,000円 | |
(2) 旧長期損害保険料 | 10,000円以下 | 支払金額の全額 |
10,000円超 20,000円以下 | 支払金額×1/2+5,000円 | |
20,000円超 | 15,000円 | |
(1)(2) 両方がある場合 | ー | (1)(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額 (最高50,000円) |
その年に増えた家族分の「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」
年末調整は11月に書類が会社に配布され、12月初旬に処理されます。年末調整以降に結婚や出産で家族が増えた場合は、必ず還付申告をして節税をしましょう。
結婚したら「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受ける
配偶者控除
配偶者控除は、納税者に所得税法上の「控除対象配偶者」がいる場合に受けられる控除です。控除対象配偶者の要件は、その年の12月31日に、次の4つの要件を全て満たしている人になります。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は対象外)
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと
なお、平成30年分以後は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません。
夫の合計所得金額が1,000万円以下で、結婚した妻の所得が48万円以下であれば、配偶者控除の申請ができます。もちろん、夫の所得が48万円以下の場合でも、妻は配偶者控除の適用を受けることができます。
配偶者控除額の金額は、以下の表のようになっています。なお、控除対象配偶者がその年の12月31日現在の年齢が70歳以上の場合、老人控除対象配偶者となります。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | 控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超 950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超 1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
配偶者特別控除
配偶者の所得が48万円を超える場合でも、配偶者の所得に応じて「配偶者特別控除」を受けることができます。所得基準は48万円から133万円の範囲内で段階的に決められています。
配偶者特別控除は、夫婦間で互いに受けることはできません。配偶者特別控除の要件は、以下のようになっています。
- 控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること
-
配偶者が次の要件全てに当てはまること
・民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は対象外)
・控除を受ける人と生計を一にしていること
・その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと
・年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(平成30年分から令和元年分までは38万円を超え123万円以下)であること - 配偶者が配偶者特別控除を適用していないこと
-
配偶者が「給与所得者の扶養控除等申告書又は従たる給与についての扶養控除等申告書」に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていないこと
(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く) -
配偶者が「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていないこと
(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く)
控除額は、控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額及び配偶者の合計所得金額に応じて以下の表のようになります。
配偶者特別控除の控除額(令和2年分以降)
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
配偶者の合計所得金額 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
扶養家族が増えたら「扶養控除」を受ける
配偶者以外の扶養家族が増えた場合は、扶養控除の適用を受けることができる場合があります。控除対象となるのは、扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の人です。
扶養控除額の金額は、以下の表のようになっています。
区分 | 控除額 | ||
一般の控除対象扶養親族 (年齢が16歳以上) | 38万円 | ||
特定扶養親族 (年齢が19歳以上23歳未満) | 63万円 | ||
老人扶養親族 (年齢が70歳以上) | 同居老親等以外の者 | 48万円 | |
同居老親等 | 58万円 |
70歳以上の親を扶養しているなど、特定扶養親族がいる場合は48万円の扶養控除を受けることができます。同居をしていれば、控除できる金額が58万円になります。
令和2年分の所得税について、扶養対象になる親族等の合計所得金額が10万円引き上げられました。これまで同一生計配偶者や扶養親族になる対象は、所得の合計が年間合計38万円以下でした。
令和2年分の年末調整、確定申告では48万円以下まで扶養控除の対象になりますので、扶養範囲で働ける年間所得が10万円多くなります。詳しくは、下記の国税庁のホームページを参照してください。
出典:国税庁「各種控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の改正(令和2年分以降)」
「社会保険料控除」と「小規模企業共済等掛金控除」を受ける
健康保険や公的年金の保険料を支払っている場合は、社会保険料控除の対象となります。
社会保険料控除は、支払った年金の全額が控除対象ですので、難しい計算は必要ありません。また、自分だけでなく、配偶者や子ども、親などの生計を一にする親族の保険料を支払っている場合、その金額も控除の対象となります。
確定拠出年金の掛け金を支払っていると間違えやすいのですが、これは社会保険料控除ではなく、小規模企業共済等掛金控除の対象になります。
出典:国税庁「社会保険料控除」
出典:国税庁「小規模企業共済等掛金控除」
「障害者控除」「ひとり親控除」「寡婦控除」「勤労学生控除」を受ける
ここまで説明してきた所得控除以外にも、障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除、勤労学生控除などがあります。
障害者控除
納税者、その配偶者(同一生計)、扶養親族が所得税法上の障害者である場合、一定額の所得控除を受けることができます。これを障害者控除といいます。
また、障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族がいる場合にも適用されます。
障害者控除の金額
- 障害者:27万円
- 特別障害者:40万円
- 同居特別障害者(※):75万円
(※)同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族で、納税者自身、配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常としている方です。
出典:国税庁「障害者控除」
ひとり親控除
納税者がひとり親の場合、一定額の所得税控除を受けることができます。これをひとり親控除といいます。ひとり親控除は、2020年(令和2年分)の所得税から適用されます。
ひとり親控除の対象となる人の範囲は、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと又は配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つの要件の全てに当てはまる人です。
