監修 北田 悠策 株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所
従業員のために支払った薬代は経費にできる場合があります。経費として計上する際には、多くの場合、福利厚生費や消耗品費などの勘定科目を使います。
どのようなケースで仕訳が必要になり、勘定科目として何を使うことが適切なのかを確認して正確に仕訳を行うようにしましょう。本記事では、薬代の仕訳で使う勘定科目や具体的な仕訳例を紹介します。
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目次
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薬代は経費にできる？
薬代は原則、法人・個人事業主ともに経費にすることはできません。一般的に従業員の薬代や治療費は、従業員本人が個人的に負担すべきものであり、事業に関係する経費とはいえないからです。
しかし、企業や個人事業主が薬代を支払った場合でも経費にできる場合があります。薬代を経費として計上する場合には、適切な勘定科目を設定して記帳する必要があります。
薬代を経費にできないケース
経費にできる費用とは事業に関係する支出です。
薬代を経費にできるケースとできないケース
- 経費にできるケース：従業員が使う常備薬を購入する場合
- 経費にできないケース：従業員が個人的に使う薬を購入する場合
従業員が個人的に購入して使った薬代は、事業とは関係がないため経費にできません。
一方で、業務中に従業員が怪我をしたときに使う薬を常備しておく目的で薬を購入するようなケースでは、事業に関係する支出なので薬代を経費にできると考えられます。
たとえば、現場で作業をする従業員の怪我に備えて、救急箱の中に入れておく薬を購入するケースです。事業に関係する薬代であれば、一般的に経費にできると考えてよいでしょう。
医療費控除と薬代の違い
経費は個人事業主や企業の事業に関する費用であるのに対して、医療費控除は、従業員個人の税金を計算するときに適用できる所得控除のひとつです。
薬代を企業の経費にできない場合でも、従業員個人の所得税や住民税を計算する際に医療費控除の対象になり、税負担が軽くなる場合があります。
医療費控除の対象となる医療費とは、従業員が自己または同一生計の親族（六親等内の血族、配偶者及び三親等内の姻族）のために支払った医療費です。薬代を支払った場合も一般的に医療費控除の対象になります。
医療費控除の適用を受けるためには確定申告が必要です。
1年間に支払った医療費（保険金等を受け取った場合は保険金等を控除した金額）が10万円（その年の総所得金額が200万円未満の人は総所得金額の5%の金額）を超えると、医療費控除の適用を受けることができます。
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薬代の仕訳に使う勘定科目
薬代の仕訳で使う主な勘定科目は次の3つです。
薬代の仕訳で使う勘定科目
- 職場に常備するために支出する場合は【福利厚生費】または【消耗品費】
- 特定の従業員が使う目的で薬代を支出する場合は【給与】または【役員報酬】
薬代を支払った場合、仕訳で使う勘定科目はケースによって異なります。帳簿付けをする際には勘定科目ごとの違いを理解しておく必要があります。
【福利厚生費】または【消耗品費】
従業員が使える薬やマスクを職場に常備するために支払った費用は、勘定科目「福利厚生費」または「消耗品費」で仕訳します。
福利厚生費とは、従業員の慰安・医療・衛生・保健のために事業主が支出した費用などを計上するための勘定科目です。
また、消耗品費は、事業で使う消耗品を購入するときの費用を計上するために利用します。
【給与】または【役員報酬】
特定の従業員が使う目的で薬代を支出する場合は、勘定科目「給与」または「役員報酬」を使って仕訳します。
給与や役員報酬は、給料日に現金や銀行口座振込で報酬を支払った際に使う勘定科目です。特定の従業員や役員に物品を支給した場合、現物支給による給与・報酬の支払いとみなせるケースでは、勘定科目「給与」または「役員報酬」で仕訳します。
全従業員向けではなく一部の従業員や役員が使うために薬を購入した場合、福利厚生費として仕訳できないため注意が必要です。
【事例で解説】薬代の仕訳例
薬代を支払った場合にどのように仕訳するのか、以下では具体的な事例を用いて仕訳例を紹介します。
従業員が使う常備薬を購入した場合
職場に常備する薬の費用を支払った場合は、勘定科目として福利厚生費または消耗品費を使って仕訳します。3,000円分の薬を現金で購入して福利厚生費で仕訳する場合、記帳の仕方は以下の通りです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 |
特定の従業員が使う薬を購入した場合
一部の従業員や特定の従業員が使う薬の費用を支払った場合は、勘定科目として給与を使って仕訳します。2,000円分の薬を現金で購入して給与で仕訳する場合、記帳の仕方は以下の通りです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 給与 | 2,000円 | 現金 | 2,000円 |
薬代の仕訳に関する注意点
薬代の仕訳に関する主な注意点は次の3つです。
薬代を仕訳する際の注意点
- 経費にできるものと経費にできないものを明確に区別する
- どのような薬を購入した場合にいずれの勘定科目を使って仕訳するのか、帳簿付けのルールを明確にする
- 領収書やレシートを保管して経費として適正に処理する
誤って経費にできない薬代を計上しないよう、経費にできるものと経費にできないものを明確に区別するようにしてください。
毎回異なる勘定科目を使ったり、誤った内容の仕訳をしたりしないように、薬代の仕訳の考え方や使う勘定科目は社内でルールを統一することが重要です。領収書・レシートの保管や記帳など、経理処理は適切に行う必要があります。
まとめ
企業や事業者が従業員のために常備薬を購入するようなケースでは一般的に経費にできます。薬を購入した場合でも、事業と関係ない支出であれば経費にできません。
薬代を経費計上する場合、一般的に仕訳で使う勘定科目は福利厚生費です。ただし、消耗品費を使うこともできます。特定の従業員や役員に薬を渡す場合は給与または役員報酬の勘定科目を使って仕訳しましょう。
薬代の仕訳の考え方や使う勘定科目に関するルールを社内で統一し、目的やケースに応じて適切に仕訳を行うようにしてください。
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よくある質問
薬代は経費にできる？
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薬代を経費にできるのか詳しく知りたい方は「薬代は経費にできる？」をご覧ください。
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薬代を仕訳する際は、一般的に福利厚生費を使いますが、消耗品費を使って仕訳することもできます。
薬代の仕訳で用いる勘定科目に関して詳しく知りたい方は「薬代の仕訳に使う勘定科目」をご覧ください。
監修 北田 悠策（きただ ゆうさく）
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
