監修 熊谷 正和(くまがい まさかず) 1級FP技能士・CFP
自宅で開業する際は、店舗を借りて開業する場合との違いや自宅を事務所にするメリット・デメリットを踏まえて決める必要があります。
自宅開業のメリットは、家賃がかからず費用を抑えられる点や通勤に時間を取られない点です。一方で、プライベートと仕事の境目が曖昧になりやすかったり、改装費用が高額になるケースなどデメリットもあります。
本記事では、自宅で開業するメリット・デメリットのほか、自宅開業におすすめの業種・職種や自宅を事務所として開業するときの手続きの流れを解説します。
開業に関する基礎知識は、別記事「開業とは?開業と起業との違いやメリット・デメリットを解説」をあわせてご覧ください。
目次
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自宅開業に向いている業種とは?
自宅開業とは、店舗や事務所など自宅以外の物件を借りることなく、自宅をそのまま店舗・事務所として開業することです。
職種・業種によって、自宅開業の向き不向きは異なります。自宅開業に向いている職種・業種に共通する点は、「事業運営に必要なスペースが狭い」ということです。例えば自宅の一角にデスクやプリンターなどの設備さえ整えれば作業ができるデスクワーク中心の職種や、接客人数が少数で済むエステサロン、美容室などは、自宅開業に向いているといえるでしょう。
ただし、一部の業種は開業にあたって資格が必要です。資格が必要な業種では、資格取得に時間を要するため、開業までに時間がかかることがあります。
以下では、自宅以外の物件を借りずに自宅で開業できる職種・業種を、資格の要不要別に紹介します。
資格不要で開業できる業種・職種
無資格で自宅開業できる業種・職種には、以下が挙げられます。
資格不要で開業できる業種
- システムエンジニア・ライター・Webデザイナー・コンサルタント
- ネイルサロン・エステサロン
- アフィリエイト
- 習い事の教室など
システムエンジニアやライター、Webデザイナー、コンサルタントなどの職種は、作業環境さえ整えっていれば自宅で開業できます。これらの職種は個人事業主となり、取引先と契約を結んで業務を請け負います。
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ネイルサロンやエステサロンは、開業にあたっての資格は不要です。開業や施術にあたっては一定の技術や知識が求められるため、専門学校で学んだり資格を取得したりしてから開業することが一般的です。ただし、まつ毛パーマやまつエク、顔の産毛のシェービングなど、一部の施術には国家資格が必要なものもあります。
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ブログやSNSを利用して広告収入を得るアフィリエイトも資格不要で、パソコンさえあれば自宅で開業できます。
ピアノや英語を始めとした外国語、料理、習字なども、資格不要で自宅で教室開業ができます。開業にあたっては資格は不要ですが、資格や受賞歴などの実績を持っていた方が、持っていない場合よりも集客しやすいでしょう。
開業に資格が必要な業種・職種
資格が必要な自宅開業できる業種・職種には、以下などが挙げられます。
開業に資格が必要な業種
- 士業
- 美容室
- カフェ
弁護士や税理士、弁理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士などの士業は、専門資格が必要です。業務に用いるパソコンとプリンターなどの設備を整えることができれば、自宅開業ができます。
理容師・美容師として開業する場合には、各国家資格が必要です。自宅開業にあたっては、改装工事費用や、保健所が定める基準を満たさなければなりません。しかし、店舗を借りる場合と比べて、賃料がかからずに済みます。
カフェ(飲食店)を自宅開業するには、食品衛生責任者の資格と飲食店営業許可が必要です。しかし、自宅があるエリアの用途地域によっては、カフェを開業できない場合や店舗面積の制限を受ける場合があります。また、飲食店営業許可を得るためには、調理場と客席が分かれているなど法定の施設基準を満たさなければいけません。
カフェ(喫茶店)の開業について詳しく知りたい方は、別記事「カフェ・喫茶店を開業するためには?必要な準備や手続きを解説 」をご覧ください。
自宅で開業するメリット
自宅開業は、賃貸物件を借りて開業するよりも費用を抑えられ、通勤時間がかからないなど、さまざまなメリットがあります。
以下では、自宅開業の主なメリットを紹介します。
開業に伴う費用を安く抑えられる
店舗を借りる場合は毎月賃料がかかり、開業時には保証金として賃料の数ヶ月分の支払いが必要になる場合があります。また、店舗の内装整備にも費用がかかり、居抜き物件やスケルトン物件など物件の状態に応じて改装費用は大きく異なります。
自宅開業であれば賃料や内装工事費用も抑えることができ、少ない開業資金で開業できる点がメリットです。
家賃や水道光熱費などを経費に計上できる
自宅で仕事をしている場合、家賃や電気代、水道代などの一部が「事業を行う上で必要な支出」とみなされるため、経費として計上することが可能です。ただし、経費計上にあたっては、その支出が事業に必要であることの明確な根拠の提示が必要です。
そのため、事業用とプライベート用の経費を割合で分けるために家事按分をします。家事按分は、事業に用いているスペースや時間などを元に事業割合を算出し、家賃や水道光熱費に事業割合をかけて計算することです。
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家事按分とは?個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法についてわかりやすく解説
通勤時間がかからず時間のロスが少ない
自宅で開業すれば、住居と仕事場が同じ物件なので通勤時間がかかりません。また、通勤費用もかからず、満員電車に乗るなど通勤に伴うストレスも感じずに済みます。
好きな時間に仕事ができて家事や育児と両立しやすい
自宅でそのまま仕事に取りかかれるため、通勤などの移動時間が発生しないことで時間のやりくりがしやすくなります。仕事の合間に家事や育児、介護の時間を取りやすい点がメリットです。
自宅で開業するデメリット
自宅開業は、仕事とプライベートの境目が曖昧になりやすく、自宅の改装や設備の購入費用が高額になる場合があるなど、デメリットがあります。
