監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
「会費」と一口にいっても、用いる勘定科目は複数あります。本記事では、会費を支出した際の勘定科目をわかりやすく解説します。
同業者団体へ加入したり賛助会費を支出したりする場合、どの勘定科目で仕訳するか悩むこともあるでしょう。
本記事では勘定科目のほか、さまざまなケースに応じた仕訳例を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
確定申告の基本をすべて解説!確定申告が初めてでもわかりやすい図解入りの解説記事はこちら
目次
freee会計で電子申告をカンタンに!
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!口座とのデータ連携によって転記作業も不要になり、入力ミスも大幅に削減します。
会費は経費にできる?
基本的に業務に関連して加入する団体への会費は、法人でも個人事業主でも経費として認められます。たとえば以下のようなケースであれば、支出した会費を経費計上できます。
経費にできるケース
- 事業を立ち上げたので、商工会議所に入会し会費を支払った
- 法人用のクレジットカードの年会費を支払った
- ロータリークラブに登録し、入会費などを支払った
ただし会費の目的や内容などに応じて、用いる勘定科目が異なるので注意が必要です。また勘定科目によっては、法人の損金算入額に制限がある場合があるため、正しく仕訳しなければなりません。
会費に用いる勘定科目
会費に用いる勘定科目は、以下の通りです。
会費に用いる勘定科目
- 同業者団体への会費を支払う場合は【諸会費】
- 会費の支払回数や金額が少ない場合は【雑費】
- 取引先との交流が目的である場合は【交際費】
- NPO法人への賛助会費など見返りを求めない支出の場合は【寄附金】
- 翌年度分の会費をまとめて支払う場合は【前払費用】
- クレジットカードの年会費を支払う場合は【支払手数料】
- 会費を支払った後も長期的に効果が続く「繰延資産」である場合は【長期前払費用】
それぞれ詳しく解説します。
【諸会費】
会費を負担した際に使う勘定科目として、メジャーなのが「諸会費」です。主に、次のような支出が該当します。
諸会費に該当する会費
- 町内会など地域自治会への会費
- 税理士会・医師会など職能団体への会費
- 商工会議所など業界団体への会費
加入する団体が「業務に関連している」ことが前提であり、少額・短期間の会費に関して用いるケースが多い傾向にあります。
【雑費】
諸会費のうち、加入団体への会費が少額または取引回数が少ない場合、「雑費」を用いても問題ありません。
ただし雑費で仕訳すると、内訳がわかりにくくなる場合があります。会費以外の支出も雑費として仕訳する場合は、摘要欄に詳細を記載したり計上金額が大きくなりすぎないようにしたりするなど、注意をしましょう。
【交際費】
取引先との接待・交流を目的として団体などに加入する場合、その入会費などは「交際費」で仕訳をします。
交際費に該当する会費の例として、次が挙げられます。
交際費に該当する会費
- 交流を目的としたオンラインサロンの会費
- 異業種交流会の会費
原則、法人の場合、交際費は損金に算入できません。しかし資本金の規模などによって、一定金額までは損金算入が認められています。
そのため会費が「交際費に該当するかどうか」は、適切に判断する必要があります。
【関連記事】
損金とは?費用・経費との違いから、算入・不算入の事例までわかりやすく解説
【寄附金】
「会費」という名目であっても、次のような対価を求めない会費に関しては「寄附金」で仕訳します。
寄付金に該当する会費
- NPO法人への賛助会費
- 独立行政法人への会費
なお賛助者の名前がパンフレットなどに掲載される場合は「広告宣伝費」に該当します。
個人事業主の場合、寄附金は個人的な支出であるため経費計上できません。個人事業主が事業用資金から賛助会費などを支払った場合は、「事業主貸」で仕訳しましょう。
【前払費用】
翌年度分の会費を一括で支払う場合は、「前払費用」を用います。
前払費用とは、提供前のサービスに対する料金を先払いした際に用いる勘定科目です。保険料や家賃など、翌年度にわたる契約に対する費用をまとめて支払った場合が該当します。
たとえば、2年分の会費を支払った場合、当年度分の会費のみ経費計上し、翌年の会費は前払費用で仕訳します。前払費用で計上した会費は、翌期首などに振替処理を行いましょう。
【支払手数料】
事業用のクレジットカードの年会費を支出した場合は、「支払手数料」を用いるのが一般的です。
支払手数料は、商品やサービス自体の費用ではなく、付随して発生する手数料に使う勘定科目です。年会費だけでなく、振込手数料なども当てはまります。
なお、「カードの会員になるために支払う会費」という観点から、諸会費で仕訳するケースもあります。
【長期前払費用】
長期前払費用とは、前払費用のうち1年を超えて費用化されるものです。
支出した会費が繰延資産に該当する場合、少しずつ費用化するため、「長期前払費用」で仕訳します。
繰延資産とは、創立費や開業費など「その支出が数年にわたって効果をもたらすもの」をいいます。以下の要件に該当する場合、繰延資産として扱います。
繰延資産の要件
- 支払義務が確定または完了している
- 支払に対応するサービス(役務)を受けている
- その効果が長期にわたって継続する
上記の要件のうち「効果が長期的に続くかどうか」が重要なポイントです。繰延資産の内容によって定められた償却年数に応じて、支出した費用を均等に経費計上します。
【事例で解説】会費費の仕訳例
勘定科目ごとに仕訳例を見てみましょう。
勘定科目を「諸会費」で仕訳する場合
個人事業主が町内会費として3,000円を現金で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
