監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
監修 鶏冠井 悠二

個人事業主になるには、所轄の税務署に開業届を提出します。また、開業する際に必要に応じて提出すべきその他の書類や、開業後に行うべき手続きなどもあります。
本記事では、個人事業主になるために必要な登録・開業手続きと、開業後にやることを詳しく解説します。
なお、個人事業主の概要や、個人事業主になることのメリット・デメリットについて詳しくは、「個人事業主とは?個人事業主と法人の違いや起業したらやるべきことについて解説」をご参照ください。
目次
個人事業主の開業手続きに必要な書類を無料作成
freee開業は開業届を最短5分で作成ができるため、作成の手間を大幅削減できます。
・開業届や青色申告書類は無料作成!
・書類提出はオンラインで完結!
・最大65万円控除の準備も完全無料
個人事業主とは
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営む人のことです。個人事業主は税法上の区分であり、開業届を提出し、事業所得・不動産所得・山林所得を得ている人が該当します。
企業に雇用される会社員とは異なり、自らの責任と裁量で反復・継続して事業を行い、得た利益に対して所得税や住民税を納めます。
フリーランス・法人との違いや、個人事業主になることのメリット・デメリットについて、詳しくは「個人事業主とは?個人事業主と法人の違いや起業したらやるべきことについて解説」をご覧ください。
個人事業主になれないケース
個人事業主は、事業を反復・継続して営む意思があり、開業届を提出すれば誰でもなることが可能です。しかし、以下のようなケースでは、個人事業主として活動することが難しい、または認められない場合があります。
個人事業主になれないケース
- 企業の就業規則で副業が禁止されている会社員
- 公務員
それぞれ詳しく解説します。
【関連記事】
個人事業主になれない人はいる?メリットや向いている人の特徴などを徹底解説
企業の就業規則で副業が禁止されている会社員
勤務先の就業規則で副業が制限または禁止されている場合、個人事業主として活動すると懲戒処分の対象となる可能性があります。
事前に勤務先の規則をよく確認し、必要に応じて許可を得ることが重要です。
公務員
国家公務員法や地方公務員法により、公務員は原則として兼業や副業が禁止されています。一部例外として認められるケースもありますが、事業として継続的に収入を得る個人事業主になることは難しいとされます。
ただし、近年では公務員の副業に関して、地域貢献や社会貢献活動などを中心に一部許可する動きが進んでいます。2018年には政府の閣議決定において、国家公務員についても副業・兼業の在り方を検討する方針が示されました。
出典:内閣府「未来投資戦略2018」
出典:人事院「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」
出典:e-Gov法令検索「国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)」
出典:e-Gov法令検索「地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)」
個人事業主の登録・開業手続き
個人事業主になるには、所轄の税務署への開業届の提出が必要です。また、必要に応じて開業届とあわせて提出すべき書類があります。
個人事業主になるために 提出する書類 | 開業届 |
---|---|
確定申告を青色申告で行う場合に 提出する書類 | 青色申告承認申請書 |
家族や従業員を雇用する場合に 提出する書類 | ・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 ・青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書 ・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 |
それぞれ詳しく解説します。
開業届
開業届とは、個人事業を開業したことを税務署に届け出る書類で、正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。

