監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ
業務に必要性があるクリーニング代は、経費計上が可能です。仕訳に用いる勘定科目は福利厚生費・衛生費・外注費・雑費・雑損失などを使います。
クリーニングの目的や頻度、業種により適した勘定科目が異なるため、注意しましょう。経費計上の際は、適切な勘定科目を使う必要があるほか、原則として同じ勘定科目を使い続ける必要があります。
本記事では、クリーニング代の仕訳に用いる勘定科目や仕訳の事例、経費に計上する際の注意点を解説します。
目次
- クリーニング代の仕訳に使う勘定科目
- 福利厚生費
- 衛生費
- 外注費
- 「雑費」または「雑損失」
- クリーニング費
- 【事例で解説】クリーニング代を経費にできるケースと仕訳例
- 会社支給のユニフォームをクリーニングに出す場合
- 顧客にサービスで提供するタオルをクリーニングに出す場合
- 特定の外部業者にクリーニングを依頼する場合
- 第三者の衣服や持ち物を汚損した場合のクリーニング代を支払う場合
- クリーニング代の仕訳や経費精算に関する注意点
- 業種やクリーニングの目的、頻度ごとに適した勘定科目は異なる
- 仕訳に使う勘定科目はむやみに変更しない
- 領収書が発行されない場合は注意する
- 個人事業主の場合は経費にできる内容か確認する
- まとめ
- 経理を自動化し、日々の業務をもっとラクにする方法
- よくある質問
クリーニング代の仕訳に使う勘定科目
クリーニング代の仕訳では、以下の勘定科目を使うケースが多いです。
クリーニング代の仕訳で使う勘定科目
- 従業員が着る制服などのクリーニング代を負担したときは【福利厚生費】
- 職場の衛生状態をたもつためにクリーニング代を支払ったときは【衛生費】
- 指定業者に依頼してクリーニング代を支払ったときは【外注費】
- クリーニング代の支払いが頻出せず少額の場合は【雑費・雑損失】
- 自社で独立した勘定科目を作って管理する場合は【クリーニング費】
発生頻度が高く、まとまった金額を支払う場合は独立した科目で「クリーニング費」を作成し、処理しても構いません。
どの勘定科目が適しているかは、クリーニングの目的や発生頻度、業種により異なります。仕訳を正しく行うには、状況に応じた勘定科目の選択が大切です。
クリーニング代を支出した状況ごとに適した勘定科目を解説します。
福利厚生費
従業員が仕事で使う衣服などのクリーニング代を会社が負担している場合、勘定科目は「福利厚生費」が該当します。
福利厚生費とは、従業員のために支払う費用で、給与や賞与は含まれません。
会社支給のユニフォームをクリーニングに出す場合や、従業員が負担したクリーニング代を実費精算する場合が該当します。
衛生費
職場の衛生状態をたもつためや、サービス品質を守るためにかかったクリーニング代は、「衛生費」に仕訳します。
衛生費は、一般的に顧客へ提供するおしぼりやタオルなどのクリーニング代に使われる費用です。
たとえば、飲食店のおしぼり、温浴施設や美容室などで使われるタオル類、宿泊施設のリネンなどのクリーニング代が該当します。
外注費
クリーニング業者を呼んで作業をしてもらう場合や、指定業者へまとめてクリーニングに出している場合などは、「外注費」を使います。
たとえば、ドア付近に設置するマット類を、特定の業者が定期的に回収してクリーニングしている場合などです。
「雑費」または「雑損失」
クリーニング代が頻出せず、金額も少額なら「雑費」や「雑損失」で処理しても構いません。定期的に発生し、まとまった金額になる場合は、勘定科目を決めて記帳しましょう。
過失によりクリーニング代を負担する場合も、雑費または雑損失への仕訳が適しています。
業務上関連性のある費用は雑費、関連性はないがやむを得ず発生した費用は雑損失を使用しましょう。
クリーニング費
自社でルールを決め、独立した勘定科目に「クリーニング費」を作成して仕訳する方法もあります。
クリーニング代の発生頻度が高く、金額も大きいなら、独立した勘定科目を使うほうが仕訳もわかりやすいです。また、福利厚生費や衛生費の補助科目に「クリーニング費」を作る方法もあります。
会計ソフトウェアの多くは、必要に応じて勘定科目の変更や追加が可能です。自社の状況にあわせて、使いやすい状態にカスタマイズしましょう。
【事例で解説】クリーニング代を経費にできるケースと仕訳例
クリーニング代を経費計上できる代表的なケースと仕訳例を解説します。クリーニング代を経費計上する際の参考にしてください。
会社支給のユニフォームをクリーニングに出す場合
事業所内で着用する制服や現場で使う作業着をクリーニングに出す場合、使用する勘定科目は「福利厚生費」が該当します。
例:衣替えで従業員の制服を回収してクリーニングに出し、現金50,000円支払った
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
福利厚生費 | 50,000円 | 現金 | 50,000円 |
例:従業員が立替えたクリーニング代1,000円を経費精算した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
福利厚生費 | 1,000円 | 現金 | 1,000円 |
ただし、ユニフォームの導入目的が衛生管理やサービス品質をたもつためなら、衛生費が適している場合もあります。
例:飲食店の厨房スタッフが使う制服を回収してクリーニングに出し、現金20,000円支払った
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
衛生費 | 20,000円 | 現金 | 20,000円 |
同じ会社支給のユニフォームでも、導入目的で勘定科目が変わるケースもあるため注意しましょう。
