勘定科目の基礎知識

礼金に用いる勘定科目は? 20万円未満と20万円以上のケースに分けて仕訳を解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

礼金に用いる勘定科目は? 20万円未満と20万円以上のケースに分けて仕訳を解説

礼金を経費に計上する際の勘定科目・処理方法は、金額が20万円未満の場合と20万円以上の場合で異なります。

礼金とは、賃貸借契約を結ぶ際、賃借人が賃貸人にお礼として支払う一時金です。事務所や店舗を借りる際や従業員の社宅を用意する際などに支払います。

本記事では、礼金を支払ったときや受け取ったときの勘定科目を解説します。具体的な仕訳例経費計上における注意点も紹介するので、礼金の処理方法について詳しく知りたい人はぜひ参考にしてください。

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目次

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礼金は経費にできる?

事業で事務所や店舗を借りる際に支払った礼金や、従業員の社宅を利用する際に負担した礼金は、経費に計上できます。

礼金とは、賃貸借契約を結ぶ際、賃借人が賃貸人にお礼として支払う一時金です。契約時に一度だけ支払う金銭で、一般的に返還はされません。

家賃などにかかわる費用には、敷金や仲介手数料もあります。敷金は、賃貸借契約を結んだときに、賃貸人に預けておく保証金です。一般的に退去の際、原状回復などにかかった費用を差し引いて返還されます。

また仲介手数料は、賃貸物件を紹介してくれた不動産会社にサービスの対価として支払うお金です。礼金と仲介手数料は、支払う相手と目的が異なります。

礼金に用いる勘定科目

礼金に用いる勘定科目や処理方法は、礼金の金額や契約期間によって異なります。

支払う礼金が20万円未満の場合、一括で経費に計上できます。一方、礼金が20万円以上の場合は、税務上の「繰延資産」として資産に計上し、償却が必要です。

礼金に用いる勘定科目を以下でくわしく解説します。

礼金に用いる勘定科目

  • 礼金が20万円未満の場合は【地代家賃】
  • 礼金が20万円未満の場合は【支払手数料】
  • 礼金が20万円以上の場合は【長期前払費用】
  • 礼金を受け取った場合は【礼金・権利金】【売上】

【地代家賃】

支払った礼金が20万円未満の場合は、「地代家賃」を用いて一括で経費に計上できます。

「地代家賃」とは、借りている建物・土地の賃料(家賃・共益費・月極駐車場使用料など)を支払ったときに用いる勘定科目です。

少額な繰延資産(20万円未満のもの)は、支出日を含む事業年度において全額を損金処理することが認められています。これは法人税法施行令(第134条)にて定められた内容です。

なお繰延資産とは、サービスの提供を受けた支出のうち、その支出効果が来期以降にも及ぶと想定されるものです。すでに支払いが完了している、または支払い義務が確定している場合に該当します。

【支払手数料】

支払った礼金が20万円未満の場合、「支払手数料」の勘定科目を用いることもあります。

「支払手数料」とは、商品やサービスに付随して発生する手数料などを支払ったときに用いる勘定科目です。専門家(税理士や司法書士など)に報酬を支払ったときにも用います。

【長期前払費用】

支払った礼金が20万円以上の場合は、一般的に「長期前払費用」の勘定科目を用います。

長期前払費用とは、前払費用のうち、1年を超えて費用化される部分の金額に用いる勘定科目です(※)。

金額が20万円以上の礼金は税法上の繰延資産に該当します。そのため、支払時に「長期前払費用」で資産に計上し、来期以降の期間に配分して少しずつ費用化します。これが「償却」です。

礼金の償却期間は5年です。ただし、契約期間が5年未満で契約更新時に再度更新料の支払いが必要な場合は、賃借期間で償却します。

(※)前払費用とは、継続的に受けているサービスの提供をまだ受けていない段階で、先に支払った費用です。

【礼金・権利金】【売上】

礼金を受け取ったときは、「礼金・権利金」や「売上」の勘定科目を用いて処理します。

なお、「権利金」は建物などを賃借するための費用に用いる勘定科目です。

【事例で解説】礼金の仕訳例

礼金を支払ったとき、受け取ったときの仕訳例をいくつか紹介します。

礼金の仕訳例

  • 事務所を借りる際に礼金10万円を支払った場合
  • 法人が社宅を契約する際に礼金24万円を支払った場合
  • 個人事業主が自宅兼事務所の礼金10万円を支払った場合
  • 大家として礼金10万円を受け取った場合

