監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

開業とは、個人が新しく事業を始めることを指す言葉であり、自身の事務所を立ち上げる場合はもとより、個人事業主として自宅で業務を行う場合にも広く用いられます。
開業には、報酬が高くなったり働き方を自由に決められたりとさまざまなメリットがあります。一方、収入が不安定になり事業が失敗するなどのケースがあることも、考慮しなければなりません。
また、開業するための手続きは個人事業主と法人で異なります。
本記事では、開業に必要な手続きやメリット・デメリット、おすすめの職業などを詳しく解説します。
目次
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開業とは
開業とは、個人が新しく事業を始めることをいいます。一般的に国家資格などを保有する有資格者が、自身の事務所やクリニックを立ち上げる場合に多く用いられますが、特別なスキルをもたない人でも個人事業主になる際に使用されます。
また、開業には独立開業という言葉もありますが、これは所属する会社を辞めて自身で新しくビジネスを始める場合に使用されます。
開業と起業・独立・創業の違い
開業とよく似た言葉には「起業」「独立」「創業」があります。いずれも「事業を始めるとき」に用いられる言葉で法令的な違いはありませんが、実際の使われ方は少し異なります。以下でそれぞれの違いを説明します。
開業と起業の違い
開業が「既存の分野や職種において新しく事業を始めること」を表すのに対して、起業は「今までにない分野において事業を立ち上げること」を指すことが多いです。
初めて会社を設立する場合や、ベンチャーやスタートアップなどで事業を始める場合は「起業」を用いる傾向があります。
開業と独立の違い
独立は、「組織に属していた人が組織から抜けて事業を立ち上げる」ことを意味し、フリーランスになる、あるいは別に法人を立ち上げるようなケースで用いられます。
ただし、開業と独立、どちらの要素にも該当する場合が多く、「独立開業」と表現する場合もあります。
開業と創業の違い
創業は、新しく事業を開始したときに使われる言葉で、起業とほぼ同じような意味で用いられます。ただし、過去のことを話す場合には「創業」が用いられるケースが多いです。
「会社を創業した」「○○年創業」と表現することはありますが、「会社を開業した」「○○年開業」と表現することはあまりありません。
開業するメリット
個人での開業と会社に従事する会社員で大きく違う点は、働き方の自由さや報酬の高さです。開業する主なメリットは以下の3つが挙げられます。
開業するメリット
- 自由に事業を決められる
- 収入が高くなる可能性がある
- 働き方を自由に決められる
収入面や仕事の幅など、会社員との違いを参考にしてください。
自由に事業を決められる
会社に従事する会社員は、会社の事業方針や理念、上司の意図や指示にしたがって仕事を行います。
ただ、開業すれば自分のやりたい事業や仕事を選択できます。
収入が高くなる可能性がある
会社員の場合は給料制のため、収入の幅には限界があります。
しかし、開業した後の利益には上限がありません。売上を上げ、コストを最適化し、利益を増やすことで高い収入が期待できます。
働き方を自由に決められる
開業する場合、就労時間や休日の設定などを自身で自由に決められることから、仕事とプライベートのメリハリのある働き方が可能です。
また、会社員の場合は定年を迎えることによって就労できる期間が限られますが、開業すれば定年を迎えることはありません。事業を止めない限り、働き続けることが可能です。
開業するデメリット
開業には自由な働き方を選択できたり報酬が高くなったりするメリットがある一方で、デメリットもあります。
開業する主なデメリットは以下の通りです。
開業するデメリット
- 収入が不安定
- 事業が失敗する可能性がある
- 資金調達に苦労する
事前に注意点を把握し対策することで、リスクを回避できるため参考にしてください。
収入が不安定
開業をしても、会社員の給料のように安定した収入が毎月入る保証はありません。事業の利益が出ないと収入もゼロになります。毎月の収入は、利益に応じて大きく変動するリスクもあります。
業績が低迷する時期も予想されるため、繁忙期と閑散期などのリスクを踏まえた精度の高い事業計画が必要です。
事業が失敗する可能性がある
開業した事業が必ずしもうまくいくとは限りません。売り上げが伸び悩み収入が減少すれば、事業失敗となる可能性もあります。会社員であれば、会社の経営不振によって職を失うことはあっても、会社の責任や負債を負うことはありません。
