勘定科目の基礎知識

保守料の勘定科目は? 修繕費と前払費用の使い分けや仕訳方法を解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

保守料の勘定科目は? 修繕費と前払費用の使い分けや仕訳方法を解説

保守料の勘定科目・仕訳方法は、保守期間によって異なります。本記事では、保守料に用いる勘定科目仕訳例を解説します。

「修繕費」と「前払費用」の使い分けや、固定資産への計上が必要なケースも解説するので、ぜひ参考にしてください。

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目次

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保守料とは

保守料とは、保守契約を結んだ際に発生する費用です。

障害が生じたときの復旧や、正常な状態を維持させるためのメンテナンスなどを行ってもらうための費用で、以下のようなものが該当します。

保守料の一例

  • ハードウェア(パソコンやプリンター複合機など)のサポート料
  • ソフトウェアのサポート料
  • エレベーターの保守点検費用

保守料に用いる勘定科目

保守料を支払ったときは、一般的に「修繕費」の勘定科目を用いて処理しますが、「前払費用」または「長期前払費用」で資産に計上するケースもあります。

保守料に用いる勘定科目を詳しく解説します。

保守料に用いる勘定科目

  • 保守料を単発で支払った場合は【修繕費】
  • 継続的な保守サービスを契約した場合は【前払費用】
  • 前払費用のうち1年を超えて経費となる場合は【長期前払費用】

【修繕費】

保守料を単発で支払った場合は、「修繕費(保守修繕費)」として経費計上が可能です。

たとえば、エレベーターの改修を実施したときや、ソフトウェアのアップデートを行ったときなどが考えられます。

また、「消耗品費」や「支払手数料」、「雑費」などの勘定科目を用いるケースもあります。

ただし、「修繕費」に計上できるのは、収益的支出(通常の維持管理や原状回復のための支出)に該当する場合です。

資本的支出(価値を高めるための支出)に該当する部分は「修繕費」とはならず、固定資産に計上しなければなりません。

【関連記事】
修理代の勘定科目は修繕費?修繕費以外に該当するケースや仕訳例を解説

【前払費用】

ソフトウェアやコピー機などの購入に伴って、「年間保守サービス」のような継続的な保守サービスを契約する場合は、「前払費用」の勘定科目で処理します。

支払った保守料のうち、翌期以降に費用となる部分は当期の経費にはできません。したがって、「前払費用」でいったん資産に計上し、保守期間の経過にあわせて経費にします。

【長期前払費用】

「長期前払費用」は、前払費用のうち、決算日の翌日から1年を超えて経費となる部分に用いる勘定科目です。

たとえば、3年分の保守料を前払いした場合、最初の1年分は「前払費用」、残りの2年分は「長期前払費用」で処理し、決算時に当期分の費用を「修繕費」などに振り替えます。

【事例で解説】保守料の仕訳例

コピー機やエレベーター、パソコンなどの保守料を支払ったときの仕訳例をいくつか紹介します。

保守料の仕訳例

  • コピー機の修理を行った場合
  • エレベーターの改修を行った場合
  • 会計ソフトの年間サポート契約を結んだ場合
  • パソコンの保守契約(3年契約)を結んだ場合

