確定申告の基礎知識

譲渡所得とは?譲渡所得や所得税の計算方法から確定申告手続き、節税方法まで解説

譲渡所得とは?譲渡所得や所得税の計算方法から確定申告手続き、節税方法まで解説

譲渡所得とは、単発で資産を譲渡して得た所得を指します。譲渡所得への課税制度には総合課税と分離課税があり、土地や建物を譲渡する際には分離課税が適用されます。譲渡所得の税率は、土地や建物などの場合、保有する年数によって税率が異なるため注意が必要です。

本記事では、譲渡所得の対象となる収入や計算方法、確定申告する際の手続きの方法について詳しく解説します。また、譲渡所得で節税するポイントについてもお伝えしていきます。

目次

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譲渡所得とは

譲渡所得とは、保有する資産を譲渡した際に得た所得です。資産は土地や建物などの不動産だけではなく、有価証券・ゴルフの会員権・船舶車両・鉱業権・ソフトウェア・書画・骨とう品など、売買ができる経済的な価値があるものすべてを指します。

また、譲渡には売買・競売・代物弁済・交換・現物出資なども含まれ、所有権を移転する行為すべてが該当します。譲渡所得は、所得税の対象となるため、譲渡で所得を得た場合は確定申告を行います。

しかし、事業用の商品や山林の譲渡による所得は譲渡所得には含まれません。。また、売却価格がそのまま譲渡所得とされるわけではなく、所定の計算をもとに譲渡所得を算出したうえで納税額を求めます。

譲渡所得の対象となる収入

譲渡所得の課税制度には、総合課税と分離課税があり、それぞれ課税方法が異なります。

分離課税の対象となるのは、土地・建物・構築物などの不動産、および上場株式・同族会社株式・出資金などです。不動産や株式以外の書画・骨とう品・美術品・土石や砂利などの動産、ゴルフ会員権・営業権・漁業権・特許権などの権利は総合課税の対象です。

分離課税は、資産を保有している年数によって税率が異なり、保有期間が5年以上の長期譲渡所得と5年未満の短期譲渡所得に分けられます。また、出資金や上場株式も分離課税の対象となりますが、特定口座(源泉徴収口座)を使って取引した場合には、譲渡所得ではなく源泉分離課税が課されます。

なお、衣類や家具、通勤用の車など生活に必要な動産を譲渡する場合や、強制執行・破産手続きなどで行われた換価手続きによる所得などは譲渡所得の課税対象にはなりません。詳しい所得の種類は国税庁のホームページを確認しましょう。


出典:国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」

譲渡所得額の求め方

譲渡所得額の基本的な求め方は次のとおりです。

譲渡所得額の求め方

課税譲渡所得金額 = 収入金額 ー(取得費 + 譲渡費用)ー 特別控除額

土地や建物などの不動産の譲渡所得の税率は、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。収入金額や取得費、譲渡費用、特別控除額に含まれるものをそれぞれ詳しく見ていきましょう。


出典:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」

収入金額に含まれるもの

収入金額とは売却した額のことです。資産を買った人から受け取った現金や、現金の代わりに受け取った不動産や株式などの時価が該当します。

ただし、著しく低額の価額で譲渡した場合や法人に対しての現物出資などはみなし譲渡とされ譲渡した資産の時価に応じた額が譲渡所得となります。著しく低額とされるのは、通常の取引価額の半分以下の金額で譲渡された場合です。これらのほか、法人への贈与または遺贈を行った場合も譲渡に該当します。

現物出資の場合は法人の株式を取得する形になるので、時価の株式や出資持分が収入金額となり、みなし譲渡の場合は一定の法則で算定された税額を収入金額に計上します。

取得費に含まれるもの

取得費に含まれるものは次のようなものです。

取得費に含まれる支出

  • 譲渡した資産の購入代金
  • 購入時の手数料
  • 設備費
  • 購入後にかかった改良費

出典:国税庁「No.3252 取得費となるもの」

代々引き継いできた土地のような購入当初の代金が分からないケースは、概算取得費を取得費とします。概算取得費は、譲渡収入金額の5%です。概算取得費は、取得費が不明な場合や概算取得費を使用した方が節税できる場合にも選択できます。

