監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

不動産業で開業する際は、必須の免許や資格、開業までの流れなど、事前に知っておかなくてはいけないことがたくさんあります。
そこで本記事では、不動産で開業する際に必要な基礎知識を紹介します。会社を辞める前に準備しておくとスムーズなことや、時間・お金を節約するお得な情報も紹介するためぜひ最後までご一読ください。
目次
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未経験でも可能?不動産開業に必要な免許と資格
不動産業の開業には、「宅地建物取引業」の免許と「宅地建物取引士」の資格が必要です。資格と免許があれば経験者、未経験者問わず開業できます。
不動産業を営む事業所では、業務に従事する者5人につき1人の割合で宅地建物取引士を配置することが義務付けられています。そのため、現在不動産関係の企業に勤めている場合、「宅地建物取引士」の資格はすでに保有している人も多いでしょう。
以下では、「宅地建物取引業」の免許を取得してから開業するまでの流れを解説します。
不動産業 開業までの流れ
不動産業を開業するために重要な手続きのひとつは、「宅地建物取引業」の免許取得です。免許を申請してから交付されるまで通常2週間〜1ヶ月ほどかかります。
必要書類の作成や資金の準備など、やらなくてはいけないことがたくさんあります。免許の申請から開業までの流れは、以下の通りです。
宅地建物取引業の免許取得の流れ
- 申請の準備
- 申請書類の作成
- 申請と審査
- 免許の取得
それぞれ解説します。
➀申請の準備
申請のためには、「事業所」「宅地建物取引士」「営業保証金」の3つが必要です。
「宅地建物取引業」の免許申請には事務所をもっていることが必須条件のため、事前に事務所を借りなければなりません。また、「宅地建物取引士」の資格と「営業保証金(宅建業者が営業開始前に供託する金銭)」も必須です。
また、会社に勤めており専任登録されている場合は、解除手続きが必要です。会社に専任を解除してもらい、自分で勤務先の登録解除を行わなくてはいけません。
②申請書類の作成
準備が終わったら、免許取得の申請を行いましょう。事務所がひとつの場合は、所在地の都道府県知事に申請します。事業所が複数ある場合は、国土交通大臣への申請が必要です。
必要な申請書類と手引の詳細は、下記サイトをご参照ください。
出典:東京都住宅政策本部「宅地建物取引業免許申請の手引(国土交通大臣免許・東京都知事免許)」
③申請と審査
申請書類の作成が終わったら、各都道府県の「宅地建物取引業免許事務担当課」に申請を行います。記入漏れやミスがないように注意しましょう。審査では、欠格事由や事務所調査などが行われます。
④免許の取得
審査に通ったら、免許通知のはがきが届きます。
不動産開業のための事務所
不動産開業のためには事務所が必要です。小さな規模であれば自宅が事務所でも問題ありませんが、信用面を考慮すると専用の事務所があったほうがよいでしょう。
その場合、当面は自宅を事務所として、規模が大きくなったら借りる方法もあります。
新規で事務所を借りる場合
事務所を新たに借りる場合は、その地域で需要があるか、競合がいないかなどの事前調査が重要です。いくつか事務所の候補を挙げ、吟味しましょう。
なお、申請から許可が下りるまでの期間には注意が必要です。申請完了には少なくとも1ヶ月程度はかかり、その間は営業ができません。開業後すぐに仕事を得られるとは限らないため、不動産業の開業から数ヶ月分の事務所維持費は確保しておきましょう。
自宅を事務所にする場合
自宅で開業を検討している人は、「物理的にも宅建業の業務を継続的に行える機能をもち、社会通念上も事務所として認識される程度の独立した形態を備えている」か確認してください。
一戸建てを事務所として使用する場合は、以下がポイントです。
- 事務所専用の出入り口があること
- 壁で間仕切りされたスペースがあること(プライベートと分離されていること)
- 接客用の机、椅子など事務所の形態を整えていること
上記のポイントを抑えていない一戸建てやマンションの場合、自宅を事務所にすることはできません。
不動産保証協会に加入する
不動産保証協会とは、国土交通大臣指定の宅地建物取引業保証協会です。不動産業を開業する場合、営業保証金として1,000万円を納める必要があります(本店だけの場合)。
しかし、不動産保証協会に入会して、入会金20万円と保証金60万円を支払うと、1,000万円の営業保証金が免除されます。この保証金は、トラブルがあった際に支払うお金です。
宅建協会に加入する
宅建協会は、消費者・会員業者・不動産業界全体のサポートを目的として設立された協会です。
宅建協会に加入すると、レインズという全国の不動産情報を交換するシステムを利用できるようになり、ほかの不動産屋とほとんど同じ物件を扱えるようになります。
宅建協会への加入は事業内容によっては必要ありませんが、物件の仲介売買を行う際には加入が必須です。入会金は60万円です。
事業の広告宣伝
不動産屋の開業を認知してもらうためにも、最低限の広告や宣伝は必須です。以下では、ウェブサイトやSNSを使った広告宣伝方法を紹介します。
ウェブサイトもしくはブログ
問い合わせの窓口となるウェブサイトを用意しましょう。最近ではウェブサイトを無料で作成できるサービスも数多くあるため、まずは無料で作って運営してみるのがおすすめです。
その際、ただウェブサイトを作るだけでは集客が見込めないため、以下の3点を考えることがポイントです。
- どんなキーワードで検索されてウェブサイトにお客様がたどり着くのか
- 発信すべき不動産に関する有益な情報は何か
- どんな内容があればブログからお問い合わせがくるか
ウェブサイトを作る目的は集客と契約獲得のためなので、ただ作ればいいわけではなく、実際に訪問してきた読者にどのようにアプローチするかを考えなくてはいけません。
運営や発信が難しいと感じたら、プロに依頼するのも選択肢のひとつです。
SNSの活用
可能であれば、事業専用のFacebookページやXアカウント、Instagramアカウントを開設しましょう。ブログの記事の告知や、業務内容の告知などに活用できます。
SNSは拡散力があるうえ、気軽に情報発信できる点が魅力です。
