勘定科目の基礎知識

PCR検査費用は経費になる?仕訳する際の勘定科目や注意すべきポイントを解説!

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

PCR検査費用は経費になる?仕訳する際の勘定科目や注意すべきポイントを解説!

業務上、必要でPCR検査を行った場合は経費にできます。本記事では、PCR検査費用に用いる勘定科目具体的な仕訳例を解説します。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、「PCR検査」が広く知られるようになりました。感染拡大を防ぐため、従業員に対してPCR検査を実施する企業もあるでしょう。

会計処理する際の注意点も説明するので、ぜひ参考にしてください。

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目次

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PCRの検査費用は経費にできる?

基本的に、PCR検査が業務上必要である場合は、その費用は経費として計上できます。たとえば、以下のような状況で検査費用を支出したのであれば、経費になります。

PCR検査費用が経費と認められる例

  • 新型コロナウイルス感染症を取引先の関係者にうつしてしまう可能性があるため、取引先の関係者と接する従業員に対し、PCR検査を実施する
  • 海外出張に行く従業員が、渡航時に必要な陰性証明書を取得するためにPCR検査を実施する

2023年5月8日から、新型コロナウイルス感染症は感染症法上の「2類相当」から「5類感染症」に位置づけられました。政府から一律の対応は求められなくなり、原則として個人や事業者の判断に委ねられます。

個人事業主の場合も、「取引先との打ち合わせでPCR検査を求められた場合」など、事業を行ううえで必要であれば経費として扱って問題ありません。

PCRの検査費用に用いる勘定科目

PCR検査で生じた費用に用いる勘定科目は、以下の通りです。

検査費用に用いる勘定科目

  • 業務上必要なPCR検査を従業員に実施する場合、【福利厚生費】
  • 役員に限定してPCR検査費用を会社が負担する場合、【役員報酬】
  • 特定の従業員に限定してPCR検査費用を会社が負担する場合、【給与】

それぞれの勘定科目について、詳しく説明します。

【福利厚生費】

業務上、必要なPCR検査費用は「福利厚生費」で仕訳します。福利厚生費は、定期健康診断費用や社員旅行の費用など、従業員の職場環境を整えるための費用に用いる勘定科目です。

PCR検査費用を「福利厚生費」で仕訳する際は、次の要件を満たしているか確認しましょう。

福利厚生費で仕訳する際の要件

  • 業務上、必要な検査である
  • 公平性を保っている

会社の経費として認められるのは、利益や所得のために業務上必要な費用です。原則、プライベートに関する支出は、経費として計上できません。

また会社が従業員のために支出する福利厚生費には、公平性が求められます。基本的に「役員だけ」や「一部の従業員だけ」など、公平でない支出は福利厚生費に該当しません。

ただし「海外出張のためPCR検査が必要な従業員のみ」や「接客が主な業務となる従業員のみ」など、合理的な基準があれば、限定的な支出であっても福利厚生費と認められるでしょう。

【役員報酬】

合理的な基準なくPCR検査を役員に限定して実施し、その費用を会社が負担する場合、「役員報酬」で計上しましょう。

役員報酬とは、取締役や監査役などへ支払われる役員給与に用いる勘定科目です。役員のみPCR検査を実施する場合は、その費用を報酬に上乗せします。役員の所得が増加し、その分所得税が増える点には注意が必要です。

また定期同額給与や事前確定届出給与に該当しない場合は、役員報酬は損金算入できないため注意しましょう。

【給与】

合理的な基準なく、特定の従業員に限定してPCR検査費用を会社が負担する場合、「給与」で仕訳しましょう。

給与には、従業員に支払う基本給・諸手当のほか、現物給与も含まれます。役員報酬と同様に従業員の給与が増える分、所得税も増加します。

なお「店舗などで来客と接する部署の従業員は検査が必要」「事務を主たる業務とする従業員は検査不要」など、合理的な基準がある場合はPCR検査費用を「福利厚生費」として計上することも可能です。判断に迷ったときは、専門家へ相談しましょう。

【事例で解説】PCRの検査費用の仕訳例

PCR検査費用を支出した際の仕訳例を紹介します。

勘定科目を「福利厚生費」で仕訳する場合

社内での感染拡大を防ぐため従業員に対してPCR検査を実施し、現金で支払う場合


借方貸方
福利厚生費100,000円現金100,000円

社内での感染拡大を防ぐため従業員に対してPCR検査を実施し、銀行から振り込む場合


借方貸方
福利厚生費100,000円預金100,000円

勘定科目を「役員報酬」で仕訳する場合

合理的な理由なく役員に限定してPCR検査を実施し、現金で支払う場合


借方貸方
役員報酬100,000円現金100,000円

役員に限定したPCR検査を実施し、銀行から振り込む場合


借方貸方
役員報酬100,000円預金100,000円

勘定科目を「給与」で仕訳する場合

自己判断でPCR検査を受けた従業員に対して、検査費用を現金で支払う場合


借方貸方
給与20,000円現金20,000円

自己判断でPCR検査を受けた従業員に対して、検査費用を銀行から振り込む場合


借方貸方
給与20,000円預金20,000円

個人事業主が業務上必要なPCR検査費用を支出した場合

1人で事業を営む個人事業主の場合、業務上必要なPCR検査費用が少額であれば、次の通り「雑費」で仕訳ができます。

取引先から陰性証明書を求められたためPCR検査を実施し、現金で支払う場合


借方貸方
雑費20,000円現金20,000円

ただし雑費は、少額かつ一時的な支出に用いる勘定科目です。PCR検査を継続的に実施したり、支出額が高くなったりする場合は、以下のように別途勘定科目を設定する必要があります。

業務上必要なPCR検査を複数回実施し、銀行から振り込む場合


借方貸方
衛生費100,000円預金100,000円

PCR検査費用を会計処理する際は料金相場に注意

PCR検査費用は、医療機関や民間の検査機関によって料金に差があります。一般的な相場に比べて高すぎる検査費用は、税務上、経費として認められない可能性があります。

会社が負担する場合、「後払い」となるのが一般的ですが、あらかじめ検査費用の負担上限額を決めておけば従業員とのトラブルを防げるでしょう。

まとめ

PCR検査が業務を遂行するうえで必要と判断される場合、基本的に経費として計上可能です。福利厚生費として仕訳する際は、「業務上必要であるという合理的な基準」と「公平性」を満たしているかどうかで判断します。

また一般的な費用相場からかけ離れた料金の場合、経費として認められないケースがあるため、あらかじめ検査費用の相場を把握しておきましょう。

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よくある質問

PCRの検査費用は経費にできる?

基本的に法人でも個人事業主でもPCR検査の実施が業務上必要である場合は、その費用は経費として計上できます。

PCR検査費用の経費計上に関して詳しく知りたい方は、「PCRの検査費用は経費にできる?」をご覧ください。

PCRの検査費用に用いる勘定科目は?

ケースによって、主に福利厚生費・役員報酬・給与を用いて仕訳します。

PCR検査費用の仕訳に使う勘定科目を知りたい方は、「PCRの検査費用に用いる勘定科目」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