- その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
- 生計を一にする子がいること(この場合の子は、その年分の総所得金額等が48)
- 合計所得金額が500万円以下であること
ひとり親控除について詳しく知りたい方は別記事「ひとり親控除とは? 改正された寡婦控除との違いについてもまとめて解説」をあわせてご確認ください。
寡婦控除
寡婦控除とは、寡婦になった場合に一定の条件を満たした寡婦(寡夫)が一定金額の所得が控除を受けることができるものです。
寡婦控除の対象となる人の範囲(令和2年分以後)は、原則としてその年の12月31日の現況で、いわゆる「ひとり親」に該当せず、次のいずれかに当てはまる人です。
- 夫(*1)と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額(*2)が500万円以下の人
- 夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
なお、この場合は、扶養親族の要件はありません。
(*1)「夫」とは、民法上の婚姻関係にある者をいいます。
(*2)「合計所得金額」とは、以下の合計額をいいます。
・純損失
・雑損失
・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失
・特定居住用財産の譲渡損失
・上場株式等に係る譲渡損失
・特定投資株式に係る譲渡損失及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を適用する前の総所得金額
・特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額
・株式等に係る譲渡所得等の金額
・上場株式等の配当所得等(上場株式等に係る譲渡損失との損益通算後の金額)
・先物取引に係る雑所得等の金額
・山林所得金額
・退職所得金額
納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象となりません。
勤労学生控除
納税者自身が勤労学生であれば、一定額の所得控除を受けることができます。これを勤労学生控除といいます。
勤労学生控除の対象となる人の範囲はその年の12月31日の現況で、次の3つの要件の全てに当てはまる人です。
- 給与所得などの勤労による所得があること
-
合計所得金額が75万円以下(令和元年分以前は65万円以下)で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
たとえば、給与所得だけの人の場合は、給与の収入金額が130万円以下であれば給与所得控除55万円を差し引くと所得金額が75万円以下となります。 -
特定の学校の学生、生徒であること
この場合の特定の学校とは、次のいずれかの学校です。- 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
- 国、地方公共団体、私立学校法の第3条に規定する学校法人、同法第64条第4項に規定する法人、これらに準ずる一定の者(注1)により設置された専修学校又は各種学校のうち一定の課程(注2)を履修させるもの
- 職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程(注2)を履修させるもの
(注1)(注2)については国税庁の「勤労学生控除」をご確認ください。
勤労学生控除の金額
勤労学生控除:27万円
また、以上いずれかの学校に当てはまるかどうか分からないときは、通学している学校の窓口でも確認できます。
税額控除の種類
最後に税額そのものから控除される「税額控除」の種類について解説します。
税額控除は所得控除と比べて、高い節税効果が期待できます。原則として確定申告をしなければ控除が適用されないので、該当する控除がないか必ず確認するようにしましょう。
主な税額控除は以下の表のとおりです。
税額控除の種類 | 概要 |
配当控除 | 総合課税の配当所得がある場合に、原則として、配当所得の金額の10%又は5%に相当する金額を控除するもの |
住宅借入金等特別控除 | 一定の要件を満たす住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額を基として計算した金額を一定期間控除するもの |
認定住宅の新築等をした場合の特別控除 | 認定長期優良住宅又は認定低炭素住宅の取得等をした場合に、標準的なかかり増し費用を基として計算した金額を控除するもの |
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除 | 一定の要件を満たす改修工事を含む増改築等を行った場合に、特定の増改築等に係る借入金等の年末残高の合計額を基として計算した金額を5年間控除するもの |
既存住宅に係る特定の改修工事等をした場合の特別控除 | 一定の要件を満たす改修工事又はこれらの改修工事を併せて行った場合に、一定の金額を控除するもの |
既存住宅の耐震改修をした場合の特別控除 | 自己の居住の用に供する家屋について住宅耐震改修をした場合に、一定の金額を控除するもの |
政治活動に関する寄付をした場合(政党等寄附金)の特別控除 | 政党又は政治資金団体に対して政治活動に関する一定の寄附金を支払った場合に、寄附金控除(所得控除)の適用を受ける場合を除き、一定額を控除するもの |
認定NPO法人等に寄付をした場合の特別控除 | 認定NPO法人等に対して一定の寄附金を支払った場合に、寄附金控除(所得控除)の適用を受ける場合を除き、一定額を控除するもの |
外国税額控除 | 日本で課税される所得の中に外国で生じた所得があり、その所得に対してその外国の法令により所得税に相当する税金が課税されている場合に、一定額を控除するもの |
このほかにも、税額控除には「試験研究を行った場合の所得税額の特別控除」「高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の所得税額の特別控除」など、さまざまな控除があります。
詳しくは国税庁のホームページ「税額控除」を参考にしてください。
2022年の税制改正で住宅ローン控除の適用期限・控除率が見直された
2022年の税制改正により住宅ローン控除の適用期限や控除率が見直されました。具体的な変更点は以下のとおりです。
住宅ローン控除の変更点
- 住宅ローン控除の適用期限が4年延長
(2025年12月31日までに入居した人が対象となる) - 住宅ローン控除率が1%から0.7%へ変更
- 新築住宅の控除期間が10年から13年に延長
-
住宅ローン控除適用対象者の所得要件
(1)合計所得金額3000万円以下から2,000万円以下に引き下げ
(2)合計所得金額1,000万円以下の場合、2023年以前に建築確認を受けた新築住宅の床面積が40㎡以上に緩和(改正前は50㎡) - 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネ性能が高い認定住宅等*については新築住宅等・既存住宅ともに借入限度額を上乗せ
(*)認定住宅等とは、認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅を指します。2024年以降に建築確認を受けた新築住宅については、省エネ基準への適合が要件化される見込みです。
出典:財務省「令和4年度税制改正の大綱」
まとめ
会社員やアルバイト・パートなどの給与所得者であれば、年末調整の際に所得控除も適用されます。しかし、「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」については個人で確定申告をしなければ控除されないので、注意しましょう。
また、年末調整の処理に間に合わなかった場合や申告を忘れていたなどの場合には、還付申告をすることで払い過ぎた税金の還付を受けることができます。
自身が払っている費用で所得控除や税額控除の対象になっているものはないか、年末調整や確定申告前に確認しておくとよいでしょう。
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確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
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