監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

開業する際には多くの資金が必要ですが、具体的にどのような資金が、どのくらい必要になるのかは、業種や事業規模ごとに異なります。
また、開業の際には初期費用だけでなく、運転資金が必要な点にも注意が必要です。運転資金は、3ヶ月分程度を目安に準備しておくとよいといわれています。
本記事では、業種別の開業資金の内訳や調達方法について詳しく解説します。
目次
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開業するには資金はいくら必要?
開業に必要な資金は、業種や事業規模、開業場所によって大きく異なります。
日本政策金融公庫の調査によると、2024年度の新規開業における開業資金の平均額は約985万円でした。ただし、これはあくまでも平均値であり、中央値は580万円です。また、500万円未満で開業するケースは4割以上を占めています。
開業資金を準備する際は、業種・事業規模・開業場所などを考慮し、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。自己資金をどれだけ用意できるか、融資を受ける場合はいくら借りられるのかなど、資金調達の方法も検討する必要があります。
出典:日本政策金融公庫「2024年度新規開業実態調査」
開業資金の内訳
開業資金は、大きく「設備資金」と「運転資金」の2種類に分類されます。設備資金は開業時に必要な建物や設備などを購入するための資金で、運転資金は開業後に事業を運営していくために必要な人件費や家賃などの資金です。
開業前にそれぞれの内訳を把握し、あらかじめ資金計画を立てておきましょう。
設備や備品などを購入するための設備資金
設備資金に含まれる費用項目は、以下の通りです。
設備や備品などを購入するための設備資金
- 店舗契約費
- 内装工事費
- 設備費
- 備品購入費
店舗契約費とは、物件契約時に必要な敷金・礼金・保証金・仲介手数料などの費用です。看板設置費用や駐車場契約料も該当します。内装工事費は、店舗や事務所の内装整備のための費用で、壁紙や床材の張替え、照明設置などが含まれます。
設備費は、業種に応じた必要な機械や設備の購入費用です。厨房設備や美容機器などが該当します。備品購入費は、パソコン・デスクなどの事務用品、消耗品やインテリアなど、業務に必要な備品の購入費用です。
なお、開業前に発生した経費は、個人であれば「開業費」法人であれば、「創立費」「開業費」として計上できます。
事業を円滑に運営するための運転資金
運転資金に含まれる費用項目は、以下の通りです。
事業を円滑に運営するための運転資金
- 人件費
- 家賃
- 光熱費
- 通信費
- 広告宣伝費
- 仕入費用
- 消耗品費
人件費は、従業員の給与や社会保険料など、人材に関わる費用全般を指します。家賃は店舗やオフィスの賃料で、契約更新料も考慮しなくてはいけません。
光熱費は電気・ガス・水道など、季節や使用量で変動する費用です。通信費は電話やインターネット料金などが該当します。広告宣伝費は、集客や販促のための広告掲載・宣伝活動費用です。仕入費用は商品や材料の仕入れに必要な費用で、扱う商品ごとに異なります。
業種別の開業資金内訳
開業に必要な資金は業種ごとに異なり、業態や事業規模、出店場所によっても金額は変動するため、同業種でも開業資金の内訳はさまざまです。
以下では、5つの業種の内訳例を紹介します。
コンサルティング業
コンサルティング業は知識やスキルが主な商品のため、比較的少額の資金で開業できます。主にかかってくる初期費用は、パソコンなどのOA機器、名刺や企業案内の作成費用です。
また、認知拡大や信頼性向上のために、ウェブサイト作成費や広告宣伝費、セミナー開催費用が必要となる場合もあります。
事務所を構えるなら物件に関わる費用も発生しますが、在宅やシェアオフィスで起業すれば費用を抑えることが可能です。
初期費用の目安
- 名刺・印刷物など:3,000円~20,000円程度
- ホームページ制作費:30~50万円程度
- オフィス賃料:100万円前後(在宅でも可)
ライター業・デザイナー業
ライターやデザイナーなどは、パソコン代とネット通信費だけでも開業できるのが強みです。
自宅をオフィスとして利用すれば、数万円程度の資金で開業できます。設備費用がかさみにくい分、長期的な運転資金や広告・宣伝費に資金を回せます。
初期費用の目安
- パソコン・ソフトウェア:10~30万円程度
- ホームページ作成費用・広告宣伝費:数万円~10万円程度
通信販売業
通信販売業は、インターネットを通じて商品を販売する業種です。小規模で始める場合の初期費用は少なめですが、事業を拡大していくにつれて、在庫管理や発送業務などの費用が増加します。
また、海外から仕入れる場合は、送料や関税などのコストも考慮しましょう。
専用のサイトを作るよりも、通販専門の企業が提供するプラットフォーム(楽天やYahoo!ショッピング、Amazonマーケットプレイスなど)を使うと、初期費用を安く抑えられるうえ開設の手間がかからず、集客もしやすくなります。
初期費用の目安
- ECサイト構築費:50~150万円程度(自社サイトの場合)
- プラットフォームの利用:数千円〜
- 在庫仕入れ・保管費用:数万円~(取り扱う商品の種類や規模により大きく変動)
- 梱包材・発送費用・広告宣伝費:30~50万円程度
サービス業
飲食店などのサービス業では、店舗の敷金や礼金・当面の家賃・内装や外装のデザイン・施工費用・設備購入費・仕入れの費用・人件費・人材募集のための広告費など、多くの費用がかかります。
初期費用としては1,000万円程度かかることもありますが、専門性の高い機器が必要なければ、数百万円でも開業は可能です。
ネイルサロンなど仕入れが不要なケースや、自宅をそのまま利用できるケースではさらに費用を落とせます。
初期費用の目安
