開業の基礎知識

個人事業主に必要な印鑑は?最低限作っておきたい種類を解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

個人事業主に必要な印鑑は?最低限作っておきたい種類を解説

個人事業主として独立を目指す際、見落としがちな備品のひとつが「印鑑」です。印鑑は契約書や銀行手続き、請求書の作成など、事業を進めるうえで欠かせません。

特に実印はビジネスの信頼性を示すために重要な役割を果たします。一方で、屋号印や住所印などは必ずしも準備する必要はありません。

本記事では、個人事業主に必要な印鑑の種類やその用途、サイズや書体の選び方のポイントなどを解説します。

目次

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個人事業主に印鑑は必要?

個人事業主にとって、印鑑は事業を行ううえで使用するシーンがあるため、必須ではないとはいえ用意しておくといい備品であるといえるでしょう。

個人事業主が事業で印鑑を使用するシーンはさまざまあります。たとえば、銀行口座開設では、銀行印の登録が必要です。そのほか、取引先との契約書締結や請求書・領収書の発行時にも押印が必要なことがあります。

印鑑の種類

個人事業主が使用する事業用印鑑には、以下のような種類があります。

個人事業主の事業用印鑑の種類

  • 実印
  • 認印
  • 屋号印
  • 銀行印
  • 住所印
  • 電子印鑑

上記すべての印鑑が必要というわけではありません。以下に示す各印鑑の特徴と使用シーンを確認し、必要に応じて手配を検討しましょう。

実印

住民登録をしている自治体の役所で登録した印鑑を、「実印」と呼びます。実印は、身分を公的に証明するとても重要な印鑑です。

実印は、さまざまな契約書類で「個人保証」の証明になり、契約書類などの重要な書類に使用します。印鑑登録は、住民票のある自治体の役所で、登録する印鑑と身分証明書、申請書をあわせて提出すれば手続きが完了します。

実印はプラスチックなどの印面が欠けやすい素材や、ゴム印やシャチハタなどの変形しやすい素材の使用は避けましょう。実印を作成する際の具体的な印鑑のサイズや書体、素材などは後述します。

認印

認印は、印鑑登録をしていない簡易的な印鑑を指し、日常的な手続きや軽微な事務作業など、広い用途で使われます。たとえば、郵便物の受け取りや社内文書の確認など、公式性が高くない業務で活用されるため、使用頻度が非常に高いです。

認印には、ゴム印やシャチハタなどの比較的安価な印鑑を使用しても問題ありません。

認印は法的な効力が弱く、契約書や重要な取引には適しません。個人事業主であっても信頼性が求められる場面では、認印ではなく実印や屋号印など公式の印鑑を使用します。

屋号印

屋号印は、個人事業主が屋号を設定している場合に作成する印鑑で、屋号が刻印されています。取引先に提出する見積書や請求書、領収書など、事業用の公式文書に押印することで、事業の信頼性を高めることができます。

屋号印は屋号付きの銀行口座の開設や取引時の証明にも使用し、個人事業の活動を円滑に進めるための重要なツールです。

銀行印

銀行印は、銀行口座の開設や金融機関への手続きなどに使用する印鑑です。個人事業主として口座を開設する際に登録する必要があり、預金の引き出しや融資の申し込みなど、金融機関での本人確認に用いられます。

銀行印を盗難・紛失した場合、口座の安全性が損なわれる恐れがあります。実印など他の印鑑と区別して厳重に保管・管理し、口座のセキュリティ強化を心がけましょう。

住所印

住所印は、住所が刻印された印鑑で、事務作業の効率化に役立ちます。特に複数の書類を短時間で作成する際、住所印の使用で業務の大幅なスピード向上が可能です。

住所印を請求書や領収書、送付状などの文書作成時に使用すれば、住所を手書きする手間を省け、見た目も整えられます。

電子印鑑

電子印鑑は、書類や契約書をオンラインで処理する際に使用するデジタル形式の印鑑です。ペーパーレス化が進むなか、電子契約書やPDF文書での押印に使用されるなど、コスト削減や効率化の観点から導入が進んでいます。

ただし、電子印鑑には偽造や不正使用のリスクがあるため、セキュリティ対策が欠かせません。信頼性の高い電子契約サービスを利用し、取引の透明性と安全性を確保してください。

個人事業主の印鑑で最低限必要なものは?

個人事業主が事業を始める際に最低限必要な印鑑は、「実印」と「銀行印」です。

実印は以下のような特徴を持つ、契約時などに法的効力のある印鑑です。

実印の特徴

  • 市区町村役場で印鑑登録された法的効力をもつ印鑑
  • 契約書の締結や重要な取引で、自身の意思や責任を証明する際に使用
  • 事業の信頼性を確保し、公式な場面での責任を明確化できる

一方、銀行印は以下のように銀行での諸手続きで使用される印鑑です。

銀行印の特徴

  • 事業用銀行口座の開設・運用に必要不可欠
  • 主に預金の引き出しや振込、口座関連の本人確認に使用

この2つの印鑑があれば、事業開始に必要な契約締結や資金調達などの手続きを円滑に進められます。

いずれも刻印されるのは個人事業主自身の名前(姓もしくは名)ですが、セキュリティの観点から、ひとつの印鑑を併用するのはおすすめできません。実印用、銀行印用で、それぞれ印鑑を用意するようにしましょう。

社印や代表者印は個人事業主に必要ない?

