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コーポレートガバナンスコードとは? 改訂のポイントや特徴について分かりやすく解説

コーポレートガバナンスコードとは? 改訂のポイントや特徴について分かりやすく解説

コーポレートガバナンスコードとは、コーポレートガバナンスを実現するために必要な原則を金融庁と東京証券取引所が合同で取りまとめた「上場企業統治指針」のことです。

コーポレートガバナンスコードは、金融庁と東京証券取引所により定期的に改訂されており、2021年にも新たに4つの項目が追加されました。

本記事では、コーポレートガバナンスコードの特徴や5つの基本原則、2021年に追加された改訂内容について詳しく解説します。

目次

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コーポレートガバナンスコードとは

コーポレートガバナンスコードとは、コーポレートガバナンスを実現するための主要な原則を取りまとめた「上場企業統治指針」のことです。

英語でCorporate Governance Codeと表記されるため、頭文字を取ってCGコードと略されることもあります。

具体的には、企業の株主や顧客(取引先)、従業員といったステークホルダーとの望ましい関係性や、企業を監視する取締役会の設置など、上場企業の組織としてあるべき姿について記述されています。


出典:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」

コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンスとは、上場企業が不祥事や不正などをせず、公正な判断や経営ができるように監視・統制する仕組みのことをいいます。

監視するのは社外取締役か社外監査役であり、これらの役職の人はステークホルダー(従業員や債務者など)の代弁者として重要な役割を担います。

コーポレートガバナンスの目的は、上場企業や経営に透明性を確保し株主やステークホルダーの権利や立場を尊重すること、そして上場企業の価値を中長期的に向上させることです。

【関連記事】
コーポレートガバナンスとは? 企業統治の意味や内部統制の違いについてわかりやすく解説

コーポレートガバナンスコードの制定の背景

コーポレートガバナンスコードの制定には、日本企業の国際的な評価が低下したことが背景としてあります。国際的な評価が落ちたことの原因として挙げられるのが、日本企業の成長率の低さです。

日本政府は2013年6月14日に閣議決定をした「日本再興戦略」で、コーポレートガバナンスを見直して、日本企業を国際競争に勝てる体質に変革することを重要項目としています。

そして、2015年6月に金融庁と東京証券取引所がコーポレートガバナンスコードを策定し、上場企業への適用が開始されるようになりました。

なお、日本企業の国際的な評価が落ちた原因は、経済産業省が2014年に公表した「伊藤レポート」(当時一橋大学教授だった伊藤邦雄氏を座長としてまとめた報告書)でまとめられています。

報告書には、国際的に見ても日本企業の自己資本利益率(ROE)や株価は低いため、投資家にとって日本企業へ投資するメリットが少ないことが問題点として指摘されています。

そのため日本政府は、国外の投資家が日本企業に投資することへのメリットを作り、日本企業の国際的な評価を改善する必要があると判断し、コーポレートガバナンスコードを制定することを決定しました。

スチュワードシップコードとの違い

スチュワードシップコードとは、2010年にイギリスで規定された金融機関などの機関投資家の行動指針のことです。

投資と対話することで企業の成長を促す「責任ある機関投資家」としての諸原則がまとめられています。

コーポレートガバナンスコードが企業を対象とした行動指針であるのに対して、スチュワードシップコードは機関投資家の行動指針であるという違いがあります。

コーポレートガバナンスコードの特徴

コーポレートガバナンスコードの特徴は、「プリンシプルベース・アプローチ」と「コンプライ・オア・エクスプレイン」の2つの手法を採用している点です。

プリンシプルベース・アプローチ

プリンシプルベース・アプローチとは、大枠の原則のみが定められている「原則主義」のことをいいます。

プリンシプルベース・アプローチを採用すると、詳細はそれぞれの上場企業ごとに決められるため、自由度と柔軟性が高い点がメリットです。

ただし定められている原則は抽象的なもののため、人によって解釈の幅が異ならないように、各原則の趣旨を十分に理解した上で適用する必要があります。

コンプライ・オア・エクスプレイン

コンプライ・オア・エクスプレインとは、「コーポレートガバナンスコードを遵守する、または遵守しないのであれば、正当な理由を株主やステークホルダーに説明しなければならない」というものです。

