開業費は、事業を開始するためにかかった費用を指します。節税にも大きく寄与するため、開業費にできる範囲についてきちんと理解しておく必要があります。
本記事では、開業費として認められる費用の範囲や、開業費で節税するためのポイントなどについて詳しく解説します。
目次
\税務署に行かずに開業届をカンタン作成!/
freee開業は開業に必要な書類を無料でかんたんに作れるサービスです。
しかも、 全ての手続きがオンラインで完結!
開業費とは
開業費とは、開業日までの準備活動に使ったお金のことを指し、別名で「開業準備費」とも呼ばれています。業種にもよりますが、開業を決意してから実際に営業を開始するまでにはさまざまな出費が発生します。
また、開業費は節税にも寄与する重要な費用で、特別な控除として取り扱う事が可能です。開業する前にかかった出費の記録は領収書などで残しておくなどして、しっかりと管理しましょう。
開業費は繰延資産として償却できる
開業費は経費ではなく「繰延資産」という資産の科目で、償却することができます。繰延資産を資産の科目で一旦処理しその後毎年少しずつ経費にしていくことで、節税において大きなメリットをもたらします。
なぜこのような処理をするかというと、「開業前の準備費用があるから今後ずっと仕事をしていくことができる。つまり開業年度だけの費用ではなく、それ以降の年度にも影響するため開業年度だけの経費にはならない」という考え方があるからです。
ちなみに、開業前に購入したか、開業後に購入したかによって、会計上の仕訳は下記のように異なります。
例)開業前に事務用品を1,000円購入した。
仕訳例
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
開業費 | 1,000円 | 元入金 | 1,000円 | 文房具購入 |
例)開業後に現金で事務用品を1,000円購入した。
仕訳例
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
事務用品費 | 1,000円 | 現金 | 1,000円 | 文房具購入 |
開業前にかかった物品購入などの経費の勘定科目は、「開業費」です。開業後に購入したら、文房具類であれば「事務用品費」に分類されます。
また、開業前はそもそも事業が始まっていないので、事業用の資金がありません。そのため「現金」でなく「元入金」という科目を使って仕訳する必要があります。
開業費の償却方法は、会計上5年で均等償却することとされています。しかし、税法上は任意であるため、各年で経費にする金額を自由に決めることができ、一括償却を行うことも可能です。
詳しくは以下の記事で解説しているので、参考にしてみてください。
開業費と創業費の違い
創業費は開業費とよく似ていますが、実際の意味は異なるため混同して理解しないよう注意が必要です。創業費とは、法人登記するまでにかかった費用のことを指します。
そのため、創業費が該当するのはあくまでも法人のみで、個人事業主による開業は創業日に該当しません。個人事業主は、創業費ではなく「開業費」を科目として計上することを覚えておきましょう。
開業費として認められる費用の範囲
開業費は経費ではなく資産であることが分かりましたが、一体どのような出費が開業費として認められるのでしょうか。以下では、開業費に含まれる費用と含まれない費用について詳しく解説します。
開業費として認められる費用
開業費として認められる費用には、個人と法人の場合で違いがあります。個人の場合には、主に以下のようなものが開業費として認められます。
個人の場合に開業費として認められる費用例
- 開業のためのセミナーへの参加費用
- 調査のための旅費、ガソリン代
- 通信費用
- 打ち合わせ費用
- 関係先への手土産
- 開業までの借入金利子
- 広告宣伝費
- パソコン購入費用 など
一方で法人の場合には、以下の費用などが開業費として認められます。
法人の場合に開業費として認められる費用例
- 研修費
- 広告宣伝費
- 市場調査費用
- 印鑑作成費用
- 名刺制作費用
- その他特別に支出した費用 など
このように個人と法人でも開業費として認められる費用に違いがあるので、一例として覚えておきましょう。
開業費として認められない費用
一方で、開業費として認められない費用の例は、個人と法人のそれぞれで以下のとおりです。
個人の開業費として認められない費用例
- 10万円以上するもの
- 仕入代金
- 敷金
- 礼金 など
1つあたり10万円以上する備品等は固定資産に該当するため、開業費として認められません。また、仕入代金は「売上原価」となるため開業日としての取り扱いはできません。敷金・礼金も一見開業費として扱えそうですが、原則開業費として取り扱うことは認められていません。
法人の場合に開業費として認められない費用
