扶養控除とは、所得税の納税者に一定の要件を満たした扶養親族がいる場合に適用される控除で、所得控除の一種です。所得税額だけでなく、住民税額を算出する際にも控除の対象となります。
本記事では、確定申告における扶養控除の概要・対象者・控除額や、扶養控除の申請方法を解説します。
2024年提出(令和5年分)の確定申告アップデート情報
所得税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年3月15日(金)
消費税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年4月1日(月)
※ 贈与税の申告・納税期間:2024年3月15日(金)まで
<2024年(令和5年分)の確定申告のポイント>
- 「源泉徴収票・国民年金基金掛金・iDeCo・小規模企業共済掛金」が追加されるなど、マイナポータル連携をすることで自動入力できる対象が増えます。
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詳しくは国税庁ホームページ「令和5年分 確定申告特集」をご参照ください。
目次
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確定申告における扶養控除とは?
確定申告における扶養控除の対象は、控除対象の扶養親族がいる納税義務者のうち、年末調整を行わない個人事業主などです。確定申告書の第二表「配偶者や親族に関する事項」欄に、扶養家族の名前などを記載したうえで控除額が算出されます。
所得税における扶養控除では、配偶者を除いた一定の要件にあてはまる扶養親族のみが控除の対象となり、配偶者は配偶者控除と呼ぶ別の控除が適用されます。また、所得税における扶養控除と社会保険における扶養控除では、目的や要件が異なるため注意が必要です。
配偶者控除との違い
扶養控除と配偶者控除のどちらが適用されるかは、納税者が養うべきものの範囲が配偶者か、それ以外の親族かで決定されます。なお、配偶者控除には納税者の収入が1,000万円以下でなければ適用されないのに対し、扶養控除には納税者本人の所得制限はありません。
また、扶養控除には人数制限もなく、控除対象の対象となる扶養親族がいれば、すべてが控除対象となります。 配偶者控除の要件は以下のとおりです。
配偶者控除の要件
- 民法上の規定で配偶者と認められていること(内縁関係の方は該当しない)
- 扶養者と生計を一にしていること
- 1年間の所得額が48万円以下であること(給与のみの場合は、年収103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者として、年間一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告の専業専従者ではないこと
また、以下の記事でも、配偶者控除に関する詳細を解説しているので、こちらもあわせてご覧ください。
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扶養とは? 所得税の扶養と社会保険(健康保険と厚生年金保険)の扶養の違い
社会保険における扶養控除との違い
社会保険と確定申告での扶養控除は、申請先・扶養親族の範囲・所得要件が異なります。
確定申告 | 社会保険 | |
申請先 | ・居住地にある税務署 | ・所轄の年金事務所または事務センター |
扶養親族の範囲 |
・6親等内の血族と3親等内の姻族
・納税者と生計を一にしている親族 ・配偶者以外の親族 ・申請年中の所得見積額が48万円以下 |
・被保険者(扶養する人)とその配偶者の第3親等まで
・事実婚など同一生計の事実がある配偶者 |
被扶養者の所得要件 | ・合計所得金額が48万円以下 | ・年間収入が130万円未満 |
扶養控除の対象者に関しては本記事内の「扶養控除の対象者と控除額」を参考にしてください。
扶養控除の対象者と控除額
確定申告における扶養控除とは、納税者に一定の要件を満たす扶養親族がいる場合、要件に応じて所定の金額が課税所得から控除されることです。
所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額のことで、1月1日から12月31日までの所得をもとに確定申告を実施し、所得税の算出・納付が義務付けられます。
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所得とは? 収入との違いや種類別の計算方法を解説
扶養控除の対象者
以下に該当する人が、扶養控除の対象者です。
扶養控除の要件
- 6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族
- 年間の合計所得金額が48万円以下
- 青色事業専従者、または事業専従でない
- 他の人の扶養家族、控除対象配偶者になっていない
出典:国税庁「No.1180 扶養控除」
扶養控除の対象となる親族の範囲は、6親等内の血族と3親等内の婚族までとされています。
たとえば、自分の兄弟や叔父、叔母、6親等に該当する従兄弟の孫、3親等の姻族である配偶者の兄弟の子どもまで含まれます。