- 店舗契約にかかる敷金・礼金:50~200万円
- 内装工事費:100~300万円(店舗規模やデザインによる)
- その他設備購入・人件費など:数十万〜
製造業
製造業は、原材料を加工して製品を製造し、販売する業種です。食品・機械・化学・医薬品など、幅広い分野が製造業に含まれます。ライン製造など大規模な設備が必要であれば、数千万〜数億円単位の費用がかかることも想定しなくてはなりません。
また、専門的な技術や知識を持った人材を採用するなら、ある程度の人件費も確保しておく必要があります。
一方で、3Dプリンターやオンデマンド印刷機などの製造機械の技術革新によって、初期費用を大幅に抑えられるケースも増えています。
初期費用の目安
- 小規模な製造業:300~500万円程度
- 大規模なライン製造や自動化設備を導入する場合:1,000万円~数億円単位
当面の運転資金はまず3ヶ月分を確保
開業資金を考えるにあたり、忘れてはいけないのが当面の運転資金です。運転資金でよくいわれている目安は、「開業後3ヶ月以内に必要な支払経費」です。
顧客に商品やサービスを提供しても、すぐに売上金が手に入るとは限りません。クレジットカードで支払われた場合など、掛取引になるケースでは、実際に現金が手元に入金されるまでに一定の時間差が生じるためです。
一般的に、資金回収は30~60日後になるケースが多いため、仕入れや人件費などの支払いを考慮して最低でも3ヶ月分を用意しておくと安心でしょう。
開業初期は取引実績が少なく信頼性が低いために、仕入れの支払いで現金取引を求められるケースもあります。売上は立っていても現金がないという事態にならないよう、開業時には当面の運転資金を確保しておきましょう。
開業資金の調達方法
開業資金の調達方法は、自己資金を活用する方法と外部から調達する方法があります。事業計画や必要資金の規模、自己資金の状況などを考慮しながら、自分が始めたい事業に合った方法を選びましょう。
主な資金調達の方法
- 自己資金
- 融資
- 補助金・助成金
- クラウドファンディング
自己資金
自己資金とは、自身の資産や家族からの援助で用意する返済不要の資金です。自己資金でまかなえる割合が高いほど、返済の負担が少なく開業後の資金繰りに余裕が持てます。
また、金融機関からの融資を受ける際も、自己資金が多いと有利に働きます。
融資
融資とは、銀行や公的機関から借り入れる開業資金です。返済義務はありますが、まとまった資金を一度に調達できます。融資を受ける際は、事業計画書の内容や経営者の資質などが審査されます。
主な融資元は、銀行・信用金庫・日本政策金融公庫・地方自治体の融資制度などです。特に日本政策金融公庫からの創業融資は、過去の経営実績が問われないため、開業したてでも審査に不利に働く可能性は低いといわれています。
補助金・助成金
補助金・助成金は、国や地方自治体から交付される返済不要の資金です。起業促進や地域活性化を目的とした制度があり、要件を満たせば利用できます。
ただし、融資より審査が厳しく、交付までに時間がかかるのが難点です。また、交付を受けるためには、事業計画書の作成や申請手続きなどを行う必要があります。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数から資金を募る方法で、事業内容や目標金額を提示し、共感者から支援を受けます。
事業のPRや顧客獲得にも繋がりますが、目標金額に達しないと調達できない場合もあるため、事前準備や広報に注力しなければなりません。
まとめ
開業に必要な資金は、業種や事業規模によってさまざまです。
開業費用は、物件に関わる費用や備品購入費だけでなく、人件費や仕入費用などの運転資金も用意する必要があります。運転資金が十分でないと、事業が軌道に乗る前に破綻しかねません。
運転資金の目安は3ヶ月分といわれています。長期的に事業に取り組めるよう、運転資金は多めに確保しておきましょう。
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家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
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Step1:準備編

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Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

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Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

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届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
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よくある質問
開業資金の一般的な相場はいくら?
開業資金の相場は業種や事業規模により異なりますが、日本政策金融公庫の調査によると、2024年度の新規開業における開業資金の平均額は、約985万円でした。ただし、これはあくまで平均値であり、実際には数百万円から数千万円まで幅広く分布しています。
詳しくは「開業するには資金はいくら必要?」をご覧ください。
開業の資金はどうやって調達すればいい?
開業資金の調達方法は、「自己資金」「融資」「補助金・助成金」「クラウドファンディング」の4つの選択肢があります。自身の状況にあわせて適切な方法を選ぶことが重要です。
詳しくは「開業資金の調達方法」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
