監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ
支払手数料は用いる機会も多く、計上できる経費も多い勘定科目です。支払手数料で計上できる経費や具体的な仕訳例、混同しやすい経費を解説します。
どういった経費が支払手数料に該当し、どのように仕訳をするとよいか把握しておくと、経理業務にとても役立ちます。
経費計上する際のポイントや注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
支払手数料とは
支払手数料とは、金融機関への振込手数料など取引で発生した手数料や、弁護士・税理士など外部の専門家に支払う報酬などの勘定科目です。
支払手数料は費用の増加にかかる勘定科目です。そのため、仕訳の際は借方に計上します。
また、支払手数料は販売に直接かかわる経費ではないことから、損益計算書では一般管理費に分類されます。
支払手数料の勘定科目を用いる経費
支払手数料の勘定科目を用いる経費を、「取引に関連して発生した手数料」と「外部の専門家に支払う手数料」に分けて解説します。
取引に関連して発生した手数料
「取引に関連して発生した手数料」の具体例は以下の通りです。
取引に関連して発生した手数料
- 金融機関の振込手数料
- 金融機関の預入手数料
- 為替手数料
- ATM手数料
- クレジットカードの分割手数料
- 不動産の賃貸にかかる手数料
- 各種証明書の発行手数料
- 事業用アカウントの年会費
支払手数料の勘定科目は、銀行への振込手数料のほか、さまざまな手数料を計上する際に使用されます。
クレジットカードの分割手数料も、経費に該当する事務用品の購入の場合は経費となり、支払手数料で計上します。
外部の専門家に支払う手数料
支払手数料は、外部の専門家に支払う報酬の仕訳でも使用されます。主な報酬には以下が挙げられます。
外部の専門家に支払う手数料
- 税理士への報酬・顧問料
- 弁護士への報酬・顧問料
- 会計士への報酬・顧問料
- 司法書士への報酬・顧問料
- 経営コンサルタントへの報酬・顧問料
なお、外部の専門家に支払う報酬は、支払手数料のほか「支払報酬」を用いて記帳される場合もあります。
【事例で解説】支払手数料の仕訳例
支払手数料を用いた仕訳を、以下で具体例とともに解説します。
支払手数料の仕訳例
- 売掛金の振込手数料を自社が負担する場合
- 買掛金の振込手数料を自社が負担する場合
- 事務用品の購入で振込手数料を支払った場合
売掛金の振込手数料を自社が負担する場合
売掛金の振込手数料を、自社が負担する場合の仕訳例は以下の通りです。今回は売掛金が100,000円で、振込手数料550円が差し引かれたケースで計上しています。
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 99,450円 | 売掛金 | 100,000円 |
支払手数料 | 550円 |
なお、振込手数料は原則課税取引です。そのため、税込経理方式の場合は支払手数料の区分を課税仕入とする点に注意しましょう。
税抜経理方式の場合は支払手数料の金額を500円とし、別途「仮払消費税等(50円)」を借方に計上します。
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 99,450円 | 売掛金 | 100,000円 |
支払手数料 | 500円 | ||
仮払消費税等 | 50円 |
買掛金の振込手数料を自社が負担する場合
買掛金(100,000円)の振込手数料(550円)を自社が負担する場合の仕訳例は以下の通りです。
●税込経理方式の場合
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 100,000円 | 普通預金 | 100,550円 |
支払手数料 | 550円 |
●税抜経理方式の場合
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 100,000円 | 普通預金 | 100,550円 |
支払手数料 | 500円 | ||
仮払消費税等 | 50円 |
事務用品の購入で振込手数料を支払った場合
支払手数料の勘定科目は、ノートやペンなど事務用品を購入した場合に振込手数料を支払った場合にも使用されます。
事務用品(10,000円)を銀行振込で購入し、振込手数料(550円)を支払った場合の仕訳例は以下の通りです。
●税込経理方式の場合
