監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
商売繁盛を願って神社にお参りをする際、初穂料・玉串料などを納めます。本記事では、初穂料に用いる勘定科目や仕訳例を解説します。
法人が支払った初穂料や玉串料は、「寄附金(寄付金)」として経費計上が可能です。ただし、個人事業主は初穂料や玉串料を経費計上できません。
法人が会計処理する際の注意点についても解説するので、ぜひご覧ください。
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目次
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初穂料・玉串料は経費にできる?
法人が商売繁盛を願って神社に祈祷してもらった際に支払った初穂料・玉串料は、経費に計上できます(限度額あり)。
一方、「個人事業主が支出した初穂料は経費として計上できない」とする複数の判例があります。
したがって、個人事業主が支出した初穂料は、原則として経費に計上できません。
初穂料とは
初穂料(はつほりょう)とは、神社で祈祷やお祓いなどをしてもらう際に謝礼として支払う金銭です。「初穂」とは、その年に初めて収穫したお米を指します。古くは、神前に初穂をお供えすることで収穫や豊作を感謝する習慣がありました。
しかし、初穂は簡単に用意できるものではありません。そこで、初穂の代わりに納めるようになったのが金銭です。こうした由来から、現在は神前に納める金銭を「初穂料」と呼びます。
なお、初穂料は感謝の気持ちを込めて納める金銭であるため、弔事(お悔やみごと)で使用するのは適しません。
玉串料とは
玉串料(たまぐしりょう)も、神社で祈祷や儀式を行った際に謝礼として支払う金銭です。「玉串」は、榊(さかき)などの木の枝に紙垂(しで)をつけた物です。
祭事などで神前にお供えするものとして、米・酒・魚・野菜などと同様に重要な意味を持っています。
初穂と同様、古くは玉串を神前にお供えしましたが、玉串の代わりに金銭を納めるようになりました。こうしたことから、現在は神前にお供えする金銭を「玉串料」と呼びます。
慶事にのみ使う初穂料に対し、玉串料は祈祷やお祓いのほか、弔事にも使えるのが特徴です。ただし、お守やお札などを受ける際はあまり使用せず、初穂料とします。
初穂料・玉串料に用いる勘定科目
神社に初穂料や玉串料を納めたときの勘定科目は、法人と個人事業主で異なります。
初穂料・玉串料に用いる勘定科目
- 法人が初穂料や玉串料を納めた場合は【寄附金(寄付金)】
- 個人事業主や初穂料や玉串料を納めた場合は【事業主貸】
【寄附金(寄付金)】
法人が神社に初穂料・玉串料を支払ったときは、「寄附金(寄付金)」の勘定科目を用いて経費に計上できます。「寄附金(寄付金)」とは、事業に直接関係しない団体・組織に対し、見返りを求めず金銭や資産を渡したときに用いる勘定科目です。
ただし、全額を経費にできない場合がある点に注意してください。
国や地方公共団体への寄附金は全額を経費にできますが、初穂料を含むそれ以外の寄附金は、経費に計上できる金額に上限が設けられています。
損金に算入できる限度額は、資本金の額や所得金額によって決まります。
損金算入限度額 =[期末の資本金等の額 ×(当期の月数÷12)×(2.5/1,000)+ 所得金額 × (2.5/100)]÷ 4
たとえば、資本金1,000万円・所得金額1,500万円の場合(1年決算法人)の場合は、損金算入限度額は10万円です。
[1,000万円 ×(12 ÷ 12)×(2.5/1,000)+ 1,500万円 ×(2.5/100)]÷ 4=10万円
なお、法人が支出した初穂料が少額の場合は、「雑費」の勘定科目を使用する場合もあります。「雑費」とは、本業以外の費用で、かつ少額で重要性が低く、ほかの勘定科目に当てはまらないときに使う勘定科目です。
ただし、「雑費」を頻繁に使うと費用の内訳を正しく把握できないため、使用頻度・重要度が低い場合のみ使用しましょう。
【事業主貸】
個人事業主が事業資金から初穂料・玉串料を支払ったときは、「事業主貸」の勘定科目を用いて処理します。
「事業主貸」とは、事業用の資金でプライベートの支払いをしたことを表す、個人事業主のみが使用する勘定科目です。
先述の通り、個人事業主が支出した初穂料は経費として認められません。個人事業主が経費に計上できるのは、次の費用です。