上記の扶養親族のうち、その年の12月31日時点で16歳以上の人が扶養控除の対象です。2010年度から実施された「子ども手当(2013年年4月より「児童手当」に変更)」により、15歳以下の子どもを扶養している場合は「子ども手当」が支給されるようになりました。手当を受給している代わりに、16歳未満の扶養家族は扶養控除の対象外となります。
また、親族に収入があっても、合計所得金額が48万円以下であれば扶養控除の対象です。所得金額は収入金額から必要経費や公的年金控除・給与所得控除を差し引いた金額を指します。
たとえば、被扶養者がアルバイトやパートなどの給与所得のみを得ている場合、年収103万円以下であれば扶養控除の対象となります。
所得金額の計算方法
所得金額 = 給与収入金額 - 給与所得控除
上記の計算式を使用した際の金額が48万円であれば扶養控除の対象です。給与所得控除は収入金額に応じて変わりますが、給与収入が162万5,000円までであれば控除額は55万円です。年間収入が103万円を超えてしまった場合は、扶養から外れてしまうため注意しましょう。
出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」
出典:国税庁「No.1180 扶養控除」
【関連記事】
給与所得控除とは?給与所得の計算方法や所得控除との違いついてわかりやすく解説
扶養控除の控除額
扶養控除の控除額は、区分により変動します。区分・控除額は以下を参考にしてください。
区分 | 控除額 |
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 |
特定扶養親族 | 63万円 |
老人扶養親族(同居していない) | 48万円 |
老人扶養親族(同居している) | 58万円 |
「特定扶養親族」その年における年齢が、19歳以上・23歳未満の扶養親族のことです。
扶養親族が年金受給者であれば控除額は48万円ですが、納税者もしくはその配偶者が納税者またはその配偶者の父母・祖父母と同居している場合は、10万円が加算された58万円が控除額となります。
なお、老人扶養親族における「同居」は、1年以上の入院などの療養が目的の場合は、納税者と別居していても同居しているとされます。ただし、老人ホームなどの施設に入居している場合に関しては、同居とは見なされません。
出典:国税庁「扶養控除」
扶養控除の申請方法
ここでは、扶養控除の申請方法について解説します。年末調整・確定申告での申告についてそれぞれ触れているので、自身がどちらに当てはまるか把握したうえで参考にしてください。
確定申告で申告する場合
扶養控除を確定申告書で申告する際は、申告書の「所得から差し引かれる金額」にある㉓へ控除額を記載してください。申告書へは、算出した金額を右づめで記載しましょう。
確定申告による扶養控除の申告は、以下の記事を参考に控除額を把握したうえで申告書に記載してください。
【関連記事】
【2023年最新】確定申告書の書き方を記入項目別にわかりやすく解説
出典:国税庁「令和5年分の所得税等の確定申告書(案)」
年末調整で申告する場合
給与所得者が年末調整で扶養控除を申告する場合は「扶養控除等(異動)申告書」を作成し、勤務先へ提出して申請します。扶養控除等(異動)申告書は、申告年の最初に給与が支払われる前日までに勤務先へ提出しなければなりません。
仮に記載内容に異動があった場合は、異動日後最初に給与の支払いを受ける前日までに異動内容を記載した申告書の提出が必要です。
扶養控除等(異動)申告書の書き方については以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
年末調整での扶養控除等申告書(記入例つき)
出典:国税庁「令和5年分扶養控除等(異動)申告書」
出典:国税庁「《記載例》令和5年分扶養控除等申告書」
まとめ
扶養控除とは、親族を扶養する人を対象にした控除のことです。所得税においては、配偶者を除いた一定の要件にあてはまる扶養親族のみが対象となります。
確定申告で扶養控除の適用を受ける際には、扶養控除の対象者や控除額、申請方法を把握したうえで正しく申告手続きを行いましょう。
確定申告を簡単に終わらせる方法
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
確定申告書を作成する方法は手書きのほかにも、国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用するなどさまざまですが、会計知識がないと記入内容に悩む場面も出てくるでしょう。
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よくある質問
扶養控除の控除額はいくら?
一般の控除対象扶養親族で38万円、特定扶養親族で63万円と、年齢や同居の有無により控除額は異なります。
詳しくは記事内「扶養控除の控除額」をご覧ください。
扶養控除における103万と130万の違いは?
年間収入が103万円以下であれば扶養控除の対象である「合計所得金額が48万円以下」に該当します。しかし、年収130万円以上になってしまうと扶養対象から外れてしまうため、控除が受けられません。
詳しくは記事内「社会保険における扶養控除との違い」と「扶養控除の対象者」をご覧ください。