確定申告の基礎知識

確定申告を本人以外の代理人が、提出する際の注意点を紹介

監修 eel税理士法人

確定申告を本人以外の代理人が、提出する際の注意点を紹介

確定申告書の作成は本人以外、税理士にのみ認められています。繁忙期であるなどの理由から確定申告書を作成、提出するのが困難な場合、書類の作成や提出の代理を依頼することもあります。

本記事では、確定申告書は本人以外の代理人による提出は可能か、委任状の必要性や電子申告が可能かどうかといった、確定申告の「代理」について解説していきます。

目次

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確定申告を本人以外が提出することは可能?

確定申告書の「作成」ができるのは原則として納税者本人と税理士だけです。

税理士法 第2条第1項第2号によって、税務官公署への申告書等の作成は「税理士業務」であると定められており、さらに、同法52条で税理士または税理士法人以外が「税理士業務」をおこなうことは禁止されています。

ただし、作成済みの確定申告書を代理で「提出」するといった税理士業務に該当しないサポートであれば、親族などがおこなうことも可能です。この際のポイントや注意点については後述します。


出典:国税庁「6 税理士法違反行為」


出典:e-GOV「税理士法」


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【最新】確定申告のやり方は?必要書類の準備・提出を自分で行う方法を解説

確定申告書を代理人が提出できるケース

確定申告書を本人以外が提出する場合、本人が国内にいるかどうかで代理人の可否が異なり、またそれぞれ注意点も異なります。そのため、代理人による確定申告書の提出を検討する場合は、事前に自身が利用できるか確認しておきましょう。

本人が国内に居住しており、何らかの理由で自身で提出できない場合

日本国内に申請者本人が居住している場合、税務署に直接足を運ばなくても、郵送やe-Taxによる申告も可能です。ただし、税務署に直接申告書を提出する必要があっても何らかの事情で提出しに行くことが不可能な場合は、同居する家族等が代わりに提出できます。

e-Taxを使用して確定申告をする方法については、別記事「e-Tax(電子申告)で確定申告をするには?やり方や必要書類、提出方法について解説」を合わせてご確認ください。

本人と同居している家族が代理人として提出する際には、提出時に税務署へ代理人の印鑑及び代理人届出書を持参します。確定申告では、本来、代理を認められているのは税理士のみであるため委任状は不要です。

また、家族が代理で提出する場合でも、申請者の本人確認書類が必要となります。本人確認書類に写しを使用する際は「本人確認書類(写)添付台紙」を使用します。

なお、代理での提出が可能なのは、確定申告書の作成が完了しており、添付資料などが全て揃っている場合に限られます。代理はあくまで「提出」のみのため、、書類に不備が見つかった際に代理人が記入をしたり、添付書類を支度するといったことは原則として認められません。


出典:国税庁「確定申告書等作成 コーナーよくある質問」


出典:国税庁「D2-9 申告・申請等事務代理人届出手続」

代理人の条件

代理人を頼む際には、誰が代理人となるかで注意点が異なります。

配偶者の場合

配偶者が本人の代わりに確定申告書や医療費の領収証などを持参するケースはよくあることなので、税務署側も慣れています。「ほぼ間違いなく、本人の意思に基づく」と判断できるので、スムーズにことが運ぶでしょう。

親族の場合

親族の場合も、配偶者の場合と同じ理由でほぼ問題はありません。本人と代理人が親族であることがわかる書類を用意し、代理人を務めることになった理由を説明ができるようにしておくとさらに安心です。

友人・知人の場合

どれだけ親しい友人・知人に代理人を頼むことはおすすめできません。確定申告のような大切な手続きを友人や知人が代理でおこなうことが違和感に繋がるおそれがあります。トラブルが発生して、その友人や知人に迷惑をかけてしまうことも考慮し、可能な限り代理人候補から外すことをおすすめします。

