監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
事務所や店舗などの外壁塗装を行ったときの費用は、「修繕費」として経費に計上できる場合と資産計上が必要な場合があります。
原状回復のための外壁塗装なら一括で経費に計上できますが、建物の価値を高めるための外壁塗装はいったん資産に計上し、減価償却が必要です。
本記事では、外壁塗装を行ったときの勘定科目や仕訳例を解説します。外壁塗装を経費に計上する際のポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
確定申告の基本をすべて解説!確定申告が初めてでもわかりやすい図解入りの解説記事はこちら
目次
- 外壁塗装は経費にできる?
- 原状回復が目的なら一括で経費に計上できる
- 価値を高める目的なら資産に計上する
- 外壁塗装に用いる勘定科目
- 【修繕費】
- 【建物・附属設備】
- 【減価償却費】
- 【事例で解説】外壁塗装の仕訳例
- ひび割れを補修する原状回復目的の外壁塗装を行った場合
- 高級な塗料で耐久性を高める外壁塗装を行った場合
- 資本的支出に該当する外壁塗装に15万円を支払った場合
- 外壁塗装を経費に計上する際のポイント・注意点
- 資本的支出でも「修繕費」に計上できるケースがある
- 資本的支出は国税庁が定める法定耐用年数で償却する
- 年の途中で取得した固定資産の減価償却は月割りで計算する
- まとめ
- 確定申告を簡単に終わらせる方法
- よくある質問
freee会計で電子申告をカンタンに!
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!口座とのデータ連携によって転記作業も不要になり、入力ミスも大幅に削減します。
外壁塗装は経費にできる?
外壁塗装にかかった費用は、「修繕費」として一括で経費計上できるケースと、資産計上が必要なケースがあります。
収益的支出と資本的支出のどちらに該当するかで勘定科目・処理方法が異なるため、正しく理解しましょう。
収益的支出と資本的支出の違い
- 収益的支出:現状に復するための工事費用
- 資本的支出:資産価値を上げるための工事費用
原状回復が目的なら一括で経費に計上できる
外壁塗装にかかった費用が収益的支出(現状に復するための工事費用)に該当する場合は、一括で経費に計上できます。
収益的支出とみなされるのは、建物の維持や原状回復として通常必要な範囲の修理です。
たとえば、以下のようなケースが該当します。
収益的支出の例
- 雨水の侵入を防ぐために外壁のひび割れを補修する目的で外壁塗装を実施した
- 建物の美観を維持するために色あせを補修する目的で外壁塗装を実施した
- 災害によるひび割れや剥がれを補修する目的で外壁塗装を実施した
価値を高める目的なら資産に計上する
一方、外壁塗装が資本的支出(資産価値を上げるための工事費用)に該当する場合は、いったん資産に計上し、耐用年数にわたって定額法による減価償却を行います。
資本的支出に該当するのは、建物の価値や性能、耐久性を高めるための工事だとみなされる場合です。
資本的支出の例
- 高級な塗料を使用して耐用年数を高める工事をした
- デザインを変える目的で外壁塗装を行った
なお減価償却とは、時間の経過に伴う価値の低下を反映させるため、期間にわたって少しずつ費用へ計上し、資産の価値を徐々に減額させることです。
外壁塗装に用いる勘定科目
外壁塗装に用いる勘定科目は、収益的支出・資本的支出のどちらに該当するかで、「修繕費」と「建物・附属設備」を使い分けます。
外壁塗装に用いる勘定科目
- 収益的支出に該当する場合は【修繕費】
- 資本的支出に該当する場合は【建物】【附属設備】
- 減価償却を行う場合は【減価償却費】
【修繕費】
外壁塗装にかかった費用が収益的支出に該当する場合は、「修繕費」を用いて全額を経費に計上します。
「修繕費」とは、有形固定資産(建物・車・PCなど)の修理を目的とした費用を支出したときに使う勘定科目です。
【関連記事】
修理代の勘定科目は修繕費?修繕費以外に該当するケースや仕訳例を解説
【建物・附属設備】
外壁塗装が資本的支出に該当する場合は、「建物」や「附属設備」を用いて資産に計上します。
「建物」は事業のために所有する建物、「附属設備」は建物に付属している設備を表す勘定科目です。
【減価償却費】
「建物」や「附属設備」を用いて資産に計上した場合、毎期末に「減価償却費」の勘定科目を用いて減価償却処理を行います。
「減価償却費」とは、固定資産(10万円以上、かつ1年以上使う資産)の費用を、耐用年数に応じて毎年一定額または一定の割合で少しずつ費用にするときに使う勘定科目です。
【関連記事】
減価償却とは?確定申告前に知っておくべき減価償却資産の計算方法について解説
【事例で解説】外壁塗装の仕訳例