また、建物や車両、機械など減価資産の場合は、資産を取得した日から譲渡する日までの減価償却費を、借入金で購入した資産は資産の購入日から使用開始日までの期間に値する利子の金額を取得費に加算することが可能です。

譲渡費用に含まれるもの

譲渡費用に含まれるのは次のようなものです。

譲渡費用に含まれる支出

  • 譲渡の際に支出した仲介手数料
  • 運搬費
  • 登記および登記に必要な費用
  • その他資産を譲渡するときにかかった費用
  • 売主が負担した印紙税
  • 貸家を売る際、借家人に建物を明け渡してもらうために支払う立退料
  • 土地などを売るために建っている建物を取り壊す取壊し費用と建物の損失額
  • 既に売買契約を締結した資産をより有利な条件で売るために支払う違約金
  • 借地権を売るときに支払う名義書換料

出典:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」

譲渡費用は、資産の譲渡に際して支出した様々な費用が該当し、借家人を立ち退かせる立退料や建物を壊して土地だけ売る場合の取壊し費用なども含まれます。

特別控除額の要件と控除額

特別控除額とは、不動産を売却する際に控除されるものです。多くの人が適用されるマイホームを売却する際の3,000万円の特別控除や軽減税率の特例、買い替え特例などがあり、これらが適用されると税金の還付があったり節税に繋がります。

ただし、譲渡する相手が配偶者や直系血族、生計を同じくする親族や内縁の配偶者などの場合は特例は受けられません。

マイホームの譲渡による特別控除

マイホーム特別控除の要件は以下のとおりです。

マイホーム特別控除の要件

  1. 現在、住んでいるまたは過去に住んでいた家屋と敷地である

    a.家屋を取り壊した場合、その日から1年以内かつ住まなくなった日の3年後の年の12月31日までに譲渡する

    b.家屋を取り壊した場合、その日から譲渡までに貸駐車場など、譲渡する敷地を他の用途として利用していないこと。
  2. 譲渡した年の前々年までの間にマイホーム特別控除もしくはマイホームの譲渡損失に関する損益通算および繰越控除の特例を受けていないこと
  3. 譲渡した年の前々年までの間にマイホームの買い替えや交換に対する特例の適用を受けていないこと
  4. 譲渡した年の前々年までの間にマイホームの買い替えまたは交換の特例を受けていないこと
  5. 譲渡した家屋および敷地が収用など他の特別控除や特例を受けていないこと
  6. 災害によって無くなった家屋の場合、その敷地に住まなくなった日の3年後の年の12月31日までに譲渡すること
  7. 売り手と買い手が、夫婦、親族、親子などの特別な関係でないこと

出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

軽減税率の特例

さらに、所有期間が10年を超えるマイホームを売却する場合は、3000万円の特別控除の他に軽減税率が適用されます。

【10年を超えたマイホームの譲渡特別控除の具体例】

課税長期譲渡所得金額所得税住民税
6,000万円以下の部分10%4%
6,000万円超の部分600万円+(課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×15%5%

マイホーム買換(交換)の特例

マイホーム買い換え(交換)の特例は、10年以上の居住期間および、所有期間のマイホームを1億円以下で売却し、売却した代金を使って売却の前年から3年以内に新しいマイホームを購入した場合に適用されるものです。

マイホーム買い換えの特例の要件は以下のとおりです。

マイホーム買い替えの特例要件

  • 譲渡対価は1億円以下
  • 本人の所有期間が10年を超える国内の居住用財産
  • 現在住んでいない場合、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに譲渡すること
  • 所有期間10年を超える居住用財産の課税の特例が受けられる国内の家屋および敷地

