勘定科目の基礎知識

パソコンの勘定科目とは? 購入時の仕訳例やポイントをわかりやすく解説!

監修 安田 亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

パソコンの勘定科目とは? 購入時の仕訳例やポイントをわかりやすく解説!

企業でも個人事業でも、パソコンは欠かせないツールのひとつです。本記事では、パソコン購入時の勘定科目仕訳例を紹介します。

パソコンと一口に言っても、スペックなどに応じて取得価額はさまざまです。本記事では、取得価額に応じた仕訳例を紹介するため、経理担当の方や個人事業を行う方は、ぜひ参考にしてください。

目次

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パソコンの購入に用いる勘定科目

パソコンの購入で用いる勘定科目は、購入額などによって主に次の4つに分けられます。

パソコン購入費に関する勘定科目

  • 「使用可能期間が1年未満」または「取得価額が10万円未満」の設備什器の場合は【消耗品費】
  • 「耐用年数が1年以上」で「取得価額が10万円以上」の事業用の道具や器具の場合は【工具器具備品】
  • 「取得価額が10万円以上、20万円未満」の減価償却資産の場合は【一括償却資産】
  • 【特例】資本金や従業員数などの条件を満たす中小企業者で、「30万円未満の器具備品など」などを購入した場合は【少額減価償却資産】

それぞれの勘定科目の概要は、以下の通りです。


勘定科目概要・要件
消耗品費「使用可能期間が1年未満」または「取得価額が10万円未満」の設備什器帳簿・文房具・包装紙・など
工具器具備品「耐用年数が1年以上」で「取得価額が10万円以上」の事業用の道具や器具加工工具・裁断機・試験機器・計測器・コピー機・カメラなど
一括償却資産「取得価額が10万円以上、20万円未満」の減価償却資産工場の工具、事務所の備品などの償却資産
少額減価償却資産資本金や従業員数といった条件を満たす中小企業者で、「30万円未満の器具備品など」などを購入した場合に適用可能な特例器具・備品・機械・装置・ソフトウェアなど、取得価額30万円未満の減価償却資産

基本的に、「10万円未満」か「10万円以上」かが基準です。取得価額が10万円未満に該当するかは、税込経理方式か税抜経理方式によって異なります。

減価償却とは

減価償却とは、会計処理のひとつです。事業で使う機械や設備の取得価額を、それぞれの耐用年数に応じて分割し、費用として計上します。

国税庁で定められたパソコンの耐用年数は「4年」なので、10万円以上のパソコンを取得した場合は4年で償却します。

なお減価償却の方法は、「定額法」「定率法」の2通りです。定額法は一定額ずつ償却していき、定率法は一定率ずつ償却していきます。

減価償却に関して詳しく知りたい方は、「減価償却とは?対象資産や目的、計算方法をわかりやすく解説」をご覧ください。

【事例で解説】パソコンの仕訳例

事業で使うパソコンを購入した際、どのように仕訳するのかを取得価額ごとに説明します。

パソコンの取得価額が10万円未満の場合

取得価額が10万円未満の場合、「消耗品費」に該当します。現金やクレジットカードで購入した際の仕訳例を見てみましょう。

現金で8万円のパソコンを買った場合

借方貸方
消耗品費80,000円現金80,000円

「費用の増加」であるため、消耗品費は借方に記載します。

クレジットカードで8万円のパソコンを買った場合

パソコン購入時

借方貸方
消耗品費80,000円未払金80,000円

クレジットカード料金の支払時

借方貸方
未払金80,000円預金80,000円

クレジットカードで購入する場合、購入時と支払時にそれぞれ帳簿をつける必要があります。個人用のクレジットカードを使用した場合は、「事業主借」で仕訳しましょう。

パソコンの取得価額が10万円以上の場合

耐用年数が1年以上で取得価額が10万円以上の場合、基本的に「工具器具備品」で仕訳します。工具器具備品の例として、事務所で使用する事務・通信機器や、工場で使う加工作業などの道具が挙げられます。

工具器具備品の仕訳例は、次の通りです。

現金で12万円のパソコンを買った場合

借方貸方
工具器具備品120,000円現金120,000円

クレジットカードで12万円のパソコンを買った場合

パソコン購入時

借方貸方
工具器具備品120,000円未払金120,000円

クレジットカード料金支払時

借方貸方
未払金120,000円預金120,000円

なお取得価額が10万円以上のパソコンを購入した場合、固定資産台帳への登録を行います。

固定資産台帳とは、企業が所有する固定資産に関して、取得日・種類・数量・価値などを記録する台帳です。

パソコンの取得価額が10万円以上20万円未満の場合

取得価額が10万円以上20万円未満の場合、「一括償却資産」として計上できます。

現金で15万円のパソコンを買った場合

購入時

借方貸方
一括償却資産150,000円現金150,000円

決算時

借方貸方
減価償却費50,000円一括減価償却資産50,000円

一括償却資産であれば固定資産として管理する必要がなく、耐用年数に関わらず「3年」での一括償却が可能です。また期の途中で購入しても、月割は不要です。

【特例】パソコンの取得価額が30万円未満の場合

適用対象法人で取得価額が30万円未満の場合、「少額減価償却資産」として計上できる特例があります。2023年12月現在、2006年4月1日から2024年3月31日までに取得したものが対象です。