事務所を借りる際に礼金10万円を支払った場合

事業用の事務所を借りる際に礼金10万円を支払った場合は、「地代家賃」を用いて処理します。


借方貸方
地代家賃10万円現金10万円

礼金の金額が20万円未満であるため、一括で経費に計上できます。

法人が社宅を契約する際に礼金24万円を支払った場合

社宅を契約する際に礼金24万円を支払った場合は、次のように仕訳します。なお、契約期間は2年とします。


借方貸方
長期前払費用24万円現金24万円

契約期間が5年未満であるため、償却期間は2年(契約期間)です。決算時(1年目期末)には次のように仕訳します。


借方貸方
長期前払費用償却
(地代家賃)
12万円長期前払費用12万円

個人事業主が自宅兼事務所の礼金10万円を支払った場合

個人事業主が自宅兼事務所の礼金10万円を支払った場合は、家事按分が必要です。事業使用分40%、プライベート使用分60%とした場合、次のように仕訳します。


借方貸方
地代家賃4万円現金10万円
事業主貸6万円

プライベート使用分は経費に計上できないため、上記のように「事業主貸」を用いて処理します。

大家として礼金10万円を受け取った場合

所有する不動産の賃貸借契約を締結し、礼金10万円を現金で受け取った場合の仕訳は、以下の通りです。


借方貸方
現金10万円礼金・権利金10万円

礼金を経費に計上する際のポイント・注意点

礼金を経費に計上する際のポイント・注意点を解説します。

礼金を経費に計上する際のポイント・注意点

  • 事業用の事務所や店舗の礼金には消費税がかかる
  • 個人事業主が自宅兼事務所の礼金を支払ったときは家事按分する
  • 礼金を支払った月から償却開始となる
  • 賃貸借契約に伴う費用の内容によって勘定科目・処理方法が異なる

事業用の事務所や店舗の礼金には消費税がかかる

事業用の賃貸借契約の締結に伴う礼金は、家賃と同様に消費税の課税対象となります。礼金はサービスの提供に対して支払われるものであり、「対価性のある」取引とみなされるためです。

したがって、事務所や店舗を借りる際に支払った礼金は、消費税も考慮して処理する必要があります。

一方、居住用の賃貸物件を契約する際に支払った家賃や礼金には消費税がかかりません。また、事業用でも居住用でも、契約終了により返還される敷金も非課税です。

個人事業主が自宅兼事務所の礼金を支払ったときは家事按分する

個人事業主が自宅兼事務所の礼金を支払ったときは、家事按分して事業使用分のみ経費に計上します。

家事按分とは、事業・プライベートの両方を含む費用を、事業使用分・プライベート使用分に振り分ける作業です。

一般的に、家賃や礼金を家事按分する際は、面積(仕事で使っている面積/家の面積)や時間(仕事の時間/24時間)を基準に振り分けます。

礼金を支払った月から償却開始となる

20万円以上の礼金を支払った場合、支払月から月割りで償却開始となります。繰延資産の額を償却期間の月数で割り、その事業年度の月数を掛けて償却額を計算しましょう。

たとえば、3月決算の会社が10月に24万円の礼金を支払った場合(契約期間は2年とする)、1年目期末の償却額は6万円です。

償却額の計算方法

24万円÷24ヶ月=1万円
1万円×6ヶ月=6万円

賃貸借契約に伴う費用の内容によって勘定科目・処理方法が異なる

家賃や敷金・礼金などをまとめて支払った場合、費用の内容によって用いる勘定科目が異なります。それぞれの処理方法を理解し、正しく仕訳しましょう。


費用の内容勘定科目
家賃地代家賃
礼金・更新料地代家賃や支払手数料
仲介手数料支払手数料
敷金敷金・保証金

なお、敷金が返還されたときは、支払時と同じ勘定科目で相殺します。また、退去時に原状回復費用を差し引かれた場合、差し引かれた分は「修繕費」で処理しましょう。

まとめ

事業用の事務所や店舗を借りた際や社宅の契約をする際に支払った礼金は、経費として計上できます。ただし、礼金の金額と契約期間によって処理方法が異なります。

礼金が20万円未満の場合は、「地代家賃」や「支払手数料」を使用し、一括で経費に計上できます。一方、20万円以上の場合は「長期前払費用」を用いて資産に計上し、償却が必要です。

礼金に用いる勘定科目を理解し、正しく会計処理しましょう。

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礼金を経費に計上する際の勘定科目は?

礼金の金額が20万円未満の場合、「地代家賃」または「支払手数料」を使用し、一括で経費に計上できます。

礼金に用いる勘定科目を詳しく知りたい方は「礼金に用いる勘定科目」をご覧ください。

事業用の礼金に消費税はかかる?

事業用の事務所や店舗を借りる際に支払った礼金は、消費税の課税対象となります。

事業用の礼金にかかる消費税を詳しく知りたい方は「事業用の事務所や店舗の礼金には消費税がかかる」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