社印(角印)は、主に領収書や請求書などの日常的な業務書類に使われる四角い印鑑で、法人の「認印」に相当し、正式な契約書などには使用されません。代表者印(丸印)は法人の「実印」にあたるもので、契約書や法人登記など、重要な書類への押印に使用します。

社印や代表者印は、法人が法的文書や公式な意思表示に使用します。個人事業主では、実印や屋号印が、それぞれ法人の代表社印と角印の役割を果たします。

個人事業主が印鑑を使うシーン

個人事業主が印鑑を使うシーンと、それぞれのシーンに用いる印鑑を解説します。

契約書の締結

契約書の締結時には、「実印」の使用を求められることが一般的です。たとえば、賃貸借契約や重要な取引契約など、契約後にトラブルが発生した場合にも、実印を押印した契約書が意思確認の証拠となります。

近年は、業務効率化に伴うペーパーレス化やDXの推進もあり、電子サインで契約書締結を行うケースも増えています。電子契約の場合は実印を押す必要はありません。

銀行取引や口座開設

銀行取引や口座開設には、「銀行印」を使用します。銀行印は、銀行口座を開設する際に金融機関に届け出る印鑑で、預金の引き出しや振込などの金融取引で本人確認に使用されます。

銀行印は融資の申請や税金の支払いなどでも活用され、資金管理の要となるため、適切に保管して不正使用や紛失を防ぎましょう。

見積書・請求書の作成など

見積書や請求書の作成には、「屋号印(角印)」が適しています。事業用書類に屋号印を押印することで、取引先に事業の正式性を示すことが可能です。

特に、取引が初めての顧客に対して、屋号印の使用は事業の信頼性を高める効果があります。

印鑑の選び方と作成のポイント

個人事業主が開業時に印鑑を新調する際は、印鑑の種類によって適切なサイズや書体、材質を選ぶ必要があります。実印として使用する印鑑は、公的な書類への押印が求められるため、サイズに取り決めがあり、偽造されにくい書体選びなどが求められます。

印鑑の使用用途に合わせたサイズ選定

印鑑は、使用用途に応じた適切なサイズ選定が重要です。各印鑑の一般的なサイズは以下の通りです。


印鑑の種類サイズ
実印16.5mm〜18mm
銀行印15mm〜16.5mm程度(実印よりやや小さめ)
認印13.5mm〜15mm程度(持ち運びやすさも重視)

印鑑のサイズ選びの基本として、「実印>銀行印>認印」の順にサイズを小さくします。

実印については、個人は「一辺が8mm以上25mm以下」、法人は「辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形」に収まるものと規定されています。法人成りの可能性がある場合、これらの規定も考慮することが必要です。

出典:法務局「印鑑(改印)届書」

印鑑の書体は何を使う?

印鑑の書体やデザイン選びは、実用性と安全性を兼ね備えた選定が重要です。

実印の書体は一般的に、「篆書体(てんしょたい)」「印相体(いんそうたい)※吉相体とも呼ぶ」が推奨されています。これらの書体は独特の文字形状で偽造防止に優れており、不正使用を防ぐ効果があります。

視認性とバランスを考慮して書体を決定しましょう。

印鑑の材質の選定ポイント

実印や銀行印など重要な印鑑には耐久性の高い材質を選び、認印など頻繁に使用するものは、耐摩耗性に優れた材質が望ましいです。

また、湿度や温度変化に強い材質を選べば、長期的に品質を保持できます。素材によっては高価になるため、予算も考慮してください。

以下では、代表的な印鑑の材質を紹介します。


材質特徴
チタン・軽量で高強度、耐久性に優れ、錆びにくい
・長期間の使用を想定する実印や銀行印に最適
・金属特有の冷たさや重量感がある
黒水牛・高級感があり、実印や銀行印に適している
・重要な場面での使用に適し、男性からの支持が高い
・湿気や乾燥に弱く、保管環境に注意が必要
柘植(つげ)・価格が手頃で、軽く扱いやすい
・認印など頻繁に使用する印鑑に最適
・耐久性はやや劣るため、長期使用には不向きな場合がある
象牙や水晶(クリスタル)・耐久性に優れ、見た目も美しく、格式が求められる場合に最適
・重要な契約や儀式的な場面での使用に適している
・高価であり、象牙は数に限りがある

まとめ

個人事業主にとって印鑑は、事業活動を支える重要なツールです。実印と銀行印があれば事業を進めていくうえで困ることはほぼないといえますが、業務効率やビジネスの信頼性を高めたいのであれば、屋号印や住所印なども検討しましょう。まずは、事業規模や活動内容に応じた印鑑を最低限そろえ、用途別に管理することが大事です。

印鑑選びでは、サイズや書体、材質などのポイントを考慮し、偽造防止や耐久性を重視することが重要です。また、ペーパーレス化が進む中で電子印鑑の導入も検討し、効率的な事業運営を目指してください。

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3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。

4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。

5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
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Step1:準備編

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準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。


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事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。

Step2:作成編

次に、作成編です。


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申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。


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給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。


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さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。

今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。

Step3:提出編

最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。


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入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。


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届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。

郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。

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よくある質問

個人事業主は印鑑が必要?

個人事業主は法的に印鑑の使用義務はありませんが、実務上は必要です。各種契約書、銀行口座開設時に押印を求められることが多く、特に実印や銀行印が重要です。

個人事業主の印鑑について詳しく知りたい方は、「個人事業主に印鑑は必要?」をご覧ください。

個人事業主が使う印鑑の種類は?

個人事業主が主に使用する印鑑には、実印、銀行印、認印などがあります。実印は重要な契約書類で使用し、銀行印は事業用の口座開設や取引に必要です。認印は日常的な書類の承認などで活躍します。

個人事業主が使う印鑑の種類を詳しく知りたい方は、「印鑑の種類」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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