税理士法人以外の法人の場合

法人の場合は、「業として」確定申告の代理人を務めていると判断されかねないので避けることが賢明です。法人が税理士法に違反すると面倒なことになりかねません。

本人が国内に居住していない場合

日本国内に居住していなくても、日本国内で発生する所得がある場合には、原則として確定申告をしなくてはなりません。

この場合、本人に代わって所得税・消費税に関する申告書等を税務署に提出し、納税する役目を果たしてくれる「納税管理人」が必要となります。

納税管理人を選任するには、原則として出国前に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を所轄の税務署へ提出します。帰国し日本の居住者に戻ったら、「所得税・消費税の納税管理人の解任届出書」を提出してください。

なお、納税管理人は本人は国内に居住していることが要件となり、法人でも個人でも問題ありません。

また、海外からe-Taxで確定申告できるのは、所得税法上の「居住者」のみとなりますのでご注意ください。


出典:国税庁「第117条関係 納税管理人」


出典:国税庁「No.1923 海外勤務と納税管理人の選任」

確定申告書を代理人が作成できるケース

ここまで確定申告書「提出」の代理について解説してきましたが、ここからは確定申告書の「作成」そのものを代理人がおこなうケースを確認していきましょう。

先述のとおり、確定申告をおこなえるのは申告者本人または税理士のみと決まっており、税理士以外の人が代行すると、無資格で税理士の業務をしたと見なされます。有償、無償にかかわらず、無資格者が業務をおこなうことは禁止されています。

税理士に依頼した場合

確定申告書の作成は、原則として本人が行うべきものですが、自分で作成するのが難しい、作成のための時間を取れないといった場合には、税理士に依頼することになります。

税理士は「税務の代理」「税務書類の作成」「税務の相談」など税務に関するプロであるため確定申告書の作成の代理を依頼することが可能です。依頼をする際には、契約を結んで書類作成のすべてを任せる、確定申告のみお願いするなど、さまざまなケースが想定できます。いずれの場合にも、税理士に依頼することで正確な確定申告が期待できます。


出典:国税庁「6 税理士法違反行為」

本人が精神疾患などで判断力が落ちている場合

認知症や精神疾患を患っているなど、自身で物事を判断できる状況にない場合には「成年後見人制度」を利用することで、本人以外の確定申告が可能になります。申立ては管轄する家庭裁判所(成年被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所本庁または支部)でおこないます。

成年後見制度とは、知的障害や精神障害、認知症などにより、自身の決定や不安や心配のある人がさまざまな契約や手続きをする際にサポートし、財産や意志決定を保全する制度です。

成年後見人には、認知症や障害の場合に備えてあらかじめご本人自らが選んだ人(任意後見人)に代理で対応内容を事前に決めておく「任意後見人」と、本人がひとりで決めることが心配になった際に家庭裁判所によって成年後見人等が選ばれる「法定後見人」の2種類があります。

手続きや申請方法が異なりますので、裁判所や厚生労働省のwebサイトで事前に確認しておくとよいでしょう。


出典:裁判所「成年後見等の申立てに必要な書類等について」


出典:厚生労働省「成年後見はやわかり」

確定申告を代理人に頼む際の注意点

先述のとおり、代理人に頼む場合は「誰に」お願いするかが一番重要です。同時に「何を」代理してもらうかによって注意事項が異なる点についても理解しておきましょう。

事前に確認しておいたほうがよいのが、代理人が税務署に確定申告書類を提出に行き「なぜあなたが代理で提出しに来たのですか?」と聞かれた際に何と答えるかということです。

税理士や税理士法人の人は慣れているので問題ありませんが、配偶者や家族に頼んだときに「代理で確定申告をしています」などと答えてしまうと、確定申告の「書類作成」を代理で行っていると勘違いされ、税理士法違反か不受理となるおそれがあります。

そうならないためにも、実際に提出してもらう人には「あくまで本人の代理で提出しにきた」、もしくは「〇〇(腕を骨折した、手をケガしてペンが握れないなど)の理由で代筆した」と答えてもらうように、あらかじめ伝えておくのがが好ましいでしょう。

