監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
独立・起業するには自己分析、ビジネスモデルや事業の計画、家族への理解を得ること、資金調達などステップを踏んで準備を進めていくことが必要です。たとえば、ビジネスモデルが曖昧なまま起業すると、利益を上げられず、事業が頓挫するリスクがあります。
また、独立・起業の準備や手続きは、事業計画の作成や許認可の取得など多岐にわたり、これらを漏れなく行うことが不可欠です。
本記事では、独立に向けた5つのステップや個人事業主として起業する手続き、独立・起業に失敗しないための注意点などを解説します。
目次
- 独立・起業に向けた5つの事前準備
- ステップ1:自己分析をする
- ステップ2:ビジネスモデルを考える
- ステップ3:家族の理解を得る
- ステップ4:事業計画を立てる
- ステップ5:必要な資金を集める
- 独立して個人事業主になるには
- 開業のための手続き
- 退職にあたっての手続き
- 独立して会社を設立するには
- 独立で失敗しないための注意点
- 違法なことや不義理なことをしない
- スモールスタートを意識する
- 独立・起業のタイミングを適切に判断する
- 収入や支出への考え方を身につけておく
- 必要な人脈を独立前からつくっておく
- 事業用のクレジットカードや銀行口座をつくっておく
- まとめ
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- よくある質問
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独立・起業に向けた5つの事前準備
独立・起業にあたっては、いくつかの準備が必要です。独立・起業後に事業をスムーズに運営させるためにも、適切に準備を進めていきましょう。
以下の5つのステップは、独立し開業届を出すまでに事業を行う体制を整えるために欠かせない事前準備です。
“独立・起業のための事前準備5ステップ”
- ステップ1:自己分析をする
- ステップ2:ビジネスモデルを考える
- ステップ3:家族の理解を得る
- ステップ4:事業計画を立てる
- ステップ5:必要な資金を集める
ステップ1:自己分析をする
まずは自身を分析し、どの分野で起業するか、どのような事業ができるかを見極める指針とします。以下のような観点から、自己の理解を深めていきます。
自己分析の視点
- どのような性格の特徴をもっているか
- どのような資格やスキルをもっているのか
- どのような職歴・経験があるか
- どのようなことに興味があるか(趣味や好きなことはあるか)
- どのような人脈があるか
自己分析を通して、「自分はどの分野なら力を発揮できるのか」「どのような事業をしたいのか」を、明確にしましょう。
ステップ2:ビジネスモデルを考える
自己分析を行い、起業する分野や事業がある程度固まったら、どのような職種、仕組みで収入を得るのかなど具体的なビジネスモデルを考えます。
独立にあたっては、顧客ターゲット、商品やサービス、収益の仕組みを明確にして、具体的な事業計画に落とし込む必要があります。競合他社の分析や市場調査を行い、自分のビジネスが差別化できるポイントを見つけることも重要です。
また、プログラミング、デザイン、動画編集、ライティングなどスキルや興味を活かせる職種を選び、それを磨き上げていきましょう。
ステップ3:家族の理解を得る
起業をする場合は、できるだけ多くの支援・協力者を得ることが、成功を収めるための大きなカギになります。まずは最も身近な支援・協力者となる家族に、ビジョンやリスクを共有し独立・起業に対する理解を得ましょう。
特に独立・起業の初期段階では、収入が不安定であったり休みが取れなかったりと、家族に我慢をさせてしまうことも考えられます。事業が軌道に乗ってからも、いざというときにサポートをしてくれるのは家族です。
なぜ自身が独立・起業をしたいのか、事業が成功した際にはどのような未来が待っているのかなど、自身の思いや将来の見通しも伝えます。
ステップ4:事業計画を立てる
ビジネスモデルのアイデアを形にするには、具体的な行動や目標に落とし込む事業計画を立て、実現可能性を考えます。以下の視点で、事業計画を立てましょう。
事業計画を立てる際の視点
- どのような経営理念で事業を行うのか
- どのようなサービス・商品をつくるのか
- どのようなスケジュールで何をするのか
- 集客方法はどうするのか
- 起業にあたっての資金はどれくらい必要なのか
- どこから資金調達をするのか
- いつまでにどれくらいの売り上げ・利益を達成するのか
自分自身の頭のなかを整理して、見通しを立てて事業を進めていくためにも事業計画を立てることは大切です。
この時、事業計画書も作成するといいでしょう。事業計画を可視化できるだけでなく、融資を受けるための提出書類としても役立ちます。事業計画書の書き方について詳しく知りたい方は、別記事「事業計画書とは?事業計画書を作成する目的や作り方について解説」をご覧ください。
ステップ5:必要な資金を集める
事業をスタートする際は、店舗開業の費用、オフィスの設立費用、起業当初の運転資金などまとまった資金が必要になります。必要に応じて、資金調達をしましょう。
開業資金について詳しく知りたい方は、別記事「開業資金はどれくらいかかる?その種類や調達方法をチェック」をご覧ください。
資金調達先としては、日本政策金融公庫の創業融資、国や地方自治体による補助金・助成金、銀行などの金融機関の融資などが挙げられます。
ただし、国や地方自治体による補助金・助成金については、申請にあたって開業届が必要となるものがあり、これらは開業届提出後に、その控えを持って申請しなければなりません。資金調達を検討する際には、融資元や国・地方自治体のサイトを確認し、申請にあたっての必要書類を確認しましょう。
