監修 税理士法人虎ノ門共同会計事務所
確定申告の内容を間違えたら、申告後に修正が可能です。修正が必要な場合、状況によって対応すべき手続きが異なります。
確定申告書の提出期限内に誤りに気付いたら「訂正申告」、確定申告書の提出期限を過ぎてから誤りに気付いたら、「更正の請求」または「修正申告」で対応します。
更正の請求は、「申告期限後に税金を多く納めすぎた」もしくは「還付金額を少なく申告した」際の対応です。一方で修正申告は、「申告期限の後に税金を少なく納めていた」「還付金額を多く申告していた」場合の対応です。
本記事では、確定申告の内容を間違えたら対応する3つの手続き方法や、必要な書類、期限について解説します。確定申告の修正を正しく行わないと、ペナルティとして追加で課税される恐れがあります。適切な方法で修正するためにも、本記事を参考にしてください。
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確定申告のやり方・流れとは? 分からない人でもわかりやすく徹底解説
目次
- 確定申告の3つの修正方法
- 訂正申告の方法|確定申告の期限前の修正
- 電子申告の訂正申告方法
- 訂正申告のやり方と注意点
- 訂正申告に必要な書類
- 訂正申告の期限
- 更正の請求の条件|確定申告の期限後の修正
- 更正の請求のやり方(方法)
- 更正の請求の注意点
- 更正の請求に必要なもの
- 更正の請求をすることが多い具体的なケース
- 更正の請求の期限
- 修正申告の条件|確定申告の期限後の修正
- 修正申告のやり方(方法)
- 修正申告に必要な書類
- 修正申告の期限(注意点)
- 修正申告のペナルティ
- 確定申告で不正をした場合のペナルティ
- 悪質な場合は刑事罰の対象に
- やむを得ない理由がある場合は期限の延期申請もできる
- まとめ
- 確定申告を簡単に終わらせる方法
- よくある質問
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確定申告の3つの修正方法
確定申告を修正するための手続きは、以下の3つに分けられます。
確定申告の修正方法
- 訂正申告
- 更正の請求
- 修正申告
これらの違いのひとつは、修正を行う時期です。
確定申告期限前の3月15日以前に、提出した確定申告書の誤りに気付いたら、「訂正申告」の取り扱いになります。
一方で、確定申告期限後の3月16日以降に、提出した確定申告書の誤りに気付いた場合の対応方法は、「更正の請求」もしくは「修正申告」です。
更正の請求と修正申告のどちらで対応するかは、下表のとおり税額が多いか少ないかによって決まります。
確定申告の期限前 | 確定申告の期限後 | |
---|---|---|
訂正申告 | ・税額が多かった場合 ・還付が少なかった場合 | ・税額が少なかった場合 ・還付が多かった場合 |
更正の請求 | 修正申告 |
なお、2023年分の確定申告書の提出期限は、所得税等(贈与税を含む)は2024年3月15日(金)まで、個人事業主の消費税等は2024年4月1日(月)までとなっています。詳しくは国税庁のホームページをご確認ください。
訂正申告の方法|確定申告の期限前の修正
訂正申告は、確定申告の期限内に修正を行う場合を指します。税務署では、申告期限内に2つ以上の確定申告書が同じ人から提出された場合、最後に提出された申告書を正式なものとして取り扱います。
確定申告書を一度提出してから申告期限内に誤りや不備に気付いたなら、「訂正申告」によって訂正が可能です。
電子申告(e-Tax)の場合、オンライン上で申告内容を訂正できます。注意点としては、訂正した帳票だけでなく全ての帳票の再送信が必要です。訂正したことを税務署に連絡する必要はありません。
電子申告の訂正申告方法
電子申告の訂正申告方法
- 「申告・申請等一覧」の画面を開き、再送信するデータを選択し、訂正する帳票を開く
- 内容を訂正して「作成完了」をクリック
- 「別名保存確認」という画面が表示されたら、「申告・申請等名」欄に30文字以内の文字を入力して「別名で保存」をクリック
- 「署名可能一覧」画面から、再送信するデータを選び、電子署名を付与
