IPOの基礎知識

証跡とは?上場準備に不可欠な証跡管理の重要性や対策を解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

証跡とは?上場準備に不可欠な証跡管理の重要性や対策を解説

株式上場によって一般の投資家による自由な株式の売買を目指している企業において、証跡管理は欠かせません。

本記事では、証跡の概要を述べるとともに、企業における証跡管理の重要性や対策について解説します。証跡について理解を深めたい方は、最後までご覧ください。

目次

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証跡とは

証跡(しょうせき)とは「証拠となる痕跡」という意味で、特にビジネスシーンにおいては、社内の業務プロセスやITシステムの処理などが、法や社内規定に則って行われていることを証明する痕跡のことです。

具体的には、会社の従業員が社内のシステムを利用した際に残る、PCやスマートフォンなどの履歴の記録(ログ)が証跡にあたります。

証憑との違い

証跡と似た言葉に「証憑(しょうひょう)」があります。証憑とは、取引が正当かつ適切に行われたことを証明する書類のことです。具体的には、契約書や請求書、領収書、納品書、タイムカード、給与明細などを指します。

証跡が業務全般にわたるものであるのに対し、証憑は「会計・人事にかかわる取引」に限定されているのが大きな違いです。つまり、証憑は証跡の一部といえます。証憑について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
証憑とはなにか?証憑の種類と保存方法について解説

証跡管理が重要な理由

企業において、社内の証跡を管理する体制の整備はさまざまな点で重要です。

ここでは、企業で証跡管理が必要な理由を3つ挙げて解説します。

不正行為を防止できる

証跡を適切に管理できていれば、社内で不正行為がなされた際もすばやい検知と対処が可能です。不正行為の発覚後、従業員のPCやスマートフォンなどに残る記録を確認することで、企業はいつ誰が不正をしたのかを調べられます。

このように不正行為に関係した人物をすぐに特定できる体制が確立されていることは、「不正をしようとしてもすぐにバレる」という認識を根付かせ、そもそも不正行為を起こさせない抑止力となります。

情報資産を管理できる

企業では、顧客や従業員に関するさまざまな情報を保有しています。IT化が進む現代において、これらの情報は重要な資産であるため、厳重に管理されなければなりません。

万が一不正アクセスなどによって情報流出が起きれば、企業に対する信頼やブランドイメージは大きく下がってしまいます。

証跡管理が適切に行われている企業では、どの情報へ、誰がいつアクセスしたのかをすぐに把握することが可能です。こうした管理体制は、不正アクセスが行われるリスクを回避し、情報資産の適切な管理につながります。

上場準備に欠かせない

証跡管理は企業の上場にも大きく関係しています。上場企業だけでなく、これからIPO(新規公開株式)としての上場を目指す企業でも、事業活動を健全かつ効率的に運営するための仕組みである「内部統制」の構築は重要事項です。

内部統制は「業務の有効性及び効率性」「財務報告の信頼性」「事業活動に関わる法令等の遵守」「資産の保全」を目的として行われますが、これらの目的を果たすうえで証跡管理が役立ちます。

また、上場準備をしている企業においては、証跡管理の体制が整っていることが、内部統制が適切に行われていることを示す客観的な証明となります。

【関連記事】
内部統制とは?4つの目的と6つの基本的要素について分かりやすく解説

監査証跡(Audit trail)とは

企業に対しては、不正の発見や予防などを目的に、さまざまなタイミングで監査(法や社内規定に沿って企業活動が行われているかを評価すること)が行われます。

監査の対象は経理処理やシステムなどさまざまで、監査の際に確認が求められる業務上の行動履歴が監査証跡(Audit trail)です。監査証跡の特徴としては、時系列で行動を確認して検証を行えることが挙げられます。社内システムが対象の監査では、システムの動作記録として、いつ、誰が、どのような操作を行ったかというデータを確認されます。

証跡管理への対策

企業において重要な証跡管理ですが、具体的にどう対策すればいいのかわからずに悩んでいる担当者もいるはずです。

ここでは、証跡管理への対策として特に有用なものを2つ紹介します。

文書管理のデジタル化

証跡管理をするうえでは、契約書や請求書といった業務に関わる文書の厳しい管理が重要です。しかし、これらの文書が紙のままのアナログ管理では、証跡のスピーディーな確認は困難でしょう。また、文書のアナログ管理には、物理的な保管スペースが必要で、持ち出しや紛失といったリスクがあるなどのデメリットがあります。

業務に関係する文書をデジタル化することで、文書へのアクセス履歴を追跡できるようになるため、証跡管理でのすばやい確認が可能になります。さらに、保管スペースが不要になり、アクセス権限をコントロールすれば持ち出し・紛失のリスクを回避できる点もメリットです。

システム・ツールの導入

文書のデジタル化を進めるとともに、いつ、誰が、何をしたかのログを確認・管理できる証跡管理機能のあるシステム・ツールを導入し、業務自体をデジタル処理できるようにすることも有効です。これによって行動履歴の記録が自動で行われるようになり、より証跡管理が簡便になります。

万が一トラブルが発生した際も、システム・ツールの記録を確認すれば、誰のどのような行動がトラブルにつながったのかすぐに把握でき、迅速に対応することができます。

また、近年は企業のIT活用が一般化するにつれて、システム利用時の情報漏えいや不正利用などのリスクを回避するための厳格なIT統制も求められています。企業が適切に情報を扱い、活用していくためにも、証跡管理機能のあるシステム・ツールの導入は欠かせません。

まとめ

不正行為の防止や情報資産の管理などの面で重要になる証跡管理は、企業の上場準備に欠かせない取り組みであり、積極的に体制を整える必要があります。

本記事を参考に証跡や証跡管理に対する理解を深めるとともに、自社で行うべき具体的な対策を見つけてください。

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IPOは、スモールビジネスが『世界の主役』になっていくためのスタート地点だと考えています。
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  • 整合性担保(インプットコントロール)のための、稟議、見積・請求書発行、支払依頼などのワークフローを用意
  • 発見的措置(モニタリング)のための、仕訳変更・承認履歴、ユーザー情報更新・権限変更履歴などアクセス記録
  • 国際保証業務基準3402(ISAE3402)に準拠した「SOC1 Type2 報告書」を受領

詳しい情報は、内部統制機能のページをご確認ください。

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IPOに向けた準備をお考えの際は、freeeの活用をご検討ください。

よくある質問

ビジネスにおける証跡とは?

ビジネスにおける証跡とは、社内の業務プロセスやITシステムの処理などが、法や社内規定に則って行われていることを証明する痕跡を意味します。

詳しくは記事内「証跡とは」で解説しています。

証跡と証憑の違いは?

証跡は業務全般における「証拠の痕跡」を指すのに対し、証憑は会計・人事に関する取引が正当かつ適切に行われたことを証明する書類を指します。

詳しくは記事内「証憑との違い」をご覧ください。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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