繰り返しとなりますが、税務書類作成などの代理は、原則として税理士および税理士法人のみに許された行為であることを常に念頭に置いておいてください。

確定申告を代理人に頼むメリット・デメリット

ここでは、確定申告書の「提出」を家族に依頼する場合や、作成を税理士に依頼する場合のメリット・デメリットについて説明していきます。

確定申告を代理人に依頼するメリットとデメリットは以下のとおりです。


メリットデメリット
家族に頼む申告書の代筆を依頼できる
お金がかからない
不審に思われてしまう場合がある
税理士に依頼するプロが申告書を作成するため確実節税の相談も可能
費用がかかる

メリット

●家族に頼むメリット

代筆に関しては認められているので、「納税者の意思で、納税者の指示のもと」であれば、書類に書き込む作業を手伝ってもらうことができます。

また、パソコンでの作業を家族にお願いすることができれば、パソコンを使い慣れていない人でもe-taxでの申告が可能となります。「時間がないし面倒なことはしたくない、でもお金をかけずに確定申告を終わらせたい」という人は、家族の協力を仰ぎましょう。

●税理士に依頼するメリット

税金に関するルールはとても複雑なうえ度々の変更があるので、個人が一生懸命書類を作成しても「規定が変わったので、やり直してください」ということになりかねません。プロフェッショナルに任せることで正確な申告が可能となります。

さらに、税理士を顧問にすることで、節税のためのアドバイスや税務調査への立ち合いなどについても相談することができるので、いざというときに心強いというメリットもあります。

デリット

●家族に頼むデメリット

先述のように、書類を提出に行った家族の受け答え次第で不審であると判断され、チェックが厳しくなる可能性が考えられます。

家族による提出で間違いが見つかった場合は、より厳しい判断をくだされるおそれがありますから、うしろめたい行為がなくても、できる限りあやしさを感じさせる選択を避けることが賢明です。

●税理士に依頼するデメリット

事業を経営する中で、売上や取引量が増えれば費用も大きくなります。依頼の時点で、売上や取引量が大きくなった際の見積金額も尋ねておきましょう。

一方、自身の申告ミスから追徴課税となる可能性や、複雑な作業に取られる時間を仕事やプライベートに充てられるメリットを考慮すれば、必要経費の範疇という判断もできるでしょう。売上や自身の仕事量とのバランスを見極めて、依頼の判断をおこなってください。

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まとめ

毎年訪れる確定申告の季節は繁忙期であるという方も多いでしょう。他者に代理をお願いすることで、本来の仕事に専念できたり、家族との時間を削らずにすむ、自分をケアする時間を確保できるなどのメリットはたくさんありますが、代理人選びはとても重要なポイントとなります。税理士法などに注意しながら、自身に合うベストな方法を見つけてください。

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よくある質問

確定申告書を代理人に提出してもらうことは可能?

確定申告書を本人以外が「提出」することは可能です。家族が代理人として提出する際には、税務署へ代理人の印鑑及び代理人届出書を持参してください。同時に、可能なのはあくまで「提出」のみで税理士業務に該当しないサポートのみであるという認識をお忘れなく。

詳しくは本記事「確定申告を本人以外が提出することは可能?」をご覧ください。

確定申告は本人以外でもできる?

確定申告書の「作成」ができるのは、申告者本人と税理士のみと法律で定められており、税理士または税理士法人以外の者が「税理士業務」をおこなうことも禁じられています。

詳細は本記事「確定申告を本人以外が提出することは可能?」「確定申告書を代理人が作成できるケース」をご覧ください。

監修 eel税理士法人

eel税理士法人は、30代の若手税理士が運営するITと創業支援が強みの税理士事務所です。お客様に合わせたツールで、気軽にコミュニケーションをお取りいただける環境を用意しています。また、創業融資を強みとしておりますので、融資に関してもご相談がある方はお気軽にご相談ください。

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