監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所
協賛金は、イベントや祭りなどの運営に協力するためのお金です。本記事では、協賛金に用いる勘定科目や会計処理のポイントを解説します。
協賛金を支払う場面は、取引先が開催するイベントや地域の祭りのほか、自社が協賛金を受け取るケースなどさまざまです。
協賛金は、支払いや受け取りの事例別に用いる勘定科目が異なります。なお法人と個人事業主では、経費計上の取り扱いが異なるため注意が必要です。
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目次
- 協賛金とは?
- 経費にできる協賛金
- 協賛金を支払った際に用いる勘定科目
- 【広告宣伝費】
- 【交際費】
- 【諸会費】
- 【寄附金】
- 協賛金を受け取った際に用いる勘定科目
- 【売上高】
- 【雑収入】
- 【受取寄附金】
- 【事例で解説】協賛金を支払った際の仕訳例
- 広告宣伝の対価性がある場合
- 交際費として処理する場合
- 諸会費として処理する場合
- 事業と関係ない寄附金を支払った場合
- 【事例で解説】協賛金を受け取った場合の仕訳例
- 本業として受け取る場合・対価性のある場合
- 本業ではない場合
- 学校法人や非営利団体が寄附金を受け取った場合
- 協賛金の会計処理をする際のポイント
- 適切な勘定科目を用いる
- 消費税の取り扱いに注意する
- まとめ
- 経理を自動化し、日々の業務をもっとラクにする方法
- よくある質問
協賛金とは?
協賛金は、イベントや祭りなどの運営に協力するために支払うお金です。
提灯やうちわなどへの企業名表示・印刷物への広告掲載など対価性のあるケースと、見返りのないケースが存在します。
経費にできる協賛金
法人・個人事業主が経費にできる協賛金は、主に以下4つの目的で支出されたものです。
- 広告宣伝費
- 交際費
- 諸会費
- 寄附金
広告宣伝目的や、交際費として支払う協賛金は、法人・個人事業主ともに経費にできます。ただし資本金が1億円以下の法人の場合は、年間800万円、もしくは飲食費の50%までしか交際費に計上できません。
諸会費として支払う場合は法人・個人事業主ともに経費にできますが、事業活動に関連性がなければいけません。
事業活動と関連性のない自治体や非営利団体へのお金を寄附する場合、法人は損金算入できます。寄附金の内容によっては、限度額が設定されているので注意が必要です。
一方、個人事業主の場合は寄附金を経費として計上できませんが、場合により確定申告で寄附金控除を利用できます。
【関連記事】
確定申告で寄付金控除を受ける方法は?記入方法などをくわしく解説
協賛金を支払った際に用いる勘定科目
協賛金を支払った際の勘定科目は、次の通りです。
協賛金支払時の勘定科目
- 広告宣伝の対価性がある場合は【広告宣伝費】
- 関係の円滑化を目的に取引先に支出する場合は【交際費】
- 事業と関連のある団体・組織に支出する場合は【諸会費】
- 事業との関係・見返りがない場合は【寄附金】
それぞれ詳しく解説します。
【広告宣伝費】
宣伝効果の対価性がある場合、「広告宣伝費」を用います。
広告宣伝費とは、不特定多数の人に向けて商品やサービスを宣伝する費用の勘定科目です。
協賛企業の広告がイベントの印刷物に掲載されるなどのケースが考えられます。
【交際費】
特定の相手先に対し、円滑な関係を築くため支出する場合は「交際費」を用います。
交際費とは、取引先や顧客など事業活動上で付き合いのある相手方に対し、接待や贈答を行った際にかかる費用の勘定科目です。
取引先が開催するイベントに協賛金を支払うなどのケースが考えられます。
【諸会費】
事業と関連がある団体や組織に支出する場合は「諸会費」を使用できます。
諸会費とは、業務に関する会費に用いる勘定科目です。
所属する業界団体などに協賛金を支払うケースが考えられます。
【寄附金】
事業と関連性がなく、広告宣伝などの見返りもない場合、「寄附金」を用います。
寄附金とは、組織などに見返りなく金銭や資産を渡す際の勘定科目です。
協賛金を受け取った際に用いる勘定科目
協賛金を受け取った際の勘定科目は、次の通りです。
協賛金受取時の勘定科目
- 本業である場合や対価を提供する場合は【売上高】
- 本業ではない場合は【雑収入】
- 学校法人や非営利団体の寄附金は【受取寄附金】
それぞれ詳しく解説します。
【売上高】
協賛金の受取が本業であるイベント企画会社や、協賛金を広告掲載などの対価として受け取る場合、「売上高」を用います。
売上高とは、本業で発生する収益に用いる勘定科目です。
【雑収入】
本業として受け取った協賛金ではない場合、一般的に「雑収入」を用います。
個別に把握したい場合は「協賛金収入」などの科目を設定してもよいでしょう。
雑収入とは、ほかの勘定科目に当てはまらない収入に用いる勘定科目です。
【受取寄附金】
一般の企業は主に売上高・雑収入を用いて計上しますが、学校法人や非営利団体が受け取る寄附金は「受取寄附金」を用います。
受取寄附金とは、寄附金を受け取った際に用いる勘定科目です。
【事例で解説】協賛金を支払った際の仕訳例