また、買い換えるマイホームにも特例を受けるための要件があります。

買い換えるマイホームの要件

  • 譲渡資産を譲渡した者が住むために買い換えた国内の家屋またはその敷地
  • 一定の新耐震基準に適合しているもの
  • 家屋の床面積が50㎡以上、土地はその面積が500㎡以下であること
    (既存の中高階耐火共同住宅の場合は築25年以内であること)

【マイホーム買い換え(交換)の特例の例】


売却する資産の価格買い換え対象の資産価格課税控除額
5,000万円6,000円5,000万円ー6,000万円
=△1,000万円

今まで住んでいた住居を5,000万円で売却し6,000万円の住居を購入する場合は、1,000万円がマイナスになるため、譲渡はなかったものとみなされ非課税です。


売却する資産の価格買い換え対象の資産価格課税控除額
5,000万円4,000円5,000万円ー4,000万円
=1,000万円

買い替え額が4,000万円の場合は、1,000万円のプラスとなり課税されます。


出典:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」

譲渡所得の所得税の計算方法

譲渡所得の所得税の計算方法について詳しく解説します。土地や建物の譲渡による譲渡所得の所得税は分離課税の対象であり、長期譲渡所得か短期譲渡所得によって税率が異なります。

譲渡所譲渡所得の所得税の計算方法

税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税および住民税)

所得税は、給与所得や不動産所得などの所得金額を合計した総所得金額を算出してから税額を計算する総合課税が原則ですが、不動産の売却で生じる譲渡所得は、合算せずに個別に税額を計算する分離課税方式が取られます。

譲渡所得の税率


区分短期長期
期間5年以下5年超10年超所有軽減税率の特例
※ 買い換えた住宅への住宅ローン控除との併用は不可
居住用39.63%
(所得税30.63% 住民税 9%)
20.315%
(所得税15.315% 住民税 5%)
①課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21%
(所得税10.21%・住民税4%)

②課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315%
(所得税15.315%・住民税5%)
上記以外39.63%
(所得税30.63% 住民税 9%)
20.315%
(所得税15.315% 住民税 5%)

上記税率には、復興特別所得税として所得税の2.1%相当が上乗せされています。復興特別所得税とは源泉所得税を徴収する際に一緒に徴収される税金で、東日本大震災から復興のための財源確保を目的としたものです。復興特別所得税は、2013年1月1日から2037年12月31日までの間に生じた所得において所得税の2.1%相当が源泉徴収されます。


出典:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」

分離課税とは

譲渡所得には総合課税と分離課税があります。総合課税が1年間の個人の所得をすべて合算して課税対象とし税率を計算するのに対し、分離課税はそれぞれの所得ごとに決められた税率を用いて計算します。

分離課税の対象となる所得は、次のようなものです。

分離課税の対象となる所得

  • 土地や建物の譲渡所得
  • 株式等の譲渡所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 利子所得(特定公社債等の申告分離課税を選択したもの)
  • 配当所得(上場株式等の申告分離課税を選択したもの)
  • 先物取引

出典:国税庁「No.2240 申告分離課税制度」

譲渡所得の確定申告手続き

譲渡所得を確定申告する際の手続きについて詳しく見ていきましょう。確定申告は国税庁のホームページまたは、居住地を管轄する税務署の確定申告書作成コーナーで行えます。

譲渡所得の確定申告の必要書類

確定申告を行う際に必要な書類は以下のとおりです。


  • 本人確認書類(マイナンバーカード、番号確認書類など)
  • 身元確認書類(運転免許証、健康保険証、在留カード、パスポートなど)
  • 所得税および復興特別所得税の確定申告書
  • 所得金額が分かるもの
  • その他、収入が明らかになる書類
  • 土地などを譲渡した場合は以下の書類
    ・譲渡時の契約書
    ・譲渡時に負担した費用の領収書
    ・譲渡した物件の購入時の契約書
    ・購入時に負担した費用の領収書

譲渡所得の確定申告は、譲渡した日の翌年2月16日~3月15日までの期間に申告する必要があります。

譲渡所得のページに進む

税務署に行かず国税庁のホームページから作成する流れを紹介します。

まず、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を検索しクリックします。 作成する申告書等の選択画面では所得税を選択し「次へ進む」をクリックします。