開業届は原則として、事業を開始してから1ヶ月以内に提出することとされていますが、提出しなくても罰則はありません。
ただし青色申告で確定申告を行う場合は、その年の3月15日まで(1月16日以後新たに事業を開始した場合は、その事業開始等の日から2ヶ月以内)に、青色申告承認申請書とともに所轄の税務署への提出が必要です。
開業届は国税庁のホームページからダウンロードできるほか、税務署の窓口でも受け取れます。
freee開業では、開業届を無料で作成・オンライン提出ができます。スマホからでも操作でき、書類の準備から提出までを効率的に行えます。
【関連記事】
開業届とは?個人事業主が知っておくべき基礎知識や提出するメリット・注意点について解説
青色申告承認申請書
確定申告を青色申告で行う場合は、その年の3月15日まで(1月16日以後新たに事業を開始等をした場合は開業日から2ヶ月以内)に、青色申告承認申請所を開業届と一緒に所轄の税務署へ提出する必要があります。
確定申告には、「青色申告」と「白色申告」があります。青色申告で確定申告を行うと、最大65万円の所得控除が受けられます。さらに、家族や従業員に支払った給与を必要経費にできるなど、税制上の優遇措置を受けられる点もメリットです。
ただし青色申告では、白色申告よりも複雑な帳簿付けや会計書類の作成が求められます。それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、どちらを選ぶかを決定しましょう。
なお、青色申告承認申請書を提出していない場合は、自動的に白色申告となります。
【関連記事】
青色申告承認申請書の書き方は?いつまでに提出すべきか注意点も解説
青色申告とは?白色申告との違いや確定申告のやり方をわかりやすく解説
家族や従業員を雇用した場合に提出する書類
個人事業主が家族や従業員を雇用すると、給与支払いや税務処理に関わる書類の提出が必要になります。提出漏れは税務上のトラブルにつながる可能性があるため、状況に応じて以下の書類を忘れずに提出しましょう。
家族や従業員を雇用する場合に提出する書類
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
- 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」とは、従業員を雇用する場合に税務署への提出が求められる書類です。
この届出書は、従業員を雇用する事務所を開設した場合や、開業後に従業員を雇用する場合に提出が必要です。ただし、開業時点ですでに従業員を雇用している場合は、開業届において「給与等の支払の状況」について記入するため、提出する必要はありません。
また、従業員を雇用する事務所の移転や廃止があった場合にも提出しなければなりません。
それぞれの提出期限は以下のとおりです。
事務所等の開設・移転・廃止届出書の提出期限
- 事務所を開設したとき:その事実があった日から1ヶ月以内
- 開業後に従業員を雇用したとき:雇用した日から1ヶ月以内
- 事務所の移転や廃止があったとき:その事実があった日から1ヶ月以内
青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」は、青色申告を行う個人事業主のもとで働く家族従業員(専従者)に支払う給与を、経費として計上するために必要な書類です。
青色事業専従者の給与を必要経費に算入する場合は、その年の3月15日までに届出書を所轄の税務署へ提出します。1月16日以後に開業した人や新たに専従者が生じた人は、その開業日または専従者が生じた日から2ヶ月以内の提出が必要です。
なお、青色事業専従者給与を経費として計上するためには、届出書を提出するだけでなく、規定の条件を満たしていなければなりません。
【関連記事】
専従者給与とは?青色事業専従者や控除を受ける条件についても解説
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、従業員に支払う給与などから源泉徴収した所得税の納期について特例の適用を受けるために、事業主が提出する書類です。
この申請書を提出し承認されることで、通常は毎月行う源泉所得税の納付を年2回(1~6月分は7月10日まで、7~12月分は翌年1月20日まで)にまとめることができます。ただし、対象は給与を支払う従業員が常時10人未満の事業主に限られます。
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個人事業主になったらやること
開業届を提出して個人事業主となったら、以下の手続きを行いましょう。
個人事業主になったらやること
- 国民健康保険への加入
- 国民年金への加入
- 確定申告の準備
- 小規模企業共済への加入
- 事業用銀行口座の開設
特に、国民健康保険と国民年金への加入は必須であり、漏れなく対応することが求められます。また、個人事業主になったら毎年自分で確定申告をしなければなりません。
それぞれ詳しく解説します。
【必須】国民健康保険への加入
日本では原則として、全ての国民が社会保険(会社員向けの健康保険)か国民健康保険に加入することを義務づけられています。会社員は健康保険に、個人事業主は多くの場合、国民健康保険に加入します。
国民健康保険の加入手続きは、勤めていた会社を退職した日の翌日から14日以内に行わなければなりません。
また、勤めていた会社の健康保険を任意継続する選択肢もあります。この場合、退職日の翌日から20日以内に申請が必要です。任意継続の申請が認められると、最長で2年間継続が可能です。ただし、会社の保険料負担はなく、保険料は全額自己負担です。なお、標準報酬月額には上限が設けられています。
健康保険の加入方法や必要書類などについて詳しく知りたい方は、別記事「個人事業主が加入する社会保険はどれ?種類と加入方法やメリットも解説」をご覧ください。
【必須】国民年金への加入
会社員の場合は、厚生年金保険に加入することで国民年金(基礎年金)にも自動的に加入する仕組みとなっています。一方、個人事業主は自ら国民年金に加入し、国民年金保険料を納めなければなりません。
国民年金の加入手続きは、勤めていた会社を退職した翌日から14日以内に行う必要があります。
なお、国民年金のみでは、会社員が加入する厚生年金に比べて将来受け取れる老齢年金が少なくなります。将来に備えて、国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeCo)の活用を検討することも大切です。