しかし、事業が失敗すれば、全て自己責任で借金などの負債を背負うことになり、経済的な負担や心理的ストレスを抱える場合があります。
資金調達に苦労する
開業する際には、開業費用として収入印紙代・認証手数料・謄本手数料・登録免許税・オフィスに必要な備品の購入費用など、多くの資金を調達しなければなりません。
資金調達方法には自己資金のほか、銀行からの融資、他企業からの出資受け入れやクラウドファンディングなど、さまざまな方法があります。
資金調達について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
資金調達とは?企業の資金調達方法やメリット・デメリットを簡単に解説
開業に必要な手続きと必要書類
開業するためにはいくつかの手続きを行い、必要書類を提出しなければなりません。個人事業主と法人では、事業開始までの手続きや提出する書類、発生する費用などが異なるため、それぞれ確認しておきましょう。
開業に必要な手続き
開業に必要な手続きには、期限が定められている手続きもあるため、事前に把握し効率よく進めていきましょう。
個人事業主と法人のそれぞれの開業に必要な手続きは以下の通りです。
個人事業主 | 法人 | |
開業に必要な 手続き |
・国民健康保険・国民年金の届出の提出 ・社会保険(厚生年金保険・健康保険)の届出の提出※従業員が5人以上の場合 ・事業用銀行口座の開設 |
・健康保険・厚生年金保険の届出の提出 ・労働保険関係の届出の提出 ・雇用保険関係の届出の提出 ・法人口座の開設 |
開業・起業する手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
起業するにはどうする?会社起業の手順や必要な手続きをわかりやすく解説
開業に必要な書類
開業に必要な手続きと同じように、必要な書類も個人事業主と法人では異なります。提出書類や提出期限を事前に把握し、準備することで、スムーズに開業することが可能です。
個人事業主 | 法人 | |
必要書類 | ・マイナンバーカード ・開業届 ・事業開始等申告書 ・青色申告承認申請書 ・青色専業者給与に関する届出書 ・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 ・所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書 ・所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書 ・許認可申請(※業種による) |
・法人設立届出書 ・登記申請書 ・定款 ・設立時取締役の就任承認書 ・設立時代表取締役の就任承認書 ・印鑑届出書 ・発起人の決定書 ・資本金の払込証明 |
開業に必要な書類や提出方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
個人事業主の開業届の提出に必要なものとは?必要書類の出し方や注意点も解説
開業に必要な資金
開業に必要な資金は、業種や規模などによりケースバイケースです。ただ、日本政策金融公庫による「2024年度新規開業実態調査」によると、500万円未満での開業割合が41.1%と全体の4割近くを占めています。
データ全体をもとに算出した開業費用の平均値は985万円、中央値は580万円で、長期的に見ると開業費は減少傾向にあります。
出典:日本政策金融公庫総合研究所「2024年度新規開業実態調査」
開業しやすい職業のポイント
新しく個人で事業を始める場合、利益を上げるためには長く続けられる、自身に合った職業を選ぶ必要があります。開業しやすい職業のポイントとして、以下の3つが挙げられます。
開業しやすい職業のポイント
- 初期費用を抑えて開業できる
- 自身の資格や経験を活かして開業できる
- ノウハウやスキルがなくても開業できる
これから開業する人は、検討している事業がこのポイントに当てはまっているかをまず確認しましょう。
起業におすすめの業種や成功しやすい業種について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
起業におすすめの業種!成功しやすい業種やその選び方
初期費用を抑えて開業できる
店舗を構えず在宅でも働ける業種は、初期費用を低く抑えることが可能なため独立・開業に向いています。
具体的には以下のような職業があります。
店舗を構えず在宅でも働ける業種
- フリーライター
- Webデザイナー
- システムエンジニア
- ネットショップオーナー
特別な設備を必要とするケースが少なく、店舗や事務所を構えて事業を始めるよりもコストを抑えられるため開業に適しています。
資格や経験を活かして開業できる
