監修 北田 悠策 株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所
事業用の機器や設備などの修理代は経費に計上でき、修繕費で仕訳するケースが一般的です。しかし、ほかの勘定科目に該当するケースもあります。
また、固定資産の修理をした場合、資本的支出となり経費にできないケースもあるため注意が必要です。修理の目的や状況にあわせて勘定科目を使い分けるようにしましょう。
本記事では、修理代の仕訳で使う勘定科目や仕訳例、注意点を解説します。
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目次
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修理代は経費に計上できる?
事業に関連する修理代は、経費に計上可能です。経費にできる例には、業務で使うパソコンや事業所で使うエアコンの不具合、社用車が故障した際の修理代が挙げられます。
ただし、修理内容ごとに適した勘定科目は異なるため、使い分けが必要です。さらに経費ではなく資産に計上するケースもあるため、修理代の仕訳には注意しましょう。
修理代の仕訳で使う勘定科目
修理代の仕訳で使う勘定科目は、修理の内容や金額などによってさまざまです。
修理代の仕訳で使う勘定科目
- 元の状態に戻す場合は【修繕費】
- 固定資産の価値や機能が向上する修理の場合は【固定資産(資本的支出)】
- 車を修理した場合は【車両費】
- 修理をせずに品物を買い替えた場合は【消耗品費】
- 他者の所有物を損傷させた場合は【雑損失】
修理代の仕訳で使う勘定科目を、以下で詳しく解説します。
【修繕費】
元の状態に戻す修理なら「修繕費」を使うケースが一般的です。固定資産の修理でも、1回の支出が20万円未満、または3年以内の周期で行う修理なら修繕費への仕訳で構いません。
固定資産の修理で、修繕費と資本的支出のどちらに該当するか明確にできない場合、60万円未満なら修繕費に計上可能です。または、固定資産の修理代が、前期末時点の固定資産の取得価額の10%相当以下に該当する場合も、修繕費に計上できます。
【固定資産(資本的支出)】
固定資産の価値や機能が向上する修理は「資本的支出」に該当するため、経費にあたる勘定科目への仕訳はできません。固定資産の内容にあわせた勘定科目で、資産に計上します。
資本的支出に該当する修理代は、固定資産の取得価額に加算して、減価償却しましょう。
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【車両費】
修繕費に該当する車の修理代であれば、「車両費」を使って経費計上しても構いません。
ただし、車の性能が向上する修理をした場合は経費ではなく資本的支出です。「車両運搬具」の勘定科目を使い、車両の取得価額とともに減価償却します。
【消耗品費】
修理をせずに品物を買い替えた場合は「消耗品費」の勘定科目を使います。
ただし、購入価額が10万円以上または1年以上使う品物は消耗品費ではなく固定資産に計上し、減価償却が必要なため注意しましょう。
また、修理に使うネジや粘着テープ、接着剤などを購入した場合の費用も消耗品費に該当します。
【関連記事】
消耗品費の定義とは?具体例や雑費との違い、仕訳方法について解説
【雑損失】
他者の所有物を損傷させた場合の修理代は、「雑損失」の勘定科目を使います。
たとえば出張で取引先に訪問した際に、誤って備品などを損傷させてしまい、修理代を支払った場合などが該当します。
修理代の計上で把握すべき修繕費と消耗品費の判断基準は?
修繕費と消耗品費のどちらに計上するかは、修理して使い続けるか、買い替えるかで判断します。以前からあるものを修理するなら修繕費、買い替えるなら消耗品費です。
なお、消耗品に該当する物品も、同じ物を修理して使う場合の修理代は修繕費に該当します。同一商品へ買い替える場合の費用は、以前から使っていた物品と同一個体ではないため消耗品費です。
【事例で解説】修理代の仕訳例
修理代は修理対象や修理内容ごとに、適した勘定科目が異なります。
修理代の仕訳例を事例で解説するため、参考にしてください。
事業用パソコンを修理した場合
事業でのみ使う設備や物品などの修理代は「修繕費」を使い、経費計上できます。
たとえば事業用のパソコンを修理に出し、5万円を現金で支払った場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
修繕費 | 50,000円 | 現金 | 50,000円 |
部品交換で性能が向上した場合の修理代は資本的支出に該当するため、修繕費ではなく「工具器具備品」で計上し、減価償却が必要です。
ただし、本ケースでは金額が20万円未満であるため、修繕費で経費計上して構いません。
社用車を修理した場合
社用車を修理した場合の修理代も修繕費を使い、経費計上できます。なお、社用車の修理代は、車両費の勘定科目で経費形状することも可能です。
たとえば社用車を修理に出し、修理代5万円を普通預金から振り込んだ場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
修繕費 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
社屋の修繕工事を行った場合
社屋の修繕工事にかかった費用も修繕費を使い、経費計上できます。
たとえば社屋の修繕工事(建物の性能は向上しない)を行い、500万円を当座預金から振り込んだ場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
修繕費 | 5,000,000円 | 当座預金 | 5,000,000円 |
ただし、補修や復旧ではなく、建物の性能を高める修繕工事の支出は資本的支出に該当するため資本的支出です。修理代は建物で計上します。
たとえば建物の防水性能を高める修繕工事を行い、500万円を当座預金から振り込んだ場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
建物 | 5,000,000円 | 当座預金 | 5,000,000円 |
建物で計上した修理代は、社屋と同じ償却率で毎年減価償却しましょう。
他者の所有物を破損させたため修理代を支払った場合
他者の所有物を破損させた際の修理代は、雑損失を使います。
たとえば顧客が所有する電子機器を破損させたため、修理代3万円を現金で渡した場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑損失 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
修理代の仕訳や勘定科目に関する注意点
修理代の仕訳や勘定科目を選択する際は、以下の事柄に注意しましょう。
修理代の仕訳や勘定科目に関する注意点
- 仕訳ルールは原則変更せず、同じ勘定科目を使う
- 個人事業主は必要に応じて家事按分する
- 修繕費と資本的支出に分けて計上する修理代もある
各注意点を詳しく解説します。
仕訳ルールは原則変更せず、同じ勘定科目を使う
継続性の原則から、一度仕訳ルールを決めたら変更せず、同じ勘定科目を使い続けましょう。
たとえば、社用車の修理代は修繕費か車両費のいずれかが使用可能です。過去に社用車を修理していれば、以前と同じ勘定科目を使います。
仕訳に迷う修理代が発生した場合は、必要に応じて専門家へ相談しましょう。
個人事業主は必要に応じて修理代を家事按分する
個人事業主の場合、事業用と私用で兼用している物品の修理代は家事按分が必要です。
家事按分が必要な修理代の例
- 事務所兼住宅の修繕にかかった費用
- 仕事でも私用でも使う自動車やパソコンの修理費用
事業と私用の利用頻度に応じた割合で家事按分し、割合を決めた根拠を記録して後日確認できる状態にしましょう。
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家事按分の使い方徹底解説!個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法をわかりやすく解説
修繕費と資本的支出に分けて計上する修理代もある
修理や修繕工事のなかには、修繕費と資本的支出の両方に該当するケースも存在します。
修理代の内訳から適切な金額に分け、経費と資産にそれぞれ計上しましょう。
まとめ
事業で使う設備機器や事業所の修理代は、主に修繕費の勘定科目を使います。
しかし、価値や性能が向上する修理をした場合、固定資産に分類される勘定科目で資産計上が必要です。
また、個人事業主が私用でも使う場所や設備、物品の修理代は家事按分して事業で使う部分のみを経費計上します。
修理代は、状況にあわせて適した勘定科目を使って仕訳しましょう。
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監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。