コピー機の修理を行った場合

コピー機の故障で修理を行い、普通預金から1万円を支払った場合の仕訳は次の通りです。定期的な保守契約は結んでおらず、単発で支払ったとします。


借方貸方
修繕費1万円普通預金1万円

エレベーターの改修を行った場合

原状回復のためにエレベーターの改修を行い、300万円を普通預金から支払った場合の仕訳は次の通りです。


借方貸方
修繕費300万円普通預金300万円

原状回復のための費用は、収益的支出として「修繕費」に計上できます。

会計ソフトの年間サポート契約を結んだ場合

3月決算の法人が7月1日に会計ソフトの年間サポート契約を結び、年間保守料2万円を普通預金から支払った場合の仕訳例を紹介します。

支払時

借方貸方
前払費用2万円普通預金2万円

決算時

借方貸方
修繕費1万円前払費用1万円

翌期にサービスの提供を受ける部分は、当期の経費にはできません。年間保守料を支払った場合、翌期分は「前払費用」で処理しましょう。

パソコンの保守契約(3年契約)を結んだ場合

パソコンの保守サービスを契約し、3年分の保守料3万円を普通預金から支払った場合は、「長期前払費用」を用いて次のように仕訳します。

支払時

借方貸方
長期前払費用3万円普通預金3万円

決算にあたり、当期分を「修繕費」、翌期分(決算日の翌日から1年以内)を「前払費用」に振り替えたときの仕訳は、次の通りです。


借方貸方
修繕費1万円長期前払費用2万円
前払費用1万円

保守料を仕訳する際のポイント・注意点

保守料は「修繕費」で処理しますが、保守の内容によっては処理方法が異なる場合があります。保守料を支払ったときは、以下のポイント・注意点をおさえて仕訳しましょう。

保守料を仕訳する際のポイント・注意点

  • 資本的支出に該当する部分は固定資産に計上する
  • 20万円未満の場合は修繕費として認められる
  • 消費税はサービスの提供を受けたときに課税される
  • 「短期前払費用」は適用できない可能性が高い

資本的支出に該当する部分は固定資産に計上する

保守料のうち、「資本的支出」に該当する部分は固定資産として処理しなければなりません。

資本的支出とは、価値を高める、または耐久性を増すと認められる支出のことです。具体的には、以下のようなケースが考えられます。

固定資産への計上が必要なケースの例

  • エレベーターの耐用年数が延びる改修を行った
  • エレベーターに室内モニターを設置した
  • ソフトウェアのバージョンアップを行い新たな機能を追加した

資本的支出に該当する部分は固定資産として計上し、耐用年数に応じた減価償却が必要です。

たとえば、エレベーターの保守料が資本的支出に該当する場合は、「建物附属設備」を用いて固定資産に計上します。

【関連記事】
減価償却とは?確定申告前に知っておくべき減価償却資産の計算方法について解説

20万円未満の場合は修繕費として認められる

1回の支出が20万円未満、または概ね3年以内の周期で行われることが明らかな場合は、資本的支出に該当するかどうかにかかわらず「修繕費」への計上が可能です。

また、修繕費か資本的支出か明らかでない場合は、次の取り扱いが認められます。

修繕費か資本的支出か明らかでないときの取り扱い

  1. 60万円未満、その固定資産の取得価額(前事業年度終了時)の概ね10%相当額以下であるときはすべて修繕費にできる
  2. 法人が継続して支出した金額の30%相当額とその固定資産の取得価額(前事業年度終了時)の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出としているときは、その処理が認められる

消費税はサービスの提供を受けたときに課税される

保守料はサービスの対価であるため消費税が課税されますが、課税仕入れの時期はサービスの提供があったときです。したがって、保守料を前払いする場合、支払った時点では消費税が課税されません。

「前払費用」を「修繕費」などに振り替える際に消費税の処理を行いましょう。

まとめ

パソコンやコピー機、ソフトウェアなどの保守料は、「修繕費」で処理するのが一般的です。

ただし、翌期の費用となる部分は「前払費用」、そのうち1年を超えて費用となる部分は「長期前払費用」に計上し、保守期間の経過にあわせて経費に計上します。

また、保守サービスの内容によっては固定資産へ計上し、減価償却を行わなくてはなりません。

保守料の会計処理への理解を深め、適切な勘定科目で仕訳しましょう。

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よくある質問

保守料に用いる勘定科目は?

保守料は、一般的に「修繕費」の勘定科目を用います。

ただし、翌期の費用となる部分は「前払費用」、そのうち1年を超えて費用となる部分は「長期前払費用」で処理します。

保守料に用いる勘定科目を詳しく知りたい方は「保守料に用いる勘定科目」をご覧ください。

保守料を固定資産として計上するケースは?

支払った保守料のうち、価値を高めるまたは耐久性を増すと認められる「資本的支出」に該当する部分は、固定資産への計上が必要です。

保守料を固定資産として計上するケースを詳しく知りたい方は「資本的支出に該当する部分は固定資産に計上する」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