不動産業の開業資金の目安
不動産業の開業にかかる主な費用は、以下の通りです。
不動産開業にかかる主な費用
- 事務所初期費用
- 営業保証金
- 各種業界団体への加入・年会費
- 免許申請の手数料
- 営業維持費
- 人件費(従業員を雇用する場合)
また、開業後はすぐに利益が出るわけではないため、当面の生活費を準備しておくのが望ましいです。
なお、法人として不動産業を開業する場合は、およそ1,000万円の資金が必要といわれています。個人事業主として開業し、自宅を事務所にするなど節約しても、800万円は用意しておきたいところです。
不動産業の開業で失敗しないポイント
不動産業で失敗しないために、以下のポイントを押さえましょう。
不動産業の開業で失敗しないポイント
- 法人と個人事業主の違いを理解して開業手段を選択する
- 人脈の構築手段を考える
- 資金繰りの知識を学ぶ
それぞれ解説します。
法人と個人事業主の違いを理解して開業手段を選択する
不動産業は、資格と免許を取得すれば法人でも個人事業主でも開業できます。法人と個人事業主では責任や税制面、社会的信用などが異なるため、違いを把握しましょう。
事業形態 | 法人 | 個人事業主 |
---|---|---|
社会的信用 | 高い | 低い |
責任 | 有限責任 | 無限責任 |
主な税金 | 法人税、法人住民税、法人事業税、消費税 | 所得税、個人住民税、個人事業税、消費税など |
社会保険 | 協会けんぽ、厚生年金 | 国民健康保険、国民年金 |
設立手続き | 定款の作成と法人登記が必要 | 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)と事業開始等申告書の提出が必要 |
個人事業主の場合、開業の手続きは税務署に「開業届」を提出し、都道府県税事務所と市町村に「事業開始等申告書」を提出します。手続きは比較的簡単に行え、開業しやすいことがメリットです。
一方、法人は個人事業主より開業手続きの負担が大きいですが、社会的信用・責任・税制面などにメリットがあります。
たとえば税制面では、個人事業主は所得が多くなるほど税率が高くなる累進課税が適用され、所得に応じて5~45%の税率ですが、法人税は最大23.2%です。
また、社長の給与は経費として計上でき、社長個人の所得には給与所得控除が適用されます。そのため、個人事業主で開業し、利益が大きくなってから法人に変更するケースも多いです。
一概にどちらがよいとはいえないため、特徴を理解したうえで開業手段を検討しましょう。
人脈の構築手段を考える
不動産業で成功するには、人脈が重要です。不動産業には賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理・コンサルティングなど、いくつかの業態がありますが、どの業態で開業しても顧客の獲得が必須です。
利益を出し顧客を得るためにも最新情報を入手しておくのは必須ですが、人脈があれば顧客同士の紹介や、業界内同士の情報交換から利益を得られる可能性も高くなります。
人脈を広げるにはセミナー・勉強会への参加、知り合いからの紹介、SNSの活用などいくつかの手段があるため、開業前に人脈の構築手段を考えておきましょう。
なお、人脈を築いても、信頼関係がなければせっかく築いた人脈を失う可能性があるため、人脈を広げる際は、信頼関係の構築も忘れずに行うことが大切です。
資金繰りの知識を学ぶ
経営するうえで、資金繰りは会社の継続に関わる大切な要素です。資金繰りとは、営業活動などで入ってくるお金と支払いなどで出ていくお金を管理することで、まさに「血液」とたとえられることがあります。
血液の巡りが悪くなると病気にかかるように、資金繰りが悪化すれば事業自体が成り立たなくなる可能性があります。そのため、経営には適切な資金繰りが欠かせません。
特に不動産業は取り扱う金額が大きいため、資金繰りの知識がないとリスクが高まります。数字が苦手な人は、専門家のサポートを受けるなどの対策を考えましょう。
あわせて資金調達についての知識を高めておきましょう。
【関連記事】
資金調達とは? 企業の資金調達方法やメリット・デメリットを簡単に解説
まとめ
不動産業を開業するには「宅地建物取引士」の資格のほか、「宅地建物取引業」の免許も必要です。
免許の交付には事務所を構えていることが必須条件であり、申請から交付まで1ヶ月程度かかるため、早めに準備を行うことが大切です。
また、不動産業の開業で成功するには、法人・個人事業主との違いや人脈の構築手段、資金繰りの知識など、最低限抑えておくべきポイントがあるため、不動産業の開業前に把握しましょう。
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個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
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freee開業で作成可能な5つの届出
1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

Step1:準備編

準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。

事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
不動産業の開業までの手順は?
開業するには、宅地建物取引業の免許を取得しなければなりません。宅地建物取引業の免許取得手順は、以下の通りです。
- 申請の準備
- 申請書類の作成
- 申請と審査
- 免許の取得
取得にはある程度の期間が必要になるため、早めに準備を開始しましょう。
不動産業の開業までの手順の詳細は、「不動産業 開業までの流れ」をご覧ください。
不動産業の開業にかかる資金の目安は?
法人と個人事業主、事務所費用など、開業時の状況によって異なりますが、不動産業の開業にかかる資金の目安は約1,000万円といわれています。
不動産業の開業にかかる資金の目安の詳細は、「不動産業の開業資金の目安」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
