監修 西村真衣 西村税理士事務所
健康保険料は、会社と従業員で半分ずつ負担する費用です。健康保険料の勘定科目は従業員の負担分をどのように管理するかによって異なります。
また、健康保険料は会社が従業員の給与から保険料を天引きして、年金事務所に納付します。天引きと納付のタイミングが異なるため、計上するタイミングや勘定科目に注意して、適切に仕訳をしましょう。
本記事では、健康保険料の仕訳に使う勘定科目の種類や仕訳例を紹介します。
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目次
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社会保険料とは
社会保険料とは、事故・病気・失業・老齢などによって生活が苦しくならないように、国から保障を受けるために支払う保険料です。
社会保険料には、健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料などがあります。日本では、国民全員が健康保険または国民健康保険に加入し、保険料を支払わなければなりません。
国民一人ひとりが保険料を支払うことで、万が一のときに保障する財源が確保できます。たとえば、健康保険に加入して保険料を支払っているため、病院で治療を受けたときの自己負担額が3割に抑えられています。
国民全員が協力して社会保険料を納付することで、困ったときに助け合えるという仕組みです。
健康保険料の支払いは経費にできる?
従業員の健康保険料は、会社と従業員で半分ずつ負担し、従業員負担分は従業員の給与から天引きして会社負担分とあわせて会社が納付します。会社負担分は、法定福利費として会社の経費にできます。
個人事業主が支払う国民健康保険料は、事業に必要な経費ではなくプライベートな支出であるとみなされるため、経費にできません。ただし、確定申告をするときに、社会保険料控除としてその年の所得から控除できます。
社会保険料控除とは、納税者が支払った社会保険料を所得金額から差し引くことです。社会保険料控除によって課税所得金額が減るため、納める所得税や住民税などを減らせます。
健康保険料の仕訳に使う勘定科目
健康保険料の仕訳に使う勘定科目は、以下の3つです。
健康保険料の仕訳に使う勘定科目の種類
- 会社負担分を計上する場合は【法定福利費】
- 従業員負担を明確に管理したい場合は【預り金】
- 個人事業主の場合は【事業主貸】
勘定科目ごとの違いを理解して適切に仕訳を行いましょう。
【法定福利費】
従業員の健康保険料の会社負担分は「法定福利費」を使って仕訳します。
法定福利費とは、会社の負担義務が法律で義務付けられている社会保険料のことです。健康保険や厚生年金保険などの社会保険料、労災保険や雇用保険の保険料などが該当します。
【預り金】
給与から天引きした源泉所得税や社会保険料は、「預り金」を使って仕訳します。預り金とは、従業員が支払うべき費用を会社が預かった場合に使う勘定科目です。
健康保険料の会社負担分と従業員負担分を明確に分けて管理したい場合は、従業員負担分を預り金として仕訳します。
なお、預り金で処理する場合は健康保険料・厚生年金・雇用保険などを分けて処理しましょう。
【事業主貸】
個人事業主が支払う国民健康保険料は、事業に必要な経費ではなくプライベートな支出であるため、基本的に帳簿に記帳する必要がありません。
ただし、保険料を事業用の口座から支出した場合など、帳簿づけが必要な場合は「事業主貸」を使って仕訳します。事業主貸は、事業用資金をプライベートの支出に使った場合に使用する勘定科目です。
健康保険料の仕訳に関する注意点
健康保険料は、一般的に月末時点で在籍している従業員に納付義務が生じ、翌月の給与から天引きして翌月末までに会社が年金事務所へ納付します。
たとえば、11月末時点で在籍している従業員の健康保険料は、12月の給与から天引きして12月末までに納付します。保険料を従業員の給与から天引きするタイミングと、会社が年金事務所へ納付するタイミングが異なるため、計上するタイミングに注意が必要です。
会計処理の方法には、費用が発生したタイミングで計上する「発生主義」と、費用を支払ったタイミングで計上する「現金主義」の2種類があります。
基本的には発生主義で計上するケースが多く、月末に翌月支払う予定の保険料を計上します。ただし、企業によっては現金主義で処理するケースもあるので注意しましょう。
【事例で解説】健康保険料の仕訳例
健康保険料の具体的な仕訳例をケースごとに解説します。
会社負担分を計上する場合
従業員の健康保険料の会社負担分が500,000円であった場合は「法定福利費」を使って仕訳します。発生主義の場合は、以下のように翌月支払う予定の健康保険料を未払費用として計上しましょう。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
法定福利費 | 500,000円 | 未払費用 | 500,000円 |
従業員負担分を簡易的に計上する場合
健康保険料の従業員負担分を簡易的に計上する場合は「法定福利費」を使って仕訳します。まずは、従業員の給与から健康保険料を天引きし、法定福利費として計上しましょう。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
給与 | 300,000円 | 現金 | 285,000円 |
法定福利費 | 15,000円 |
会社が年金事務所に納付するときには、会社負担分とあわせて計上します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
法定福利費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
従業員負担分を会社負担分と明確に分けて管理したい場合
健康保険料の従業員負担分を会社負担分と明確に分けて管理したい場合は「預り金」を使うと便利です。まずは、給与から健康保険料を天引きし、預り金として計上します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
給与 | 300,000円 | 現金 | 285,000円 |
預り金 | 15,000円 |
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預り金 | 15,000円 | 現金 | 30,000円 |
法定福利費 | 15,000円 |
個人事業主が社会保険料を支払った場合
個人事業主が支払う国民健康保険料は、事業に必要な経費ではなくプライベートな支出であるため、基本的に帳簿に記帳する必要がありません。
事業用の口座から支出した場合など帳簿づけが必要な場合は「事業主貸」を使って仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
事業主貸 | 20,000円 | 普通預金 | 20,000円 |
まとめ
健康保険料は、会社と従業員で半分ずつ負担する社会保険料です。仕訳に使う勘定科目には、法定福利費・預り金・事業主貸があり、適切に使い分けて仕訳することが大切です。
また、保険料を従業員の給与から天引きするタイミングと、会社が年金事務所へ納付するタイミングが異なるため、計上するタイミングに注意する必要があります。健康保険料の仕訳方法を理解して、正しく会計処理しましょう。
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よくある質問
健康保険料は経費になる?
従業員の健康保険料は、会社と従業員で折半して負担するため、会社負担分は法定福利費として会社の経費にできます。
健康保険料に関して詳しく知りたい方は「健康保険料の支払いは経費にできる?」をご覧ください。
健康保険料の勘定科目は?
健康保険料の仕訳には、法定福利費・預り金・事業主貸などの勘定科目を使います。
健康保険料の仕訳に使う勘定科目を詳しく知りたい方は「健康保険料の仕訳に使う勘定科目」をご覧ください。
監修 西村真衣(にしむら まい)
父も祖父も税理士という家系に長女として生まれる。実家は60年続く税理士事務所。学生結婚し、子供を授かるも、母、妻、娘の役割以外に、自分の人生も生きていきたいと2人の子供を育てながら税理士試験に合格する。自身も経営者の立場を経験しない事には、お客様の気持ちに真に寄り添うことはできないと感じ、実家の税理士事務所とは別に2021年に西村税理士事務所を開業。現在は、女性起業支援を中心に活動している。