諸会費 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 |
法人が商工会議所に対して会費10,000円を口座振込で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
諸会費 | 10,000円 | 預金 | 10,000円 |
勘定科目を「雑費」で仕訳する場合
個人事業主が町内会費として2,000円を現金で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑費 | 2,000円 | 現金 | 2,000円 |
法人が自治会費として5,000円を口座振込で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑費 | 5,000円 | 預金 | 5,000円 |
勘定科目を「交際費」で仕訳する場合
個人事業主が業種交流会の会費として3,000円を現金で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
交際費 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 |
法人が交流を深める目的で入会したオンラインサロンの会費10,000円を口座振込で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
交際費 | 10,000円 | 預金 | 10,000円 |
勘定科目を「寄附金」で仕訳する場合
法人がNPO法人の会費10,000円を口座振込で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
寄附金 | 10,000円 | 預金 | 10,000円 |
個人事業主が賛助会費として3,000円を現金(事業用資金)で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
事業主貸 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 |
勘定科目を「前払費用」で仕訳する場合
個人事業主が加入しているセミナーの購読料(年間10,000円)を2年分まとめて現金で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
諸会費 前払費用 | 10,000円(本年度分) 10,000円(翌年度分) | 現金 | 20,000円 |
法人が法人団体の会費(年間20,000円)を2年分まとめて口座振込で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
諸会費 前払費用 | 20,000円(本年度分) 20,000円(翌年度分) | 預金 | 40,000円 |
勘定科目を「支払手数料」で仕訳する場合
個人事業主がクレジットカード会費として3,000円を口座振込で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払手数料 | 3,000円 | 預金 | 3,000円 |
法人が事業用クレジットカードの会費10,000円をカード払いで支払った場合
利用時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払手数料 | 10,000円 | 未払金 | 10,000円 |
引き落とし時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払金 | 10,000円 | 預金 | 10,000円 |
勘定科目を「長期前払費用」で仕訳する場合
法人が同業者団体への入会金100,000円を口座振込で支払った場合(償却期間は5年)
支払い時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
長期前払費用 | 100,000円 | 預金 | 100,000円 |
決算時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
長期前払費用償却 | 20,000円 | 長期前払費用 | 20,000円 |
会費における消費税の取り扱い
会費や組合費が消費税の対象になるかは、会費との間の対価関係の有無によって決まります。消費税の対象となるケースは、以下の通りです。
消費税の対象となる会費
- セミナー参加のための会費
- クレジットカードの年会費
- 飲食や施設の利用が伴う会費
一般的に、同業者団体などへの会費は対価関係がないため課税されません。
まとめ
会費を支出した際は、その内容や目的によって用いる勘定科目を判断しましょう。基本的に、業務上必要な会費は経費として認められます。
ただし個人事業主の場合、寄附金はプライベートな支出とみなされるため経費計上できません。法人が寄附金や交際費に該当する会費を支出した場合、損金算入できる額に制限があるので注意が必要です。
確定申告を簡単に終わらせる方法
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
確定申告書を作成する方法は手書きのほかにも、国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用するなどさまざまですが、会計知識がないと記入内容に悩む場面も出てくるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、確定申告ソフト「freee会計」の活用です。
freee会計は、〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポートします。必要な計算は自動で行ってくれるため、計算ミスや入力ミスを軽減できます。
ここからは、freee会計を利用するメリットについて紹介します。
1.銀行口座やクレジットカードは同期して自動入力が可能!