協賛金を支払った際の仕訳例を、事例別に解説します。
広告宣伝の対価性がある場合
広告宣伝など、見返りがある場合の協賛金の仕訳例を紹介します。
例:地域の花火大会に50,000円の協賛金を現金で支払った。協賛企業名は花火大会当日にアナウンスされ広告宣伝の効果がある。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
広告宣伝費 | 50,000円 | 現金 | 50,000円 |
交際費として処理する場合
取引先に対する交際費として処理する場合の仕訳例を紹介します。
例:得意先企業が開催するイベントの協賛金100,000円を預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
交際費 | 100,000円 | 預金 | 100,000円 |
諸会費として処理する場合
事業に関連する団体への協賛金を支払った場合の仕訳例を紹介します。
例:本業の業界団体に、対価性のない協賛金100,000円を現金で支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
諸会費 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 |
事業と関係ない寄附金を支払った場合
事業と関連性がなく、広告宣伝などの見返りもない協賛金を支払った場合の仕訳例を紹介します。
例:事業には直接関係しないNPO法人に、対価性のない協賛金50,000円を預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
寄附金 | 50,000円 | 預金 | 50,000円 |
【事例で解説】協賛金を受け取った場合の仕訳例
協賛金を受け取った際の仕訳例を事例別に解説します。
本業として受け取る場合・対価性のある場合
本業の売上高として協賛金を処理する場合の仕訳例を紹介します。
例:自社の本業であるイベントの協賛金として300,000円を振込で受け取った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預金 | 300,000円 | 売上高 | 300,000円 |
例:自社が開催するイベントの協賛金として100,000円を現金で受け取った。協賛企業はパンフレットに広告を掲載する。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 100,000円 | 売上高 | 100,000円 |
本業ではない場合
本業とは関係なく受け取った協賛金で、対価性もない場合の仕訳例を紹介します。
例:自社が開催するイベントの協賛金として50,000円を現金で受け取った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 50,000円 | 雑収入 | 50,000円 |
学校法人や非営利団体が寄附金を受け取った場合
寄附金として協賛金を受け取る場合の仕訳例を紹介します。
例:学校法人に対する寄附金として100,000円を振込で受け取った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預金 | 50,000円 | 受取寄附金 | 50,000円 |
協賛金の会計処理をする際のポイント
協賛金の会計処理をする際のポイントを解説します。
適切な勘定科目を用いる
協賛金は支払いや受け取りの事例によって用いる勘定科目が異なるため、注意が必要です。
事例に応じた適切な勘定科目を選択して仕訳しましょう。
消費税の取り扱いに注意する
協賛金は、支払に対する見返りがあるかどうかによって消費税の取り扱いが異なります。
印刷物への広告掲載など、対価性が認められ広告宣伝費として処理する場合は課税対象です。
交際費で処理する場合や、対価性のない寄附金・会費などは課税の対象にはならないため注意しましょう。
まとめ
協賛金の勘定科目は内容に応じて選択します。
協賛金を支払ったときは、以下の勘定科目を使用します。
- 広告宣伝費
- 交際費
- 諸会費
- 寄附金
協賛金を受け取ったときは、以下の勘定科目を使用します。
- 売上高
- 雑収入
- 受取寄附金
損金算入に関しては、法人と個人事業主で取り扱いが異なります。なお消費税は、対価性があれば課税対象です。
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よくある質問
協賛金は経費にできる?
協賛金は、法人と個人事業主で会計処理が異なります。
協賛金の経費計上を詳しく知りたい方は「経費にできる協賛金は法人と個人事業主で異なる」をご覧ください。
協賛金に用いる勘定科目は?
支払時は「広告宣伝費」「交際費」「諸会費」「寄附金」、受取時は「売上高」「雑収入」「受取寄附金」を用います。協賛金の内容に応じ、勘定科目を選択しましょう。
協賛金の勘定科目を詳しく知りたい方は「協賛金を支払った際に用いる勘定科目」「協賛金を受け取った際に用いる勘定科目」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。