監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
中小企業や小規模事業者が金融機関から融資を受ける際に利用する信用保証制度には、保証料が必要です。支払保証料や前払費用などで仕訳をします。
本記事では、保証料の勘定科目や仕訳例を紹介します。記事の後半では、信用保証を利用する際のポイント・注意点も解説しているのでぜひあわせてご確認ください。
信用保証制度を利用する際には、保証料の仕訳方法は事前に理解しておきましょう。
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目次
保証料とは?
保証料(信用保証料)は、信用保証協会から保証を受ける際に、信用保証協会に対して支払う対価です。
信用保証制度は、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、保証料を支払うと信用保証協会から保証が受けられる制度です。
返済が滞った際には、信用保証協会が代位弁済を行い、その後は信用保証協会へ弁済します。
信用保証制度では、資本金や従業員数などの上限などを定める条件があり、中小企業・小規模事業者が制度の対象です。
中小企業や小規模事業者も信用保証制度を利用すると、金融機関からの信用が得やすくなり、融資が受けやすくなります。
保証料に用いる勘定科目
保証料の仕訳方法は、保証期間ごとに異なります。
保証料に用いる勘定科目を以下で見ていきましょう。
保証料に用いる勘定科目
- 当期期間内に保証期間が終了する場合は【支払手数料】
- 継続的にサービスを受ける際に前払いした費用を計上する場合は【前払費用】
- 前払費用のうち1年を超えて費用化される場合は【長期前払費用】
【支払手数料】
当期期間内に保証期間が終了する場合は、「支払手数料」の勘定科目で保証料を一括で計上します。
信用保証協会へ支払う手数料は、支払手数料の勘定科目で計上します。
支払手数料は、金融機関などへの手数料の支払いなどでも使われる勘定科目です。
【前払費用】
前払費用は、継続的にサービスを受ける際に前払いした費用を計上する際の勘定科目です。
保証料も翌年1年分の前払いした費用は前払費用で仕訳します。
【長期前払費用】
長期前払費用は、前払費用のうち1年を超えて費用化されるものを仕訳する際の勘定科目です。
翌期以降に1年以上の保証期間がある場合、その分の保証料は長期前払費用として計上します。
【事例で解説】保証料の仕訳例
保証料の具体的な仕訳例を、保証期間ごとにそれぞれ見ていきましょう。
保証料の仕訳例
- 当期期間内に保証期間が終了する場合
- 翌期以降に1年未満の保証期間がある場合
- 翌期以降に1年以上の保証期間がある場合
当期期間内に保証期間が終了する場合
当期期間内に保証期間が終了する保証料(保証期間8ヶ月 保証料8万円の場合)を支払った際には、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払手数料 | 80,000円 | 普通預金 | 80,000円 |
翌期以降に1年未満の保証期間がある場合
翌期以降に1年未満の保証期間がある保証料(保証期間20ヶ月 保証料20万円)を支払った際には、以下のように仕訳します。
なお、翌期には前払費用を当期費用に振替をします。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払手数料 | 80,000円 | 普通預金 | 200,000円 |
前払費用 | 120,000円 |
翌期以降に1年以上の保証期間がある場合
翌期以降に1年以上の保証期間がある保証料(保証期間40ヶ月 保証料40万円)を支払った際には、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払手数料 | 80,000円 | 普通預金 | 400,000円 |
前払費用 | 120,000円 | ||
長期前払費用 | 200,000円 |
信用保証を利用する際のポイント・注意点
信用保証を利用する際のポイント・注意点を以下で見ていきましょう。
信用保証を利用する際のポイント・注意点
- 代位弁済の場合でも債務はなくならない
- 信用保証協会の保証があっても必ず融資が受けられるとは限らない
- 審査に時間がかかることもある
代位弁済の場合でも債務はなくならない
返済が滞ってしまい、信用保証協会が金融機関に対して代位弁済を行う場合でも、債務自体はなくなりません。
信用保証協会が肩代わりした分の金額を、信用保証協会に対して弁済することになります。
信用保証協会の保証があっても必ず融資が受けられるとは限らない
信用保証協会での審査に通り、保証が受けられる場合であっても、必ず融資が受けられるとは限りません。
信用保証協会の審査は保証を受けるためであり、金融機関から融資を受けるには、金融機関の審査に通過する必要があります。
審査に時間がかかることもある
融資を受けるまでには、金融機関、信用保証協会のそれぞれで審査に通過する必要があるため、審査に時間がかかることもあります。
特に年末などの繁忙期になると、通常よりもさらに時間がかかるケースもあります。
まとめ
信用保証協会から保証を受ける際の信用保証料は、当期期間内に保証期間が終了する場合は「支払手数料」で一括計上が可能です。
翌期以降に保証期間がおよぶ場合は、「前払費用」や「長期前払費用」などの勘定科目も用いて仕訳をします。
ぜひ、保証料の勘定科目や仕訳方法を理解して、適切に仕分をしましょう。
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よくある質問
保証料の支払いに用いる勘定科目は?
当期期間内に保証期間が終了する場合は「支払手数料」、翌期以降に1年未満の保証期間がある場合は「支払手数料」と「前払費用」になります。
翌期以降に1年以上の保証期間がある場合は「支払手数料」「前払費用」「長期前払費用」でそれぞれ仕訳します。
保証料の支払いに用いる勘定科目を詳しく知りたい方は「保証料に用いる勘定科目」をご覧ください。
信用保証を利用する際に気を付けるべきことは?
代位弁済の場合でも債務はなくならないこと、信用保証協会の保証があっても必ず融資が受けられるとは限らないことが挙げられます。
ほかにも、金融機関、信用保証協会のそれぞれで審査が必要なことなどが注意点です。
信用保証を利用する際に気を付けるべきことを詳しく知りたい方は「信用保証を利用する際のポイント・注意点」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。