また、支払方法によっては貸方が現金ではなく、普通預金や未払金などを使うケースもあります。銀行振込の場合は普通預金や当座預金、クレジットカード払いの場合は未払金など、支払方法に合う勘定科目を使用しましょう。
顧客にサービスで提供するタオルをクリーニングに出す場合
飲食店や美容室、温浴施設などで使用するおしぼりやタオル、宿泊施設のリネンなどは「衛生費」が該当します。
例:美容室店舗で使用したタオルのクリーニング代30,000円を普通預金の口座から振込んだ
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
衛生費 | 30,000円 | 普通預金 | 30,000円 |
業務に必要な衛生管理の一環で発生したクリーニングの場合も、衛生費での処理が適当です。
特定の外部業者にクリーニングを依頼する場合
毎月大量のクリーニングを特定の外部業者に依頼している場合や、業者を呼んでクリーニング作業をした場合は「外注費」で仕訳します。
例:毎月依頼しているA社へ今月のクリーニング代50,000円を普通預金の口座から振込んだ
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
外注費 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
例:事業所内の定期清掃で清掃業者に家具のクリーニングをしてもらった代金50,000円を普通預金から振込んだ
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
外注費 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
第三者の衣服や持ち物を汚損した場合のクリーニング代を支払う場合
業務中、何らかのトラブルで相手の衣服や持ち物を汚損した場合のクリーニング代は、雑損失や雑費で処理するケースが一般的です。
例:従業員の不注意で顧客の服を汚損させたため、その場で現金3,000円と連絡先を渡した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑費 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 |
例:取引先との会食時、不注意で相手のカバンを汚損させたため謝罪し、後日クリーニング代5,000円を現金で支払った
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑損失 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 |
クリーニング代の仕訳や経費精算に関する注意点
クリーニング代を経費計上する場合、仕訳や精算の際には注意点が存在します。クリーニング代は注意点を踏まえ、適切に処理しましょう。
業種やクリーニングの目的、頻度ごとに適した勘定科目は異なる
同じクリーニングでも目的や発生頻度、業種により適した勘定科目は異なります。
雑費で問題ない金額か、福利厚生費と衛生費ではどちらが適しているかなどを考え、自社の仕訳ルールを決めましょう。
仕訳に使う勘定科目はむやみに変更しない
クリーニング代の仕訳ルールを決めたら、継続的に同じ勘定科目で記帳を続ける必要があります。
企業会計原則のひとつに「継続性の原則」があり、会計方針は安易に変えるべきではありません。説明のつく理由なしに勘定科目を変えて計上していると、会計上不自然です。
クリーニング代は自社ルールにもとづき、同じ勘定科目で記帳しましょう。
領収書が発行されない場合は注意する
クリーニング店ではなく無人のコインランドリーで、領収書が発行されない場合は注意しましょう。クリーニング代を経費に計上する際は、領収書または領収書に代る書類が必要です。
近年、無人のコインランドリーでも、領収書発行できる機種が登場しています。ただし、発行できる場合も、別途手続きが必要なケースもあるため注意しましょう。
個人事業主の場合は経費にできる内容か確認する
個人事業主の場合、仕事に欠かせないクリーニングか、日常的な利用も含むクリーニングかで線引きが必要です。
たとえば、経営する店舗内でのみ使用するタオルのクリーニングは経費計上できます。しかし、私用でも使う衣類や備品のクリーニング代は、経費計上すべきではありません。
まとめ
クリーニング代を経費計上する際の勘定科目は、福利厚生費、衛生費、外注費、雑費などが一般的です。クリーニングの発生頻度が高く、金額が大きい場合は「クリーニング費」の勘定科目を作成しても構いません。
ただし、自社の業種やクリーニングの目的・頻度などで、適した勘定科目は異なります。
クリーニング代は状況に応じた適切な勘定科目で仕訳し、経費計上しましょう。
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よくある質問
クリーニング代の仕訳に使う勘定科目は?
クリーニング代の仕訳では福利厚生費や衛生費、外注費、雑費・雑損失などを使用します。業種やクリーニングの目的、頻度などで適した勘定科目は異なるため注意しましょう。
クリーニング代の仕訳に使う勘定科目を詳しく知りたい方は「クリーニング代の仕訳に使う勘定項目」をご覧ください。
クリーニング代は個人事業主でも経費計上できる?
事業に関わる費用は経費計上できますが、私的な内容が含まれるクリーニング代の経費計上はできません。たとえば、個人経営の飲食店で使う制服やタオルなどは経費計上が可能です。
個人事業主のクリーニング代を詳しく知りたい方は「個人事業主の場合は経費にできる内容か確認する」をご覧ください。
監修 宮川 真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。