出典:日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」
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フリーランス必読!フリーランスと年金の基礎知識
【必須】確定申告の準備
確定申告とは、1年間の所得に対する納税額を計算して申告・納税する一連の手続きを指します。
会社員などの給与所得者は多くの場合、勤務先が行う年末調整によって所得税の申告・納税が完了するため、基本的には確定申告は不要です。しかし、個人事業主の場合は自ら確定申告をしなければなりません。
申告しなかったり期限を過ぎたりすると、本来納める金額以上の税金を課せられるなどのペナルティが生じるため、忘れずに対応する必要があります。
なお、確定申告には青色申告と白色申告があります。より節税効果の高い青色申告を選択する場合には、事前に青色申告承認申請書の提出を忘れずに行いましょう。
【関連記事】
確定申告とは?全くわからない人向けに申告の流れ・対象者について解説!
【任意】小規模企業共済への加入
小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の経営者が利用できる共済制度です。事業をやめたり退職したりした際に、その後の生活や事業の再建を図るための資金を、あらかじめ準備することができます。
毎月1,000円から7万円の範囲(500円単位)で自由に積み立て、廃業時に「共済金」として受け取れる仕組みです。
積立金は全額が所得控除の対象として認められるため、節税にもつながります。
出典:中小企業基盤整備機構「小規模企業共済とは」
【任意】事業用銀行口座の開設
事業用の口座を開設すると、収支が明確になり確定申告の仕訳作業がスムーズになります。さらに、帳簿付けや資料作成、日常の経理業務の負担軽減にもつながる点がメリットです。
ただし、開設できる銀行が限られていたり、口座開設まで時間がかかったりする場合もあるため、計画的に準備しましょう。
【関連記事】
個人事業主は屋号付き口座の開設が必要?開設のメリットや口座開設の流れについて解説
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個人事業主になるメリット
個人事業主になるメリットには、以下のようなものがあります。
個人事業主になるメリット
- 開業手続きが簡単
- 自由な働き方を実現できる
- 節税につながる
税務署に開業届を提出すれば個人事業主になることができ、開業には費用もほとんどかからないという点で、法人を設立するのと比べて事業開始までのハードルが低いと言えます。
また仕事の内容や量・案件単価から働く時間・場所まで自分で決められるため、自分にあった働き方を実現しやすい点、必要経費の計上やさまざまな控除制度の活用によって課税所得を減らし、税金の負担を抑えられる点もメリットです。
個人事業主になるデメリット
個人事業主になることにはさまざまなメリットがある一方、いくつかのデメリットもあります。
個人事業主になるデメリット
- 収入の変動リスクがある
- 社会的信用が低いと判断されることがある
- 社会保障が手薄になる
個人事業主は会社員のように毎月決まった額の収入が保証されるわけではなく、仕事の受注状況や景気に影響されて収入が大きく変動するリスクがあります。
また、社会的信用が会社員よりも低いと判断され、住宅ローンやクレジットカードの審査、賃貸契約などで不利になる可能性がある点、社会保障面も会社員に比べて不十分である場合が多い点などはデメリットだと言えます。
まとめ
個人事業主になるには、開業届を税務署へ提出します。開業届を提出しなくても罰則はありませんが、青色申告で確定申告を行う場合には、開業届と青色申告承認申請書の提出が必須です。
個人事業主になった後には、国民健康保険や国民年金の加入をする必要があるため、期限内に確実に手続きを行いましょう。
また個人事業主は、1年間の所得に対する納税額を計算し、申告・納税する「確定申告」を自ら行わなければなりません。日々の帳簿付けや経費精算などの会計処理を正しく行う必要があるため、事前に手続き内容を把握しておきましょう。
freee開業なら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成
個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
そこでおすすめなのが「freee開業」です。ステップに沿って簡単な質問に答えていくだけで、必要な届出をすぐに完成することができます。
freee開業で作成可能な5つの届出
1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

Step1:準備編

準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。

事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
個人事業主には誰でもなれる?
事業を反復・継続して営む意思があって税務署に開業届を提出すれば、誰でも個人事業主になれます。ただし、個人事業主として活動することが認められないケースもあるため注意が必要です。
詳しくは、記事内「個人事業主になれないケース」をご覧ください。
個人事業主になった後に必要な手続きは?
個人事業主になったら、まず国民健康保険と国民年金への加入手続きを行う必要があります。どちらも勤めていた会社を退職した翌日から14日以内に手続きをします。
また、個人事業主になったら自身で確定申告を行わなければなりません。
詳しくは、記事内「個人事業主になったらやること」をご覧ください。
監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修 鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)
コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeCo、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。
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