勘定科目の基礎知識

研修費の勘定科目とは? 仕訳の具体例や経費に計上できない費用などを解説

監修 安田 亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

研修費の勘定科目とは? 仕訳の具体例や経費に計上できない費用などを解説

従業員が業務に直結する知識や技術または、免許や資格を取得するためにかかった研修費は、一般的に「研修費」の勘定科目で処理をします。

しかし場合によっては、研修費以外の勘定科目が使われることもあるため、仕訳の際は注意が必要です。

また研修費のなかには、経費として計上できないものもあります。そのため会社の経営者や、経理の担当者は内容を把握しておく必要があるでしょう。

本記事では、研修費を仕訳するときの主な勘定科目仕訳の具体例などを解説します。

目次

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研修費とは?

研修費とは、従業員が業務に直結する知識や技術または、免許や資格を取得するためにかかった費用のことです。研修費として認められる費用に関しては、経費として計上ができます。

たとえば以下のような費用は研修費として処理が可能です。

研修費の例

  • 接客・マナー講習などへの参加費
  • 免許・資格の取得にかかった受験料
  • 人材研修で使用したテキスト代
  • ビジネス本の購入費用

どんな費用が研修費として処理が可能なのか、把握しておきましょう。

研修費に用いる勘定科目

研修費に用いる勘定科目は以下の通りです。

研修費に用いる勘定科目

  • 業務に直接必要な技能・知識の取得や研修などに要する費用は【研修費】
  • 業務に必要とされる知識の取得を目的に購入した参考書籍や新聞、雑誌などの購入費用は【新聞図書費】
  • セミナーや研修会などの受講費を前払いした場合は【前払費用】

一般的に業務に直接必要な技能・知識の取得や研修などに要する費用は、「研修費」の勘定科目で記帳して問題ありません。

また場合によっては、研修費以外に「新聞図書費」「前払費用」の勘定科目を用いることもあります。

勘定科目には法的な決まりがあるわけではないため、会社のルールにしたがって適切な勘定科目を使用しましょう。

ただし企業会計の一般原則として「継続性の原則」があるため、一度決めた勘定科目はみだりに変更できない点に注意が必要です。

【事例で解説】研修費の仕訳例

従業員の研修や資格取得などにかかった費用は、状況に応じて主に以下の勘定科目で仕訳を行います。

研修費に用いる勘定科目

  • 研修費
  • 新聞図書費
  • 前払費用

以下、各勘定科目を使用した仕訳例を紹介します。

研修費

従業員のスキルアップを目的としたセミナーや、業務上必要な資格取得のための費用などを支払った場合は「研修費」として処理します。

具体的には以下のような費用です。

「研修費」の勘定科目に該当する例

  • 業務に関係した社外で開催されているセミナーや研修会などの費用
  • 業務上必要な資格の取得費用
  • 今現在の業務には直接必要としないが、今後の業務のために必要な資格の取得費用や英会話レッスンの費用

たとえば研修会への参加に20,000円を現金で支払った場合は、以下のように仕訳を行います。

借方貸方
研修費20,000円現金20,000円

また近年は、クレジットカードで経費の支払いをすることも増えています。上記の例でカード決済をする場合は、費用の支払い時とカード利用料金の支払い時で仕訳が必要です。

費用の支払時

借方貸方
研修費20,000円未払金20,000円

カード利用料金の支払時

借方貸方
未払金20,000円預金20,000円

新聞図書費

業務に必要とされる知識の取得を目的に購入した参考書籍や新聞、雑誌などの購入費用は「新聞図書費」として処理できます。

具体的には、以下のような費用です。

「新聞図書費」の勘定科目に該当する例

  • 業界に精通するために必要な新聞・雑誌の定期購読
  • 業務に関係するスキルの向上・取得を目的として購入した書籍代

たとえば業務に必要なスキルの向上・取得のために、50,000円分の書籍を現金で購入して社内の本棚に置いた場合は以下のように仕訳を行います。

借方貸方
新聞図書費50,000円現金50,000円

上記の例でカード決済をした場合の仕訳は、以下です。

費用の支払時

借方貸方
新聞図書費50,000円未払金50,000円

カード利用料金の支払時

借方貸方
未払金50,000円預金50,000円

前払費用

複数回開催されるセミナーや研修会などで受講費を前払いした場合は、「前払費用」として処理できます。

前払費用とは、翌期以降の費用の前払いとして当期に支払ったものに使用する勘定科目です。数ヶ月のカリキュラムが組まれたセミナーで、事業年度をまたいで翌期以降も継続して開催される場合などが該当します。

