開業の基礎知識

飲食店を開業するには?流れや必要な資格、届出についても解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

飲食店を開業するには?流れや必要な資格、届出についても解説

「いつか自分のお店を持ちたい」「料理を振る舞ってお客様を笑顔にしたい」と考えて飲食店開業を夢見る方は、少なくありません。

起業や新規開業の業種として飲食業は人気がありますが、実際に飲食店を開業する際、どのような準備や手続きをすればいいのでしょうか。

本記事では、飲食店の開業方法について、具体的な進め方を解説します。飲食店の開業前後にやるべきことや必要な届出などを押さえ、スムーズな開業を目指しましょう。

目次

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飲食店を開業するまでの流れとスケジュール

一般的に、飲食店の開業は多くのステップを要するものです。お店をいち早く軌道に乗せるには、念入りな準備が欠かせません。

飲食店の開業に向けて、いつ何をするのか具体的なステップを解説するので、スケジュールを立てる際の参考にしてください。

飲食店を開業するまでの流れ

  • ①コンセプトの作成
  • ②競合店のリサーチ&メニュー作成
  • ③物件の調査・契約
  • ④事業計画書の作成
  • ⑤資金調達の方法を検討
  • ⑥仕入れ先や備品の購入先を決定
  • ⑦各種資格の取得および届出の提出
  • ⑧従業員の雇用
  • ⑨販促ツールの作成

「事業計画書」や「コンセプト」の作成は、融資を受けるための重要なステップとなるため、時間をかけて取り組みましょう。

なお、この順番はあくまで目安なため、オープンに向けてのステップとして参考にしてください。

1 コンセプトの作成

飲食店の開業に必要な最初の準備はコンセプトの設計です。明確なコンセプトが定まれば、店舗デザインの理想イメージも湧きやすくなります。

まずは、「誰をターゲットにするのか」「いつどんなときに使ってほしいのか」「何を売るのか」を考えます。

さらに、5W1Hの要素に分解して、さらに細分化して明確なイメージを作りましょう。たとえば、「Who(誰)→サラリーマン」「When(いつ)→仕事帰り」「Where(どこ)→会社の最寄り駅近くで」と設定し、コンセプトの土台を固めます。

2 競合店のリサーチ&メニュー作成

出店したいエリア付近にどのような競合店があるのか、実際に足を運んで雰囲気を確かめたり、料理を食べたりしてリサーチしましょう。

競合店とコンセプトが重なっていると、客の取り合いになる可能性があります。ターゲットのニーズを予想し、競合と差別化を測れる店舗つくりを意識しましょう。

3 物件の調査

出店したいエリアを決めたら、出店希望エリアで物件の調査を行います。店舗用の物件は、「居抜き物件」と「スケルトン物件」の2種類に分けられます。

居抜き物件は、前の店舗で使われていた設備や什器がそのまま残っている物件で、設備や什器をそのまま使うことで開業費用を抑えることが可能です。

スケルトン物件は、建物の壁や天井が剥き出しで「骨組み」だけがある物件のことを指します。内装などを自由に決められるので、お店のコンセプトを反映させやすいのがメリットです。

予算やスケジュールにあわせて、どちらの物件にするかを検討しましょう。

4 事業計画書の作成

事業計画書は、構想している事業計画を書類に起こしたものです。事業計画書を作成することで、考えている計画の穴や修正点が見つかることもあります。整合性や利益率などを把握するとともに、融資を受ける際や、従業員を雇用する際の事業の説明にも必要となってきます。

なお、金融機関から融資や出資、補助金などを受ける際に必要なので、事業内容や売り上げ見込みなどを明確にして作成しましょう。

5 資金調達の方法を検討

飲食店の開業準備には、物件費用・内装工事費用・テーブルや椅子・運転資金のための費用などが必要です。

通常、飲食店を開業するためには最低でも1,000万円〜1,500万円が必要といわれています。

開業資金の調達方法は、貯金をして自己資金で賄うか、借り入れを行うかのいずれかです。自己資金で賄えない場合は、日本政策金融公庫からの融資を利用しましょう。

開業向けの融資も取り扱っており、低金利で融資を受けられる利点があります。

6 仕入れ先や備品の購入先を決定

市場や卸売業者、業者専用の小売店などから食材の仕入れ先を決めましょう。什器やカトラリーなどの購入先も、同時に決められるとよいでしょう。

7 各種資格の取得および届出の提出

飲食店を開業するためには、最低限「食品衛生責任者」の資格が必要です。

「食品衛生責任者」は食品衛生上の運営管理を職務とします。飲食店を開業する場合は必ず各店舗に一人いなければなりません。また、収容人員が30人を超える飲食店を開業する場合は、「防火管理者」の資格が必要となるので注意しましょう。