専門的な資格を保有することで、開業前に必要な知識を身に付けられるほか、取引先からの信頼度も高まり、事業を有利に進められる可能性があります。
具体的には以下のような職種があります。
資格や経験を活かして開業できる業種
- 行政書士
- 税理士
- 社会保険労務士
- サロン経営(エステ・ネイル)
資格の種類によっては資格取得のために膨大な勉強期間が必要な可能性もあるので、開業に向けた具体的なスケジュールを立てることが重要です。
経営未経験でも開業できる
資格や経験もなくビジネスプランも思い当たらないという方には、チェーン店のフランチャイズを利用した開業も可能です。
フランチャイズでは、経営ノウハウの提供など本部からのサポートを受けられるほか、知名度が高いことから集客力もあります。
具体的には以下のような職業があります。
フランチャイズで開業できる業種
- ファストフード
- カフェ・喫茶店
- コンビニエンスストア
- 福祉施設
- ジムやフィットネス
フランチャイズでパッケージ化されたビジネスモデルを実践して学ぶことで、失敗のリスクを軽減し、事業を長く続けていくことにもつながります。
開業で失敗しないためのポイント
開業して生計を立てていくと決めたからには、途中で廃業することなく事業を継続することが重要です。開業で失敗しないためのポイントは、主に以下が挙げられます。
開業で失敗しないためのポイント
- 開業する業界を慎重に選ぶ
- 資金を潤沢に用意する
- 明確なターゲット選定を行う
- 会計知識を習得する
事業をうまく軌道に乗せるためには、開業後のつまずきや停滞をできるだけ少なくすることが求められます。
開業する業界を慎重に選ぶ
開業して成功するためには、業界の選定が重要です。たとえば飲食業界は参入しやすいものの、競争率や廃業率は高い傾向にあります。
どのような業界に需要があるのか、自身の経験や技術はどのような業界で役に立つかなどを、見極める力が求められます。
資金を潤沢に用意する
開業してすぐに事業が軌道に乗るとは限りません。ただし、事業がうまくいかない場合でも、資金を用意できていればしばらくの間は事業を継続できます。
自己資金で賄うのが困難であれば、補助金や助成金の利用、金融機関からの借り入れも検討しましょう。
明確なターゲット選定を行う
手掛ける商品やサービスのターゲットを明確にしておくことも、重要です。
ターゲットに刺さるような特徴ある商品やサービスは顧客の目に留まりやすく、事業の成功にも繋がりやすいです。
会計知識を習得する
会計に関する業務は、専門の人員を雇うことでも解決できます。ただ、会社の収支を正しく把握するために、ある程度の会計知識は開業前に身につけておくべきです。
キャッシュ・フロー(企業のお金の流れ)を把握できる力があれば、資金繰りの悪化も防ぎやすくなります。
まとめ
開業とは、「現在働いている分野において新しく事業を始めること」を指す言葉です。開業と似ている言葉に独立・起業・創業などの言葉がありますが、それぞれ言葉の意味や使い方は異なります。
開業することによって、自由に事業を決めることができたり、業績によっては報酬が高くなったりするなどのメリットがあります。その一方で、収入が不安定になったり、事業が失敗したりする可能性があるなどのデメリットも考慮しなければなりません。
メリット・デメリットを比較しながら、自身に合った職業での開業を検討しましょう。
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個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
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1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

Step1:準備編

準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。

事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
開業と起業の違いは?
開業とは、現在働いている分野において新しく事業を始めることであり、起業とは今までにない分野において事業を立ち上げることを指すことが多いです。
詳しくは記事内、「開業と起業の違い」をご覧ください。
開業の手続きに必要な書類は?
健康保険や年金の加入、銀行口座の開設などがありますが、個人事業主と法人では書類や手続きが異なります。
詳しくは記事内、「開業に必要な手続きと必要書類」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