- 「送信可能一覧」画面が表示されたら送信
訂正申告のやり方と注意点
訂正申告の手続きは確定申告と特に変わった部分はなく、修正した書類を税務署の窓口や郵送で提出することで完了します。修正した書類を提出する際は、以下の3点に注意しましょう。
訂正申告の注意点
- 提出済みの添付書類は控えのコピーが必要
- 表題の余白に赤字で訂正申告と明記
- 還付申告が処理済みか確認
1. 提出済みの添付書類は控えのコピーが必要
控除証明書や医療費の領収書などの添付書類を当初申告で提出済みであることが多いため、収受印のある当初申告の控えをコピーして添付します。
2. 表題の余白に赤字で訂正申告と明記
税務署内で分かりやすくするため、表題の余白などに赤字で「訂正申告」と明記しておきましょう。また、併せて訂正前の確定申告書の提出年月日と申告税額を赤で記載します。
このように明記しておくことで、最初に確定申告をした税務署に提出すれば、スムーズに対応してもらえます。
3. 還付申告の処理が済んでいるか確認
提出した確定申告書が還付申告に該当し、すでに税務署側で還付の処理を行っている場合は、期限内に訂正申告を行っても訂正が間に合いません。
このような場合は、「税金の精算手続き」が必要です。気付いた時点で、すぐに税務署に問い合わせましょう。
訂正申告に必要な書類
訂正申告に必要なもの
- 訂正済の確定申告書
- 本人確認書類
- 新たに必要になった書類
訂正申告では、訂正が必要な部分だけ記載した申告書の提出は認められていません。訂正が不要な部分も必ず記入しましょう。
訂正申告の期限
申告内容の誤りに気がついたら、提出期限内に訂正申告をする必要があります。申告期限後に内容の訂正を行うことになると手続き方法が変わり、場合によっては追加で課税されるおそれがあります。必ず期限内に行うよう注意してください。
更正の請求の条件|確定申告の期限後の修正
更正の請求は、確定申告の期限が過ぎてしまった場合の修正手段のひとつです。
更正の請求に該当する要件は、先の申告で税金を多く申告してしまった場合、もしくは還付される税金を少なく申告していた場合になります。更正の請求によって、税務署により妥当と認められた場合は、還付が行われます。
更正の請求が行える期限は、原則として法定申告期限より5年以内と定められています。
更正の請求を行う条件
- 法定申告期限を過ぎてから修正する場合
- 税金を多く申告してしまった場合
- 還付される税金を少なく申告してしまった場合
- 原則として法定申告期限より5年以内である場合
更正の請求のやり方(方法)
更正の請求を行うために、まず作成するのは「所得税及び復興特別所得税の更正の請求書」です。そのうえで事実を証明する書類を添付して、所轄の税務署に持参または郵送、e-Tax(電子申告)で提出します。
たとえば、必要経費の更正の際に事実を証明する書類としては、計上漏れの経費領収書などが該当します。
更正の請求書は、国税庁のホームページ「確定申告書等作成コーナー」の「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」から簡単に作成が可能です。画面の案内どおりに金額などを入力すれば、税額などを自動で計算してくれます。
確定申告書等作成コーナーで作成した更正の請求書は、印刷して税務署に提出することも可能です。e-Taxで更正の請求を行う場合は、該当する年度を選んで内容を訂正します。添付書類の様式が国税庁の仕様にあっていない場合は、所轄の税務署に別途郵送します。
更正の請求の注意点
更正の請求にあたっては、内容が認められずに却下されるケースもある点には注意しましょう。却下された理由は通知されるため、もし不服がある場合は、国税不服審判所へ審査請求を求めることも可能です。
なお、虚偽の内容で更正の請求を行った場合は罰則が定められており、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
また、還付が見込まれるとしても、当初の申告に確定した税金を納める義務がなくなることはありません。まずは税金を納め、その後に更正の請求により税金が還付されるかどうかの決定を待ちましょう。
更正の請求に必要なもの
更正の請求に必要なもの
