監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所
現金過不足は現金の残高が帳簿上の数字と一致しない状態です。本記事では、現金過不足に用いる勘定科目や仕訳例、会計処理のポイントを解説します。
現金過不足の原因として、現金の数え間違いや記帳ミスなどの理由が考えられます。現金過不足が発生した場合には、適切な勘定科目を用いた会計処理が必要です。
また発生時だけでなく、現金過不足の原因が判明した場合や、原因不明のまま期末を迎えた場合も仕訳処理を行いましょう。
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目次
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現金過不足は現金・帳簿の残高の不一致
現金過不足とは、実際の現金の残高と、帳簿上の残高が一致しない状態をいいます。
現金が帳簿残高より少ない場合は「現金不足」、多い場合は「現金過剰」です。
現金不足と現金過剰の両方をまとめて「現金過不足」と呼びます。
現金過不足が発生する原因
現金過不足が発生する原因として考えられるのは、主に次の2つのケースです。
現金過不足が発生する原因
- 現金取り扱いのミス
- 記帳のミス
それぞれ詳しく解説します。
現金取り扱いのミス
現金過不足の原因のひとつとして、現金を取り扱ううえでのミスが考えられます。
現金取り扱いミスの例
- 売上代金の受け取り間違い
- お釣りの渡し間違い
- 支払金額の間違い
- お釣りの受け取り間違い
- レジ締めなどのタイミングでの数え間違い など
現金が動いた際の確認や帳簿との照合の機会が不十分な場合、現金過不足が発生しやすいでしょう。
現金取り扱いのミス
記帳にミスがある場合、実際の現金残高と帳簿残高との差異が発生します。
記帳ミスの例
- 数字や勘定科目の単純な入力ミス
- 重複入力
- 入力漏れ など
記帳のミスは各種税金の計算にも影響する可能性があるため、慎重な処理が必要です。
現金過不足に用いる勘定科目
現金過不足に用いる勘定科目は以下の通りです。
現金過不足に用いる勘定科目
- 現金過不足の発生時は【現金過不足】
- 決算までに現金過剰の原因が判明しなかった場合は【雑収入】
- 決算までに現金不足の原因が判明しなかった場合は【雑損失】
それぞれ詳しく解説します。
【現金過不足】
現金過不足が発生した際は、「現金過不足」の勘定科目を用います。現金過剰時・不足時の両方に使用できます。
「現金過不足」とは、実際の現金と帳簿上の残高が一致しない場合に、不一致の原因が判明するまで・または決算までの間、仮に処理しておくための勘定科目です。
【雑収入】
帳簿より実際の現金残高が多く「現金過不足」で仕訳した現金過剰分は、決算までに原因が判明しなかった場合「雑収入」に振り替えます。
「雑収入」とは、ほかのどの勘定科目にも属さない収入に用いる勘定科目です。
【雑損失】
帳簿より実際の現金残高が少なく「現金過不足」で仕訳した現金不足分は、決算までに原因が判明しなかった場合「雑損失」に振り替えます。
「雑損失」とは、ほかのどの勘定科目にも属さない損失に用いる勘定科目です。
【事例で解説】現金過不足の仕訳例
現金過不足の具体的な仕訳例を解説します。
現金が多い場合
帳簿上の残高より現金が多いと判明した際の仕訳例を紹介します。
例:現金の残高を確認したところ、帳簿上の残高より100円多いと判明した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 100円 | 現金過不足 | 100円 |
現金が多い場合
帳簿上の残高より現金が少ないと判明した際の仕訳例を紹介します。
例:現金の残高を確認したところ、帳簿上の残高より500円少ないと判明した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金過不足 | 500円 | 現金 | 500円 |
決算までに現金過不足の原因が判明した場合
「現金過不足」として処理した現金過剰・現金不足の原因が判明した際の仕訳例を紹介します。
決算までに原因が判明した場合は、「現金過不足」を消し込みます。振り替え先の勘定科目は、事例ごとに適切な科目を選択してください。
例:現金過剰100円を現金過不足として処理していたが、仕訳にミスがあり、消耗品費を100円多く誤入力していたためと判明した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金過不足 | 100円 | 消耗品費 | 100円 |
例:現金不足500円を現金過不足として処理していたが、事務用品費500円の仕訳漏れであると判明した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
事務用品費 | 500円 | 現金過不足 | 500円 |
決算までに現金過不足の原因が判明しなかった場合
「現金過不足」で処理した現金過剰・現金不足の原因が決算までに判明しなかった場合の仕訳例を紹介します。
例:現金過剰100円を現金過不足として処理していたが、期末まで原因不明のままであった
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金過不足 | 100円 | 雑収入 | 100円 |
例:現金不足500円を現金過不足として処理していたが、期末まで原因不明のままであった
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑損失 | 500円 | 現金過不足 | 500円 |
現金過不足を会計処理する際の注意点
現金過不足を会計処理する際の注意点を解説します。
消費税の取り扱いに注意する
「現金過不足」は原因が判明するまで、または決算時まで仮に処理しておくための勘定科目であるため、消費税は対象外です。
また原因が判明せず決算で「雑収入」もしくは「雑損失」に振り替える場合も、消費に伴う現金の動きではないため、同様に対象外です。
税務上問題があると判断される場合がある
現金過不足が多額である場合や頻度が高い場合、税務上問題になる可能性が考えられます。
また、金融機関や投資家などからの信用が低下する恐れもあるでしょう。
ずさんな管理体制であると判断されないためにも、現金過不足は可能な限り発生を防止するべきであり、発生してしまった場合は可能な限り原因を追究しなければなりません。
現金過不足を防ぐ対策
現金過不足の発生を防ぐ対策として次の3点が挙げられます。
現金過不足を防ぐ対策
- 帳簿と現金残高の照合の回数を増やす
- 小口現金や仮払制度を導入し、売上現金と経費用現金は分けて管理する
- キャッシュレス化を促進し、現金を取り扱う機会自体を減らす
現金過不足が発生すると事務的な手間や時間が余分にかかります。上記のような防止策を導入し、現金過不足が発生しない環境を目指しましょう。
まとめ
現金過不足は、実際の現金の残高と帳簿上の現金の残高が不一致である状態をいいます。
現金過不足が発生した場合、「現金過不足」の勘定科目を用いて仕訳処理が必要です。
期中に原因が判明した場合は適切な勘定科目へ振り替えます。
決算のときまでに原因が判明しなかった場合、現金過剰は「雑収入」、現金不足は「雑損失」に振り替えが必要です。
現金過不足は管理がずさんな印象を与え、取引先や投資家からの信用が低下する恐れがあるほか、税務上問題視される可能性も考えられます。
実際の現金残高と帳簿上の残高を照合する機会を増やす・キャッシュレス化の促進などの対策で、現金過不足の発生自体を防止しましょう。
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よくある質問
現金過不足とは?
実際の現金残高と、帳簿上の残高が一致しない状態を現金過不足といいます。
現金のほうが多い場合は現金過剰、少ない場合は現金不足です。現金過不足といえば現金過剰と現金不足の両方をさします。
現金過不足を詳しく知りたい方は、「現金過不足は現金・帳簿の残高の不一致」をご覧ください。
現金過不足に用いる勘定科目は?
現金過不足が発生した際は「現金過不足」の勘定科目を用いて処理します。
期中に原因が判明した場合は適切な勘定科目への振替仕訳を行います。決算までに原因が判明しなかった場合、現金過剰は「雑収入」、現金不足は「雑損失」への振替仕訳が必要です。
現金過不足の過剰科目を詳しく知りたい方は、「現金過不足に用いる勘定科目」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。