そのほかの資金調達方法について詳しく知りたい方は、別記事「独立開業するために資金を作る方法」をご覧ください。
出典:日本政策金融公庫「創業融資のご案内」
独立して個人事業主になるには
独立して個人事業主になるためには、「開業のための手続き」と「退職にあたっての手続き」の大きく2つの区分でそれぞれ手続きを進めなければなりません。
開業のための手続き
個人が事業を始めるにあたっては、管轄の税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出します。提出期限は、開業から1ヶ月以内です。
開業届のほか、必要に応じて、以下の届出も行います。
開業届のほか必要な手続き
- 青色申告承認申請書(青色申告を希望する場合)
- 許認可申請(許認可が必要な業種で事業をする場合)
青色申告で確定申告をするのであれば、開業届とともに「青色申告承認申請書」も提出します。提出先は管轄の税務署です。
青色申告は白色申告とは異なり、複式簿記による記帳が必要であったりといった条件がありますが、白色申告にはない最大65万円の「青色申告特別控除」を受けられるという点がメリットです。
青色申告について詳しく知りたいという方は、別記事「青色申告には開業届が必要?青色申告するために必要な申請と期限についてまとめて解説!」をご覧ください。
そのほか、許認可が必要な業種で事業をする場合は、適宜申請をしなければなりません。たとえば、飲食店は「飲食店営業許可」、お酒の販売は「酒類販売業免許」、リサイクルショップは「古物商許可」が必要です。
許認可が必要な業種や、申請の方法について詳しく知りたい方は、別記事「許認可とは?取得しない場合のペナルティや申請方法について解説」をご覧ください。
出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
退職にあたっての手続き
独立するために勤務先を退職した後には、以下の手続きも必要です。
手続き名 | 期限 |
---|---|
国民年金への加入 | 退職日から14日以内 |
健康保険の手続き (任意継続の手続きなど) | 退職日から14日以内 |
失業保険の受給手続き (すぐに事業を開始しない場合など) | 退職日の翌日から1年以内 |
住民税の支払い (退職時期により普通徴収への切り替えなどが必要) | 6月(第1期)、8月(第2期)、10月(第3期)、翌年1月(第4期)のそれぞれ末日まで |
退職手続きの詳細について詳しく知りたい方は、別記事「退職手続きはいつまでに何をやるべき?従業員側・会社側それぞれの作業を解説」をご覧ください。
出典:中央区「住民税の申告から納付まで」
独立して会社を設立するには
個人事業主ではなく、独立して会社を設立するのであれば、以下のような流れで手続きを進めます。
独立し会社を設立するための手続き
- 会社設立に必要な基礎情報を決める
- 会社用の印鑑(実印)を作成する
- 定款を作成する
- 公証役場で定款の認証を受ける
- 資本金の払い込みを行う
- 登記申請書類を用意し、登記申請する
上記のとおり、会社を設立するためには、会社の基礎情報(会社形態、会社名、事業目的、本店所在地など)を決定後、実印の作成、定款の作成、定款認証の手続き、資本金の払い込み、登記申請を行います。
このうち「定款の作成」は、法務局への提出分のほかに公証役場で保管する分(原本)と会社で保管する分の計3部を作成・製本します。電子ファイル形式(電子定款)で作成することも可能です。
電子定款の作り方などについて詳しく知りたい方は、別記事「電子定款の作成・認証方法を徹底解説!紙よりも手間とコストを省くには?」をご覧ください。
退職にあたっての手続きは、前述の「退職にあたっての手続き」と同様です。
【関連記事】
「会社設立の流れを解説!株式会社の作り方や必要書類、手続きを紹介」
独立で失敗しないための注意点
独立するということは、自身が事業の全責任を負うということです。個人事業主であっても法人であっても、事業を継続させ拡大させていくためには、社会的な信用やコネクション、適切な事業計画が欠かせません。
独立で失敗しないために、以下の点について確認をしておきましょう。
独立で失敗しないための注意点
- 違法なことや不義理なことをしない
- スモールスタートを意識する
- 収入や支出への考え方を身につけておく
- 独立する前に収入を得ることを検討する
- 必要な人脈を独立前からつくっておく
- 事業用のクレジットカードや銀行口座をつくっておく
違法なことや不義理なことをしない
本来経費計上できない費用を経費として計上するなど違法な手段で利益を上げると、一時的には利益が出ますが、結果的に罰則を受け大きな損失を生むかもしれません。何よりも、社会的な信用を失うというデメリットがあります。
独立するということは、事業の全責任を自身が負うことです。違法なことをして社会的な信用を失うと、今後の事業に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。自身の行いには十分に気をつけるようにしましょう。
対人関係についても同様です。たとえば、独立前の勤務先と良好な関係を続けていれば、仕事を振ってくれたり、何かのとき時に助けてくれたりすることもあります。会社を退職するときには良好な関係で退職するようにしましょう。
スモールスタートを意識する
起業にあたっては、大規模な事業を始めようとすると準備に時間がかかり、資金も多く必要であり、その分リスクも大きいといえます。まずはスモールスタートを心がけ、小さく、素早く始めることが肝心です。