1年分の経費の入力は時間がかかる作業のひとつです。freee会計に銀行口座やクレジットカードを同期すると、利用した内容が自動で入力されます。
また、freee会計は日付や金額だけでなく、勘定科目も予測して入力します。
溜め込んだ経費も自動入力でカンタン!
2.現金取引の入力もカンタン!
freee会計は、現金での支払いも「いつ」「どこで」「何に使ったか」を家計簿感覚で入力できるので、毎日手軽に帳簿づけが可能です。自動的に複式簿記の形に変換してくれるため、初心者の方でも安心できます。
さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになります。オプションサービスに申し込めば、電話での質問も可能です。
freee会計の価格・プランについて確認したい方はこちらをご覧ください。
3.〇✕形式の質問に答えると、各種控除や所得税の金額を自動で算出できる!
各種保険やふるさと納税、住宅ローンなどを利用している場合は控除の対象となり、確定申告することで節税につながる場合があります。控除の種類によって控除額や計算方法、条件は異なるため、事前に調べなければなりません。
freee会計なら、質問に答えることで控除額を自動で算出できるので、自身で調べたり、計算したりする手間も省略できます。
4.確定申告書を自動作成!
freee会計は取引内容や質問の回答をもとに確定申告書を自動で作成できます。自動作成した確定申告書に抜け漏れがないことを確認したら、税務署へ郵送もしくは電子申告などで提出して、納税をすれば確定申告は完了です。
また、freee会計はe-tax(電子申告)にも対応しています。e-taxからの申告は24時間可能で、税務署へ行く必要もありません。青色申告であれば控除額が10万円分上乗せされるので、節税効果がさらに高くなります。
e-tax(電子申告)を検討されている方はこちらをご覧ください。
完成した確定申告書を提出・納税して確定申告が完了!
freee会計を使うとどれくらいお得?
freee会計には、会計初心者の方からも「本当に簡単に終わった!」というたくさんの声をいただいています。
税理士などの専門家に代行依頼をすると、確定申告書類の作成に5万円〜10万円程度かかってしまいます。freee会計なら月額980円(※年払いで契約した場合)から利用でき、自分でも簡単に確定申告書の作成・提出までを完了できます。
余裕をもって確定申告を迎えるためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。
よくある質問
会費は経費にできる?
基本的に、業務上必要な支出であれば経費として処理できます。
支出した会費が経費にできるか知りたい方は、「会費は経費にできる?」をご覧ください。
会費に用いる勘定科目は?
会費の支出目的や内容によって、諸会費・雑費・交際費・寄附金・前払費用・支払手数料・長期前払費用などの勘定科目を用います。
会費の仕訳に使う勘定科目について詳しく知りたい方は、「会費に用いる勘定科目」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。