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 10,000円 | 普通預金 | 10,550円 |
支払手数料 | 550円 |
●税抜経理方式の場合
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 10,000円 | 普通預金 | 10,550円 |
支払手数料 | 500円 | ||
仮払消費税等 | 50円 |
支払手数料と混同しやすい経費や勘定科目
支払手数料は取引に関する多くの手数料で用いられます。以下では、仕訳の際に間違いやすい経費や勘定科目を紹介します。
販売手数料
販売手数料は、商品やサービスの販売を代理店などに委託した際に支払う手数料です。売上に直接影響する経費のため、「販売手数料」または「販売促進費」で計上します。
同じ手数料でも、「売上に直接影響する」「売上に直接影響しない」点で用いる勘定科目が異なる点は覚えておきましょう。
公的機関で支払う手数料
収入印紙や収入証紙、納税証明書など、公的機関で支払う手数料は、一般的に「租税公課」の勘定科目で計上します。
理由のひとつは、公的機関で支払う手数料は消費税が非課税となるからです。公的機関の手数料に、支払手数料の勘定科目を用いても問題はありません。
しかし、課税取引となる民間の手数料と区別しておくと、集計する際に計算しやすくなります。
なお、租税公課を詳しく知りたい方は、「所得税や消費税など税金の支払いはどうなる?租税公課について」もあわせてご覧ください。
雑費
雑費は、販売費や管理費のなかでほかの勘定科目に分類されない少額の費用を分類する勘定科目です。
支払手数料に該当する経費のなかでも、頻度が少なく、金額的に重要性のないものは「雑費」を用いて記帳する場合があります。
たとえば、ゴミ回収業者に支払う費用は、定期的な回収や粗大ゴミの処分費用など、金額が大きい場合には「支払手数料」などが適切です。
一方、年に1回など頻度が少なく、金額的にも少額のケースは「雑費」で処理して構いません。
どのような費用が雑費に該当するかは「雑費とはどのような勘定科目?消耗品費との違いや仕訳方法などを解説」で詳しく解説しています。
支払報酬
外部の専門家に支払う手数料は、報酬・顧問料を処理するための「支払報酬」または「支払報酬料」を別途設け、計上する方法も一般的です。
外部の専門家に支払う手数料は源泉徴収の対象となる場合があり、仕訳の際には所得税に当たる分を預かり金として計上しなければなりません。
別枠で計上しておくと、税金に関するお金の流れを把握しやすくなり、便利です。
支払手数料を計上する際のポイント・注意点
支払手数料は金融機関の振込手数料などで使用するケースが多いです。しかし、仕訳の際は「自社負担」か「先方負担」かよく確認しましょう。
先方負担の場合は自社で支払手数料を計上しません。誤って自社で計上してしまうと、集計する際に金額が合わない原因となるので注意してください。
また、勘定科目は費用の内容をわかりやすく分類するための項目です。経理自由の法則から、発生した費用をどの勘定科目で計上しても基本的に問題はありません。
たとえば、外部の専門家に支払う手数料を「支払手数料」で計上するか、「支払報酬」で計上するかは自社の判断の範疇です。
ただし、正確にお金の流れを把握するため、同じ内容の取引は同じ勘定科目を継続して用いましょう。
まとめ
支払手数料は金融機関の振込手数料や税理士への報酬などで使用される勘定科目です。対象となる経費も多いので、正確に処理するよう心がけましょう。
特に金融機関の振込手数料は利用する機会が多く、そのたびに仕訳作業を行わなければなりません。
近年では、人工知能による勘定科目の推測、転記の自動化など、便利な機能が備わったツールも提供されています。
金融機関への振込手数料など、定期的に発生する仕訳が多い費用には自動化機能が便利です。
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よくある質問
支払手数料はどのような経費で使用する?
取引に関連して発生する手数料や、外部の専門家に支払う手数料で使用する勘定科目です。
支払手数料を使用する経費を詳しく知りたい方は「支払手数料の勘定科目を用いる経費」をご覧ください。
支払手数料で間違えやすい経費は?
販売手数料や公的機関で支払う手数料、雑費などが挙げられます。
間違えやすい経費を詳しく知りたい方は「支払手数料と混同しやすい経費や勘定科目」をご覧ください。
監修 宮川 真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。