- (1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- (2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
出典:国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」
個人事業主が納める初穂料は、宗教的色彩を強く持つものであり、業務との関連性・必要性に欠けると判例で判断されています。
したがって、個人事業主が初穂料を支払ったときは個人的な支出となり、「事業主貸」で処理します(事業資金で支払った場合)。
【事例で解説】初穂料の仕訳例
法人・個人事業主が初穂料を支払ったときの仕訳例を、具体的な事例で紹介します。
初穂料の仕訳例
- 法人が神社に初穂料2万円を支払った場合
- 個人事業主が初穂料1万円を支払った場合
法人が神社に初穂料2万円を支払った場合
法人が神社に祈祷を行ってもらい、初穂料として2万円を現金で支払ったときは、次のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
寄附金 | 2万円 | 現金 | 2万円 |
個人事業主が初穂料1万円を支払った場合
個人事業主が初穂料1万円を事業資金から支払ったときの仕訳は、以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
事業主貸 | 1万円 | 普通預金 | 1万円 |
個人事業主が支出した経費に計上できないため、事業資金で支払った場合は上記のように「事業主貸」で処理します。
初穂料・玉串料を会計処理する際のポイント・注意点
初穂料や玉串料を納めた際や、お札・お守り、熊手を購入した際の会計処理に関するポイント・注意点を解説します。
初穂料・玉串料を会計処理する際のポイント・注意点
- 初穂料・玉串料に消費税は課税されない
- お札やお守りも「寄附金」で処理する
- 熊手には「消耗品費」や「雑費」を用いる
初穂料・玉串料に消費税は課税されない
初穂料や玉串料は、消費税の不課税取引です。初穂料・玉串料は、事業に直接関係のない者に対する金銭の贈与であり、寄附金(神社の祭礼等の寄贈金)とみなされます。
寄附金は対価性のある取引ではないため、消費税の課税対象にはなりません。
なお、消費税が課税されるのは以下の4つすべてを満たす取引です。
消費税の課税取引
- 国内取引である
- 事業者が事業として行うものである
- 対価を得て行うものである
- 資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供である
お札やお守りも「寄附金」で処理する
法人がお札やお守りを購入するために支出した費用は、初穂料や玉串料と同様に「寄附金」の勘定科目で処理しましょう。
お札やお守りは、利益目的での物品販売ではなく、実質的に「喜捨金」(寄附のようなもの)であると考えられています(法人税法基本通達)。
そのため、お札やお守りも「寄付金」として経費に計上できます。また、消費税は課税されません。
【関連記事】
寄附金の勘定科目は? 分類や仕訳例をわかりやすく解説!
熊手には「消耗品費」や「雑費」を用いる
法人が商売繁盛のために熊手を購入した場合は、一般的に「消耗品費」や「雑費」の勘定科目で処理します。熊手の購入費は、物品を受け取った対価として支払った費用であるためです。
なお、神社で購入した熊手は実質的に寄附であるため、消費税は課税されません。
【関連記事】
消耗品費とは?具体例や雑費との違い、仕訳方法について解説
雑費とはどのような勘定科目?消耗品費との違いや仕訳方法などを解説
まとめ
法人が祈祷を行ってもらった謝礼として神社に初穂料・玉串料を納めたときは、「寄附金(寄付金)」の勘定科目で経費計上が可能です。
ただし、損金算入額に上限が設けられているため、全額を経費に計上できない場合もあります。
また個人事業主が納めた初穂料は、原則として経費として認められません。頻繁に発生する会計処理ではないため、勘定科目や処理方法を正しく理解して仕訳しましょう。
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監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。