- 事務所の家賃
- 事務所の水道光熱費
- 10万円以上するもの
- 仕入代金
- 敷金
- 礼金 など
開業費として認められない費用の範囲は、個人の場合でも法人の場合でもそこまで違いはありません。ただし、上記はあくまで一例なので、認められるのかどうか不安な場合は税理士に相談することをおすすめします。
開業費として認められる支払いはいつまでか
開業費として認められる費用は、開業にあたって使った出費であれば何年前のものでも構わなく、法律による制限などはありません。重要なことは、「その出費が開業のために使用したかどうか」ということです。
しかし、数年前に出た出費を開業費として扱うことは現実的にはあまりありません。もし数年以上前の出費を開業費として扱う際は、開業に使用したという証拠をきちんと残しておきましょう。
開業届に記載した日付が開業日となる
開業日は「開業届に記載した日付」で決まります。開業届には開業日を記載する欄があるため、そこに記入した日付で決定されることを覚えておきましょう。開業届については、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
開業届とは? 個人事業主のための開業届の基礎知識
開業費で節税するためのポイント
以下の3つは開業費で節税を行うために重要なポイントなので、しっかりと理解しておきましょう。
開業前に発生した費用も開業費として償却できる
開業前は帳簿をつける前の期間ですが、その間に発生した出費も開業日として償却することができます。先述したように、開業前に開業のために使った出費は、何年前のものでも原則開業費として取り扱い可能です。
ただし、一般的には半年前から1年前の間までがさかのぼれる期間とされており、あまりにも昔の費用を開業費として扱うことは税務署に不審に思われる可能性があります。そのため、開業費として扱う出費はすべて説明できるように証拠を残しておきましょう。
発生した費用のレシートや領収証は保管する
開業費として発生した費用のレシートや領収書は、きちんと保管しておきましょう。証拠が残っていないと、開業費としての計上が認められないケースがあります。
ただ、以下のようなレシートや領収書を発行できない費用は、自身で出金伝票を残すことで開業費として計上できる場合があります。
- 慶弔費用
- 金額の少ない旅費交通費
- 接待を割り勘で支払った費用 など
レシート・領収書・出金伝票のいずれにしろ、きちんと保管していなければ開業費として扱うことが難しくなります。紛失しないためにも、保管場所を決めるなどの工夫をすることがおすすめです。
仕訳帳と減価償却資産台帳に正確な記帳を行う
開業費の合計金額が10万円を超えた場合は、仕訳帳と減価償却資産台への正確な記帳が重要です。それぞれの記帳のポイントは以下のとおりです。
仕訳帳に開業費を記帳するポイント
- 「開業費」は資産の科目に記帳する
- 「開業償却費」は経費の科目に記帳する
具体的な記帳方法や仕訳帳の使用方法については、以下の記事を参考にしてください。
減価償却資産台帳に開業日を記帳するポイント
- 開業費は「繰越資産」になることを理解する
- 減価償却・取得・売却等の経緯を正確に記帳する
開業費の償却を行うためには、減価償却資産台帳にも忘れずに記帳しなければいけません。
【関連記事】
仕訳帳とは?書き方や仕訳例、基礎知識を解説
まとめ
開業費は、開業するためにかかった費用のことで、きちんと計上することで節税に大きなメリットをもたらします。しかし、まずは開業費がどのようなものかきちんと理解し、開業費として認められるために領収書を残したり仕訳帳に正確に記帳したりしなければいけません。
開業後の営業をより有利にするためにも、開業費の扱い方をしっかりと理解し、節税対策を進めましょう。
よくある質問
個人事業主が開業費として認められるものの範囲は?
開業費として認められる範囲は、個人と法人とで異なりますが、個人事業主の場合の一例は以下のとおりです。
<個人事業主の場合に開業費として認められる費用例>
- 開業のためのセミナーへの参加費用
- 調査のための旅費、ガソリン代
- 通信費用
- 打ち合わせ費用
- 関係先への手土産
- 開業までの借入金利子
- 広告宣伝費
- パソコン購入費用 など
詳しくは記事内「開業費として認められる費用の範囲」をご覧ください。
開業費はいつまでさかのぼることができる?
法律によって定められた制限などはなく、開業するために発生した出費であれば何年までのものでも開業費として扱えます。しかし、一般的には半年前から1年前の出費までさかのぼれるとされています。
もし、数年前の出費を開業費として扱う場合には、それが開業に使われた出費であることを証明するために、領収書やレシートなどを保管しておきましょう。
詳しくは記事内「開業費として認められる費用の範囲」をご覧ください。