監修 西村真衣 西村税理士事務所
業務に必要な衣装代は経費に計上可能ですが、衣装の用途ごとに適した勘定科目は異なります。高額な衣装は減価償却する場合もあるため注意が必要です。
個人事業主の場合は、経費として認められる場合でも家事按分が必要になることがあります。着用割合などに応じて適切に仕訳をしましょう。
本記事では衣装代を経費計上する際に使う勘定科目や注意点、事例ごとの仕訳例も解説するため、事業主や経理の担当者は参考にしてください。
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目次
- 衣装代は経費に計上できる?
- 個人事業主も衣装代を経費計上できる?
- 衣装代の仕訳に使う勘定科目
- 【消耗品費・雑費】
- 【福利厚生費】
- 【販売促進費】
- 【工具器具備品】
- 衣装代の仕訳や経費計上に関する注意点
- 経費に認められない衣装もある
- 私用でも使える衣装は家事按分する
- 10万円以上の衣装は仕訳と減価償却に注意する
- 【事例で解説】衣装代の仕訳例
- スタッフがイベントで着用する衣装を購入した場合
- スタッフが常時着用する衣装(制服)を購入した場合
- 販促イベントでスタッフが着用する制服を購入した場合
- 高額な衣装を購入した場合
- 個人事業主が事業で使う衣装を購入した場合
- 経理を自動化し、業務を効率的に行う方法
- まとめ
- よくある質問
衣装代は経費に計上できる?
仕事で使う衣装の購入費用やレンタル代は、経費に計上可能です。しかし、衣装の用途で使う勘定科目は変わるため、常に同じではありません。
ショーやステージで着用する衣装や、撮影でモデルが着用する衣装など、衣装にもさまざまなケースが存在します。
正しく仕訳するため、ケースごとに適した勘定科目を理解しましょう。
個人事業主も衣装代を経費計上できる?
個人事業主の場合、事業のみで使う衣装なら消耗品費で経費計上できます。
私用でも使える衣装だと、経費に認められないケースがあるため注意しましょう。たとえば、スーツやカジュアルウェアなどは、私生活で使う機会もある服装です。事業のみで使う衣装とみなすには、難しい場合があります。
事業と私生活の両方で使う衣装と認められれば、経費計上が可能です。ただし、利用割合に応じて家事按分し、事業で使う部分のみ経費にします。
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衣装代の仕訳に使う勘定科目
衣装代を経費計上する際の仕訳で使う勘定科目は、以下の通りです。
衣装代の仕訳に使う勘定科目
- 事業や特定のイベントで必要な衣装の場合は【消耗品費・雑費】
- 従業員が日常的に業務で使う衣装の場合【福利厚生費】
- 売上を伸ばす目的で実施したイベントやキャンペーンに使う衣装の場合は【販売促進費】
- 衣装や装飾品が10万円以上の場合は【工具器具備品】
各勘定科目を詳しく解説します。
【消耗品費・雑費】
下記のようなケースでは消耗品費もしくは雑費として仕訳します。
消耗品費に該当する衣装代の例
- 個人事業主自身が事業で必要な衣装を購入した場合
- 従業員が特定のイベントで着用する衣装を購入した場合
消耗品費と雑費どちらを使用しても問題ありませんが、一度決めたら原則として同じ勘定科目で仕訳する必要があります。
なお、個人事業主が私用と共用で購入した衣装代は、利用割合に応じて家事按分しなければなりません。
【福利厚生費】
従業員が日常的に業務で使う衣装を購入した場合は、福利厚生費の勘定科目が適しています。
福利厚生費に該当する衣装代の例
- 接客用のユニフォーム
- 社名入りウェア
- 安全確保のために着用する靴やヘルメット類
上記に挙げた衣装代は原則、私用で使わない服です。また、対象となる従業員全員に対して負担する衣装代になるため、福利厚生費で仕訳しましょう。
【販売促進費】
衣装のなかでも、売上を伸ばす目的で実施したイベントやキャンペーンに使う衣装なら販売促進費の勘定科目を使えます。
販売促進費は、売上を伸ばすために使った費用が該当する勘定科目です。
【工具器具備品】
衣装や装飾品が10万円以上の場合は工具器具備品の勘定科目を使い、減価償却が必要です。
工具器具備品は事業用に使う道具や設備で、耐用年数1年以上かつ取得価額10万円以上の場合に該当します。
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衣装代の仕訳や経費計上に関する注意点
衣装代の仕訳や経費計上する際は、以下の点に注意しましょう。
衣装代の仕訳や経費計上に関する注意点
- 経費に認められない衣装もある
- 私用でも使える衣装は家事按分する
- 10万円以上の衣装は仕訳と減価償却に注意する
以下で詳しく解説します。
経費に認められない衣装もある
業務で着用する衣装のうち私用にも使える衣装は、経費として認められない可能性があります。
たとえば、スーツやカジュアルウェアを着て仕事する人もいますが、これらは私用でも使う可能性があります。
仕事上必要な衣装と認められなければ、経費に計上できません。職種や業務内容などによって経費にできる衣装は異なると考えられます。
経費や仕訳に関して不明点がある場合は、税理士など専門家の意見を参考にしましょう。
私用でも使える衣装は家事按分する
経費に認められる衣装のうち私用でも使う可能性のある場合は、家事按分によって一部を経費精算し、全額を計上してはいけません。
業務用と私用の着用頻度で割合を決め、割合を決めた根拠は明確に残しましょう。
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10万円以上の衣装は仕訳と減価償却に注意する
10万円以上の衣装は工具器具備品に仕訳し、減価償却が必要なケースも存在します。衣装の耐用年数は2年、償却率は定額法なら0.500、定率法なら1.000です。
工具器具備品は定額法または定率法で減価償却するほか、一括償却資産や少額減価償却資産を選択する方法もあります。