コーポレートガバナンス・コードの原則をすべて遵守する義務はありません。ただし、遵守しない原則があった場合は、その理由を株主やステークホルダーへ十分に説明する必要があります。

企業側が株主やステークホルダーへ説明し、遵守することが適当でないと判断されれば、その原則を遵守しないことが認められます。

コーポレートガバナンスコードの5つの基本原則

コーポレートガバナンスコードは、5つの基本原則で構成されています。

コーポレートガバナンスコードの5つの基本原則

  • 株主の権利・平等性の確保
  • 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  • 適切な情報開示と透明性の確保
  • 取締役会等の責務
  • 株主との対話

出典:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」

1. 株主の権利・平等性の確保

上場企業には、株主が権利を確保し、同時にその権利を適切に行使できる環境を整備することが求められます。

株主の権利を整備することは、株主との適切な協働を確保でき、企業の持続的な成長につながるためです。

また、少数株主や外国人株主については、権利の確保や行使などが適正であるか疑念が生じやすいため、権利の平等性については十分な配慮が必要です。

株主の権利・平等性を確保するための具体的な施策として、「資本政策の基本的な方針を説明すること」「株主の判断の役に立つ情報を正確に提供すること」などが挙げられます。

2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働

株主以外のステークホルダー(従業員や顧客、取引先)との適切な協働は、上場企業の持続的な成長のために欠かせません。

ステークホルダーとの協働施策の原則

  • 中長期的な上場企業価値を向上させる基礎となる経営理念の策定をする
  • 内部通報に係る体制の整備をする
  • 女性の活躍促進や外国人を含め、社内の多様性の確保をする

3. 適切な情報開示と透明性の確保

上場企業はさまざまな情報を正確に開示することが求められます。

公正で透明性のある情報を開示することは、株主やステークホルダーの利益を守るためだけではなく、企業が社会的信頼を得るためにも必要不可欠です。

4. 取締役会等の責務

経営陣や取締役に対して、独立した客観的な立場から監督することを、取締役会等の責務といいます。

これらの役割を担うのは「監査役会設置会社」「指名委員会等設置会社」「監査等委員会設置会社」の3社です。会社から採用された3社のうち1社が、取締役会等の責務に該当する仕事を担当します。

取締役会には、企業全体の体制を適切に構築し、内部監査を活用しながら企業の運用状況を監督する役割があります。

5. 株主との対話

株主と対話することは、経営の適正な基盤強化および、持続的な成長のための取り組みとして有効です。

経営陣は株主やステークホルダーに対して、経営方針や新規事業や既存事業の計画を含めた今後の施策などを分かりやすく説明し、その中で懸念点があれば適切な対応が求められます。

コーポレートガバナンスコードを遵守しない場合のペナルティ

コーポレートガバナンスコードは、東京証券取引所が金融庁と合同で作成したガイドラインのため、遵守についての法的拘束力はなく、もし違反があったとしても制裁金などのペナルティが課せられることはありません。

しかし、コーポレートガバナンスコードには、前述したコンプライ・オア・エクスプレインの原則が採用されるため、遵守しない場合にはその理由を東京証券取引所に説明する必要があります。

もし、コーポレートガバナンスコードの各原則を実施しない理由を十分に説明できない場合は、東京証券取引所の上場規則違反に該当します。違反した場合、東京証券取引所の判断で「理由の説明義務に違反した企業」として公表されてしまう場合があります。