外壁塗装の費用を支払った際の仕訳を、具体的な事例を用いて紹介します。
外壁塗装の仕訳例
- ひび割れを補修する原状回復目的の外壁塗装を行った場合
- 高級な塗料で耐久性を高める外壁塗装を行った場合
- 資本的支出に該当する外壁塗装に15万円を支払った場合
ひび割れを補修する原状回復目的の外壁塗装を行った場合
経年劣化によるひび割れを補修するために外壁塗装工事を行い、100万円を支払ったときの仕訳は以下の通りです。
なお、外壁塗装工事は原状回復として通常必要だと認められる範囲とします。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
修繕費 | 100万円 | 普通預金 | 100万円 |
収益的支出にあたるため、「修繕費」を用いて一括で経費に計上します。
高級な塗料で耐久性を高める外壁塗装を行った場合
耐用年数が長い高級な塗料で耐久性を高める外壁塗装を行い、費用150万円を支払った場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
建物 | 150万円 | 普通預金 | 150万円 |
資本的支出にあたるため、資産として計上します。
資本的支出に該当する外壁塗装に15万円を支払った場合
資本的支出に該当する外壁塗装に15万円を支払った場合は、以下のように仕訳します。なお、おおむね3年以内の周期で行われるものとします。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
修繕費 | 15万円 | 普通預金 | 15万円 |
資本的支出に該当する場合は、いったん資産に計上し、減価償却が必要です。
ただし、金額が20万円未満または、おおむね3年以内の周期で行われる修理は、資本的支出かどうかにかかわらず「修繕費」に計上できます。
外壁塗装を経費に計上する際のポイント・注意点
外壁塗装費用を処理する際のポイント・注意点を解説します。
外壁塗装を経費に計上する際のポイント・注意点
- 資本的支出でも「修繕費」に計上できるケースがある
- 資本的支出は国税庁が定める法定耐用年数で償却する
- 年の途中で取得した固定資産の減価償却は月割りで計算する
資本的支出でも「修繕費」に計上できるケースがある
収益的支出・資本的支出のどちらに該当するかにかかわらず、以下に該当すれば「修繕費」として経費に計上できます。
「修繕費」に計上するための2つの条件
- 修理の額が20万円未満の場合
- おおむね3年以内の周期で行われる修理の場合
また、収益的支出と資本的支出のどちらに該当するのかが明らかでない場合は、以下に該当すれば「修繕費」に計上することが可能です。
「修繕費」に計上するための2つの条件
- 修理の額が60万円未満の場合
- 修理の額が固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
さらに、収益的支出と資本的支出が明らかでない場合、法人は継続適用を条件に、修理額の30%相当額か、固定資産の前期末における取得価額の10%相当額のいずれか少ない金額を、修繕費に計上できます。
資本的支出は国税庁が定める法定耐用年数で償却する
外壁塗装が資本的支出に該当する場合は、その建物の種類と耐用年数を同じくする新たな固定資産を取得したものとして定額法で減価償却を行います。
主な法定耐用年数は以下の通りです。
区分 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造・合成樹脂造 | ・事務所用:24年 ・店舗用・住宅用:22年 ・飲食店用:20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | ・事務所用:50年 ・飲食店用:34年または41年 ・店舗用・病院用:39年 |
金属造 | 事務所用骨格材の肉厚 ・4mm超:38年 ・3mm超4mm以下:30年 ・3mm以下:22年 |
建物の減価償却費は、以下の式で算出します。
減価償却費=資本的支出の額×償却率
主な耐用年数ごとの償却率は下表を参考にしてください。
耐用年数 | 償却率 |
---|---|
20年 | 0.05 |
22年 | 0.046 |
24年 | 0.042 |
30年 | 0.034 |
34年 | 0.030 |
38年 | 0.027 |
39年 | 0.026 |
41年 | 0.025 |
50年 | 0.020 |
たとえば、鉄筋コンクリート造・事務所用建物の外壁塗装を行い、500万円を支払った場合の減価償却費は10万円(500万円×0.02)です。
年の途中で取得した固定資産の減価償却は月割りで計算する
年の途中で取得した固定資産は、月割り計算で減価償却の額を求めます。
たとえば、決算が3月、外壁塗装を8月1日に行った場合、減価償却費として計上するのは8ヶ月分です。
まとめ