以下では、自宅開業の主なデメリットを紹介します。
仕事とプライベートの境目が曖昧になりやすい
住居と仕事場が同じであることから、自宅開業はプライベートと仕事の境目が曖昧になりやすいといえます。すぐに仕事に取り掛かれる利便性の高さから、ちょっとした休憩時間にも仕事をしてしまい、オンオフがうまく切り替えられないといったデメリットがあります。
そのため、仕事をする時間としない時間を明確に分けるなど、仕事とプライベートの境目が曖昧にならないように日頃から意識できるといいでしょう。
自宅の改装や設備の購入費用が高額になるケースも
業種によっては、自宅を事務所として整備するための改装費用や設備の購入費用が高額になる場合があります。
たとえば、自宅でカフェ開業する場合は、キッチンや接客スペースを整備するために自宅の一部を改装する必要があります。飲食店営業許可を得るために、法令で定められた規定を満たせるようにリフォームしなくてはなりません。
物件そのものの費用がかからないため賃貸物件を借りる場合よりはトータルの開業費用を抑えられるものの、内装工事に100万円以上かかる場合もあるでしょう。
プライバシー・セキュリティ面で不安が生じる可能性がある
自宅を店舗・事務所とすることで利用客に自宅の住所を知られてしまうことから、プライバシーの保護・管理が難しくなります。同時に、顧客の個人情報なども自宅兼事務所で管理しなければなりません。
一般的な住宅はオフィスビルに比べるとセキュリティ面が弱く、情報漏えいのリスクがあるので注意が必要です。顧客の個人情報が記載された資料は鍵付きの棚や金庫の中に収納して管理しましょう。
自宅開業の手続きの流れ
自宅で開業するためには、以下の流れのように、事業内容の検討や資金調達、設備・備品の購入など事前の準備が必要です。
自宅開業の手続きの流れ
- 事業内容の決定
- 事業計画書の作成
- 資金調達
- 設備・備品の準備
- 各種届出の提出・許認可申請
- 銀行口座の開設
自宅での開業は、新たに物件を借りて開業するケースに比べると少ない資金や設備・備品で開業できます。
自宅開業にあたっては、物件を借りて開業するのと同様に、まずは事業計画を立て、事業内容をもとに準備すべき資金額を算出して必要な資金を調達できるのか、開業できるのかを確認します。
また、設備・備品として準備すべきものや必要な届出の種類をあらかじめリストアップして、漏れのないように対応しましょう。
開業の各手続きや準備の詳しい内容については、別記事「個人事業主として開業するには何が必要? 独立・起業時の手続きの流れや注意点を解説」をご覧ください。
まとめ
自宅を事務所にして開業すれば、賃料がかからずに済む点や通勤時間がかからない点がメリットです。事業を運営するために必要なスペースが狭く、自宅の一部を改装すれば事業が行える業種・職種であれば、自宅開業ができます。ただし、一部の業種には開業にあたって資格や許認可が必要です。
自宅開業はメリットも多い一方で、仕事とプライベートの境目が曖昧になりやすく、プライバシーやセキュリティ面で不安が生じるなどのデメリットもあります。自宅開業をするか新たに物件を借りるかは、自宅開業のメリット・デメリットを踏まえて決めるようにしましょう。
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個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
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1. 個人事業の開業・廃業等届出書
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2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
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freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。
Step1:準備編
準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。
事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。
申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。
給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。
さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。
入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。
届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
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よくある質問
自宅開業におすすめの業種は?
パソコンなど基本的な事務機器があれば開業できる業種や、大規模な内装工事が不要で開業費用を抑えられる業種がおすすめです。
たとえば、システムエンジニアやプログラマー、ネイルサロン・エステサロン、習い事教室などが挙げられます。
詳しくは「自宅開業に向いている業種とは?」をご覧ください。
自宅開業のメリットとデメリットは?
開業費用を安く抑えられる点や、通勤時間がかからず時間のロスが少ない点がメリットです。しかし、仕事とプライベートの境目が曖昧になりやすいなどのデメリットもあります。
詳しくは「自宅で開業するメリット」「自宅で開業するデメリット」をご覧ください。
監修 熊谷 正和(くまがい まさかず)
2005年7月に埼玉県川口市で開業後、ファイナンシャルプランニングを軸とした、コンサルタントとして、活動しています。開業当初から、個人のライフプランから、法人向けのコンサルティングまで、幅広くご支援させていただいております。得意分野は、住宅ローン・保険・資産運用などのライフプラン相談になります。毎年数百世帯、述べ2,000世帯を超えるライフプラン相談の経験を積めたことが、私の最大の武器と思います。ご相談者には、1つでも多くのメリットを感じていただけるように、日々業務改善を図り、常に新しい知識を養い、最高のコンサルティングをご提供できるように励んでいます。