もし違反企業として公表されてしまうと、コーポレートガバナンスに則っていない企業という証明になり、社会的評価が下落してしまうことでしょう。


出典:東京証券取引所「有価証券上場規程」

2021年に改訂されたコーポレートガバナンスコードのポイント

2021年6月11日(金)に、コーポレートガバナンスコードが改訂されました。

改訂の背景は、コロナ禍など社会環境が変化していく状況でも、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現するために、企業が諸問題に対してスピーディーに対応する必要があると判断されたためです。

また、プライム市場上場企業において、従来のガバナンス水準よりも高水準のガバナンスを目指して取り組むのが重要であると判断されたことも理由のひとつです。

改訂されたコーポレートガバナンスコードでは、以下の4つの補充原則が新設されました。

改訂されたコーポレートガバナンスコードの4つの補充原則

  • 取締役会の機能の発揮
  • 企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保
  • サステナビリティを巡る課題への取組み
  • 上記以外の主な課題

出典:日本取引所グループ「改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」

1. 取締役会の機能の発揮

今回の改訂コードでは、以前よりも取締役会の構成において、社外取締役の割合の増加など独立性を求める内容になっています。

取締役会の機能の発揮

  • プライム市場上場企業において、独立社外取締役を3分の1以上選任する
  • 指名委員会・報酬委員会を設置する
  • 経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係を公表する
  • 他社での経営経験を有する経営人材を独立社外取締役として選任する

独立した社外取締役を3分の1以上選任しなくてはならず、各取締役が有しているスキルを一覧でまとめた「スキルマトリックス」の作成および公表も必要です。

今回の改訂では、取締役会の機能が迅速かつ実効性のあるものになるよう記載されました。また、社外取締役の存在が形式化されないように、細かな設定も設けられています。

2. 企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保

企業の中核となる人材には、年齢や国籍、性別を問わず多様性(ダイバーシティ)をもたせることが重要です。改訂コードでは、下記の2つが求められています。

企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保

  • 管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標を設定する
  • 多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表する

これらを実施するにあたり、経営陣の意識改革をはじめとして、社内環境の整備や人材育成の方針と実施状況の開示もあわせて求められています。

3. サステナビリティを巡る課題への取組み

2021年の改訂コードでは、環境への具体的な取り組みに関する項目が追加されました。

サステナビリティを巡る課題への取組み

  • プライム市場上場企業において、TCFD(*1)またはそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動に関する情報開示の質と量を充実させる
  • サステナビリティについて基本的な方針を策定し、自社の取り組みを開示する

(*1)TCFDは気候関連財務情報開示タスクフォースの略称で気候変動に関連するリスクや取り組みに関して積極的な情報開示を求めるもの

国際的に見るとすでにサスティナビリティ関連における情報開示の制度検討や、情報開示の統一的な枠組みの策定に向けた動きがあります。

日本企業に対しても、サスティナビリティを意識した経営が求められるようになりました。

4. 上記以外の主な課題

ここまで説明した上記の内容以外にも、追加された項目があります。

その他の課題

  • プライム市場に上場する「子会社」において、独立社外取締役を過半数選任又は利益相反管理のための委員会の設置
  • プライム市場上場企業において、議決権電子行使プラットフォーム利用と英文開示の促進

上場企業だけではなく、その子会社や海外子会社などのグループ会社にもガバナンスの強化が必要です。企業単体の場合はコーポレートガバナンスですが、グループ会社に対しては「グループガバナンス」といいます。

また、株主が権利を行使できるようにするために、情報提供の充実について取り組むことと記載されました。具体的には、必要とされる情報の議決権電子行使プラットフォームの整備と、英字での情報開示が求められています。

まとめ

コーポレートガバナンスコードとは、コーポレートガバナンスを実現するために必要な原則を取りまとめた「上場企業統治指針」のことです。コーポレートガバナンスコードが適切に実施されることにより、企業の中長期的な価値の向上と、持続的な成長を見込めます。

法的な拘束力はないものの、東京証券取引所の上場規則違反に該当した場合には世間に公表され、社会的信頼が下がるリスクがあるため、遵守しない場合は適切に説明できるようにしましょう。

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