勘定科目の基礎知識

個人事業主の健康診断費用に用いる勘定科目は?仕訳例や注意点も紹介

監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ

個人事業主の健康診断費用に用いる勘定科目は?仕訳例や注意点も紹介

個人事業主が健康診断費用を支払った場合、福利厚生費や事業主貸の勘定科目を用います。具体的な仕訳例注意点とともに解説します。

個人事業主の場合、個人事業主本人や従業員など健康診断を受ける人で処理の仕方が違います。ケースごとに用いられる勘定科目や仕訳の仕方を知り、適切な処理を行いましょう。

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目次

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個人事業主の健康診断費用に用いる勘定科目

個人事業主の健康診断費用で用いられる主な勘定科目は次の2つです。

健康診断費用に用いる勘定科目

  • 従業員の健康診断費用なら【福利厚生費】
  • 個人事業主本人の健康診断費用なら【事業主貸】

健康診断を受けた人によって、用いる勘定科目は異なるので注意しましょう。各勘定科目の詳細を解説します。

【福利厚生費】

福利厚生費は、従業員のために任意で支出した費用に用いる勘定科目です。従業員の健康診断費用を支払った場合は、福利厚生費で計上します。

福利厚生費は健康診断費用のほか、慰安旅行費や食事補助、慶弔見舞金などの計上で用います。福利厚生費で計上できる費用の要件は次の通りです。

●●

  • 給与ではない
  • すべての従業員を対象としている
  • 金額が社会通念上、妥当である
  • 現金や換金性の高いものではない

一部の従業員のみ参加可能な食事会などは、福利厚生費で計上できません。

【事業主貸】

事業主貸は、事業以外のものを事業用の資金で支払った場合に用いる勘定科目です。

個人事業主本人が受けた健康診断の費用は、経費に計上できません。健康診断費用を事業用の口座から支払った場合は、事業主貸勘定で計上します。

【事例で解説】個人事業主の健康診断費用の仕訳例

健康診断費用を計上するときの仕訳例を、3つのケースに分けて解説します。仕訳の具体的な方法を把握して、適切に計上しましょう。

個人事業主の健康診断費用の仕訳例

  • 従業員の健康診断費用を支払った場合
  • 個人事業主本人の健康診断費用を事業用口座で支払った場合
  • 健康診断費用を事業用のクレジットカードで支払った場合

従業員の健康診断費用を支払った場合

従業員の健康診断費用(30,000円)を支払った場合の仕訳例は次の通りです。


借方貸方
福利厚生費30,000円普通預金30,000円

たとえば口座振込で健康診断費用を支払う場合、医療機関の請求書に記載された金額を指定された口座に振り込み、帳簿に計上します。

個人事業主本人の健康診断費用を事業用口座で支払った場合

個人事業主本人の健康診断費用(10,000円)を事業用口座から支払った場合の仕訳例は次の通りです。


借方貸方
事業主貸10,000円普通預金10,000円

従業員の仕訳例とは違い、借方に事業主貸を立てて計上します。

なお、健康診断費用を個人の口座や現金で支払った場合は、仕訳の必要はありません。

健康診断費用を事業用のクレジットカードで支払った場合

従業員の健康診断費用(10,000円)を事業用のクレジットカードで支払った場合は、クレジットカード利用時と引落時の2回に分けて処理を行います。

●健康診断費用(10,000円)を事業用のクレジットカードで支払ったとき

借方貸方
福利厚生費10,000円未払金10,000円

●健康診断費用(10,000円)のカード利用分が口座から引き落されたとき

借方貸方
未払金10,000円普通預金10,000円

クレジットカードを利用した時点では、まだ口座からお金は引き落されていません。

そのため、カード利用時は未払金勘定で計上して、口座から引き落された時点で普通預金に振り替えます。

なお、厚生労働省が2022年3月に公表した「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査結果報告書」によると、デビットカードを含むクレジットカード決済に対応する医療機関は57.4%です。近年、クレジットカード決済に対応する医療機関が増えていることがわかります。

クレジットカード決済はキャッシュレスで支払いができて便利ですが、仕訳の際は注意が必要です。

個人事業主の健康診断費用を経費に計上する際のポイント・注意点

個人事業主が健康診断費用を計上するときに、抑えておきたいポイントや注意点を解説します。

個人事業主の健康診断費用を経費に計上する際のポイント・注意点

  • 従業員の健康診断費用は支払方法に注意する
  • 青色事業専従者である家族の健康診断は経費にならない
  • 健康診断費用は医療費控除の対象とならない

従業員の健康診断費用は支払方法に注意する

従業員の健康診断費用を支払うときは、医療機関へ「直接」支払いましょう。従業員が健康診断費用を立替えてあとで精算した場合、そのお金は給与とみなされます。

医療機関へ直接支払わないと、福利厚生費で計上できません。また、従業員の給与が増えて、所得税が発生する場合もあるので注意が必要です。

青色事業専従者である家族の健康診断は経費にならない

青色事業専従者は、青色申告者の事業で働く家族従業員です。青色事業専従者への給与は、一定の要件を満たすと必要経費に認められます。

ただし、青色事業専従者である家族が受けた健康診断費用は、経費に計上できません。同じ従業員でも、青色事業専従者とそれ以外の従業員で取り扱いが異なる点に注意しましょう。

【関連記事】
専従者給与とは?家族に支払う給与は全額経費にできる?

健康診断費用は医療費控除の対象とならない

個人事業主は原則として医療費を経費にできませんが、病院で支払った診療費や薬代などは確定申告の医療費控除の対象です。

一方、健康診断費用は病気の治療に伴う費用ではないため、医療費控除も対象外である点に注意しましょう。

なお、健康診断で重大な病気が発見されて、引き続き病気の治療をした場合には、健康診断費用も治療費用に含まれます。このケースは医療費控除の対象となることを覚えておきましょう。

まとめ

個人事業主が支払う健康診断費用は、従業員か個人事業主本人かで用いる勘定科目が異なります。

従業員は福利厚生費で経費計上可能です。一方で、個人事業主本人や青色事業専従者の家族は経費に計上できないため、事業主貸で計上しましょう。

また、健康診断費用の支払方法次第では、福利厚生費ではなく給与が適切な場合もあります。事前にポイントや注意点を把握してから、費用の処理を行いましょう。

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よくある質問

個人事業主の健康診断費用を経費に計上する際の勘定科目は?

健康診断を受けた人により、福利厚生費や事業主貸で計上します。

健康診断費用の勘定科目を詳しく知りたい方は「個人事業主の健康診断費用に用いる勘定科目」をご覧ください。

健康診断費用を従業員に立替てもらうことはできる?

福利厚生費で経費計上する場合は、医療機関へ直接支払いましょう。

健康診断費用の支払い方法を詳しく知りたい方は「個人事業主の健康診断費用を経費に計上する際のポイント・注意点」をご覧ください。

監修 宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。

税理士・CFP® 宮川真一