「申告書の作成をはじめる前に」の画面を開いて、生年月日入力、申告書の提出方法が選択されているか確認してください。質問欄に表示された質問に「はい」か「いいえ」を入力して「次へ進む」をクリックします。

譲渡価格(収入金額)の内訳を入力する

売買契約書などをもとに、収入金額・所得金額の入力画面で「土地建物等の譲渡所得を入力する」をクリックし、「内訳書作成」を開き譲渡価額・取得費・譲渡費用などの額を入力していきます。

入力開始前に、表示される入力前の確認事項を確認しましょう。

譲渡費用を入力する

土地建物等の譲渡所得(内訳書作成トップ)画面で、入力する譲渡内容に該当するものをチェック、土地建物等の譲渡所得(譲渡価額の内訳等入力)の画面で、譲渡(売却)した 土地や建物の所在地、譲渡価額、種類、面積、利用状況などを入力します。

取得費を入力する

「土地建物等の譲渡所得(譲渡費用入力)」画面で、譲渡(売却)するために支払った仲介手数料、売買契約書に貼り付けた収入印紙代などの費用を入力します。他にも支払った譲渡費用がある場合は、費用の種類を選択して追加してください。

「土地建物等の譲渡所得(取得費の入力1)」を開き、必要事項を記入して譲渡(売却)した土地や建物の取得費を計算をします。次に、「土地建物等の譲渡所得(取得費の入力2)」で、譲渡(売却)した土地や建物の取得費を計算します。

特例について入力する

「土地建物等の譲渡所得(特例等の入力)の画面で、適用する特例を選び、入力内容を確認します。「土地建物等の譲渡所得(入力内容の確認)」へ進むので内容を確認してください。内容に誤りがなければ「入力終了(次へ)」をクリックします。

入力内容およびデータが反映されているかを確認する

「収入金額・所得金額の入力画面」で、土地建物等の譲渡所得の計算結果が分かるので金額を確認しましょう。

譲渡所得で節税するポイント

譲渡所得で節税するためには所有年数を確認して土地や建物を売買すること、特にマイホームを譲渡する場合は、どの特例が対象になるかをチェックすることが大切です。

土地や建物を売買するときは所有年数に注意

土地や建物を売買するときには、所有年数を確認しましょう。5年以上かそれ以下かによって大きく譲渡所得の税率が変わります。5年以下の場合は、転売目的と見なされるため所得税は30%、住民税は9%の税率です。

しかし、5年以上保有している土地や建物であれば所得税は15%、住民税は5%に抑えられます。たとえば、4年保有している物件の売却を検討しているなら、5年を過ぎる時期まで保有してから売買する方が節税できます。

マイホームを譲渡する際は特例の対象かを確認する

マイホームを譲渡する際は、特例の対象になっているかチェックしてください。3,000万円の特別控除の特例以外にも10年以上所有しているマイホームを売却する際は、軽減税率の適用が受けられます。

6,000万円以下の部分は所得税10%・住民税は4%、6,000万円を超えた分は所得税は600万円+(課税長期譲渡所得金額 - 6,000万円)× 15%、住民税は5%で計算されるため税負担が軽くなります。

さらに、マイホーム買い換えのための譲渡であれば、要件を満たしていれば譲渡所得の課税が免除されます。

まとめ

譲渡所得とは、単発で資産を譲渡して得た所得を指します。動産・ゴルフ会員権・営業権・漁業権・特許権など、総合課税の対象となる所得と不動産や株式、出資金などの分離課税となる所得に分かれます。

分離課税の場合、所有する年数によって所得税や住民税の税率が異なるため、譲渡を考えている場合は、事前に保有年数を確認するとよいでしょう。マイホームの譲渡の場合は、様々な特例措置を受けられる可能性があります。

譲渡所得は所得税の課税対象となるため、確定申告が必要です。税務署または国税庁のホームページから譲渡所得があった翌年に確定申告を行ってください。

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