適用対象法人は、青色申告法人のうち、常時使用の従業員数が500人以下の中小企業者などです。ただし、適用を受ける事業年度の少額減価償却資産の取得価額の合計額が、300万円に達するまでの場合に限ります。

企業にとっては、取得した事業年度に全額を損金として算入できる点がメリットです。

現金で20万円のパソコンを買った場合

購入時

借方貸方
工具器具備品200,000円現金200,000円

決算時

借方貸方
減価償却費200,000円工具器具備品200,000円

少額減価償却資産として仕訳する場合も、取得価額が10万円を超えているため、固定資産として計上しなければなりません。

パソコンの取得価額が30万円以上の場合

取得価額が30万円以上であれば、「工具器具備品」として計上します。

分割払い(10回払い)で35万円のパソコンを買った場合

購入時

借方貸方
工具器具備品80,000円未払金80,000円

支払時(1回分)

借方貸方
未払金8,000円預金8,000円

なお取得価額が30万円以上の場合、「少額減価償却資産」などの特例は適用されません。法定耐用年数に応じて、定率法または定額法で減価償却を行いましょう。

パソコンの会計処理のポイント

パソコンを購入した際の会計処理のポイントは、以下の通りです。

パソコン購入時の会計処理のポイント

  • パソコンの取得価額に含まれるもの
  • パソコン購入時の消費税の扱い
  • 個人事業主でもパソコン購入費を経費にできる

3つのポイントをそれぞれ説明します。

ソフトウェアなど、パソコンの取得価額に含まれるもの

固定資産の取得価額は、主に次の項目の合計額です。

固定資産の取得価額に含まれるもの

  • 引き取り運賃
  • 運送保険料
  • 購入手数料
  • 関税など資産購入の代価
  • その資産を事業の用に供するために直接かかった費用

一般的に、パソコンを購入した際の設置サービスやデータ移行サービスの料金なども付随費用として固定資産に計上します。ソフトウェアを同時購入した場合は、その取得価額も含めましょう。

パソコン購入時の消費税の扱い

パソコンにかかる消費税の扱いは、適用している経理処理方式に従います。経理処理方式は、次の2種類です。

経理処理方式

  • 税込経理方式
  • 税抜経理方式

たとえば、税抜経理方式を採用している法人が税込107,800円のパソコンを購入した場合、税抜金額は98,000円(税率10%)のため、取得価額「10万円未満」として扱います。

個人事業主でもパソコン購入費を経費にできる

個人事業主の場合も、事業に必要な支出としてパソコン購入費を経費に計上することは可能です。10万円未満であれば消耗品費として、10万円以上の場合は減価償却資産として扱います。

パソコンを事業とプライベート兼用で使っているのであれば、家事按分が必要です。家事按分とは、事業での使用分を算出することです。算出した事業での使用分は経費として計上できます。

ただし家事按分をするには、経費として計上するパソコン購入費が事業に必要であると説明できるようにしておく必要があります。業務でのパソコン利用時間や業務日数・時間を記録しておきましょう。

まとめ

パソコンを購入した場合、取得価額によって適用できる勘定科目が異なります。なかには、中小企業者などを対象とした特例もあります。

個人事業主の場合も、勘定科目の扱いに関して、法人と大きな差はありません。基本的に、事業用のパソコンであれば経費として計上可能です。

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よくある質問

パソコンを購入した際の勘定科目は?

購入価額などによって、主に次の勘定科目に分けられます。

パソコン購入費に関する勘定科目

  • 消耗品費
  • 工具器具備品
  • 一括償却資産
  • 少額減価償却資産

パソコンを取得した際の勘定科目に関して詳しく知りたい方は、「パソコンの購入に用いる勘定科目」をご覧ください。

個人事業主でもパソコン購入費を経費にできる?

基本的に、事業用に利用するのであれば経費にできます。事業とプライベート兼用で利用する場合は、家事按分をして、事業で利用している分を経費計上します。

個人事業主がパソコンを購入した際の会計処理に関して知りたい方は、「パソコンの会計処理のポイント」をご覧ください。

監修 安田 亮

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

安田亮