たとえば、飲食店であれば、小さな店舗や間借り店舗、ポップアップショップ、キッチンカーなどから始める方法があります。事業を進めていく中で経験やノウハウを身に付けながら、規模を拡大すべきかを見極めていきましょう。
独立・起業のタイミングを適切に判断する
独立・起業するタイミングは、確実に売上の見込みが立ったときがよいでしょう。
売上の見込みが立っていない状態で独立すると、満足に収入を得られず、事業の継続や実生活に影響が出てしまう可能性があります。
安定した売上を上げていけるか不安な人は、まずは副業から始めるのもひとつの手段です。ある程度の売上が立ち、事業としての見通しが立ったタイミングで独立することで、リスクを低減できます。
収入や支出への考え方を身につけておく
独立してビジネスを始めると、自分自身で収入や支出を管理しなければなりません。たとえば、確定申告をする際、簿記や税金の知識を身に付けておくと、申告もスムーズにでき、収入・支出の管理にも役立ちます。
事前に資金計画を立て、起業後も計画通りに資金繰りができているかを定期的に振り返り、お金の流れを意識しましょう。
お金の管理が苦手だったり、経理業務に慣れていなかったりする人は、個人事業主向けの会計ソフトを導入するといいでしょう。クラウド型会計ソフトであれば、事業口座と連携しておくことで自動で収支データを仕訳してくれるなど、スムーズな経理業務をサポートしてくれます。
必要な人脈を独立前からつくっておく
人脈が重要な事業を開始する場合は、独立前に人脈作りをすることも考えておきましょう。必要な人脈を築いておくことで、独立後のビジネスがスムーズに進められます。
たとえば、業界のイベントやセミナーに参加することで、同業者とのネットワークを広げることができます。SNSやビジネス交流会を活用して、自分のビジネスに興味を持ってくれる人々との接点を増やしておくことも有効です。
事業用のクレジットカードや銀行口座をつくっておく
プライベートなものとは別に、事業用のクレジットカードや銀行口座をつくっておくと、支出や収入が管理しやすくなります。
屋号付きの銀行口座の開設には、開業届の控えが必要なことが多くあります。しかし、個人用のクレジットカードや銀行口座をプライベート用と分けて作り、事業用として活用するのであれば、開業前でも事業用口座を用意できます。
なお、個人事業主として開業したばかりは、売上が立っていないことが原因でクレジットカードの審査に通りにくくなることがあります。そのためクレジットカードは、安定した収入がある会社員のうちに発行を済ませておくと安心です。
【関連記事】
個人事業主は屋号付き口座の開設が必要?開設のメリットや口座開設の流れについて解説
まとめ
独立・起業するには、自己分析から始めて、具体的なビジネスモデルを考えること、家族への相談、具体的な事業計画への落とし込み、資金調達といった事前準備から始めましょう。
自己分析は、どの分野で起業するか、どのような事業ができるかを見極める指針になります。さらに自己分析をもとに具体的なビジネスモデルや事業計画への落とし込みまで進めることで、計画的に事業を開始することにつながります。
また、個人事業主は開業届の提出、会社を設立する場合は、定款の作成や登記申請などの各種手続きが必要です。独立・起業のための準備や手続きを理解し、漏れがないよう対応を進めましょう。
freee開業なら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成
個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
そこでおすすめなのが「freee開業」です。ステップに沿って簡単な質問に答えていくだけで、必要な届出をすぐに完成することができます。
freee開業で作成可能な5つの届出
1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。
Step1:準備編
準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。
事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。
申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。
給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。
さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。
入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。
届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
独立・起業するには何から始める?
独立・起業する際は、自己分析をする、ビジネスモデルを考える、家族の理解を得る、事業計画を立てる、必要な資金を集める。このようなステップで進めましょう。
詳しく知りたい方は、「独立・起業に向けた5つの事前準備」をご覧ください。
独立するのに必要な手続きは?
個人事業主として開業する際は、開業届の提出が必要です。そのほか、青色申告承認申請書の提出や、業種に応じて必要な許認可申請を行います。
会社を設立するのであれば会社の基礎情報を決定後、実印の作成、定款の作成、定款認証の手続き、資本金の払い込み、登記申請を行いましょう。
詳しく知りたい方は、「独立して個人事業主になるには」「独立して会社を設立するには」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。