- 所得税及び復興特別所得税の更正の請求書
- 更正の請求をする理由を証明する書類
- 本人確認書類
更正の請求書は、国税庁のホームページから入手できます。マイナンバーの記入が必要になるため、本人確認書類の提示またはコピーの添付が必要です。申告済みの確定申告書の内容を基に、修正したい部分を更正の請求書に記入します。
住所や氏名の箇所には提出済みの確定申告書と同じ住所と氏名を記入し、「更正の請求の年分と種類」には更正対象となる提出済みの確定申告書の年分を記入します。
更正の請求をすることが多い具体的なケース
更正の請求を行うケースとして、医療費の記入漏れや住宅ローン控除を適用するケースが挙げられます。
医療費の記入漏れ
医療費の記入漏れは、医療費控除を受けられるはずの医療費を計上していなかったために、更正が必要となるケースです。更正理由を証明できる病院の領収書などを添付すれば、基本的に還付を受けられます。
扶養控除の記入の誤り
扶養控除の記入の誤りは、特定扶養控除を受けられる親族について、誤って一般の扶養家族として税務申告してしまったケースです。この場合、一般の扶養家族控除は38万円なので、特定扶養家族の扶養控除63万円との25万円の控除分を修正することになります。
このケースでは、基本的に証明書類は必要はありません。ただし、配偶者控除の場合は「配偶者の所得を証明する書類」が必要です。
住宅ローン控除の修正
住宅ローン控除の修正が必要なケースでは、還付額を増額する事例が多くなっています。やり方自体は他の更正と同じですが、税務申告時に住宅ローン控除の適用申請を申告する必要があります。
更正の請求の期限
更正の請求が行える期限は、法定申告期限より5年以内と定められています。5年を過ぎると請求が行えなくなるので、注意しましょう。
2023年分の確定申告の法定申告期限は2024年3月15日になるため、2029年3月15日が請求の行える期限となります。
なお、更正の請求は確定申告とは異なるため、確定申告の期限に関係なく5年以内であればいつでも提出できます。ですが、誤りに気がついたら早めに請求しておくようにしましょう。
給与所得者の場合、控除漏れがあった翌年1月1日から5年間が更正を請求できる期限となります。たとえば、2023年分は2028年12月31日までが更正の請求期限となりますのでご注意ください。
修正申告の条件|確定申告の期限後の修正
確定申告の修正が法定申告期限を過ぎてしまった場合で、かつ所得税を少なく申告していた場合、還付を多く申告していた場合は修正申告が必要になります。
修正申告を行う条件
- 法定申告期限を過ぎてから修正する場合
- 税金を少なく申告してしまった場合
- 還付される税金を多く申告してしまった場合
修正申告のやり方(方法)
修正申告を行う場合は確定申告書に加え、「所得税及び復興特別所得税の修正申告書(第五表)」が必要になります。
修正申告書は、修正申告による税額や以前提出した確定申告書の異動事項などを記載する書類になりますので、忘れずに提出するようにしましょう。
修正申告に必要な書類
修正申告に必要な書類は、以下のとおりです。
修正の申告に必要な書類
- 確定申告書
- 所得税及び復興特別所得税の修正申告書(第五表)
所得税及び復興特別所得税の修正申告書(第五表)は、国税庁のホームページから入手できます。
修正申告の期限(注意点)
修正申告の手続きを進める場合は、すでに確定申告書の法定申告期限を過ぎています。確定申告書の誤りに気づいた時点で、速やかに修正を行いましょう。
なお、税務署による更正がなされると修正申告ができなくなり、追加納税額が課されることに注意が必要です。
修正申告のペナルティ
修正申告を行う場合は、延滞税が加算されます。延滞税は、法定納期限の翌日から2か月経過までは原則所得税の7.3%、以降は原則14.6%です。その年によって、延滞税の割合は異なるため注意が必要です。
また、修正申告の提出日までに延滞税を納めなければなりません。税務署の調査を受けた後で修正申告を行う場合は、延滞税に加え、過少申告加算税が課されることがあります。
出典:国税庁「No.9205 延滞税について」
名称 | 過少申告加算税 | |
---|---|---|