10万円以上20万円未満の工具器具備品は、一括償却資産を選択可能です。一括償却資産を選択すると、使用した年から3年にわたって3分の1の金額を計上します。
中小企業で青色申告している場合は、少額減価償却資産も選択肢です。少額減価償却資産では、10万円以上30万円未満の場合に利用でき、使用した年に全額を計上できます。
10万円以上の高価な衣装を使う仕事をしている場合は、仕訳と減価償却に注意しましょう。
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【事例で解説】衣装代の仕訳例
衣装代の仕訳を、事例に分けて解説します。
なお、仕訳とあわせて衣装の内容や用途を適用に記載しておくと、あとで確認するときにもわかりやすいです。
スタッフがイベントで着用する衣装を購入した場合
主催イベントでスタッフが着用する衣装を購入し、現金3万円を支払った場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
貸方は銀行振込やクレジットカード払いなど、支払方法にあった勘定科目を使いましょう。
スタッフが常時着用する衣装(制服)を購入した場合
スタッフが通常業務で使う制服を2万円分購入し、代金は普通預金から振込んだ場合の仕訳は下記の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
福利厚生費 | 20,000円 | 普通預金 | 20,000円 |
従業員の業務効率化や安全を確保する目的で購入した衣装も、福利厚生費への仕訳が適当です。
販促イベントでスタッフが着用する制服を購入した場合
イベント時に着用する衣装を購入した際、販促活動の一環で行うイベントであれば、販売促進費の勘定科目を使う場合もあります。
たとえば新商品の展示即売イベントでスタッフが着用する衣装を2万円分購入し、社用のクレジットカードで支払った場合の仕訳は下記の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
販売促進費 | 20,000円 | 未払金 | 20,000円 |
なお、クレジットカードの利用金額が銀行口座から引き落としされた場合は下記の仕訳が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払金 | 20,000円 | 普通預金 | 20,000円 |
高額な衣装を購入した場合
業務で必要な衣装代が10万円以上の場合は工具器具備品を使い、減価償却します。
たとえばスタッフが着用する振袖一式30万円を購入し、代金は当座預金から振込んだ場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
工具器具備品 | 300,000円 | 当座預金 | 300,000円 |
年度末に定額法で減価償却した場合の仕訳例は、以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 150,000円 | 工具器具備品 | 150,000円 |
翌年度末にも上記の仕訳を行います。
工具器具備品では衣装の購入費用とわかりづらいため、摘要には何を購入したかを記録しましょう。また、減価償却時には何回目であるかも記録しておくと便利です。
高額な衣装を購入した場合
個人事業主の場合、業務でのみ着用し、私用では使わない服なら衣装代で経費計上できます。
ショーを披露する際に着用する衣装を3万円分購入し、現金で支払った場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
また、スーツなどの私用でも使える衣装は、業務上必要な職業と判断できれば経費に計上可能な場合があります。業務にスーツが必要と判断できる職業は、士業やセミナー講師などです。
ただし、経費に認められる場合でも、着用割合に応じて家事按分しましょう。
たとえば週に3日セミナー講師をするときに着用するスーツを7万円で購入し、現金で支払った場合(スーツ代のうち7分の3を事業用、7分の4を私用で按分する)の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|
消耗品費 | 30,000円 | 現金 | 70,000円 | |
事業主貸 | 40,000円 |
家事按分した際の割合を記録しておくと、あとから確認できます。今後、同様に衣装を購入する際も同じ割合で家事按分しやすくなるため、忘れずに記録を残しましょう。
まとめ
業務に必要な衣装代は、経費に計上可能です。ただし、仕訳時に使用する勘定科目は衣装の用途や金額で異なります。
消耗品費・雑費・福利厚生費・販売促進費・工具器具備品などから、状況にあわせて適切な勘定科目を使いましょう。
また、衣装代の仕訳は、摘要に衣装の内容を入れると、あとから振り返りやすくなります。衣装代の仕訳は適した勘定科目を選び、経理処理を正しく行いましょう。
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よくある質問
衣装代の仕訳で使う勘定科目は?
衣装代の仕訳で使う勘定科目は「消耗品費」「雑費」「福利厚生費」「販売促進費」「工具器具備品」です。適した勘定科目は、衣装の購入目的やケースに応じて異なります。
衣装代の仕訳で使う勘定科目を詳しく知りたい方は「衣装代の仕訳に使う勘定科目」をご覧ください。
衣装代は経費に計上できる?
従業員の制服や主催イベントの衣装など、業務で使う衣装にかかった費用ならば経費計上が可能です。
衣装代は経費に計上できるかを詳しく知りたい方は「衣装代は経費に計上できる?」をご覧ください。
監修 西村真衣(にしむら まい)
父も祖父も税理士という家系に長女として生まれる。実家は60年続く税理士事務所。学生結婚し、子供を授かるも、母、妻、娘の役割以外に、自分の人生も生きていきたいと2人の子供を育てながら税理士試験に合格する。自身も経営者の立場を経験しない事には、お客様の気持ちに真に寄り添うことはできないと感じ、実家の税理士事務所とは別に2021年に西村税理士事務所を開業。現在は、女性起業支援を中心に活動している。