また、どんな業種でも必要となる「開業届」を始めとした各種届出のほかにも、飲食店特有の届出の手続きがあります。主な届出を以下にまとめました。


届出名提出先提出が必要なケース提出期限
食品営業許可申請店舗所在地を管轄する保健所必須遅くとも店舗が完成する10日ほど前まで
防火管理者選任届店舗所在地を管轄する消防署店舗の収容人数が30人を超える場合防火管理者選任後すみやかに
防火対象設備使用開始届店舗所在地を管轄する消防署必須店舗オープンから1ヶ月以内
火を使用する設備等の設置届店舗所在地を管轄する消防署店舗で火を使用する場合実際に火を使用する7日前まで
深夜酒類提供飲食店営業開始届出書店舗所在地を管轄する警察署深夜12時以降もお酒を提供する場合店舗オープンの10日前まで
風俗営業許可申請店舗所在地を管轄する警察署店員が客に接待行為を行う場合なるべく早めに(許可を得ないと営業できないため)
開業届店舗所在地を管轄する税務署必須開業から1ヶ月以内
出典:東京都保健医療局「営業許可・届出の概要」
出典:東京消防庁「防火・防災管理者選任(解任)届出書 / 消防計画作成(変更)届出書」
出典:東京消防庁「防火対象物使用開始届出書」
出典:東京消防庁「火を使用する設備等の設置(変更)届出書」
出典:愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」
出典:神奈川県警察「風俗営業等の規制概要と営業申請(届出)手続」
出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」

8 従業員の雇用

店舗のオープンが近づいてきたら、正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態で従業員を雇用します。雇用後には研修が必要な場合もあるので、オープン時期から逆算して少し早めに募集をかけることを意識しましょう。

9 販促ツールの作成

販促ツールは、飲食店の経営において、集客や宣伝をするためには必要不可欠なものです。主に使用されている販促ツールを表にまとめました。


販促ツール役割
ホームページ・お店の魅力をアピール
・お店に関する情報提供
SNSアカウント・お店の魅力をアピール
・お客様との双方向のやり取り
ポイントカードやDM・お客様のリピート促進
・お店に対する親近感の醸成

お店のホームページやSNSの公式アカウントが来店のきっかけとなることも多くあります。実店舗だけでなく、SNSなどのITツールを積極的に活用しましょう。

飲食店開業の専門家に相談しよう

飲食店開業へ向けて多くのステップを踏む必要がありますが、そもそも自分の事業計画が実現可能かどうか分からない方もいると思います。

事業計画の立て方に迷ったときは、セミナーに参加したり専門家に相談したりするのもひとつの方法です。

飲食店開業前にやっておくこと

個人事業主となった後は、クレジットカードの審査に通りにくくなるため、会社員など定職に就いている間にクレジットカードをつくっておきましょう。

また、個人口座とは別に、事業用のクレジットカードを作成し、事業とプライベートの支出と区別することで、お金の出し入れの把握がしやすくなります。

飲食店開業後にやること

飲食店を開業したら、日々の経理作業と確定申告の準備を始めましょう。確定申告には青色申告と白色申告がありますが、節税効果が高いのは青色申告です。

白色申告に比べて手続きや記帳が複雑ですが、要件を満たすと最大65万円の控除が受けられます。

また、飲食店開業時には「開業届」の提出が必要です。開業届を提出することで「所得税の青色申告承認申請書」が提出できるようになり、確定申告を青色申告で行えるようになります。

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  • 開業届の作成
  • 会計ソフトの準備
  • 事業用カードの発行
  • 事業用銀行口座の開設

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まとめ

飲食店を開業するためには、コンセプトの考案から事業計画書の作成・物件の契約・販促ツールの作成など、さまざまなことを行わなければなりません。いざお店をオープンしたらお店の切り盛りだけでなく、改善点を洗い出してPDCAを回していくことも求められます。

開業後の負担をなるべく少なくするためにも事業計画書をなるべく詳細に作成しておくのが望ましいです。また、事業計画の立て方に迷ったときは、セミナーに参加したり専門家に相談をしたりしてアドバイスをもらいましょう。

よくある質問

飲食店を開業するための流れは?

飲食店を開業するには多くのステップが必要です。資金調達や、資格、物件取得などの申請にかかる期間を把握し、逆算して準備を進めましょう。

飲食店開業までの流れを詳しく知りたい方は、「飲食店を開業するまでの流れとスケジュール」をご覧ください。

飲食店を開業するために必要な資格は?

飲食店開業に必要な資格は「食品衛生責任者」です。「食品衛生責任者」は食品衛生上の運営管理を職務とし、飲食店を開業する場合は各店舗に少なくとも一人必要です。

収容人員が30人を超える飲食店を開業する場合は、「防火管理者」の資格が必要です。

飲食店を開業するために必要な資格を詳しく知りたい方は、「各種資格の取得および届出の提出」をご覧ください。

飲食店の開業には資金がいくら必要?

飲食店を開業するために必要な費用は、一般的に1,000万円〜1,500万円程度といわれています。

開業資金の調達方法は、貯金をして自己資金で賄うか、借り入れを行うかのいずれかです。自己資金で賄えない場合は、日本政策金融公庫からの融資を利用しましょう。

詳しく知りたい方は、「資金調達の方法を検討」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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