原状回復のために行った外壁塗装で、通常必要だとみなされる範囲であれば、「修繕費」を用いて一括で経費に計上できます。
一方、資産価値を上げるために外壁塗装を行った場合は、いったん資産に計上し、耐用年数に応じた減価償却が必要です。
収益的支出と資本的支出の違いを理解し、正しく処理・申告しましょう。
収益的支出・資本的支出にかかわらず修繕費に計上できるケースもあるため、判断に迷う場合は税務署や税理士にご相談ください。
確定申告を簡単に終わらせる方法
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
確定申告書を作成する方法は手書きのほかにも、国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用するなどさまざまですが、会計知識がないと記入内容に悩む場面も出てくるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、確定申告ソフト「freee会計」の活用です。
freee会計は、〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポートします。必要な計算は自動で行ってくれるため、計算ミスや入力ミスを軽減できます。
ここからは、freee会計を利用するメリットについて紹介します。
1.銀行口座やクレジットカードは同期して自動入力が可能!
1年分の経費の入力は時間がかかる作業のひとつです。freee会計に銀行口座やクレジットカードを同期すると、利用した内容が自動で入力されます。
また、freee会計は日付や金額だけでなく、勘定科目も予測して入力します。
溜め込んだ経費も自動入力でカンタン!
2.現金取引の入力もカンタン!
freee会計は、現金での支払いも「いつ」「どこで」「何に使ったか」を家計簿感覚で入力できるので、毎日手軽に帳簿づけが可能です。自動的に複式簿記の形に変換してくれるため、初心者の方でも安心できます。
さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになります。オプションサービスに申し込めば、電話での質問も可能です。
freee会計の価格・プランについて確認したい方はこちらをご覧ください。
3.〇✕形式の質問に答えると、各種控除や所得税の金額を自動で算出できる!
各種保険やふるさと納税、住宅ローンなどを利用している場合は控除の対象となり、確定申告することで節税につながる場合があります。控除の種類によって控除額や計算方法、条件は異なるため、事前に調べなければなりません。
freee会計なら、質問に答えることで控除額を自動で算出できるので、自身で調べたり、計算したりする手間も省略できます。
4.確定申告書を自動作成!
freee会計は取引内容や質問の回答をもとに確定申告書を自動で作成できます。自動作成した確定申告書に抜け漏れがないことを確認したら、税務署へ郵送もしくは電子申告などで提出して、納税をすれば確定申告は完了です。
また、freee会計はe-tax(電子申告)にも対応しています。e-taxからの申告は24時間可能で、税務署へ行く必要もありません。青色申告であれば控除額が10万円分上乗せされるので、節税効果がさらに高くなります。
e-tax(電子申告)を検討されている方はこちらをご覧ください。
完成した確定申告書を提出・納税して確定申告が完了!
freee会計を使うとどれくらいお得?
freee会計には、会計初心者の方からも「本当に簡単に終わった!」というたくさんの声をいただいています。
税理士などの専門家に代行依頼をすると、確定申告書類の作成に5万円〜10万円程度かかってしまいます。freee会計なら月額980円(※年払いで契約した場合)から利用でき、自分でも簡単に確定申告書の作成・提出までを完了できます。
余裕をもって確定申告を迎えるためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。
よくある質問
外壁塗装を経費に計上する際の勘定科目は?
外壁塗装を経費に計上する際の勘定科目は「修繕費」です。ただし、「建物」や「附属設備」を用いて資産に計上し、減価償却が必要となるケースもあります。
外壁塗装に用いる勘定科目を詳しく知りたい方は「外壁塗装に用いる勘定科目」をご覧ください。
資本的支出でも修繕費に計上できるケースは?
以下のいずれかの条件を満たす場合は、資本的支出でも「修繕費」として経費に計上できます。
「修繕費」に計上するための2つの条件
- 修理の額が20万円未満である
- おおむね3年以内の周期で行われる修理である
資本的支出でも修繕費に計上できるケースを詳しく知りたい方は「資本的支出でも「修繕費」に計上できるケースがある」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。