前払費用の勘定科目を用いて仕訳をする場合は、支払い時と決算時期に仕訳が必要になるので、覚えておきましょう。

たとえば毎月1回行われるセミナー代を5ヶ月分として100,000円を現金で支払った場合は、以下のように仕訳を行います。

支払時

借方貸方
前払費用100,000円現金100,000円

決算の時期が来て、当期は2ヶ月分のカリキュラムを終えている場合

借方貸方
研修費40,000円前払費用40,000円

研修に付随する費用のうち研修費として経費に計上できるもの

基本的に業務に関係するスキルアップや資格の取得などは、研修費として経費処理して問題ありません。

またセミナーや研修会によっては、交通費や宿泊費などが発生することも考えられますが、研修に付随する費用も研修費として経費計上できる場合があります。

付随する費用のうち、研修費として経費計上できる主な費用を紹介するので、確認しておきましょう。

外部から招いた講師への謝礼

従業員の研修は外部のセミナーや研修会への参加だけではなく、自社に講師を招いて開催するケースもあるでしょう。

外部から招いた講師への謝礼は、研修費として経費計上が可能です。なお個人事業主の講師に謝礼を支払う場合は、基本的に源泉徴収の対象になります。

宿泊の研修で発生した宿泊料金

研修の内容によっては宿泊が伴いますが、研修に伴う宿泊料金は研修費として経費計上が可能です。

ただし研修より観光がメインになっていたり、研修先で酒類の提供がされたりすると、研修費として処理できないケースがあります。このように研修より接待・供応と捉えられる場合は、一般的に「交際費」で処理するので注意しましょう。

なお会社ごとのルールにもよりますが、研修に伴う宿泊費は研修費ではなく「旅費交通費」として処理する場合もあります。

研修先やセミナー会場までの交通費

通常、交通費は「旅費交通費」「交通費」などの勘定科目で仕訳を行います。

ただし研修先やセミナー会場までの交通費が研修費として請求されるなかに含まれている場合は、研修費として計上が可能です。

研修中に生じた食事代

自社での研修中にお弁当をまとめて注文するなど、研修中に支払った食事代は経費として計上できます。また自社で研修を行う場合は、研修費以外に「会議費」として処理することも可能です。

そのほか他社で研修を行う際に、費用の内訳で参加費とは別に食事代の記載がある場合は、昼食が研修に組み込まれていると考えられます。そのため、研修費として経費処理をしても問題ありません。

ただし研修後に懇親会や親睦会などが開催されて従業員が参加し、会社が負担する場合は、研修費として経費の計上ができないので注意しましょう。このような場合は、一般的に交際費で処理します。

研修費として経費計上できない費用

研修費のなかでも、内容によっては経費にできない場合があります。研修費に関する経費計上の有無は、「業務に直接関係あるか否か」がポイントです。

たとえば英会話を全く必要としない業務に対して、従業員が英会話教室に通うための費用を研修費にはできません。このような場合は従業員が個人で通ったと考えられるため、基本的には給与として支給し、課税対象になります。

また業務に直接関係していても国家資格など一身専属的な資格かつ、業務上必ずしも必要な資格ではない場合は、取得にかかった費用を経費にできない可能性もあります。

ただし運送会社の運送担当者が自動車の免許を取得するなど、業務に必須となる免許の取得に関しては、経費として処理が可能です。

経費にできるかどうかの判断は難しいケースもあるため、迷った場合は税理士などの専門家に相談しましょう。

まとめ

一般的に業務に直接必要な技能・知識の取得や研修などに要する費用は、「研修費」の勘定科目で記載します。

ただし内容や状況によっては、研修費以外に新聞図書費・前払費用・福利厚生費などの勘定科目を使う場合もあるため、適切な勘定科目を使用するようにしましょう。

また研修費はどれでも経費にできるわけではなく、「業務に直接関係あるか否か」がポイントです。研修費は企業の生産性や品質向上のために重要な費用となるため、適切に仕訳できるように管理体制を整えてください。

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よくある質問

研修費の勘定科目は?

基本的には「研修費」の勘定科目を使用しますが、内容や状況によっては「新聞図書費」「前払費用」「福利厚生費」などの勘定科目が使われることもあります。

研修費の勘定科目を詳しく知りたい方は「研修費に用いる勘定科目」をご覧ください。

研修費として経費に計上できない費用はある?

業務に直接関係のない研修費は、経費に計上できません。また、一身専属的な資格かつ、業務上必ずしも必要な資格ではない場合も経費に計上できない可能性が高いです。

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監修 安田 亮

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

安田亮