課税要件 | ①修正による増加した税額(増差税額) ②増差税額について、当初税額と50万円のいずれか多い方を超える部分 | |
課税額 | 以下の合計額 ①増差税額×10% ②当初税額と50万円のいずれか多い方を超える部分×15% | |
不適用・割合の軽減 | 要件 | ・正当な理由がある場合 ・更正を予知しない修正申告の場合 |
さらに、税務署の調査により悪質だと判断された場合は、重加算税として35〜40%の税金が課される可能性があるので注意しましょう。
出典:国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」
確定申告で不正をした場合のペナルティ
帳簿の改ざんや虚偽の記載といった「所得の悪質な偽造」は、「ほ脱」という犯罪行為に該当します。もし「ほ脱」と認められたら、無申告加算税と延滞税、さらには重加算税が課せられることに注意が必要です。
加算税の税率は税額の35%~40%と高く、納税者が納税できない場合には住まいなどの資産を差し押さえられます。
なお、確定申告の不正は、国税庁による「税務調査」によって発覚します。税務調査とは、正確に納税されているかを確認することです。銀行口座の動きや請求書や領収書などの証憑・取引先の会計帳簿などによって、国税庁は簡単に不正を把握できます。
悪質な場合は刑事罰の対象に
所得を少なく申告したり、売上げを隠蔽したりするなどの悪質な脱税行為は、上記の罰則に加えて刑事罰が科せられる可能性があります。
最高刑は10年以上の懲役または1,000万円以下の罰金(または併科)ですので、くれぐれも確定申告書を偽造などはしないように注意しましょう。
やむを得ない理由がある場合は期限の延期申請もできる
災害などのやむを得ない理由があり、期限までに確定申告手続きを終えられない場合は「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出しましょう。
審査でその正当性が認められれば、延期申請の理由が解消してから2ヶ月後まで期間を延期できます。
また、新型コロナウイルス感染症を理由とする延期申請もこちらに該当しますが、一定条件下においては簡易的な方法で申請することも可能です。
まとめ
確定申告する場合、修正の必要がないよう余裕をもった申告準備が重要です。忙しく事業を運営する個人事業主にとって、帳簿作成の時間はできるだけ短く、また、簡単にできる方法を選ぶことが、間違いを防ぐ第一の対策といえるでしょう。
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確定申告を簡単に終わらせる方法
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
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よくある質問
確定申告の提出期限内に申告内容を修正したい場合はどうしたらいい?
確定申告の期限前である3月15日以前に、提出した確定申告書の内容に誤りを発見した場合は、「訂正申告」の取り扱いになります。
訂正申告の方法については「訂正申告のやり方と注意点」をご覧ください。
確定申告の期限を過ぎてから税金を多く収め過ぎていることに気付いたらどうしたらいい?
申告期限の後に税金を多く納めすぎた場合・還付金額を少なく申告した場合に気づいたら「更正の請求」をします。
詳しくは「更正の請求の条件|確定申告の期限後の修正」をご覧ください。
確定申告の期限を過ぎてから税金を少なく納めていたことに気付いたらどうする?
申告期限の後に税金を少なく納めていた場合・還付金額を多く申告していた場合に気づいたら「修正申告」を行います。
詳しくは「修正申告の条件|確定申告の期限後の修正」をご覧ください。
監修 税理士法人虎ノ門共同会計事務所
税理士法人虎ノ門共同会計事務所は、税務・会計のエキスパート集団によるきめ細かい、多岐にわたるサービスを提供し、クライアントの発展をトータルに支援いたします。税理士・公認会計士を中心に、弁護士、弁理士、司法書士などの専門家との業務提携により、ワンストップサービスの提供を行う会計事務所です。